「リーグ・オブ・レジェンド(LoL)」の国際大会「2021 League of Legends World Championship」(Worlds 2021)がアイスランド・レイキャビクを舞台に、10~11月に開かれました。試合を伝える日本語配信は、LoLの国内リーグ「League of Legends Japan League」(LJL)で公式キャスターを務めるeyesさん(@eyes1015)が実況を担当しました。今回の企画では、プロチーム「Rascal Jester」(RJ)の練習生で、タレントとしても活動する大友美有さんがeyesさんと初めて対談。トークは今年のWorldsの配信の裏側にあった秘話から競技シーンの展望に及びました

■Worlds 2021の配信 ライアットゲームズ公式チャンネル
Twitch:https://www.twitch.tv/riotgamesjp
Mildom:https://www.mildom.com/10244404

ストーリーが満ちあふれていた

プレイインステージDay1で喜ぶEvi選手(左)とSteal選手

大友 まずはeyesさんから見たWorlds 2021の率直な感想を教えてください。

eyes 素直に楽しかったですね。ゆっくりは観戦できていないんですけど、セミファイナルとファイナルがBO5までもつれ込んだじゃないですか。Worldsで5戦目まで伸びたのは過去に前例が無いと思います。あとはDetonatioN FocusMe(DFM)のグループステージ進出も嬉しかった。改めて振り返った所感はそのあたりです。

大友 私はDFMがCloud9(C9)に勝ってプレイインステージを1位通過できたシーンが印象深いです。見ていてすごく嬉しかったし気持ちよかった。

eyes とにかくストーリー性がありましたよね。DFMとC9の戦いも含め、「T1がDAMWON Gaming KIA(DWG)を倒すのか?」もそうだし、Meiko選手とScout選手が一緒に戦ってようやく王者に……みたいなのもあった。全試合を通してみんなが気になるフラグを一個ずつ回収したのが今年のWorldsだったと思います。

輝いていたFaker

DFM対T1 Aria選手がFaker選手をミッドレーンでソロキルしたシーン

大友 では、eyesさんが特に印象に残っている試合を教えてください。

eyes DFMがC9に勝った試合が一番印象深いですよ。

グループステージのT1対Edward Gaming(EDG)もFaker選手の凄味を感じましたよね。今までFaker選手は「各リージョンの強豪が出揃う国際戦に強い」と言われていたんですが、選手歴も長いし周りもほとんど新人だから、実際のところ「Worldsではどうなるんだ?」という評価がされていたと思うんです。

それでもWorlds 2021のFaker選手は輝いていた。思わずRevol君に「Faker選手、やばくない?」と語ったのを覚えています。でも結局はDFMの試合が一番でしたね。

歓喜のディレクターに抱きつかれた

グループステージ進出を決め、整列するDFMの選手たち

大友 やっぱりDFM対C9戦になりますよね。キャスター陣の方々がタイブレーク戦で勝った瞬間に盛り上がっている様子がSNSで拡散されていましたが、配信が終わった後はどんな様子でしたか?

eyes 不思議な空間でした。僕はそこまで感情が爆発する方ではないのですが、ディレクターがバーっと走り込んできて抱きつかれた時はこけるんじゃないかと思いました(笑)。

それからメイク落として帰り支度をして……。でもフワフワした感覚は続いていましたね。一番喜んでいたディレクターを含め周りは盛り上がっていたけれど、「本当に勝ったのか?」って。僕も嬉しいことに変わりなかったけど気持ちは冷静でした。

大友 競技シーンをずっと追ってきたディレクターさんも感情が爆発したんですね。では大会を通して印象強い集団戦などはありますか? 例えばDFMのEvi選手によるテレポート込みのボットガンクとか……。

eyes 正直、今回のWorldsはどれも印象強いですね。でも対Galatasaray Esports戦(プレイインステージ2日目)で見せたDFMのテレポートガンク、僕は事前に予測できていました。「Evi選手ならやってくれるはず」という感覚で見ていたこともあり、「想像を上回っていた」というよりは、しっかりと期待に応えてくれたという感じです。

あとすぐに思いつくものであれば、Aria選手がFaker選手を一人で倒したシーン。実はあのソロキル、最初はカメラに映っていなかったんですよね。途中からフッとミッドレーンに視点が切り替わり、直後にAria選手のゾーイがスキルショットを当てたシーンが映し出されていました。

なぜユーミはWorlds 2021で猛威をふるったのか?

