2021年秋に「マジック:ザ・ギャザリング(MTG)」(@mtgjp)のデジタル版「MTGアリーナ」(@MTGArenaJP)を舞台に開かれた「第27回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」で優勝し、世界チャンピオンの座に輝いたのは日本の高橋優太選手(@Vendilion)でした。大舞台の裏側にあった心境や準備、そして専業プロプレイヤーとしての心構えを聞きました。(インタビュー前編はこちら

世界を制しても、最強プレイヤーになったとは思わない

マジック:ザ・ギャザリングについて語る高橋優太さん

――世界選手権で優勝した当時の心境はいかがでしたか?

世界チャンピオンという念願が達成されて、今までに感じたことのないような大きな達成感を感じました。同時に、少しの喪失感もありましたね。長きにわたって追い求めてきた目標を失ってしまったような感覚があります。

――大会に向けてはどのように準備されていたのですか?

日本のトッププレイヤーたちで集まって、色々なデッキを互いに使いながらひたすら対戦してデータ集めをしていました。大会の直前は毎日、一日12時間ほど使って練習と研究をしていましたね。

MTGにおいては、データを収集することが非常に重要になってきます。この状況でこのカードをプレイした場合の勝率は何%、というようなデータを持っていると、本番で迷わずに最も勝率の高い選択肢を選ぶことができます。どれだけ多くの組み合わせに対してデータを持っているか、ということが勝敗に関わってくるんです。

――運要素が勝敗を左右することもあるMTGにおいて、データが重要なんですね。

MTGにおいて運は勝敗の4割を左右すると思っています。しかしこの4割は、練習と研究によって少なくすることができるんです。運のせいで負けてしまったと思った時は、同時に上達のチャンスであると思っています。他にどのような選択肢があったかを見返すことでより良いプレイングが見えてくるはずなので、研究は欠かせません。

反響の大きかった世界選手権優勝

滑らかにカードを動かす高橋優太さん

――ドラフト3連敗スタートからスタンダード11連勝という戦績で優勝されましたが、これについてはどう感じていますか?

ドラフトで3連敗してしまった時は、これが今の自分の実力なのか、と落ち込みましたが、そのおかげで勝利に執着せず、リラックスしてスタンダードに臨むことができました。あとは楽しんで帰るだけだ、というような心境でいたら、気づいたら勝ち進んでいたという感じです。

スタンダード11連勝というのは狙ってできるものではなくて、自分の大会戦歴の中でも初めてのことです。恐らく世界選手権史上初の快挙だと思うので、自分でも驚いています。

――大会優勝後、周りからの反響はありましたか?

世界チャンピオンというのは誰にでも分かりやすい称号なので、やはり反響は大きいですね。親戚のおばさんからも連絡が来て、うれしい半面、泣き顔を見られてしまったことを恥ずかしくも思います(笑)。

連覇を狙いたい

世界大会での優勝を振り返る高橋優太さん

――今後の大会での目標はありますか?

やはり2連覇ですね。今回自分は世界選手権を優勝することができましたが、それでも世界最強のMTGプレイヤーになったとは思っていません。一度大きな大会を優勝するよりも、継続して結果を残し続けることの方がずっと難しいんですよね。

格闘ゲームプレイヤーのときど選手の言葉に「論理は結局、情熱にかなわない」というものがあります。自分はこの言葉に大いに共感していて、どれだけの情熱をMTGに傾けられるか、という点が今後の目標だと思っています。

30歳を過ぎてくると、周りにはゲームを止めたり、家庭を持ったりする人が増えてきます。そういう人を見ているとうらやましいと思う気持ちも芽生えるのですが、一番好きなMTGをこれからも続けていくために、情熱は絶やさずにいたいですね。

――専業プロとしては、どのような活動をしているのでしょうか?

大会出場をメインに、スポンサードして頂いているカードラッシュで記事の連載も行っています。選手としての活動はもちろんのこと、MTGを広める立場としての仕事にもたくさん携わっていて、公式動画への出演なども行っています。

座学も上達のポイント

世界大会で優勝した高橋優太さんの手さばき

――カードゲームをプレイしない方に向けて、MTGをどのように勧めますか?

MTGの一番の特徴は自由度の高さですね。5つある色をどのように組み合わせて60枚のデッキを構築するか、それが全てプレイヤーに委ねられているので、可能性は無限に存在します。始めのうちはどんなデッキを組んだらいいか分からないかもしれませんが、その難しさも含めて楽しんで欲しいです。

それから、自分が個人的に魅力に思っているのは、インスタントの応酬です。MTGは相手のターン中にインスタントというカードを使って相手の動きを妨害することができ、またそのインスタントに対してもインスタントを打つことができるので、その駆け引きが非常に面白い部分です。

ゲーム版の「MTGアリーナ」が基本プレイ無料で、スマホでも遊べるようになったので、まずはアリーナをダウンロードしてみてほしいですね。

――MTG初心者の方に向けて、上達のアドバイスはありますか?

MTGは歴史が長いぶん文献や記事が多くあるので、それらをうまく活用してほしいです。例えば「相手のアタッカーをどのクリーチャーでブロックするか」という考え方などは今も昔も共通です。基本的な考え方を座学を通して身に付けることで、格段に勝率が上がると思います。自分もカードラッシュにたくさん記事を寄稿していますので、ぜひ一度読んでみてください。

もちろん座学ばかりだと飽きてしまうと思いますが、1日30分でもいいので、ゲームを始める前に座学の時間を設けてみてほしいです。学んだことを実践しようという気持ちで試合をすると、普通にゲームをプレイするよりも、今までになかった気づきや学びがあると思います。

――最後に、高橋選手にとってMTGとは?

「全クリできないゲーム」ですね。どこまでも上達できるのでレベルに上限がないですし、カードの種類も膨大なのでアイテムフルコンプもなかなかできません。

自分はこれから一生、ずっとMTGを止めることはないと思います。年齢を重ねていって関わり方が変わることはあるかもしれませんが、MTGを通して出会ったつながりを大切しながら、MTGにずっと関わり続けていきたいです。それができるくらい、MTGは奥が深いゲームだと思っています。

【略歴】

たかはしゆうた 新潟県出身。カードゲームの元祖、Magic the Gathering(MTG)のプロプレイヤー。過去にカードショップで価格設定を担当し、2万種類を超える膨大なカード知識を持つ。現在はカードラッシュ所属プロ。 2021年世界選手権優勝。
◆高橋優太選手が書いた記事リスト
https://cardrush-media.com/mtg_player_yuutatakahashi/