目次

  1. ロシア拠点のGambit Esports 若さとポテンシャルあふれるチーム
  2. Gambit Esportsの選手紹介
  3. GMBはスキのない詰め待ち配置が強い
  4. GMBの作戦を支える連携にも注目
  5. 【著者紹介】Aoki

こんにちは。イラストレーター・アニメーターのAokiです。

皆さん「VALORANT」の公式大会「VALORANT Champions Tour(VCT)」は観ていますか?

先日開かれた「APAC-ラストチャンス予選(APAC LCQ)」では日本のNortheptionが善戦して盛り上がり、12月の世界大会「Champions」には日本からCrazy Raccoon(CR)の参戦が決まっています。

CRは以前の「VCT Stage 3 - MASTERS BERLIN(Mastersベルリン)」にてブラジルの2位通過のチームHavan Liberty(HL)に勝利し、ファンを大いに盛り上げてくれました。しかしロシアの強豪Gambit Esports(GMB)に2度敗れグループステージ敗退。ただ、CRが惜しいところまで迫ったGMBはMastersベルリンで優勝したのです! 世界の壁はまだまだ高いと感じた側面はありつつも、HL戦での1勝と対GMBとの大接戦は日本のVALORANT競技シーンに希望をもたらしました。

CRとの試合で日本ファンの注目度が上がったGMBはChampionsへの出場を決めているので、CRとの再戦の可能性もあります。そこで今回は、GMBについて話していきたいと思います。

GMBはロシアを拠点に活動するプロeスポーツチームです。EMEA(ヨーロッパ、中東、アフリカ)地域で数々の強豪チームを押しのけて1位通過でMastersベルリンに参加しました。

しかもメンバーは19歳が2人、20歳が2人、24歳が1人(記事公開時点)と超ヤングチーム。これからの伸びしろも考えたら、今後も世界最強を保持できるぐらいのチームではないでしょうか?

GMBの戦術面の特徴の一つである「詰め待ち」が数多くのチーム苦しめていたと思います。「詰め」とはディフェンス側の選手が1人または複数で逆に攻めていき、相手の人数を削ることを言います。そして「詰め待ち」とは、ディフェンスの詰めを待ちつつ、相手のスキルを無駄に使わせたり、キルしたりすることを指します。

また、Mastersベルリンではヴァイパーの運用のうまさがとても印象に残ったチームでもあります。個人的にヴァイパーはすごく好きなエージェントなので、この二つの特徴を重点的に話していきたいと思います。

ヴァイパーズピットの天才『nAts』 (19)

nAts(ナッツ)選手

Mastersベルリンでのピックエージェントはサイファー、ヴァイパー。世界最強のサイファー使いとして知られています。その評判に引けを取らない実力をMastersベルリンでも見せてくれました。

ラークが得意で、単独で動き回りエリアを広げ情報をとりつつ裏を取るのがとてもうまい選手です。撃ち合いの反応速度も非常に速く、マジか……ってスピードです。ただ、撃ち合いの強さは文章では説明できないので、ここではnAts選手のヴァイパーの使い方について話したいと思います。

今大会で一番驚いたスキルの使い方の一つ、バインドのBサイトで使ったウルト「ヴァイパーズピット」はすさまじいものがありました。

決勝のTeam Envy戦で見せたヴァイパーズピット

Bサイトの窓下で放ったヴァイパーズピットで、ウィンドウからは非常に降りづらくなるし、Bロングの入り口もふさげます。ですがこのウルトの真に恐ろしいところは、nAts選手がウィンドウ中にちょっとだけはみ出たヴァイパーズピット内にいることです。

このnAts選手の場所をケアできなければTeam Envyは詰み。普通にウィンドウから降りようとした場合、ウインドウ下の敵に足だけワンウェイで見られてキルされます。窓から降りる場合は勢いよく複数人で飛び降りて一気にヴァイパーズピット内をクリアリングしなければいけません。Team Envyはその選択を取るのですが、nAts選手からは飛び込んでいく足が見えるんです。これで、nAts選手は敵がサイト内に入り切ったのを確認して後ろから撃てるわけです。これを見た時、「天才だ」と思いました。

次に、ポイズンクラウドの使い方についても話したいと思います。ポイントとしては毎回焚いているAランプを隠すスモーク。これにより、ランプからのピークができなくなります。それとトキシックスクリーンの合わせで警戒する場所を小部屋とトラック上に絞れるので、簡単にAショートを進行できます。