実況に臨むeyesさん

大友 大会を通して気になったバン&ピックはいかがでしょうか?

eyes 正直、あり過ぎて困りますね。しいて言えば、セミファイナルのEDG対Gen.G Esports(Gen)戦。EDGがずっとBdd選手を警戒していて、シンドラを4ゲームともバンしていたんですよ。それでBO5の第5ゲーム目でEDGがシンドラをバンしなかった。

だから僕は「シンドラをファーストピックで取るべきだ!」と見ていたんですが、Genは最初にまさかのラカンを選択したんです。ラカンは分かるんですが、それよりも「なぜシンドラを取らなかったのか」と。そこがいまだに疑問ですね。

逆に大友さんは気になったバン&ピックってありますか?

大友 あります! レッドサイドのチームはユーミをバンしていたと思うのですが、常にバンしなければならない程の強さがどこにあったのか気になりました。ユーミは視界の取りづらさ、対象CC(Crowd Control=行動を制限する状態異常)持ちの相手に対してレーニングしにくいなどの弱点があるので……。

eyes 確かにユーミは対象指定CCに弱い側面はあるけれど、バフを受けてパッシブスキルのCD(クールダウンタイム)が16秒から14秒になりましたよね。14秒だと一回のミニオンウェーブにつき、だいたいパッシブが1回発動する。だから対面チャンピオンにハラスできる頻度が増えたんです。

加えて、Wスキルで味方チャンピオンにくっついた際のアダプティブボーナス数値がかなり高い。あとはタロンやグレイブス、ルブランといったユーミと相性が良いチャンピオンの多くがWorlds 2021のメタに上がっていたのも大きいと思います。

大友 ユーミの性能が単純にバフされただけじゃなく、Worldsでよく使われるチャンピオンと相性が良かったからこそ、各試合で対策されていたんですね! 勉強になりました。

日本人チームに立ちはだかる「壁」

大友 Worlds 2021について色々とうかがいましたが、私が気になっている問いがあります。LJLのV3 Esportsのように、外国人の選手を入れずに日本人メンバー5人で(国内外の)競技シーンを戦い抜くにあたって「壁になる部分」はありますか?

eyes 難しい質問ですね。過去に日本人5人で戦い抜いたチームも幾つかありますし、仮にハードルや壁があったとしても越えるのは無理じゃないと思います。ただ、情報のアクセス面に関しては色々と変わってくるのではないでしょうか。

韓国人選手がチームにいると、少なからず韓国語の情報ソースにアクセスしやすい。韓国は競技シーンにおけるトップリージョンだし、そこで蓄積した最先端の情報を気軽にチェックできるのは大きなアドバンテージになります。

あとは……選手のストイック性の違いぐらいでしょうか。まあ外部の意見になってしまうので、選手からすれば「それぐらいやっている」と言われてしまう可能性もありますけどね。

逆に質問してみたいのですが、大友さんは現在アカデミーリーグのチームに所属していますよね。そこで実際に壁を感じることってありますか?

大友 自分も「練習の時間と質の面で違いがあるのかな?」と考えたりしますね。例えば韓国だとLoLに早い段階で触れるプレイヤーもたくさんいるけど、国内で小さい頃からLoLを遊んでいるプレイヤーってそこまで多くないと思うんです。

もちろん韓国だけに限った話ではなく、世界を見渡せば日本よりもLoLの普及度やプレイヤー層で上回っている国が一定数ある。だからこそ、日本人チームが世界に通用するためには練習の質と時間を今まで以上に積み上げる必要がある。そのあたりが壁になるのかな、と思います。

eyes じゃあその壁を壊す具体的なカギはどこにあると思いますか?

