こんにちは。「レインボーシックス シージ(以下、R6S)」のeスポーツ公式キャスターをしております、ともぞう(@tom85y)と申します。

2021年は、R6S日本競技シーンにとって転換点ともいえる大きな年となりました。その最も大きな理由が、国内トップリーグ「X-MOMENT Rainbow Six Japan League(以下、RJL)」の創設。

年間の給料が保証されるなど選手の待遇面が大きく変わったことで、選手はプレイに専念できる環境を手に入れました。これにより、2021年は国内の競争は激化。様々なドラマが生まれる1年となりました。

そんな中、CYCLOPS athlete gaming(以下、CAG)、GUTS Gaming(以下、GUTS)、FAV gaming(以下、FAV)の3チームは、従来のアジア太平洋リーグ(以下、APAC)と新設されたRJLの2大会で戦う必要がありました。2つの大会で戦う初めての年。チームとして一体どんな苦労があったのでしょうか?

今回は主にチームマネジメントに主軸を置き、CAGでマネージャーを務めるKYON氏(@KYON_MPK)とコーチのFuji3氏(@Fuji3_R6)にインタビューしました。

想像以上のスケジュール チームは崩壊寸前まで追い込まれた?

――2021年はRJL初年度で、今まで経験したことがない1年だったと思います。チームとしてはどういった年でしたか?

KYON 個人的には、スケジュールが本当に大変でしたね。ただ、 APACでも成績を残し、世界大会にも参加できたので、総合的にはよい1年だったとは思います。

Fuji3 KYONさんと同じになりますが、忙しかったですね。APACとRJLの両大会の合間にスクリム(練習)を入れなければならず、正直休んでいる暇がなかったですね。

世界大会に出場していないチームが休息を取れている期間、僕らは世界大会の本番。長く休める期間も取れませんでした。また、新型コロナウイルス感染拡大の影響で隔離期間もあったため、リフレッシュも難しかった。世界大会に2度出場できた点は大きな経験でしたが、リラックスする、あるいはチームを立て直すための時間を取る点では、本当に苦労しました。

――では、チームとして2021年の実績の中で、最も評価しているのはどこでしょうか?

KYON 一番結果を残せたのは、RJLの無敗優勝だと思っています。世界大会では世界に通用することは示せたと思いますが、惜しい結果になりました。グループリーグ突破が出来なかったのも、悔しかった。

Fuji3 2度世界大会に出場でき、「CAGが世界に通用するんだぞ」と対外的に示せたと思います。そして、選手自身も世界と戦えることを実感できた。チームとして成功と言っていいんじゃないかと。その結果、選手たちも「世界で戦うためにはどうすればいいか?」という視点を持つようになり、それが日頃の練習からも垣間見えるようになりました。

――世界への意識は、具体的にどういったアクションから感じられるようになったのでしょうか?

Fuji3 たとえば、EU(欧州エリア)チームは1つのマップの中で相手チームに対応してくるのが早かったりします。そのことを世界大会でより実感できたので、練習の中でも「EUのチームなら、今のところもっと早く修正してくるんじゃない」とか、「EUのチームならこう対策してくるんじゃない」といった発言が選手から出るようになりましたね。

――なるほど。

Fuji3 いつも、というわけではありません。常に世界基準だと、APACの試合などでは足元をすくわれるので。

――反対に、最も難しかった点はどこでしたか?

KYON 繰り返しになってしまいますが、スケジュール調整が本当に難しかった。
RJL開始前までは日曜日を休みとしていましたが、日曜日にRJLの試合があるとそちらに出場しないといけなくなるので。

――定期的に週1回の休みを取れなくなったんですか?

KYON チームとして定期的な休みは一応設けてはいました。APACとRJLのみであれば週1回の休みも機能したかもしれませんが、世界大会の遠征の影響が大きかったですね。日を追うごとに選手が精神面で疲弊していき、日々の練習にも集中できない状態にまで陥り、まともに練習が組めなくなってしまいました。

Fuji3 ジレンマに陥っていましたね。疲れは取れていないけど練習はしないといけない。でも練習の質を上げるためには、休まないといけない。かといって休んでしまうと試合に勝てないかもしれない……堂々巡りの状況に、選手の精神がすり減っていってしまいました。

――そういった状況で、チームではどのように試合へ向けた準備を行っていたのでしょうか?

