強さの頂点より重要なこと

ぷよぷよに対する考え方を語る飛車ちゅう選手

──「ぷよぷよ」にはまったきっかけを教えてください。

中学生の時、将棋部の先輩と「ぷよぷよ」を対戦したことがきっかけですね。やってみたら思いのほか強い自分がいて、その後のめりこみました。でも本格的に始めたのは、早稲田大学公認の「ぷよぷよ」サークル、「ぷよぷよ戦術技術開発研究所」に所属してからですね。当時、「ぷよぷよ」サークルがある大学は、早稲田大学と京都大学くらいしか知らなかったのですが、「ぷよぷよ戦術技術開発研究所」は2009年に設立されて以来、今でも活動しています。

サークル名ほど真面目に戦術研究していたわけではなく、対戦ばかりしていました。実戦以外の面ではイベントの開催や、「ぷよぷよAI」のプログラムの作成といった活動をしていました。

──飛車ちゅう選手と言えば、「飛車リーグ」など、イベント主催に積極的なイメージです。

実はプロになったのも、イベント開催などの、活動の幅を広げやすいといったことが大きな動機の一つでした。自らが発起人になって、人を集めて大会を盛り上げるのは好きですね。

私自身は、プロゲーマーとして「強さの頂点を追い求める」ということには執着していません。どちらかといえば、ライトなプレイヤーも含めた「ぷよコミュニティー」を広げていきたい。これは私の生業と言ってもよいかもしれません。

大もとには、自分自身が「ぷよぷよを楽しみたい」という気持ちがあって、「ぷよ」がもっと盛り上がっていけば、自分も楽しいんです。周りのために、ひいては自分が楽しむために、今後も面白いことをやっていきたいですね。

──コミュニティー拡大のために、どんな人に「ぷよぷよ」を遊んでほしいと思いますか?

「ぷよぷよ」は全体的にプレイヤー年齢が高いので、特に学生さんに遊んでほしいです。今年の7月からは、「『ぷよぷよeスポーツ』高校eスポーツ部 応援プロジェクト」もスタートし、全国の高校eスポーツ部を対象にオンラインコーチングも行っています。

そして、昔プレイしていたけど離れてしまったという人にも戻ってきてほしいですね。「懐かしい」という気持ちをきっかけに目を向けてもらえればと。

初心者も使う「型」で勝負

「風林火山」と書かれた扇子を手にする飛車ちゅう選手

──飛車ちゅう選手の「ぷよぷよ」バトルのスタイルを教えてください。

プレイスタイルは独特だと思います。上級者はGTRなど複雑な型を使う人が多いですが、私は、「階段積み」と「挟み込み」という初心者でもよく使う型をたくさん使います。究極的には、強い型はあるでしょうが、現時点で最適解が研究されているわけではないですし、必勝の型があるとは思っていません。

私は、相手がどういう人なのかの人読みは得意な方なので、人にあわせて、勝てる戦法を繰り出していきます。でも、相手が強ければ強いほど、一筋縄ではいかない。レベルが高い相手ほど、この手を使うのは難しいです。

強い相手には、むしろ「読み」に頼らず、自分の戦いを曲げない戦い方をするようにしています。

──飛車ちゅう選手は、将棋も上級者ということで、10月3日に開催された「プロe棋士選抜大会」では見事プロライセンスを獲得し、史上初の「プロe棋士四段」となりました。将棋と「ぷよぷよ」との違いはどういうところにあると思いますか?

比較的、将棋のほうが絶対的な有利不利が出やすいゲームだと思います。駒を多く取っているほうにリソースがありますので。

また、「ぷよぷよ」には時間軸の概念もあるので、時間が稼げているかそうでないかも勝負を左右します。さらに、「ぷよ」の色などの運要素もあって、将棋だけでなく、マージャンやポーカーなどと比べても一番複雑なんじゃないかなと思います。

──普段は、どのように練習をしていますか?

正直、あまり、それらしい練習はしていないです。

それよりも色んな人とひたすら対戦を繰り返しながら、自分自身の頭でフィードバックを考え、プレーを改善していきます。YouTubeでも対戦の様子を配信していますが、独り言で「あれがよかった、悪かった」とつぶやいているかと思いますよ。

つまんないことはやりたくないので、研究嫌い。なので実戦ばかりをしています。

プロにはとがった熱が必要

インタビューに応じる飛車ちゅう選手

──プロとして、ご自身が大切にしている信条はありますか?

プロになったことで周囲からの目線は変わったと思いますが、プロ以前に「ぷよぷよ」のいちプレイヤーとして、そのゲームを楽しみ続けることを、大切にしています。

私自身が「ぷよぷよ」を楽しむ心を忘れたら、見ている人にも透けて伝わってしまうと思うので。自分も辛いので、それだけはやらないようにと、たとえば調子が悪い場合は他のゲームに逃げたりして、上手く気持ちを切り替えていますね。

───楽しむために「ぷよコミュニティー」を拡げたいという飛車ちゅう選手らしい信条ですね。では、プロの「あり方」については、どう思いますか。今後、どんなプロ選手が増えるとよいでしょうか?

「プロ選手の数が増えればいい」とは正直思っておらず、しかるべき人がプロになるのだなと思います。数ではなく、質ですね。今後、プロ選手になる人はちょっととがっていてほしい。つまり、何かしらの熱を持っていてほしいと思います。

私自身は、そこまでプロライセンスの取得自体にこだわっていたわけではないですが、イベント開催など、コミュニティーを広げることには、熱があった。そうした、何かしらの「思い」をもってプロになってもらいたいなと思います。

──今後は、どんな仕事をしていきたいですか?

コロナ禍にあったこの2シーズンはオフライン大会が中止されてきたので、まずはオフライン大会を復活させたいですね。

そして、今後もっと、イベントを盛り上げる活動をしていきたいです。競技シーンも大事ですが、そちらの方が食指も動くし、自分自身の必要な役割だと思っています。

イベントについては、「ぷよぷよ」というタイトルだけにこだわってはいません。他タイトルとコラボレーションするなど、eスポーツ全体の盛り上げ役を買って出たいですね。ただ欲を言えば、1人はなかなか辛いものがあるので、一緒に盛り上げてくれる裏方派の仲間がほしいところです。