大友 あくまでプレイヤー目線の意見になりますけど、「運営陣が日本人プレイヤーを信頼する態度」が壁を壊すカギになるんじゃないかと。チームのオーナーが選手を信頼するところから始まり、ロースターを任された選手たちは「日本人だけのチームとして頑張ろう。ほかのチームに負けないために強くなろう」という自覚が芽生えて、練習の質もだんだん変わっていく。そこから結果的に日本人プレイヤーだけでも世界と戦えるチームが生まれていくのではないでしょうか。

eyes 確かに選手ならではの意見ですね。ただ、運営陣の目線から考えると、プロゲーマーである以上、結果が出ないと信頼できない部分も現実問題としてあると思います。その問題が本当に難しい……。

運営側としても日本人プレイヤー5人で戦ってもらいたいかもしれない。でも優勝候補に潜り込むためには、やっぱりプレイスキルの卓越した韓国人プレイヤーがどうしても欲しい。

真剣に日本人だけで競技シーンを戦い抜きたいなら、厳しい言い方になりますけど結果を残さないといけないですよね。大友さんの場合で言うと、まずは「アカデミーリーグ優勝」がマストかもしれません。

大友 やっぱりアカデミーで優勝して結果を出してからがスタートなんですよね……。普段から実況、解説をしている方の目線で意見が聞きたかったので参考になりました。ありがとうございます!

プロモーション活動にも力を

Worlds 2021で優勝し、セレモニーに臨むEDG

大友 この先、国内のLoL界隈や競技シーンが発展するには、具体的にどのような取り組みが必要だと思われますか?

eyes あくまでもキャスター目線から言うと「チームがファンを獲得すること」が大事ですね。要は「あなたが試合に出ます。そこに何人のファンがついて来てくれますか?」ということ。極論かもしれませんが、LoLを知らない人でも選手にファンがつく可能性もあるじゃないですか。

例えばウメハラさんの場合、格ゲー以外からでもファンを連れてくることができている。そこを踏まえると、選手たちがどうしても結果を出さないといけないからこそ、チームの方で積極的に集客活動をするべきだと思います。国内だとDFMは頑張って取り組んでいる印象を受けますね。

大友 LoLに興味を持ってくれる人を増やすのと合わせて、LoLのプロチームを応援してくれる固定ファンを増やすための活動も大事なんですね。

eyes 選手は普段の練習や試合もあるから簡単に集客活動はできない。だからマネージャーやチームにコントロールしてもらうことも必要かな、と。より端的に言えば、外部の人に競技シーンの盛り上がりを伝える分かりやすい手段って「ライブ配信の数字」なんですよ。

僕らが「LoL熱いよ!」と試合内容を語っても、そもそもLoLにある程度の理解がある人にしか通用しない。それよりもライブ配信の画面で「前回は3万人見ました。今回は5万人も見ました」と言う方が、はっきり言って盛り上がりを伝える上で楽だと思います。その辺りの施策をチームの運営陣や企業がもっと考えてもよいのではないでしょうか。

ちょうど先日、Netflixで「Arcane」が配信されましたけど、あの大ヒットはまさしく一種の枠を越えたんだと思います。ゲームだけでなくアニメ界隈でも話題の的になっている。さすがに規模感は変わるかもしれませんが、各チームがメンバーのサポートに加えてプロモーションの方向性を作っておくことが重要だと感じています。

大友 ありがとうございます。LoLの競技シーンだけじゃなくて私自身の活動に関してもすごくタメになりました!

【eyes】

アイズ 1984年岡山生まれ。2011年に介護士をしながらLoLの実況を始め、2014年からLJLの公式キャスターを担当。2018年からフリーとして活動している。
◆ツイッター:@eyes1015

【大友美有】

おおとも・みゆう eスポーツプレイヤー・タレント。プロチームRascal Jester「リーグ・オブ・レジェンド(LoL)部門」の練習生として、スターダストプロモーション デジタルメディア事業部に所属し、タレントとしても活動中。N高校在学時には、「KDG N1」の選手として「全国高校eスポーツ選手権」のLoL部門で連覇(第2回、第3回大会)を経験。高校対抗eスポーツ選手権「STAGE:0」でも、2020年のLoL部門で優勝を果たした。プレイヤーネームはShakeSpeare。
◆Twitchチャンネル:https://www.twitch.tv/limitrear
◆ツイッター:@miyu00tomo