Fuji3 その辺りは本当に難しかったですね。準備という観点では、APACの強豪チームとの対戦に照準を合わせていたことが多かったです。

RJLはBo3(2マップ先取)ですし、相手の対策というよりは自分たちのスタイルを通すことに重きを置いていました。RJLを軽視しているわけではなく、全ての対戦相手に対応しようとすると物理的に時間が足りず、現実的な落とし所としてそう運用せざるを得なかったんです。

――確かに、10月の「Rainbow Six Japan Championship(以下、RJC)」では、CAGの選手たちの疲れが見ている側にも伝わってきました。2つの大規模大会に並行して参加する難しさの表れだったんですね。

それぞれの戦い チームとしての評価は?

試合中、選手たちを鼓舞するFuji3氏

――ここからは各大会にフォーカスしていきたいと思います。まずはRJLから。1シーズン通して戦った感想はいかがですか?

KYON 自分たちが優勝した大会ではありますが、それよりも日本全体のレベルが上がった印象が強いですね。参加チームはほぼ毎週試合ができるし、参加していないチームもレベルの高い試合を毎週見られるわけですから。。僕たちも、今年後半になるにつれ簡単には勝てなくなったと感じていました。

Fuji3 前任コーチのXQQさんから引き継いだ中でRJLの優勝は最低限の目標だったので、優勝できたことに満足しています。また単純に大会を開催するのではなく、運営側がTwitterのキャンペーンを頻繁に行ってくれたりと、R6Sコミュニティ全体を盛り上げる施策も多かった。そういった点も含めて、RJLがあって良かったなと思います。

――CAGは5月の「Six Invitational 2021(以下、S.I. 2021)」、8月の「Mexico Major」と2つの世界大会に参加しました。一定の成績は残せたように感じますが、チームとしては目標達成できたと考えているのでしょうか?

1年振りの開催となったS.I. 2021に出場したCAG。強豪と熱戦を繰り広げました

KYON 目標は達成できたと思います。実のところ、2021年に入るまでCAGはまだ世界大会で1勝もできていないチームでした。2年前の「Six Major Raleigh」では全く歯が立たなかったことから考えると、S.I. 2021で勝利できたことは大きな一歩となりました。

――なるほど。一方で、Mexico Majorに関してはいかがですか? あの大会に関しては選手のコンディションも良いように見え、上位に進出する予想も多かった。実際は優勝したTeam oNe eSportsに対して、惜敗となりましたが……。

KYON Mexico Majorに関しては単純に悔しいですね。Team oNeが最終的に対応してきて、選手は気持ちの面で揺さぶられたと思います。

R6S競技シーンにおいて史上初のタイブレイクとなった、Team oNeとの激闘

――大会後の振返りに、KYONさんはどう関わっているんですか?

KYON プレイ面での振返りには一切関わりません。一番悔しいのは選手やコーチだとわかっているので、プレイ面で僕から何かを言うことはありません。Mexico Majorの際も、試合後にLINEで「気をつけて帰ってこいよ」程度のメッセージを送っただけでした。

――プレイ面であまり関与しないとなると、KYONさんはどういう形でチーム運営にに携わっているのでしょう?

KYON チーム運営において問題が発生した際は僕のところに集約し、R6S部門としてCAGの運営チームと話すような対応を行っています。選手個人の問題であれば、個別に話を聞いたりしています。また、僕のところで判断すべきものがあれば意思決定もしますね。マネージャーがある程度の決定権を持っているチームは、あまり他にないのではないでしょうか。

――確かにR6Sの競技シーンにおいては少ないと思います。ある意味、企業における管理職のようにも見えますが、選手を叱ったりすることもありますか?

KYON たまに怒ることはありますね(笑)。

――RJLのインタビューを見ていても選手が人として成長したと感じることが多く、そういった面の指導はKYONさんが担っているように感じていました。

KYON そういうわけではありません。もちろん叱ることもありますが、選手自身が人として成長してくれただけです。インタビューに関しては、Ayagatorの加入が大きかったですね。彼はとても受け答えが上手いので。

――それは間違いないですね。CAGに入った直後からインタビューが上手かったのを覚えています。彼はインタビューもチャンピオン帯ですね(笑)。

わずかな隙も見逃してくれなかった世界の戦い

――今度は大会中のシーンについてお聞きします。S.I. 2021では後半持ち味を発揮し、盛り返したと思います。一方で、大会の入り方には相当苦しんだんじゃないかなと。想定と何が違いました?

