プログラミング教育が必修化され、学校では子どもたちに「どう教えるか」という課題を抱えています。そんな中、株式会社セガはアクションパズルゲーム「ぷよぷよ」を使った教材「ぷよぷよプログラミング」を提供し、自ら学校を訪ね授業を開いています。

なぜ、セガがプログラミング教材を作ったのか。なぜ、「ぷよぷよ」なのか。どんな授業が行われているのか。eスポーツ推進室の五十嵐勝室長に尋ねました。

ITエンジニアの育成につなげたい

「ITエンジニアの人材不足をセガとしても何とかしたいと思いました」

プログラミング教材への参入のきっかけについて、五十嵐さんはそう指摘します。例えば、経済産業省は「2030年には国内で約59万人ものIT人材が不足する」という調査結果を、2016年に発表しています。セガでも開発に必要不可欠なプログラマーの確保に苦労しているそうです。

こうした課題を背景にして、セガは「自社のノウハウを使って、ITエンジニア育成に貢献したい」と考え「ぷよぷよプログラミング」を開発、2020年6月に提供を始めました。ソースコードを正確に写していくことで画面上の「ぷよ」が実際に動く教材で、基礎、初級、中級、上級とレベル別のコースがあります。

セガがこだわった「ホンモノ」

プログラミング学習において、子どもたちが親しみやすいゲームはいち早く教材に採り入れられてきました。そんな中で、セガがこだわったのは「ホンモノ」を提供することでした。

「子どもだから『おもちゃでいいでしょう』ということではなく、『ホンモノ』のコンテンツや環境を使ったプログラミングに触れて欲しいと思いました」

「ぷよぷよプログラミング」はJavaScriptとHTMLを使用

そこで「ぷよぷよプログラミング」では、一般的なプログラミング言語であるJavaScriptとHTMLを使用。ソースコードはセガ公認のもので1,000行ほど書かれています。教材に相応しいように、オーソドックスな表現で新たに書き起こしたソースコードで、オープンな形で世間に公表しています。

また、「ぷよぷよプログラミング」はアシアル株式会社が提供するプログラミング学習環境「Monaca Education」を利用した無料の教育プログラムとなっています。ブラウザを用いてクラウド環境で学習を進められるため、通信環境さえあればデバイス(OS)の種類や性能は問いません。

そんな「ぷよぷよプログラミング」を体験した子どもたちが「プログラミングって面白い」と感じ、その後も学び続けてもらえたらとセガは考えています。

「ぷよぷよプログラミング」はデバイスフリーです

「ぷよぷよ」は誰も傷付けない

パズルゲーム「ぷよぷよ」を教材として選んだことにも理由があります。

「ぷよぷよ」は、画面上部から2つずつセットで落ちてくる「組ぷよ」を回転させたり左右に移動させたりしながら、色が同じ「ぷよ」同士を4つ以上くっつけて消していくゲームです。シンプルながら奥深い戦略が求められるゲームとして愛されており、eスポーツタイトルでもあります。

セガの人気パズルゲーム「ぷよぷよ」

まず、比較的単純な動作(落下、横移動、回転)で構成されることから、初心者向けのプログラミング教材に向いていました。

「人を殺さない」「暴力要素がない」「セクシャルな要素がない」といった「ぷよぷよ」の「誰も傷つけない」点も、子どもたちの教材として適していました。また、eスポーツ競技人口を増やしたいとの思いもあり、プログラミング教材として採用することとなりました。

「穴埋め方式」で小さな成功体験を

「ぷよぷよプログラミング」では、自分が書いたプログラムが実際にゲームとなって動くという小さな成功体験を得られるようにつくられています。重視しているのは、自らの手を動かして実際に「コードを書くこと」です。

時間が限られた授業の中で、少しでもプログラミングの醍醐味を味わってもらうために、ある程度できあがったプログラムを示し、未入力となったソースコードを「穴埋め」してもらう形式となっています。

「ぷよぷよプログラミング」の実際の画面。ソースコードが未入力となっている部分に、「穴埋め」していきます

コードを入力すると、すぐに成果が見られるため、飽きることなく集中して学習できるようになっています。少ししか入力できなくても、実際に「ぷよぷよ」を動かすことができるので、パソコンに苦手意識を持っている子も成功体験を積むことができます。

