文部科学省が示した学習指導要領で、2020年度から小学校でプログラミング教育が必修化されました。中学校でも、その内容を発展させる内容が技術・家庭科の技術分野「情報に関する技術」で扱われています。高校では、2022年度から情報科での学習が予定されています。「1人1台」の端末配備をめざす「GIGAスクール構想」を進める政府の方針もあり、プログラミング教育が注目を集めています。

ぷよぷよプログラミング」は「ぷよぷよ」を展開するセガが開発した学習教材です。ソースコードを正確に入力していくことで、「ぷよ」が実際に動き、ゲームを完成させることを体験できます。入力量に応じて基礎、初級、中級、上級とレベルが分かれており、HTMLやJavaScriptでプログラミングを学べることが特徴です。

3月に多摩中学校で実施したプログラミング授業とeスポーツ大会の様子

多摩市立多摩中学校では3月、当時の2年生を対象に、「ぷよぷよ」を展開するセガによる出張授業がありました。プロプレイヤーのぴぽにあ選手ヨダソウマ選手が講師として出向き、午前中に「ぷよぷよプログラミング」を使った授業、午後に「ぷよぷよeスポーツ」の大会という構成でした。

学校側で中心となった一人が学年主任で技術科を担当する川上晃男教諭です。中学校では技術科でプログラミングを扱うことから、普段の授業で準備的な学習を進め、この日に臨みました。川上教諭に当時を振り返りながら、授業の意義について聞きました。

ゲームの裏側で動くプログラミングを実感

多摩中学校の川上晃男教諭

――川上先生の授業では、プログラミングをどのように学習していますか?
ブロックタイプと言われるブラウザベースのプログラミング教材を使います。ブロックを組み合わせていくもので、内部だけで見られるラインのようなSNSを作ったり、生徒同士でファイルを交換したりすることを目標にプログラミングをしていくものなどです。ただ、日常的に触れるものではないので、手順の習得は生徒によって差があります。

――今回の取り組みにはどのようなポイントがあったと思いますか?
普段あまり質問をしない生徒も本当によく質問をして、意欲的に向き合っていたことが、最も印象に残っています。入力する「Config」という言葉をとってみても、内容が難しいかな、と感じましたが、くらいついていました。「『ぷよ』を動かしたい」という気持ちがあったのではないかと思います。

そして、実際に自分が遊ぶゲームの裏側でプログラムが動いていること実感、体験したことが、生徒にとっては驚きだったでしょう。自分がプログラムを入れることで、「ぷよ」が落ちて、回転するというステップアップの過程はとても面白かったのではないかと思います。

――授業全体を通してみると、eスポーツ大会もありました。
自分が組んだプログラムが色々なものにつながっていくことを知ったのは良い体験だったのではないでしょうか。中学生は体験によって成長します。自分が体験したことは、次に自分が活動する指針になります。自分なりの成果が出せたことは次への意欲につながっていくと考えます。ゲームがプログラムというモノを見る機会でもあり、実際に自分で打ち込んで動かすという機会でもあり、そうした体験がすごく大事だと思います。

導入の学習で活用を

iPadを使ってプログラミングの授業に臨む生徒たち

――学校の授業の教材にゲームを取り入れることはどう感じましたか?
まず学校では、思考力や考える力を育てたいと考えています。生徒が興味を持ったゲームを使って目的に向かってプログラミングをすることで、その力を身に付けることができ、より意欲的に学習に取り組めるのではないかと思います。

――他の学校に「ぷよぷよプログラミング」を勧めるとしたら、どのような活用法が考えられますか?
これからプログラミングを始める導入部で使うと良いと感じました。いま、我々の生活で、家電製品でもコンピューターでもプログラムで動いていないものはないというぐらい、プログラミングが使われています。

でも、どうやって動いているのだろうということはよく分からない。生活の中ではコンピューターは身近な存在だけど、実際に中身であるプログラムに触れる機会はないのです。でも、実際にぷよぷよのゲームの中身が見えるので、プログラムを組んで動かしてみよう、という導入に良いと感じました。実際に目の前に見せられて、自分が入力することによって初めてこうなっているんだ、とわかるんですよ

授業のバリエーションに課題

多摩市教委の山本勝敏さん

プログラミング教育を進める行政側からはどう見ているのでしょうか。小学校教諭を経て、多摩市教育委員会で教育部参事を務める山本勝敏・統括指導主事事務取扱に聞きました。

――プログラミングは新しい学習指導要領にどのように盛りこまれていますか。
小学校、中学校、高校でそれぞれ位置づけられています。小学校は2020年度からプログラミング教育が必修となりました。中学校は2021年度からプログラミングに関する学習内容がより充実しました。