Fuji3 S.I. 2021の時点では、APACと世界の差が大きいと考えていました。そのためS.I. 2021では、APAC以外のチームの強さを、本当の意味で肌で感じられました。本番に向けたスクリムをEUの中堅チームなどと行ったのですが、戦術のクオリティが高く驚きましたね。中堅チームでこのレベルなのか、と。ただ、新型コロナの影響もありパリでは十分な練習期間を確保できませんでした。

当時の世界基準がどのあたりにあり、どう修正して大会に挑めばいいのか準備する時間もなく、世界レベルに突然放り込まれた形になってしまったのが、大会序盤でパフォーマンスを出せなかった原因のひとつだと見ています。新型コロナの影響がなければもっと早く現地に入り、世界レベルに慣れる期間を設けられたと思います。

もう1点はS.I. 2021のレギュレーションによる影響があったかなと。S.I. 2021はグループリーグにおいてグループが2つしかなく、よっぽどのことがない限りプレイオフには進める状況でした。そのため他地域から格下に見られていたAPAC勢は「絶対負けられない相手」とされていたようです。他のチームに比べるとしっかり対策されていましたし、とてもやりづらかったですね。国内でもAPACでもそこまで万全の対策を取られたことがなかったので、こちらも大会序盤で苦戦した要因のひとつだと思います。

――その経験が生きて、Mexico Majorではいい大会の入り方ができたのでしょうか?

Fuji3 Mexico MajorではS.I. 2021よりも練習期間と練習環境が整っていたので、準備できました。また、直近で世界大会を経験していたため、選手にも精神的な余裕があるように見えました。

あとパフォーマンスがよく、単純にチームが強かった。実際、NA(北米エリア)のSpacestation Gamingとスクリムしても、ボコボコにしていましたし(笑)。

――そんなCAGにファンも期待を寄せていたMexico Majorでしたが、あと1歩でプレイオフ進出ならず。振り返ると、何が足りなかったと感じていますか?

KYON あと1ラウンド、ですね(笑)。僕は現地に行っていたわけではないので想像でしかないですが、選手も「いけるだろう」と思っていたのではないかと。実際、日本で見ていたチーム運営のメンバーも大丈夫だろうと思っていましたし。その隙を突かれたのかなと思います。

――やはりメンタル面の課題なのでしょうか。CAGはここまでメンタル面での脆さを見せることが何度かあったように思います。チームとしてはどう捉えていますか?

KYON メンタルは日本のチームの中では強い方だと思っています。ただ、追い込まれた状況ではまだまだ脆さがあると認識しています。世界に勝つために、チームにもメンタルコーチがいてもいいのではと考え始めています。

――現地で試合を実際に観ていたFuji3コーチは、いかがですか

Fuji3 Team oNe戦ではチーム対策の差が出てしまったと考えています。追い込まれた状況で、Team oNeの成長が予想を遥かに超えてきた思いもあります。

元々、Team oNeは相手の対策をするようなチームではないと分析していました。マップも想定通り、領事館、山荘となりました。領事館はこちらの得意マップだったこともあり大丈夫だろうと思っていましたが、その認識の甘さが問題でしたね。Team oNeがガラッと戦い方を変えてきたことで、事前の準備が全て覆されてしまいました。そうなるとタイムアウト中も言えることが少なくなり、「やられた」という思いしかありませんでした。

KYON Team oNeに負けたことは悔しかったですが、その後彼らが優勝してくれたことは救いになりましたね。

RJCで見せた意地 そして2022年へ

――Mexico Major以降もタイトなスケジュールでAPACステージ3、RJCと続きましたが、個人的に気になっている試合がAPACステージ3のプレイオフ最終戦。GUTS Gamingとの試合なのですが、ノーガードの殴り合いのような試合展開になり、CAGは敗退。重要なS.I.ポイントを失うことになりましたが、あの試合は何があったんでしょうか?

