「スペシャリスト」志望者がキーボードに向かう

作業を通じて「ぷよぷよ」が完成していく

使った学習教材は、「ぷよぷよ」を展開するセガが開発し、2020年6月にリリースした「ぷよぷよプログラミング」です。英数字の列であるソースコードを正確に写していくことで「ぷよ」が実際に動くことを体験できる教材です。基礎、初級、中級、上級と入力量に応じてレベルが分かれており、気軽にHTMLやJavaScriptでプログラミングを学べることが特徴です。親しみやすい「ゲーム」を使って学びに生かす試みとして、教育現場での活用が始まっています。

真剣なまなざしで画面に向かう生徒たち

今回参加したのは電気科と電子情報科で「スペシャリストコース」として学ぶ2年生です。スペシャリストコースでは、学んだ専門的な内容を生かして、大学への進学や企業への就職を進路として想定し、国家資格の取得やキャンパスが隣接する福岡工業大学との連携した教育に取り組んでいます。

現在の高校2年生はちょうど入学時期をコロナ禍が直撃した世代です。このため、入学式を含めて様々な行事が中止や延期となり、生徒たちはこの日の授業をとても楽しみにしてました。電子情報科の髙濱勇樹教諭は「ふだんからプログラミングの授業を実施していますが、実用性や生徒が親しめる内容を採り入れることがあまりできていなかった。ゲーム好きな生徒が多いので、楽しみながら学べると思って授業を実施することにしました」と導入の経緯を説明します。

間違えることも大事な過程

ぴぽにあ選手(左から2人目)の指導でプログラミングに取り組む生徒たち

講師を務めたぴぽにあ選手は10月に開かれたプロ大会「チャンピオンシップ SEASON4 STAGE1」で優勝した直後です。授業の冒頭で、現役トッププロであるぴぽにあ選手が「あいさつ代わり」の10連鎖をあっという間に披露すると、「すごい!」という声や拍手がわき起こりました。

授業では、「背景に画像をつける」「『ぷよ』を左右に動かす」などの簡単な課題からスタートします。一部のソースコードが未入力になっており、指示を与えるソースコードを穴埋めする形で入力していきます。正しければ動き、正しくなければ、動きません。この「間違える」という経験も大事な過程の一つです。

背景の色を変える課題に取り組む生徒たち

この日は「落下速度を変える」「背景の色を変える」といった「改造」にもチャレンジ。これもセガが関わった教材だからこそできる内容です。2コマ続けての授業となりましたが、休み時間になっても入力に夢中となり、生徒たちは席を立ちません。この様子には同校の教員たちも驚いていました。

「開発チーム」で改造にも取り組む

ソースコードの正確な打ち込みがポイント

授業の後半では、ぴぽにあ選手とセガのスタッフによる「ゲームソフトと著作権」「ゲームソフト開発」「eスポーツの選手の仕事」といったテーマの講義もありました。キャリア教育の観点も踏まえ、「ゲーム」と「仕事」がどのように関わっているかを知ってもらう狙いでした。

この日の授業を踏まえ、生徒たちは今後、学校の授業で「ぷよぷよ」のプログラムの独自の「改編」に取り組みます。グループをつくって「ディレクター」「イラストレーター」などの役割を決め、チームとして開発にチャレンジ。12月にセガのプロデューサーらに発表をします。こうした「本物」に触れることがこの授業のポイントです。

想像力をフルで使った

背景の色や落下速度の「改造」も楽しみの一つ

電子情報科の鬼塚友紀恵さんは「授業でプログラミングをしているが、実際にゲームを作るのは初めて。すごい勉強になった。ソースコードを打って、実際に背景が変わり、『ぷよ』が動くようになり、『自分でつくっているな』という実感ができた。何より楽しかった」と授業を振り返りました。

電子情報科の栗山太陽さんにとっては、小学校のときに生まれて初めて触れたゲームが「ぷよぷよ」でした。その思い出のゲームを使った授業に「ふだんは教科書の問題に沿って頭の中で組み立てるプログラムだが、今日は自分で発想して考えたものをプログラムに起こした。想像力をフルで使って楽しかった」と語りました。

将来の夢につながった

ぴぽにあ選手(右)が見守る中、黙々と作業に取り組む生徒たち

この日はITエンジニアなどを将来の目標にしている生徒たちにとっては、大いに刺激を受ける授業となりました。電子情報科の田中颯磨さんは「僕の将来の夢はゲームプログラマー。じかに将来の夢につながることができて、とても楽しかった。自分がゲームプログラマーになったらこんなことをするんだな、ということを感じることができた」と話しました。

電気科の竹下幸佑さんはシステムエンジニアやプログラマーをめざしています。「プログラミングは難しい文字をたくさん打つのかな、と思っていたけど、やってみると達成感があって楽しかった」と述べ、将来の仕事をイメージする機会となった様子でした。

自分で考えてつくる楽しさを

授業で説明するぴぽにあ選手

ぴぽにあ選手は現在、「専業プロ」として活動していますが、システムエンジニアとしての職歴があります。プログラミングについては「材料を削ったり、切ったりすることが文字を打つことに変わっただけで、コンピューター上での『ものづくり』」と説明します。レベルの高い生徒たちを相手にした授業については「プログラミング本来の面白さを体験できるのが一番いいことだと思う。『考えて、つくる』ことは大切だが、意外と機会がない。自分自身で考えてつくる楽しさを伝えられるのは授業をしていてうれしいと思った」と話しました。

佐伯道彦校長は「満足感、達成感が次への好奇心につながる。知識を得るだけでなく、動かなかったものを動かすこと、苦労していることを楽にすること、できなかったことをできるようにすることが、工業だと生徒たちには言っている」と語ります。授業後の生徒たちの様子には「教室から出たときの顔がめちゃくちゃよかった。先生たちも大満足だった」と笑顔で話しました。

ぴぽにあ選手(中央)の指導を受けながら画面に向かう生徒たち

プログラミングは教育現場で注目が集まっています。文部科学省の学習指導要領では、2020年度から小学校でプログラミングが必修化されました。中学校でも、その内容を発展させる内容が技術・家庭科の技術分野「情報に関する技術」で扱われています。高校でも、2022年度から情報科での学習が予定され、来年度の高校1年生が3年生になって臨む2025年度入試では、大学入学共通テストの教科の一つに「情報」が追加される方針が示されています。

(GAMEクロス編集長・金子元希)

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