「リーグ・オブ・レジェンド(LoL)」の国際大会「2021 League of Legends World Championship」(Worlds 2021)がアイスランド・レイキャビクで10~11月に1カ月にわたり開かれました。試合を伝える日本語配信で実況を務めたのは、LoLの国内リーグ「League of Legends Japan League」(LJL)の公式キャスターeyesさん(@eyes1015)。

視聴者にはおなじみの存在ですが、キャスターとしての転機や実況前の準備とは? 今回の企画では、プロチーム「Rascal Jester」(RJ)に練習生として参加しながらタレント活動も行う大友美有さんが、eyesさんにキャスターの裏側を聞きました。(対談前編はこちら

綿密な試合前のルーティン

eyesさん

大友 LJLキャスターとして様々な大会に携わるeyesさんに聞きたいのですが、競技シーンに足を踏み込んだタイミングはいつ頃でしょうか?

eyes 競技シーンに興味を持ち始めたのはLoLのシーズン2ですね。ネットニュースで「シーズン2のWorldsが過去大会の賞金額を上回る」と書かれていて。そこで”競技シーンの実況”という仕事を正式に知りました。それまではニコニコ動画を中心にカスタムマッチやコミュニティー大会の実況を趣味で担当していたんですよ。

競技シーンへ本格的に関わり始めたタイミングはシーズン4です。株式会社三光がLJLを立ち上げる際、企業に所属するメインキャスターとして東京に出てきたんです。

大友 10年近く前から実況の経験を積まれてきたんですね。ではキャスターとして試合に臨む前の下準備やルーティンはありますか?

eyes 今回のWorlds 2021では、まずは4大リージョンの試合を国内予選からファイナルまですべてチェックしましたね。続いて自分の中で「このチームは〇〇選手が強い。あのチームは〇〇レーンの展開が鍵になりそう」……といった具合に印象づけを行い、Worldsの試合が始まる前に(解説の)Revol君(@krevol)に意見を聞いたりしていました。あとは「Leaguepedia」(LoLに特化した情報サイト)も一通り抑えてあります。

大友 具体的にどれぐらいの時間を準備に充てるのでしょうか?

eyes 今回はかなり時間をかけましたね。LJL 2021 Summer Splitが終わったのが9月5日。そこから9月30日ぐらいまで各リージョンの試合をずっと見続けました。本当に3~4週間はがっつり時間を取った。Worldsは特に下準備に時間がかかります。

大友 ほぼ1カ月間ですね!ちなみに国内大会も同じような作業量でしょうか?

eyes 国内大会に関しては、最近だとほとんど下調べはしていないですね。事前情報があり過ぎるとかえって伝え方が曖昧になってしまうから、逆に「この試合でどういった戦いを見せてくれるのか楽しみです!」という方向に話を持っていくようにしています。

その代わり、試合が終わって帰宅してからその日の全試合を見返すんですよ。各チームの戦いを眺めてから、先ほど説明した通りに自分のなかで印象づけを行います。

理論はない リアルスポーツ実況を手本に

Worlds 2021決勝の配信に臨むeyesさん(左から)とRevolさん

大友 大会や試合の種類によって準備の仕方を変えているんですね。具体的に実況をする上で心がけていることも気になります。

eyes これは実際にキャスターの方々へ教えているコツなんですが、僕は「解説者と会話をしながらストーリーを組み立てる」ことを意識しています。

例えばチームAとチームBがあるとしましょう。当たり前だけど、チームごとに勝ち筋ってそれぞれ異なってくるじゃないですか。だから両チームの勝ち筋(やりたいこと)を説明しつつ、試合のターニングポイントへ向かって彼らがどのような仕掛け方をするのか。その辺りを解説者と予測しながら実況しています。

大友 試合の勝敗を左右するポイントを意識しつつ、解説者の方と息を合わせているのでしょうか? すごく難しそうですね……。

eyes いえ、おそらくそこまで難しくないですよ。具体的な指標としては、チャンピオンのアイテム充実度やレベルアップ時のスキル振り分けも分かりやすいと思います。ルブランだったら「ソーサラーブーツとロストチャプターを買ったタイミングで試合を動かせる」とか。そういった積み重ねを一個ずつ押さえていくと、両チームの勝ち筋がだんだんと見えてくる。その予想図を脳内で描いているだけです。

大友 では自分なりのキャスター理論を習得するまでに大変だった瞬間はありますか?

eyes 本当に大変でしたよ。そもそも理論なんて最初は無かったから、とりあえず目の前で起こった出来事をただしゃべるだけ。そこに解説を付け加えてワンセット……というのがLoLの実況&解説だと思っていました。

だから当時はリアルスポーツの実況を参考にしたり、スポーツ実況について書かれた本を読みあさったりもしたんです。でも答えなんて見つからない。eスポーツ実況のノウハウなんか何もありませんでした。

大友 ということは、現在の実況スタイルになるまでに転機があったのでしょうか?

eyes LJLのオフラインイベントに来ていた(eスポーツライターで通訳者の)スイニャンさん(@shuiniao)の一言がきっかけでしたね。たしかほとんど初対面ぐらいだったと思いますが、「eyesさんはLoLに詳しいのになんで未来の話をしてくれないんですか?」と言われまして。僕も「じゃあLCKのキャスター陣はどんな感じなんですか?」と聞き返したら、「未来の話しかしませんよ」と告げられたんです。

