こんにちは、「レインボーシックス シージ(以下、R6S)」のeスポーツ公式キャスターをしております、ともぞう(@tom85y)と申します。

2021年は、R6S日本競技シーンにとって転換点ともいえる大きな年となりました。その最も大きな理由が、国内トップリーグ「X-MOMENT Rainbow Six Japan League(以下、RJL)」の創設です。年間の給料が保証されるなど選手の待遇面が大きく変わったことで、選手はプレイに専念できる環境を手に入れました。これにより、2021年は国内の競争は激化。様々なドラマが生まれる1年となりました。

そんな中、CYCLOPS athlete gaming(以下、CAG)、GUTS Gaming(以下、GUTS)、FAV gaming(以下、FAV)の3チームは、従来のアジア太平洋リーグ(以下、APAC)と新設されたRJLの2つの大会で戦う必要がありました。2つの大会を戦う初めての年、チームには一体どんな苦労があったのでしょうか?

今回話を聞くのは日本の競技シーンを6年間引っ張り続けるFAV。しかし2021年は成績がふるわず、APACも入れ替え戦に回りました。不調の原因はなんだったのか? ShiN選手(@shinreins09)、OdeNMisoコーチ(@oden_miso)にインタビューしました。

成功した点が見つけづらい難しい1年

――2021年はFAVにとって、どういう1年でしたか?

ShiN RJLが始まり、週に最大で3日は試合になりました。週休1日とした場合、練習できる日が3日間しかない状況です。そのため、調整がどうしても間に合わないこともありましたね。

そういった背景もあってなかなかいい成績が出せず、9月頃からチームにテコ入れを試みましたが、RJLとは別で開催されたオープン大会のRainbow Six Japan Championship(以下、RJC)でも成績はふるいませんでした。

僕としては時間管理や練習の質を向上させる部分において、上手くマネジメントできなかったと考えています。ただ、その後、APAC入れ替え戦に関してはチームをイチから見直して立て直すことができ、なんとか残留を決めました。最低限の結果は残せたと思っています。

――以前から気になっていたんですが、チームのマネジメントはShiN選手が担当しているのですか?

ShiN 実は10月のRJCまでは、チームのマネジメントは担っていませんでした。僕がマネジメントし続けるとチームメンバーの考える力が育たないからです。あくまでチームメンバーそれぞれに役割分担をお願いする形を取っていました。ただ、結果に繋がらなかったので10月以降は僕が再びチームマネジメントを行うようになりました。

――なるほど。では、OdeNMisoコーチにとって2021年はいかがでしたか?

OdeNMiso ほとんどShiNさんが言ってくれたのですが、ひと言で言うなら「忙しかったな」と。2つの大きなリーグを戦うことで試合の準備はもちろん、それ以外のところでも色々とやるべきことがあったと感じる1年でした。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で比較的オンラインでの試合が多かったですが、それでも忙しかったです。もし2022年にオフラインの試合が増えるとより忙しくなると思うので、2021年で培ったノウハウを上手く生かしたいと思います。

――コーチの立場からみた忙しさとは、具体的にどういうところですか?

OdeNMiso 日々の練習にも参加しているので、ある程度時間の拘束が発生します。コーチという立場なので、確かに個人練習をする必要がありませんが、対戦相手の分析をしたり、自チームの課題分析をしたりと、練習以外の時間は必要です。正直、2つの大きなリーグを戦っていく中で、対戦相手全ての分析を行うことは難しかったですね。

――CAGのFuji3コーチも同様のことをおっしゃってました。対戦相手全てに対して対策を取ることは不可能だったと。

OdeNMiso まさにそうですね。あと、ほとんど海外の試合を観ることができませんでした。APACエリアの試合を観るのが精一杯というところでしたね。

――ここまでお話を聞いただけでも、2021年は苦労が多かったと感じます。ただ、その中で成功した点もありましたか?

