音楽ゲームライターの市村圭です。10月2日に閉幕したコナミアミューズメントの音楽ゲーム×eスポーツのリーグ戦BEMANI PRO LEAGUE (BPL 2021)。そのファイナルステージで繰り広げられた白熱の試合については、前回記事で濃密にリポートしました。

ところで、ファイナルステージの試合前後には、BPL 2021の会場「esports 銀座 studio」を舞台としたライブアクトが放映されました。このライブについて、音楽ゲームの歴史を踏まえた視点、また純粋に音楽的な観点からBPL 2021の放送全体を一種の音楽番組とみなす切り口で、詳細にリポートさせて頂きたく筆をとりました。

細かすぎる音楽ゲーム語りの枠を飛び越えた"細かすぎるeスポーツ×音楽ライブ語り"。どうぞ腰を据えてご堪能下さい。なおこれらのライブは、BPL 2021ファイナルステージのアーカイブにて無償で視聴可能です。

オープニングはgaQdanによるオーケストラ・ライブ

BEMANI Sound Team “DJ YOSHITAKA”によるライブの開演風景

試合前のオープニングでライブアクトを担ったのは、コナミアミューズメント社の西村宜隆執行役員としてBPLのエグゼクティブ・プロデューサーを務めるBEMANI Sound Team ”DJ YOSHITAKA”。「beatmania IIDX 11 IIDX RED」(2004)でコンポーザー・サウンドデザイナーとしてデビュー、以来BEMANI各機種の発展などを通して陰に陽にアーケード音楽ゲームそのものの隆盛にも大いに貢献してきた、近代音楽ゲーム文化のキーパーソンの一人だ。

BEMANI Sound Team "DJ YOSHITAKA"の名曲群を演奏

演奏には、録音専門オーケストラを標榜するgaQdanから杉原佳恵(ヴァイオリン)、川崎妃奈子(同)、斎藤千穂(ヴィオラ)、西條貴登(チェロ)が参加。gaQdanを擁する音楽プロダクションongaq設立者にして代表TaQはかつて「beatmania IIDX 2nd style」(1999)でデビューした経歴を持ち、BPL 2021本戦でも「era (nostalmix)」など彼の手による楽曲が選手らによってピックアップされ、最新eスポーツの現場においてなお熱戦の舞台を提供している。

BEMANI Sound Team “DJ YOSHITAKA”によるトランスコア楽曲のオーケストラアレンジを会場に響かせるgaQdanメンバー

アクトではBEMANI Sound Team ”DJ YOSHITAKAの代表曲、そしてBEMANIの代表曲と評して過言ではない「FLOWER」で口火を切ると、彼が音楽ゲーム「REFLEC BEAT」「jubeat」を中心に展開してきたトランスコアシリーズ「JOMANDA」「VALLIS-NERIA」「Lisa-RICCIA」のオーケストラ編曲版を次々とドロップ。ストリングスを本格導入したアレンジでありながら「beatmania IIDX」の本分であるクラブミュージックの文脈をも内包する、”踊れるロック”ならぬ踊れるオーケストラ”な選曲/編曲と演奏に、コメント欄の観衆も大いに湧いた。

gaQdanによる演奏

編曲は最新企画BEMANI SYMPHONYとのコラボ

楽曲アレンジを手掛けたのは、やはりongaqと関わりの深いコンポーザーonoken。「pop’n music 17 THE MOVIE」(2009)を皮切りにBEMANIシリーズに多数の楽曲を提供する他、2002年ごろの早期から音楽ゲームにアートコア(緻密で叙情的なメロディラインを持つドラムンベースの派生ジャンル)と後に称されるサウンドを導入した立役者の一人として知られる。

なおこれらのアレンジは、2021年にローンチされたプロジェクトBEMANI SYMPHONYのために制作されたもの。音盤「BEMANI SYMPHONY ORIGINAL SOUNDTRACK」が9月に発売されたほか、2022年初頭にはプロジェクト第2弾としてオンラインコンサートの開催が予告されている。

選手の演奏もまた音楽ライブだ

BPL 2021ファイナルステージ副将戦の“ライブ演奏”