他のスモークではなくポイズンクラウドを使うとダメージが入るため、「モクの中に潜みつつ一瞬出て、またモク内に逃げる」といった立ち回りがしづらくなります。モク抜きすれば胴撃ちでもキルされるリスクがあるため、不用意にモクに隠れられません。

そしてAランプまで取れたらスモークを回収して今度はCTやランプ出口などに設置し、サイトをリテイクしに来る敵を入りにくくすることができます。ヴァイパーのトキシックスクリーンとポイズンクラウドが「何度でもたけるスモーク」であることをを非常にうまく活用した戦術です。

Mastersベルリンが終わってからnAts選手の配信を時々見るようになったのですが、いつもヴァイパーかサイファーを使っており、個人のスキルレベルを上げることに専念しているのが見て取れました。

見ているだけでとても勉強になるので面白いです。おすすめです。

d3ffo選手とのツーマンセルが光る『Sheydos』選手 (20)

Sheydos(シェイドス)選手

Mastersベルリンでのピックエージェントはスカイと、アイスボックスのみレイナ。Mastersベルリンの前はセージをメインピックにしていたようです。

Sheydos選手は反応速度も速く撃ち合いも強いエントリー補佐役として活躍していました。
常にd3ffo選手とツーマンセルで動き、後方からフラッシュとオオカミとカバー役をこなしd3ffo選手の進行をサポートしていました。

アイスボックスではレイナを使ったエントリーとしてその撃ち合いの強さを見せつけました。
CR戦ではChronicle選手とのミッド詰めでかなりCRを苦しめていました。

1度目のCR戦。CR側がかなり苦戦した試合となりました

生存率高めなChronicle選手(19)

Chronicle(クロニクル)選手

Mastersベルリンでのメインのピックエージェントはソーヴァ。ブリーズとスプリットはヴァイパー、ヘイヴンはブリム。

役割としてはドローンやスモークをタイミングよく使うエントリーサポートでしょう。チームとして動くためには欠かせない存在です。

Chronicle選手は詰めを警戒しつつ、エントリーのd3ffo選手、Sheydos選手のカバーや援護をするエントリー組と詰め待ち組の間を担っています。ここが倒れると一気に陣形が崩れるため、とにかく生き残るのが重要。Chronicle選手は詰め待ちもミリ置き(ミリ単位の隙間にエイムを置いておくこと)などを使ってできるだけ安全に待って、生存率を上げています。

Chronicle選手が生きていれば、サイトに攻め込む時にちゃんとオウルドローンやリコンボルトがしっかり機能し、残り少ない時間でも安全にサイト内に入っていくことができるわけです。

ミリ置きで安全に詰め待ちするChronicle選手

サイト内に入ってからのポジショニングも素早く、裏もエルボーもCTもしっかり5人でケアした配置になっており、「素晴らしい」の一言が出るラウンドでした。

オペレーターのポテンシャルを引き出すd3ffo選手(20)

d3ffo(デフォ)選手

Mastersベルリンでのピックエージェントはジェット。

チームでの役割はエントリーとスナイパー。ジェットでのオペレーター運用がとてもうまい選手です。反応速度がとても早く、置いているところに敵が来たら絶対に外さない。そんな選手です。

上の動画のなんといっても2キル目、よく見えたな……と感心せざるを得ません。そして4キル目は「ヴァイパーのスモークをおろしてほしい」とのコミュニケーションがあったのか、エイムを右にもっていきすぐさま反応して当てる……とてもキレイな4キルです。

これはGMB全体の特徴でもありますが、攻めでもオペレーターをガンガン活用しています。アングルアドバンテージを存分に発揮できるオペレーターは、遠くから見た時に圧倒的有利な状況で壁際の敵と撃ち合えます。この小さな有利を常に活用して1ピックしていくのが、d3ffo選手の強さだと思います。

状況把握が完璧なIGL、Redgar (24)

Redgar(レドガー)選手

Mastersベルリンでのピックエージェントは基本的にアストラで、スモーク担当です。マップによってはセージやソーヴァも使用しています。ヘイヴンではレイナを使用し、幅広いピックプールを見せてくれました。

役割はIGL(インゲームリーダー)。GMBの司令塔です。

状況を正確に把握していることが伺える3キル

IGLを務めるRedgar選手ならではの3キルです。見えている範囲と見えていない範囲を正確に把握しているからこそできる、ベントケアでした。Chronicle選手の最初のモク抜きとスネークバイトも、この撃ち合いに勝つためのHP削りとしてかなり重要でした。