ShiN なかなか難しいですね。年度初めに目標設定は行っています。2021年度に最もやりたかったことは、選手ひとりひとりが自立し考える力を持って、チームの勝利に貢献することでした。ここはあまり上手くいかなかったので、来年度も引き続き課題になると考えています。

あえて言うなら、APAC入れ替え戦でみせた土壇場での集中力は、チームとして1つの強みになったのではないかと思います。

OdeNMiso 僕もShiNさんと同じで、正直上手くいかなかった1年だったなと言わざるを得ないですね(苦笑)。ただ、それは色々と挑戦した結果でもあります。挑戦できたこと自体は良かったと思います。

――ShiN選手のお話の中で、目標設定という言葉がありました。R6S部門として、FAVのチーム全体を運営している方と目標設定を行うことはあるのでしょうか?

ShiN はい、目標設定はFAV全体で行います。昨年は3月に行いましたね。R6Sチームとして1年を通じて何を目標にしていくか、チーム運営の方と話し合いました。その内容について、大まかな部分はR6S部門の選手にも共有しています。

RJCに出場するFAV gaming

部活とプロスポーツは違う

――2つのリーグで相手の対策を立てる時間が十分にない中、どのように準備したのでしょうか?

ShiN 直近3カ月の間に注力したことは、基本に立ち返りR6Sの基礎力を上げることでした。極端な話、基礎力が最高まで高められていれば、どんな相手にも対応できると考えたからです。

ファンの皆さんも「FAVは作戦のチーム」と考えていると思います。ただAPAC入れ替え戦ではあえて作戦を作りませんでした。作戦を立てると作戦を遂行しようとしてしまい、状況の変化に合わせた柔軟な対応ができなくなりがちです。残留できたので、この取り組みは間違いではなかったと思います。

逆に言うと基礎力を伸ばすことに重点を置く以前、特にAPACで結果が出せなかったのは、CAGやGUTSと比べて選手の基礎力がバラバラで、相手の変化に合わせて意思統一ができなかったことが原因だったと考えています。

――1年前のRJL開幕段階では、その問題が見えていなかったのでしょうか?

ShiN 少し違和感はあったと思います。ただ、1年前は新メンバーも入ったタイミングで、それほどチームが悪い状態ではありませんでした。新しいメンバーがチームに馴染めるよう、もともといたメンバーも積極的に声を出していたし、実際、APACのStage1に関してはPlayoffまで進めています。

ただ、何事も2年目になると中だるみするって言うじゃないですか(笑)。メンバー同士が慣れてきたあたりからチームが中だるみの状態になり、問題が浮き彫りになってきたように思います。

――OdeNMisoコーチはいかがですか? 選手時代も含めて競技シーン経験は長いですが、これほどの規模の2つの大会に同時に参加する体験はなかったと思います。

OdeNMiso スケジュールがハードなので、そこへの対処が苦労した点として一番に思い浮かびますね。チームとして目標、理想がある中で、2つの大会に参加すると、次々に新しい課題が見つかりました。それらを解決するための時間が本当に不足していました。

――課題解決にあたってはShiN選手とOdeNMisoコーチでどういった役割分担をされているのでしょう?

OdeNMiso 実はそれほど明確に役割分担があるわけではありません。必要に応じて、僕が選手個々と面談を行うこともありますし、それとは別にShiNさんにもメンバーが相談していることもあると思っています。

――お2人は社会人経験もあると思います。会社だと定期的に上司との面談を設ける場合が多いですが、FAV内では選手とチーム運営との定期面談は行われているのでしょうか?

ShiN 現在R6S部門のマネジメントは、ほぼ僕に任せてくれています。ただ、僕自身もそこに課題があると感じており、僕からチームに対して「個別面談を行って欲しい」と依頼しています。

OdeNMiso 直接ShiNさんに話しづらいこともあると思いますし、客観的にチームの状態を見てもらうためにもFAV運営の方に話を聞いてもらうことは大切です。また、チームメイトといっても年齢差などがあり、メンバーが気をつかう部分もあるので、そのあたりはFAVというチーム全体でカバーしてもらえるようにしています。

ShiN 学生時代、別のスポーツの監督やコーチが何をしているのかに興味があり、調べたことがあります。今でもその時学んだことを参考にして、チームマネジメントに生かしています。僕としては「eスポーツはeスポーツ」と区切るのではなく、同じスポーツとして、フィジカルスポーツの良い点をどんどん取り込んでいきたいですね。