Fuji3 要因はいくつかあります。ひとつは、GUTS Gamingがあの時点で直近のMajorやS.I. 2022出場の可能性がなくなっていたので、開き直りに近い全く予測できない動きになっていたこと。それで選手が焦ってしまい、裏目裏目に試合が進んでいってしまいました。あとは選手の疲れがピークに達していたタイミングで頭が働いておらず、余計にGUTSの動きについていけませんでした。

KYON 疲れが極限で、オペレーターBANでもミスが発生したりしていましたね。

――先程からお話のあった疲れのピークが、まさにそのタイミングだったんですね。一方でRJCは準優勝。チームとしてAPACよりも集中している印象を受けましたが、立て直しが上手くいったのでしょうか?

Fuji3 はい。RJCはかなり持ち直せました。

KYON RJC開催1週間前に全員集めてミーティングを行いました。その場で僕から選手に「現在のチームは弱い」と、はっきり言葉で伝えました。このままだと負け続けると話し、気持ちのリセットを試みました。

また、これまでチームとしてあまり相手の対策を取るアプローチはしてこなかったのですが、RJCでタイトルを取るためには相手の対策も必要だろうと話し、準備も行うようにしました。それもあってか、最終的には選手が頑張ってくれて決勝までたどり着きましたが、最後は負けちゃった感じですね。

――RJCは出場していた中堅チームのレベルがぐっと上がった大会だと感じましたが、どうでしたか?

KYON ぐっとレベルが上がりましたね。ただ、もう僕らには通用しないと思います!

タイトなシーズン最後の大会は、CAGにとって難しい戦いとなった

――Fuji3コーチはいかがですか? 他チームの成長に関して。

Fuji3 RJLやRJCができた結果が早くも出たと感じました。これまでは、CAG、そしてFAV、GUTSあたりでタイトルを奪い合う雰囲気がありましたけど、それが崩れましたね。国内チームの成長も素晴らしいですが、最近は韓国チームもかなり気になっています。

――そうなんですか! 日頃のスクリムから感じますか、韓国チームのレベルアップは?

Fuji3 今のR6Sの環境が、ガンファイトに寄っている面があるので、韓国チームのスタイルに合ってきているんだと思います。

――現在のチーム状況はいかがですか? RJC後、3週間の休みを設けたと聞いていますが。

KYON 休暇後のスクリムは、非常にいい手応えを感じています。リフレッシュできて、選手に元気が戻ってきました。

Fuji3 先程も触れたとおり、ステージ3から環境が変わってきています。ステージ3から攻撃が有利になり、ステージ2まで防衛が得意だったチームが苦戦している状況です。CAGもこの点に対応しないといけないんですが、今は調整期間をしっかり取れている。新しい環境に対応する準備も進められているので、今後も期待してほしいですね。

――最後に、2022年の目標を教えてください。

KYON RJL、無敗2連覇です。世界大会においては、グループステージ突破が最低目標。もちろんどの大会でも優勝を目指すのがプロなので世界大会でも優勝を狙っていきますが、まずはグループステージ突破かなと。

Fuji3 今年は世界大会のグループステージ突破を達成したいですね。ただ、その舞台に立つために1月のS.I. 2022のクローズド予選を勝ち抜きたい。メタの変化にしっかりと対応し、APAC、RJL、世界大会と結果を残していきたいと考えています。実際、G2 EsportsやNatus Vincere(NAVI)など、CAGと似ていると思っていたチームが勝てなくなっています。CAGも新しい環境にしっかりと対応する必要があります。

――KYONさん、Fuji3コーチ、この度はお忙しいところ、インタビューにご協力いただき、ありがとうございました!

有言実行!CAG、再び世界へ

日本競技シーンの先頭をひた走る彼らが、タイトな2021年をくぐり抜けたことで、またひとつ成長したことは間違いないでしょう。今年は、日本のCAGではなく、世界のCAGとして輝く年かもしれません。

2021年12月にインタビューを実施した後、CAGはS.I. 2022出場を懸けた予選に挑みました。

結果は多くのファンがご存知のとおり、圧倒的なパフォーマンスで出場を決定。APAC最後の出場枠を見事勝ち取りました。まさに有言実行。CAGが、いよいよ世界で本格的に活躍する時が来たのかもしれません。期待しましょう!

CAGがS.I. 2022を決めた試合はこちら

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ぜひ、興味が湧いた方は「競技としてのR6Sの世界」を一度覗いてみてください。