ぷよぷよの土地に夢の家を建てる

Tom (ヨダソウマ選手と言えば)ドリームハウス理論という一大理論がありますね。

ヨダソウマ 5年前、6年前くらいの話になりますが......。

当時は漠然と「中盤戦の対応をしよう」「相手の攻撃をはじき返そう」というトレンドがありました。しかし、その戦術について詳しく言語化されたものはあまり無かったので、中盤戦での勝敗の差は何か、自分で研究することにしました。

そこで、連鎖を編み物やドミノ倒しみたいにプラス1、プラス1と順番に組んでしまうと、中盤戦で他の手札がない一辺倒な戦いになり、不本意に本線を打たされて負けがちになる。でも、うまい人は、連鎖のパーツを盤面のあちこちに分けて組んでいる。それらが数手で合体して一気に大連鎖に変身していることに気づいたのです。

うれしさでテンションあげて、書いたものを「ドリームハウス理論」って命名してブログに書きました(現在は非公開)。

対談するTom選手(左)とヨダソウマ選手

Tom 横6マス×縦12マスの「ぷよぷよ」の土地に、夢の家、つまり「ドリームハウス」を建築しようという理論ですね。「夢の家を建てよう!」となった時には、じゃあまず柱を建てて、はりを設けて……という考え方にはならないと思うんですよ。

どんな家を作りたいかの大きな夢を描いた設計図があって、その設計図に沿ってここにキッチン、ここにリビング、ここにはベッドルームって配置していって最後に完成するじゃないですか。有機的な「ドリームハウス」が。

ヨダソウマ 部屋と同じく「ぷよぷよ」のフィールドは有限です。プラス1の考えで連鎖の頭だけを増やしていくと、全体のスペースを考えずに手当たり次第に家具を敷き詰めていく時と同様に、絶対最後に必要な「ぷよ」が置けなくなる。「あれ? 冷蔵庫が置けない! サイズが合ってない!」って。限られたスペースだからこそ、連鎖パーツのサイズをそれぞれ考えた上で配置するほうが連鎖を合体するにしても、結果的に大きい連鎖が組めるというわけです。

Tom フィールドを効率良く使おう、ということですね。「ドリームハウス理論」とは他のプレイヤーは言わないですが、現代「対戦ぷよ」の根底には、「ドリームハウス理論」は浸透していますよ。

激震、そしてムーブメントとなった「弥生時代」

ヨダソウマ選手(右)と戦術論を交わすTom選手

ヨダソウマ Tomさんといえば、2015、2016年ごろに提唱されていた「弥生時代」ですよね。

「弥生時代」はそれ自体はもっと昔から存在していた「土台」の戦術です。しかし、川崎市の鹿島田にあったゲームセンターで「『弥生時代』は最強だから」とTomさんが言い出して、実際に組み初めてから急に結果を残すようになった。「本当に強いのではないか!?」って話題になりました。

さらに、そのときTomさんは「『弥生時代』は、『弥生時代』及びその他の土台」という謎の名言を残しています。「弥生時代」とは、フィールド下2段に横3連結を4つ敷き詰めた土台を意味しますが、一見、全くそうでない形も「弥生時代だ」と言っていて、その辺のことはいまだに分かっていません。今回、ぜひその真意を聞かせてください。

Tom 「弥生時代」は横3連結が並んでいるので、上から崩しやすい形です。2015年ごろによく組んでいて、本当にすごく強かったんですよ。

でも、組むのが難しくて、きれいに並べるには配色を選びます。狙って組んでも、「純正 弥生時代」を組めるのは、よくて4試合に1回とか。残りの3試合は「GTR」とか「サブマリン」とか、他のメジャー土台になってしまいがちです。

ただ、「弥生時代」のメリットを目指して配置していけば、結果的に「純正 弥生時代」にならなかったとしても、その手順によりアドバンテージは染み込んでいるはずです。なので、思想と手順があれば、結果的には一見違う形でもメリットを享受できる。つまり、それは「弥生時代」である、というのが「『弥生時代』は『弥生時代』及びその他の土台」ということの意味ですね。

この考えは、「ぷよ界」に激震が走り、2016年ごろは「ムーブメント」になりました。

左側のプレイヤーの下2段のように、横に3つのぷよが4個ある土台を「弥生時代」と呼ぶ

ヨダソウマ なんか、いい話みたいですね(笑)。「弥生時代」を目指して組んで出来上がった形は、ニの矢三の矢の攻めが自然と発生しやすいですよね。

Tom 「弥生時代」は攻めたときに強いんですよ。下2段を敷き詰めて、「ぷよ」が平らに組まれているので地盤がしっかりしています。その上に連鎖を構築するので、中盤戦の連鎖構築がしやすいんですよね。

上から崩しやすく、中盤戦を戦う中で、最後のダメ押しが欲しい時に「弥生時代」を崩して3連鎖ダブルをしかけられるというアドバンテージがあります。

ヨダソウマ 最初ネタだと思っていたのですが、実際強かった。文字通り当時は、「弥生『時代』」でした。信じちゃいましたよね、このTomさんの名言を。

新たな「時代」の到来

Tom 「弥生時代」が強かったのは、「(アーケード版)ぷよぷよ通」の頃でしたが、時代が変わって、今は「GTR」の全盛期が来ています。

実は、ツモパターンはタイトルによって異なっていて、「ぷよぷよeスポーツ」は2016年12月に発売された「ぷよぷよクロニクル」とおそらく一緒なのではないかと思われます。

それまでは、最初の3手は必ず3色まで、4手目以降で4色目が出てくるので全消しが取りやすく、それも「弥生時代」のメリットの一つでした。しかし、「ぷよぷよクロニクル」以降では最初から4色で落ちてきます。そのメリットが少しそがれてしまって、最初から大連鎖を狙える「GTR」のほうが良い、となって、切り替わっていきましたね。

【インタビュー後記】

世代の異なる理論派プレイヤー2人に濃密な戦術論を語っていただきました。このインタビューは昨年12月の「ぷよぷよチャンピオンシップ SEASON4 STAGE3」にあわせて行いましたが、共鳴し合う2人の話は当初の予定時間を超えてから最高潮を迎えました。時代のスタンダードでもあった「弥生時代」と上級者に浸透している「ドリームハウス理論」。いずれも現在の技術の礎となっていると思います。数々の猛者たちが技術を磨きあい、受け継ぎ、進化させてきた「ぷよぷよ」30年の歴史に鳥肌が立ちました。