――おっしゃるとおり。eスポーツは今後さらに発展していくと、サッカーや野球のようなフィジカルスポーツに寄っていくと私も考えています。

ShiN よくメンバーには「それやっていいのは部活だけだよ。それはプロスポーツでやることじゃないよ」と言っています。プロスポーツはお客さんを楽しませながら、自分たちの結果を出さないといけない。自分だけがよかったらいいわけではないので、そのあたりの意識改革は日々行っています。

この点は自分自身にも言えることで、自分の中だけで完結しようとすると、どうしても独りよがりになってしまいます。定期的にメンバーからフィードバックをもらったり、チーム運営の方にアドバイスをいただいたりしています。僕はeスポーツに限らず、日中の仕事に関してもコミュニケーションを特に大切にしています。

RJLでの学びをAPAC入れ替え戦へ

大会でのインタビューに応じるFAV gamingメンバー

――今度はRJLに絞ってお話を聞きたいと思います。RJL初年度ということで、色々と大変なことが多かったと思いますが、1シーズン戦ってみて、いかがですか?

OdeNMiso いい経験になりました。感想としては、RJLのみを戦っているチームと、RJLとAPACを戦っているチームで差が出るなと。結局スケジュールの話に繋がるんですが、FAVがなかなか相手の対策を立てられない中で、RJLのみを戦っているチームは1週間かけてじっくり対策を準備してきている。その中で勝っていく難しさはありましたが、いい経験になったと捉えています。

でも、何より楽しかったですね。僕は選手時代から試合が好きだったので、試合が増えたことは、シンプルに楽しかったですね。

ShiN 現在、韓国やブラジルチームが躍進著しいですが、僕は国内大会の試合数がその要因の1つになっているのではないかと考えています。これら地域のチームは場合によっては1週間で4~5試合こなさないといけない過密日程もあり、当然相手の対策などはできません。

そうなった場合、作戦を増やすよりは基礎力を上げ、対応の幅を広げるしかないのではない。そういった意味では、RJLという舞台ができ、試合数が増えたことはとても意味があると思います。オープンの大会ではなく、国内のトップチームがリーグ形式で試合を行う点も重要だと感じました。

2022年は観客の皆さんの前でもぜひプレイしたいですね。お客さんも観たいと思いますし、お客さんのリアクションを受けてチームがまたさらに団結し、良くなっていくということもありますので。

――スケジュール以外で、RJLに参加するにあたってコーチとして気をつけていた点はありますか?

OdeNMiso 自分は試合が好きで、選手時代は週1回の休みもいらないくらいだったのですが、休みがないと上手くリセットできないメンバーはもちろんいます。そのあたりのコンディションメイクには気を配りました。ただ、メンタルコーチではないので、選手の調子が悪い時にどうしてあげればいいのか、最適ななアクションをおこすことは難しかったですね。

――リーダーとしては、ShiN選手はどのあたりに気を配りましたか?

ShiN モチベーションの向上が課題として捉えていました。そこで、日々の練習に細かく目標を設定するようにしました。いつもの時間に集まっていつもどおりスクリムをするだけだと作業化してしまうので、それを回避するためです。

他のスポーツでは当たり前なんですが、メンバーが集った時はチーム練習でないと意味がない。個人練習は、メンバー個人の時間でできるので。、みんなが集まった時に何をすべきなのかを明確にするよう心掛けましたね。

――そうなると、ShiN選手は個人練習の時間をいつ確保しているのでしょうか? 平日のお仕事が忙しい印象を持っていますが。

ShiN 空き時間全てをR6Sにつぎ込む感じですね。他のチームの分析については、ある程度チームの個性はパターン化できると考えています。どのチームがどのパターンにハマるかを観察し、後は意外性のある作戦を持っていないかだけ確認して効率化しています。

――そして、不安視されていたAPAC入れ替え戦では見違えるようなパフォーマンス。先程から「基礎力」がキーワードとして挙がっていますが、どのように鍛えたのですか?