ここからは、シンプルな作戦なのにこれだけ相手を苦しめてきたGMBの何が強かったのかを話したいと思います。

単純に選手たちが若く、反応が早く、エイムが鋭いことも大きな要因ですが、ポジショニングや連携面に目を向けてみましょう。

まず最初に挙げたいGMBの特徴として、最初にも挙げた「詰め待ち」。詰め待ち自体は他のチームでもやるんですが、GMBの詰め待ちは配置が理にかなっているなぁと思います。

GMBの初期配置例

上の画像は、GMBの初期配置の一つの型です。

まず進行部隊として二人、ジェットとスカイがBロングのエリア取りをしようとしています。この時ゲート前にスターが置かれてるのもポイントです。

キャラのチョイスもちゃんと意味があります。索敵、フラッシュがあるスカイ。すぐにた焚るスモークを持ち、且つ緊急回避のできるジェット。この二人で進むことによって、どんな状況でも対処ができます。

フラッシュやスタンが来れば足元にスモークを焚き遮蔽物にし、後ろからスカイのフラッシュを返してカウンターをする。スモークなどが来てもスカイのオオカミで後ろからジェットをついてこさせて進行できます。

次にソーヴァです。ソーヴァは基本詰め待ちなんですが、ここの詰め待ちには非常に重要な意味があります。それはBショートとBロングの詰めで、進行役の二人を挟み撃ちさせないこと。だから、ソーヴァも倒されないように注意して詰め待ち。

このソーヴァが倒れてしまうと簡単に進行役の二人は挟まれてしまいます。仮にBショートだけ詰めてくるようであればBロングの二人を呼んでニ方向から迎え撃つこともでき、相手の詰めに柔軟に対応できる配置になっています。

そして他二人。まずはヴァイパーから。ヴァイパーが一番危険な場所の詰め待ちをしています。アングルアドバンテージのあるポジションで待っていますね。相手の方が壁が近く、ヴァイパー視点の方が早く敵を視認できます。

アングルアドバンテージについて、ZETA DIVISION(当時はAbsolute JUPITER)のcrow選手が説明してくれています

もう一つ重要なのは、T字路のAメイン側をヴァイパーのトキシックスクリーン(カーテン)でいつでも隠せるようになっていること。これを付けたり消したりしているだけで、小部屋から見えるAショートの進行状況がわからなくなるんです。

相手側の視点はこんな感じ
カーテンがあると、全く情報が取れなくなります

こうすると敵はT字路で挟まれる可能性があるため、不用意に詰めにくくなります。

それでもAショートは敵が複数で詰めてくる可能性が高い、危険なポジションです。だからこそ、一番生存率が高いnAts選手を置いているのでしょう。彼の反応速度は早いので、確かにAショートの詰め待ちに最も適した選手と言えます。

ここでもう一つ重要なのは、スパイクの位置。もし敵がAショートを詰めてきて、かつ浴場も敵の気配があり、アストラと二人でT字路を挟めない場合。

押し引きを踏まえたポジショニングで有利に立ち回る

ヴァイパーは急いで引いてスパイクを回収しつつBショートに合流。一気にBサイトに攻め込むでしょう。敵がAショートに人数をかけて詰めてきた場合、A側には3人以上敵がいると予測できます。残りの2人がいる手薄なBを攻めることにより、有利な状態でサイトが取れるようになるわけです。

続いてアストラです。アストラはこの配置で、一番死んではいけない役です。最初に設置しているスターの位置に注目してみましょう。

アストラのスターの初期配置

まずはワープの出口にあるスター。これはBウィンドウ(フッカ)とワープでBショートが挟まれないように、スモークを焚くためのスターです。シャワー前のワープ出口にあるスターも同様で、シャワー進行をAサイトの敵とワープしてきた敵で挟まれないようにするためのもの。

Bロングのワープ前にあるスター、Bショートの窓部屋に置いてるスター、Aショートのポケットにあるスターは基本的に敵にいられたくないポジションに置いてあります。

Bロングのワープ前はBロング進行の際挟まれないようにスタンや吸い込みなどを使うためでしょう。Bショートの窓部屋のスターはBショート進行の時、窓部屋にいた敵を窓下に逃がさないために吸い込みやスタンなどを使うためでしょう。最後にAショートのポケットのスターはGMBの戦い方においてかなり急所になるポジションだと思います。なぜならAサイトを攻める際GMBはシャワーとショートで挟むことが多いんですが、ポケットはシャワーからの敵の射線を遮って五分に戦える場所。ここにいられると事故る可能性が高まるのです。