それから海外リージョンのキャスター技術を学びだし、Revol君と一緒に「試合中は各チームの戦い方や勝ち筋を常に予測しながら実況しよう」と心に決めました。あの一言が無かったら今も実況面で苦しんでいたかもしれませんね。

大友 スイニャンさんの一言がeyesさんの実況スタイルを変えたんですね!

eyes でもスイニャンさんは多分そこまで覚えていないと思います。本当に何げない一言だったんでしょうね(笑)。

自由気ままにオフを満喫したい

Worlds 2021の決勝

大友 オフシーズンの予定はいかがですか?

eyes 基本的に全く予定を立てない人間なんです。予定を立てちゃうと追いかけられる感じがすると言うか、そのプレッシャーが嫌なんですよ。カレンダーを見て「明日の18時に予定アリ」っていうのが駄目なタイプ(笑)。

大友 その気持ち、すごく分かります!

eyes まあ色んな人とご飯を食べたいとは思っていますし、合間を見て温泉にも行きたいですね。去年は新型コロナウイルスの影響でキャンセルになってしまったので。シーズンオフの予定はそのあたりかな。あとは一日中ゲームで遊んでいたいです!

大友 「遊びたいゲーム」というのはLoLでしょうか?

eyes もちろんLoLもプレイしますし、TFT(チームファイト タクティクス)も遊びますよ。それに僕、アニメも大好きなんです。だから動画配信サービスを覗きつつ、しっかり時間を確保して何かしらのアニメを一気見するのがストレス解消になりますね。

逆にLoLプレイヤーの大友さんはシーズンオフってどのように過ごされているんですか?

大友 シーズンオフに入った後も今までと変わらずにLoLをプレイしていると思いますし、もっと上達するために仲の良いプレイヤーの方に色々と教えてもらおうと考えています。ちなみに私もアニメは完結してから見たい派です(笑)。

真価が問われるシーズンに

Worlds 2021決勝、EDward Gamingの優勝が決まる

eyes 僕は直接の運営陣じゃないので明確に答えることはできませんが、大友さんはある意味「これからが本番!」という感じなんですね。

大友 そうですね……。これまでは少しのんびりしていたかもしれませんが、来年から全力で本番という気持ちです。

eyes アカデミーリーグもあるし、ぜひ頑張ってください。僕もキャスターとしてたくさん試合を実況してきましたけど、重要なのは「本番で実力をフルに発揮できるか?」なんです。スクリムの結果もチームの期待値になるけれど、本番に強いプレイヤーが本当に正義ですね。

スクリムでいまいち結果が伸びなくても、本番でおおいに化ける可能性がある。そういった選手は今でも最前線でプレイしています。これは全プレイヤーに言えることですが、スクリムの結果が悪くても大丈夫。何事もチャレンジすることが大事です。

大友 次のアカデミーリーグは結果を残すことができるように頑張ります。

LoLを担う次世代プレイヤーに注目

大友 改めて、LoLプレイヤーや競技シーンを応援するファンに向けてメッセージをいただけますか?

eyes Worlds 2021は国内チームがグループステージ進出を達成できたのが本当に大きかったし、皆さんと一緒に決定的な瞬間を目撃できたことが何よりも幸せでした。大友さんを含め次世代プレイヤーの芽が育って来ていますので、これからもLoLの競技シーンを楽しんで見ていただければと思います。

――最後に今回の対談を踏まえたお二人の感想をお願いします。

大友 Worlds 2021の振り返りもタメになりましたし、LJLやeyesさん自身の話をたくさんお伺いできたので純粋に楽しかったです。本当にありがとうございました!

eyes こちらこそありがとうございました! 色んなお話をさせてもらいましたけど、途中から一種の実況・解説をやっている感覚になりましたね(笑)。大友さんは既に自分の意見をしっかりと持っているだけでなく、きちんと尻込みせず伝えられる力もある。これからもご自身の魅力を存分に出していただければと思います。

■Worlds 2021の配信 ライアットゲームズ公式チャンネル
Twitch:https://www.twitch.tv/riotgamesjp
Mildom:https://www.mildom.com/10244404

【eyes】

アイズ 1984年岡山生まれ。2011年に介護士をしながらLoLの実況を始め、2014年からLJLの公式キャスターを担当。2018年からフリーとして活動している。
◆ツイッター:@eyes1015

【大友美有】

おおとも・みゆう eスポーツプレイヤー・タレント。プロチームRascal Jester「リーグ・オブ・レジェンド(LoL)部門」の練習生として、スターダストプロモーション デジタルメディア事業部に所属し、タレントとしても活動中。N高校在学時には、「KDG N1」の選手として「全国高校eスポーツ選手権」のLoL部門で連覇(第2回、第3回大会)を経験。高校対抗eスポーツ選手権「STAGE:0」でも、2020年のLoL部門で優勝を果たした。
◆Twitchチャンネル:https://www.twitch.tv/limitrear
◆ツイッター:@miyu00tomo