ShiN メンバーの役割を変えた練習を行いました。普段ハードブリーチャー(補強壁を破壊する役割)の人にアタッカーをさせてみる、といったことです。普段とは異なる立場から意見が出せるかどうかを試しました。これにより、役割を戻した際に相手の状況などを想像しやすくなると考えています。

また、エントリーの勝負で味方がやられてしまった場合、残ったメンバーでゲームを作らないといけないわけですが、残ったメンバーの組合せによっては上手く組み立てられない問題がありました。それを極力なくすために、誰が最初に意見を出すのかも練習を重ねました。 

――なるほど。ただ、2021年のFAVをみていると、人数不利を背負ってからのアプローチに問題があるように感じました。基礎力といっても様々な要素がある中で、APAC入れ替え戦ではなぜあれほど、人数不利からの立て直しができたのでしょうか?

ShiN シチュエーション練習を徹底しました。練習後に必ず俯瞰視点での反省会を行うのですが、シチュエーションを細かくわけ、メンバーのポジションを徹底的に振り返りました。

特に少人数戦においては、正確な判断をいかに早く行うかが重要です。防衛において、相手が人数有利な状況で時間が経つと、より堅く守られてしまいます。そうならないためにも、相手の隙を素早く見定めて行動できるように練習してきたことが、APAC入れ替え戦で結果となって表れたと思います。

――入れ替え戦までの短期間に仕上げるとなると容易ではなかったと思います。

ShiN 入れ替え戦という特性上、既に対戦相手が分かっていた点が大きかった。Sengoku Gaming(以下、Sengoku)に対してはしっかりと分析ができていたので、シチュエーションを絞り込めました。あらゆるチームに対応できる基礎力を手に入れるには、まだまだ練習が必要だと考えています。

――そこが個人のパフォーマンスの良さにも繋がったんでしょうか? 特にAfro選手のスーパーショットは歴史に残るプレイでした。

ShiN それもあると思います。しかし大事な試合ではありますが、だからこそ自分たちのいつもの力が出せずに終わるともったいないと考えていました。そこでチームに「FPSなんだから練習以上に積極的にいこう」と声をかけました。実際、練習以上のパフォーマンスを見せてくれたと思います。

OdeNMiso 僕も実際に試合中にボイスチャットを聞いていましたが、練習よりも質が高かったですね。R6Sに限らず、FPSは受け身になると弱い。ただ、Sengokuもガンファイトに強い選手がそろっているので「相手が積極的に仕掛けてきたときは上手く引いてほしい」とコーチとしては伝えていました。選手がそのあたりのバランスも上手く取ってくれて、単なる前のめりではなく主導権を握る戦い方ができていました。

蘇ったFAV。圧巻のパフォーマンスで、Sengokuに対し、2-0と完勝!(1試合目)

2022年こそ、よりファンを驚かせる

――ありがとうございます。それでは最後にお聞きしたいと思いますが、2022年の目標はいかがですか?

ShiN プロチームなので、RJL、APAC含めて勝ちに行くことが大きな目標です。小さな目標としては、チームの連携の底上げとか細かい点もあるのですが、良くも悪くも「FAVらしさ」からの脱却を図りたいと思っています。2018年から世界大会に出場できていないので、当時交流を深めた海外の選手たちに会うためにも、世界大会に出場したいですね。

OdeNMiso 2021年は結果が振るわなかったので、やはり2021年は結果にこだわっていきたいです。個人としての目標は、2021年なかなかできなかったメンタル面のサポートを、コーチとしてもう少し何かできるようになりたいと考えています。

――インタビューにご協力いただき、ありがとうございました!

マネジメントにおいても進化をつづけるFAVの2022年に期待

これまで日本の競技シーンを引っ張ってきたFAVにとって、APAC入れ替え戦に回ったことは本当に不本意だったことでしょう。ただ、そこにはチームをどう次のステップに進めるかの試行錯誤が見え隠れしていました。

今回の企画は、各チームのチームマネジメントの仕方を知ってもらうということだったのですが、FAVにはマネジメントにおける確固たる考え方があるように見えました。この点は多くのチームが参考にできるのではないでしょうか。

さて、FAVの試行錯誤は2021年で終わったように見えます。後は前に進むだけ。ShiN選手の最後の言葉にあるように、これまでにないFAVを見せて世界への扉を開いてくれる予感がします。

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ぜひ、興味が湧いた方は「競技としてのR6Sの世界」を一度覗いてみてください。