だからスターを置いて牽制しつつ、もし敵がいた時もスタンなどで逃がさず敵を倒せる……ということでしょう。

ここまで考慮すると、スターは攻める上で欠かせない要素です。アストラは絶対死んではいけないため、無理をせずAシャワーの詰めだけ確認できるポジションに配置されています。

この詰め待ちがポジションが非常に合理的で、見ていてとても関心しました。

さらにこの詰め待ちは、相手に不用意に詰めてこさせないための印象付けにも役立ちます。「詰めたらやられる」と印象がついてしまうと待つことしかできなくなるため、GMBはエリアをどんどん広げて攻めを有利にすることが可能になります。

もう一つのGMBの特徴は「スピード感のある攻め」にあります。

詰め待ちでエリアの取れてる範囲が明確にわかるため、切り返しの時も相手に足音で情報を与えることなく走って移動でき、素早く人数を固め相手のサイトに一気に
攻め込むことが可能になります。走って移動できるため、攻め込むまでのスピードがとにかく速い。

たとえ攻め込む直前に敵が詰めてきても、GMBがまったくいないか5人全員いる、という状況にできます。まったくいない場合は反対サイトに寄るためには時間がかかりますし、5人いたらいたで数で押し切られることが多く、かなり難しい状況になります。

シンプルですがとても強い戦術ですよね。

しかもサイトに攻め入る際もショートとロングでしっかり歩調を合わせているため、引くのが遅いとすぐに挟まれてしまいます。各プレイヤー同士の連携がしっかりしているからこそできる業でしょう。

各プレイヤーの連携に関してですが、進行する時には必ず抑え役、進行役がいます。抑え役は遠くからピークアドバンテージを利用して敵の出て来そうなポジションを一つ抑える。進行役は抑え役が抑えてる射線の内側を進行して、角を警戒しエリアを広げる。射線の内側を進行するのは抑え役の射線を隠さないため。抑え役の射線の外に出た場合、抑え役がカバーできずにキルされてしまうからです。

加えて3人目がいればフラッシュ警戒役になれます。壁に隠れ、フラッシュが来た瞬間すぐにカバーまたはスキル返しができるよう準備しておく役です。

この陣形を崩さず進行し、サイト前まで素早く確実に取る。これが、GMBの作戦を支える連携になります。連携を確実にするためのエイム練習や、ピークアドバンテージがあるポジションの研究、オペレーターなど遠距離からの抑えで少しでも撃ち勝てる確率を上げているのが見て取れます。

シンプルだけど確実に強い作戦を行えるチームは、ホントに強いなぁと改めて思いました。

これからもGMBの戦いが楽しみで仕方ありません。

Gambit Esportsの選手たち

今シーズンのVALORANTの公式大会は、と12月に行われる「Champions」です。Championsには、下記の16チームが出場予定です。

VCT Championsに出場予定の16チーム
  • Gambit Esports(今回のMasters優勝)
  • Sentinels(前回のMasters優勝)
  • Fnatic(EMEA地域サーキットポイント上位)
  • Acend(EMEA地域サーキットポイント上位)
  • Team Envy(北米地域サーキットポイント上位)
  • Vision Strikers(韓国サーキットポイント上位)
  • Crazy Raccoon(日本サーキットポイント上位)
  • Keyd Stars(ブラジル地域サーキットポイント上位)
  • Team Vikings(ブラジル地域サーキットポイント上位)
  • X10 Esports(東南アジア地域サーキットポイント上位)
  • Team Secret(東南アジア地域サーキットポイント上位)
  • KRÜ Esports(ラテンアメリカ地域サーキットポイント上位)
  • FULL SENSE(APAC地域ラストチャンス予選突破)
  • Team Liquid(EMEA地域ラストチャンス予選突破)
  • FURIA Esports(南アメリカ地域ラストチャンス予選突破)
  • Cloud9 Blue(北アメリカ地域ラストチャンス予選突破)

並んでいるチーム名を見るだけでも最高に面白く熱い試合が見れることがわかり、今から震えております! 日本代表CRには、ぜひ世界に爪痕を深く刻んで来てもらいたいですね!

イラストレーター、アニメーターを生業にしています。VALORANTは配信開始されてから割とすぐに始めましたが、現在のランクはブロンズ1です! GG!
ツイッター:@Aoki73404081