BPLは音楽とeスポーツの融合”を掲げる。これは単に、eスポーツ(ゲーム競技)と音楽ライブが別々に組み込まれたイベントという狭義のみを表現しない。ゲーム競技自体もまた音楽ライブそのものである。

BPL 2021の競技タイトルである「beatmania IIDX」は、1980年代以降のテクノ、ハウス、ヒップホップといった音楽文化の発展を受けてロックフェスイベントなどでも一般的となった、打ち込み音源やサンプラーなどを用いてのDJライブ演奏を模した音楽ゲームだ。初代「beatmania」の開発者でありBEMANI最初のコンポーザーの一人でもあるHIROは、公式ムック誌「ビートマニア プレスミックス」(1999)の中で以下のように述べている。

「そのとき音楽の世界ではケミカルブラザーズやプロディジーなどの、ステージ上でサンプラーを操作したり、ターンテーブルを回したりというライブパフォーマンスと、打ち込みを融合したような音楽が流行っていまして。(中略)パフォーマンス的にもおもしろいということで、ゲームという形になるんじゃないかと思いました」

元は他作品向けにリリースされた本楽曲が「beatmania IIDX」に移植されたのは、リリースから13年を経た2013年のことだ

「nintendogs」「Miiverse」などで知られる水木潔が当初はオモチャ的なエレメカとして構想した企画に対して、HIROが提案し導入されたDJ演奏とクラブミュージックのゲーム”という要素。これを背景として選手による演奏の対象となる楽曲もまた、一曲一曲が音楽としての魅力に溢れ、またそれぞれの制作上あるいは音楽史的バックグラウンドを有するものだ。

楽曲「DAY DREAM」の背景

例えばファイナルステージ副将戦でKUREI選手が選曲した「DAY DREAM」。コンポーザーのMutsuhiko Izumiは、菅沼孝三らと組んだCHARISMA、小西健司とのユニットDADA、その発展形であるKENNEDYといったバンドでジャパニーズ・プログレッシブ・ロックのシーンにおいて1970年代から活動。

その後にコナミで「スナッチャー」などを経て参加した音楽ゲーム「GUITARFREAKS」「drummania」(現・「GITADORA」)に向けて2000年にリリースしたのが本曲だ。16分の17拍子とテンションの緩急を伴ってエレキギターを荒ぶらせる音楽ゲームのボス曲としてのプログレッシブ・ロック”の先駆けとなった記念碑的作品である。

次鋒戦で選手たちがプレーしたユニゾン演奏の風景

楽曲「真夏の花・真夏の夢」の背景

あるいは次鋒戦で演奏された「真夏の花・真夏の夢」。SMAP「Dear WOMAN」(2006)はじめJ-POP界で作編曲家として幅広く活動する平田祥一郎が「beatmania IIDX 9th style」(2003)に書き下ろした、気だるくも妖艶な大気をまとう極上のハウストラックだ。

平田が”演歌っぽいギリギリのところ”と表現するなまめかしい歌詞を見事に歌い上げたのはSana。初代「pop’n music」(1998)でのデビュー以来100曲近いコナミ音楽ゲーム楽曲に歌唱/作詞で貢献、2021年の機種合同イベント「BEMANI 2021真夏の歌合戦5番勝負」にも参戦。

感情的に、感傷的に、キュートにあるいはスマートに、20年以上にわたり珠玉の歌声と詩作の数々を紡いできた、BEMANIを代表するヴォーカリストの一人である。

「真夏の花・真夏の夢」はANSA選手(ROUND1)による選曲であった

20年超の歴史、1400曲超のアーカイブが構成する膨大なジュークボックスから、選手が試合を通して演奏を披露し、あるいはRESIDENT DJのkors kが的確な選曲によってピックアップする楽曲群。ざっくばらんに表現すれば”冒頭から終了まで途切れることなく音楽に満ちている”音楽番組としてBPL 2021が成立していたのは、「beatmania IIDX」という稀代のゲームがたたえる、そのような機能と音楽史に基づくものだ。

BEMANIを支えるコンポーザーによるエンディングライブ

エンディングライブ冒頭、kors kとKANASAによるアクト

BPL 2021のクロージングとなるエンディングライブ。ここではBEMANIに深く関わる社内外アーティストが連続的にアクトを繰り広げ、前後のアーティスト間の共作曲をセットリストに組み入れる趣向が試みられた。