一方で、「ぷよぷよプログラミング」は、アルファベットひとつ、記号ひとつ間違っていても正しく動いてはくれません。「実際にコードを書いてもらって『間違うこと』も経験してもらいたい」と五十嵐さんは言います。

「ぷよ」がうまく動かないときには、「どこが間違えているのか?」と考え、間違っている箇所を発見し修正する必要があります。この作業を通し、実際のプログラミング現場で求められる「修正能力」を身につけてほしいとの狙いがあります。

ぷよぷよのプロ選手が授業

セガは教材を提供するだけでなく、自ら小学校や中学校、高校を訪れ、「ぷよぷよプログラミング」を使った授業を開いています。これまで青山学院初等部、多摩市立多摩中学校、福岡工業大学附属城東高校など20校で実施しました。

基本的なカリキュラムは1コマ45分の2コマ構成となっています。

【ぷよぷよプログラミング講座 実施例】

1.講座時間例
 
2コマ(45分×2コマ)

2.事前準備
 PC機器(Windows, Mac, Chromebook, タブレット+キーボード)
 Wi-Fi環境またはLAN環境
 Monaca Education アカウントの用意(独自取得またはセガ提供)
 講座用簡易テキストの配布
 HTMLカラーコードの配布

3.「ぷよぷよ」をつくってみよう 
 ゲームフィールドをつくる
 背景に画像をつける
 「ぷよ」が落ちてくる
 「ぷよ」を左右に動かす
 「ぷよ」を回転させる
 「ぷよ」を消す  
 完成!遊んでみよう

4.カスタマイズしてみよう
 著作権とネットリテラシーについて
 背景の「ぷよ」を変える
 ステージの大きさを変更する
 HTMLカラーチャートを使って色を指定する
 背景の色を変える
 「ぷよ」の落下速度を変更する

5.eスポーツ選手の話
 eスポーツのお仕事とは?
 プロ選手のお仕事
 プロ選手の一日

6.質疑応答

授業では、ITエンジニアの経験のある、ぷよぷよプロのぴぽにあ選手が講師を務めます。

まず挨拶代わりに、ぴぽにあ選手が「ぷよぷよ」で大連鎖を披露すると、教室の雰囲気がガラッと変わり、生徒たちが一気に集中してくれるそうです。そのあと「実際に『ぷよぷよ』を作りましょう」という流れで授業は進みます。

「ぷよぷよプログラミング」のソースコードを入力する、ぐんま国際アカデミー中等部の生徒たち

「フィールドを作成する」「『ぷよ』を落下させる」など簡単な課題からスタートします。授業が進むにつれて生徒たちの顔が不安そうになったりすることもあるそうですが、そんな時には「間違えていいから、どんどんやってみよう!」とぴぽにあ選手が声をかけます。

「落下速度を変える」「生徒たちの声を録音し、ゲームに組み込む」といった「改造」にもチャレンジしてもらうこともあります。

生徒たちからは「日常的にプレイしていたゲームを自分で作ることができて、感動しました」。学校の先生からは「生徒たちは積極的に学んでいた。キャリア教育としても、大変価値ある学びとなりました」といった声があがっています。

また、「ぷよぷよプログラミング」は自宅でもできます。そんなとき、親はつい口を出したくなるもの。ただ、五十嵐さんは、言います。

「親御さんはできるだけサポートせず、ただ見守っていてください。自分で間違いを見つけて、修正する体験が大事ですので。『習うより慣れろ』です」

セガスポーツ推進室室長の五十嵐勝さん

プログラミング教育の入り口として

プログラミング教育は学習指導要領に示され、2020年度から小学校で必修化されました。中学校でも、その内容を発展させる観点で技術・家庭科の技術分野「情報に関する技術」で扱われています。高校でも、22年度から情報科での学習が予定されています。

このようにプログラミングへの関心が高まる中で、「ぷよぷよプログラミング」は、プログラミング教育の入口として、ITエンジニアを志す子どもたちを一人でも増やそうというセガの取り組みです。また、学校現場での活用が広がることで、もっと多くの人に「ゲームは、子どもたちの未来に役立つものである」「『ぷよぷよ』は、誰もが楽しめるゲームである」ことを知ってもらいとの思いもセガにはあります。

「『ぷよぷよプログラミング』を体験した子どもが将来、『一緒にゲームをつくりたい』とセガのドアを叩いてくれたら素敵ですね」

五十嵐さんは笑顔で、そう話してくれました。