これまでも技術・家庭科の技術分野で計測・制御をする処理をしたプログラミングが行われていました。新しい学習指導要領では、小学校も含めて「情報活用能力」が学習に基盤となります。中学校では双方向性のあるコンテンツのプログラミングが入りました。あるプログラムに何かを入力をすると、それに対して反応が返ってくる、というコンテンツです。

高校は2022年度から新たな科目として「情報Ⅰ」と「情報Ⅱ」が全面実施されます。「情報Ⅰ」は必修科目でプログラミングにも触れ、「情報Ⅱ」は選択科目でデータサイエンスなど、より高度な内容を学びます。

――プログラミング授業を展開する上で現場の課題はありますか?
多摩市に市立高校はないので、小中学校について説明します。

小学校では「技術科」がなく、プログラミングを教えることもありませんでしたので、「どうやって教えたらいいのだろうか?」と指導に不安を抱えている教員は多いと思います。また、プログラミングは「教科」ではないのです。他の教科と関連づけて、プログラミング教育の視点を採り入れていくことになります。学習指導要領では算数や理科、総合的な学習の時間では例示がありますが、それ以外の教科でプログラミングをどう実践していくのか、そのバリエーションが少ないところが小学校の課題です。

中学校は課題解決のプロセスを踏みながらプログラミングに取り組むことがとても大事になります。「教える」というよりは生徒たちが自ら目的をもって取り組み、プログラムしたものを実際に試し、そして修正し、最終的にはプログラミングで楽しさ、喜び、達成感を味わえるようにする授業を行う工夫が必要になります。

――「ぷよぷよプログラミング」を使った多摩市の授業を見学してどう感じましたか?
まず教室に入った時の驚きがありました。普段の学校では見られないような授業でした。生徒がゲームを題材としながらも学んでいることが非常に新鮮でした。そして、実際に自分たちがプログラミングで学んだことを基にしながら、実際に対戦する。これまで私も様々な授業を見てきましたが、ここまでのプログラミングの授業を見ることはありませんでした。

子どもたちが何かを作って終わりではなく、実際に動かしてみる。これはまさに実社会であれば、自分の生活を豊かにしていくという発想につながっていくのだろうと思いました。教育にゲームの要素を取り入れていくメリットを実感できました。

実生活にあるゲームで主体的な学びを

スクリーンを前にぷよぷよeスポーツ大会が開かれた

――「ぷよぷよプログラミング」は教育現場が抱える課題の解決に役立ちますか?
一つは、専門性を持つ外部の企業と連携をしながら授業を進めていくことが教える側の指導力を補って、教育内容を充実していくためには非常に有効だと思います。いま学校教育を進めていく中で、子どもの学びや成長を支えていくのは学校だけではないと捉えています。それが直接的でなくても、子どもたちに関わっている大人はたくさんいます。教育委員会では、子どもたちの成長を支える一緒の仲間として、外部の方の力も借りながら、授業を充実させて子どもの学びを支えていきたいと考えています。

また、ゲーム自体が双方向性のあるコンテンツです。自分たちから働きかけをして、そしてゲーム内のキャラクターが動いて、クリアをして達成する、というものです。

また、「ぷよぷよ」では、落ちてくるスピードを変えてゲームをどう面白くするかという課題意識を持ちながら、プログラムを変えて、できあがったものを友だちとも楽しんでプレイできます。子ども同士のコミュニケーションも生まれますし、課題解決能力も身につくと考えています。「友だちともっと楽しくゲームをするには」「もっとゲームを面白くするには」という課題を持てば、プログラムを修正したり、変えたりすることができます。

このように「ぷよぷよプログラミング」には、子どもたちの主体的な学びや協働的な学びを促す要素があるのではないかと考えています。

――ゲームを軸に、様々な可能性が考えられますね。
子どもたちが主体的に学んでいくことが大事です。実生活につながるものがあると、子どもたちは勉強して良かったな、と思います。「ぷよぷよ」ではなくても、家で遊ぶゲームもプログラムが色々と工夫されているんだな、難易度が上がっていくとプログラムを変えているんだな、と見方も変わると思います。(センサーで制御するプログラミング教育用)教材の車を作って動かしただけでは、実生活につながらないです。実生活の中にあるゲームを使って、自分がプログラミングを体験して、動かして、楽しむ、ということは良いことだと思います。

ただ、中には「学校でゲーム?」と疑問を持つ人もいると思います。プログラミングを題材にしながら、学びにつながる課題意識をどのように持たせるかが今後のポイントであり、企業など外部と連携して学校で考えていくことが大切だと思います。

(GAMEクロス編集長・金子元希)

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