冒頭はkors kのステージで、「創聖のアクエリオン」歌唱で名高いAKINOも所属する4人兄妹の音楽ユニットbless 4からヴォーカリストKANASAが参加。kors kとBEMANI Sound Team ”HuΣeR”の合作であり、BPL 2021のテーマソングとして約4カ月にわたる熱戦を彩った「Winner’s Proof ft. KANASA from bless 4」のアクトを披露した。

Ryu☆の「Mare Nectaris」アクト。楽曲の変名義である「神楽」にちなんでか、狐面を着用する演出を見せる

Ryu☆~BEMANI Sound Team "Sota Fujimori"

続いては「beatmania IIDX 4th style」(2000)でkors kと同時デビューを果たした経歴を持つRyu☆が現れ、The 4th名義の共作曲「NZM」を挟んで「Mare Nectaris」を披露。彼が”BPM256の32分音符アルペジオ”をベンチマークとしてプレイヤーの限界を問うたことで顕現した、荘厳なメロディとノイジーで強烈なビートからなる実験音楽的ハードコアだ。

仮面を外したRyu☆のもとに駆け寄ったのはかつて「beatmania IIDX 13 DistorteD CS」(2007)に超高速トランスコア「Go Beyond!!」を彼と合作提供したBEMANI Sound Team ”Sota Fujimori"。その直接の続編として「beatmania IIDX 24 SINOBUZ」(2016)に制作した「Go Ahead!!」をesports 銀座 studioにドロップした。

Ryu☆とBEMANI Sound Team “Sota Fujimori”の共演シーン

BEMANI Sound Team ”Sota Fujimori"はシャッフルダンスを題材とした音楽ゲーム「DANCERUSH STARDOM」向けにリリースした「Love 2 Shuffle」をダンサーと共に披露し会場をダンスフロアに変貌させる。

BEMANI Sound Team “Sota Fujimori”とBEMANI Sound Team “猫叉Master”。シャッフルダンス向けに制作された楽曲でスタジオはダンスフロアと化す

BEMANI Sound Teamメンバーが紡ぐ歴史

次いで彼はBEMANI Sound Team ”猫叉Master”がかつてBEMANIデビュー曲として「pop’n music 10 CS」(2004)に提供した楽曲のリミックス「BEYOND THE EARTH (STARDOM Remix)」を選曲。

DJブースを引き継いだBEMANI Sound Team ”猫叉Master”が「Symmetry」に次いで演奏したのが、「beatmania IIDX 20 tricoro」(2012)などで共にサウンドディレクターを務め「beatmania IIDX」の音楽を牽引してきたBEMANI Sound Team ”L.E.D.”との合作「GAIA」だ。

BEMANI Sound Team “猫叉Master”とBEMANI Sound Team “L.E.D.”のアクト

2013年の音楽ゲーム機種連動企画「私立BEMANI学園」でリリースされたハードな高速EDMの奔流を浴びてコメント欄が興奮に湧くと、BEMANI Sound Team ”L.E.D.”はテンションの切れ目もないまま「KILL EACH OTHER」、そしてBPL 2021でチームGAME PANICにイメージミュージック提供を行ったYuta Imaiとの合作曲「THE PEERLESS UNDER HEAVEN」をドロップした。

BEMANI Sound Team “L.E.D.”とBEMANI Sound Team “DJ YOSHITAKA”の共演

そしてアクトは最高潮へ

ここでDJを引き継いだのが、オープニングでもアクトを務めたBEMANI Sound Team ”DJ YOSHITAKA”。「THE PEERLESS UNDER HEAVEN」でもたらされた高揚のままに、「beatmania IIDX」シリーズのアンセムである「GOLD RUSH」を投入。「IIDX GOLD!」の歓声を繰り返し煽り立てるイタズラを交えながら、楽曲に合わせてシリーズバージョンをコール。さらに「pop'n music 20 fantasia」(2011)提供曲であり「beatmania IIDX」未収録の歌モノ高速ダンスチューン「MANA」へと意外な繋ぎを魅せる。

ここからの流れはとりわけ感動を引き起こすものであった。BEMANI Sound Team ”DJ YOSHITAKA”の続いての楽曲はBEMANI Sound Team ”dj TAKA”をステージ上に迎えての「Triple Cross」。これは前出のコナミ音楽ゲーム連動企画「BEMANI 2021真夏の歌合戦5番勝負」の一環としてリリースされた最新曲。

そして初代作品への提供曲「GRADIUSIC CYBER」以来「beatmania IIDX」へ筆舌に尽くしがたい貢献を続け”キング”と敬称されるBEMANI Sound Team ”dj TAKA”、「beatmania IIDX」や「DANCERUSH STARDOM」などBEMANI各作品で目覚ましい活躍を見せる新鋭のBEMANI Sound Team ”SYUNN“と組んで、BEMANI Sound Team ”DJ YOSHITAKA”が制作した完全新曲でもある。

BEMANI Sound Team “DJ YOSHITAKA”とBEMANI Sound Team “dj TAKA”によるステージ

ラストに向けて繋がれたのは、BEMANI PRO LEAGUE ZEROのファイナルステージ副将戦でもG*選手(TEAM Ryu☆)とANSA選手(TEAM MIRIN)によって連続選曲され話題となった、2人の合作にしてトランスコア/ハッピーハードコアの兄弟作「Elemental Creation」「Triple Counter」だ。

「Triple Counter」ではエンディングライブを担当したメンバーが招かれフロアに総出演。BEMANI発の音楽レーベルbeatnation Recordsが一堂に会する感涙の演出で、BEMANI PRO LEAGUE 2021エンディングライブは幕を下ろした。

beatnation Records総出演となったセットリストのトリ「Triple Counter」

FINAL STAGE LIVE ACTセットリスト

オープニング
gaQdan & BEMANI Sound Team "DJ YOSHITAKA"
1. FLOWER (Orchestra Arr.) / DJ YOSHITAKA
2. JOMANDA・VALLIS-NERIA・Lisa-RICCIA (Orchestra Arr.) スペシャルメドレー / DJ YOSHITAKA

エンディング
kors k & KANASA from bless 4
1. Winner’s Proof ft. KANASA from bless 4 / BEMANI Sound Team ”HuΣeR” & kors k

kors k & Ryu☆
2. NZM / The 4th

Ryu☆
3. Mare Nectaris / 神楽

Ryu☆ & BEMANI Sound Team ”Sota Fujimori”
4. Go Ahead!! / Ryu☆ vs Sota

BEMANI Sound Team ”Sota Fujimori”
5. Love 2 Shuffle / BEMANI Sound Team ”Sota F.” feat. Starbitz

BEMANI Sound Team ”Sota Fujimori” & BEMANI Sound Team ”猫叉Master”
6. BEYOND THE EARTH (STARDOM Remix) / BEMANI Sound Team ”Sota F.”

BEMANI Sound Team ”猫叉Master”
7. Symmetry / 猫叉Master

BEMANI Sound Team ”猫叉Master” & BEMANI Sound Team ”L.E.D.”
8. GAIA / 猫叉L.E.D.Master+

BEMANI Sound Team ”L.E.D.”
9. KILL EACH OTHER / BEMANI Sound Team ”L.E.D. VS. L.E.D.-G”

BEMANI Sound Team ”L.E.D.” & BEMANI Sound Team ”DJ YOSHITAKA”
10. THE PEERLESS UNDER HEAVEN / Yuta Imai Vs. BEMANI Sound Team "LED-G"

BEMANI Sound Team ”DJ YOSHITAKA”
11. GOLD RUSH / DJ YOSHITAKA-G feat.Michael a la mode
12. MANA / DJ YOSHITAKA

BEMANI Sound Team ”DJ YOSHITAKA” & BEMANI Sound Team ”dj TAKA”
13. Triple Cross / BEMANI Sound Team "dj TAKA & DJ YOSHITAKA & SYUNN"
14. Elemental Creation / dj TAKA meets DJ YOSHITAKA
15. Triple Counter / DJ YOSHITAKA meets dj TAKA

【BEMANI PRO LEAGUE 2021】FINAL STAGE 決勝大会 APINA VRAMeS vs ROUND1