10月2日、音楽ゲーム「beatmania IIDX」を題材としたeスポーツリーグ・BEMANI PRO LEAGUE (BPL) 2021のファイナルステージが「esports 銀座 studio」(東京・銀座)で開催された。2019年12月に発足が宣言され、2020年の前哨イベント「BEMANI PRO LEAGUE ZERO」を経て2021年6月に正式開幕を迎えた「BPL 2021」。6チームからなるファースト~セカンドステージのリーグ戦、上位3チームによるセミファイナルステージを勝ち抜き、シーズンの最終戦となるファイナルステージに進出したのは、APINA VRAMeSとROUND1。そして、APINA VRAMeSがその頂点に立った。

髪をチームカラーの赤に染めて試合に臨むROUND1のTENIN選手(左から)、ANSA選手、KUREI選手、U*TAKA選手

全7試合とも1曲目はAPINA VRAMeS側、2曲目はROUND1側選手の選曲となる。ファースト~セミファイナルステージでたびたび波乱を起こしてきたストラテジーカード(相手の選曲を無効にする戦術的選択肢)は、ファイナルステージでは使用できない。各々が磨き上げてこの場に持ち込んだ自選曲をいかに守り抜き、また相手の得意曲に対してカウンターを果たせるかが、この頂上決戦を構成する各試合のキーポイントとなった。

マスコットのアピにゃんを抱えるAPINA VRAMeSのDOLCE.選手(右から)、UCCHIE選手と、NIKE選手、KENTAN選手

先鋒戦 NIKE.選手 vs TENIN選手

NIKE.選手 vs TENIN選手(配信より)

テーマ:PEAK(ノーツ数の瞬間密度が高い譜面)
1曲目:PHOTONGENIC(L.E.D. fw.堀澤麻衣子)
NIKE.選手 2320 ○ - × 2280 TENIN選手
2曲目:Static State(Nhato)
NIKE.選手 2381 ○ - × 2331 TENIN選手

ファイナルステージの口火を切ったのは「PHOTONGENIC」。NIKE.選手が序盤の低密度部分で相手と拮抗する高い精度をキープしながらじわじわと差を付け、中盤の軸地帯とトリルを契機に引き離し、自選曲を守り抜いた。

2曲目、“JAPANESE GACHIOSHI BOY”ことTENIN選手は序盤の高速階段地帯で先行するも、基本精度で高水準な仕上がりを見せたNIKE.選手に追い抜かれる。ブレイク地帯でチームメイトやアドバイザー席から歓声が上がるほどの高度な演奏を披露した“安定の羅針盤”NIKE.選手が勝利、APINA VRAMeSのスタートダッシュに貢献した。

次鋒戦 KENTAN選手 vs ANSA選手

KENTAN選手の選曲(配信より)

テーマ:CHARGE(チャージノートやバックスピンスクラッチが難しい譜面)
1曲目:infinity mirror(Dirty Androids)
KENTAN選手 2290 × - ○ 2308 ANSA選手
2曲目:真夏の花・真夏の夢(Sana)
KENTAN選手 1482 ○ - × 1474 ANSA選手

高速階段→チャージノーツ、チャージ中のトリルといった難所ごとにANSA選手が差を広げ、KENTAN選手の選曲にカウンターを決めた1曲目を経ての2曲目「真夏の花・真夏の夢」。CHARGEテーマの曲はレーンを入れ替えるRAMDOM系オプションなし(いわゆる固定オプション)でのプレーがセオリーだが、ANSA選手はレーンを入れ替えるRANDOMオプションを選択。自選曲への対策と自信を窺わせるANSA選手の選曲に、しかしKENTAN選手が粘り強く食らいついて勝利。互いが互いの持ち込んだ楽曲を食い合う白熱のバトルとなった。

五将戦 NIKE.選手 vs KUREI選手

NIKE.選手 vs KUREI選手(配信より)

テーマ:CHORD(同時押しが難しい譜面)
1曲目:Discloze(lapix)
NIKE.選手 2674 ○ - × 2664 KUREI選手
2曲目:ユミル(MYTHOLOGIA by MLREC.)
NIKE.選手 2841 ○ - × 2840 KUREI選手

2人の鍵盤音が完全にシンクロして会場に響く。1曲目、1~2点の優位を互いに奪い合いながら辿り着いたブレイク開け、ドラフト2巡目での選抜ながら「実質1巡目」と称される高い実力を持つKUREI選手を、しかしNIKE.選手が一気に引き離して勝利。そして運命の2曲目、1ケタ点のアドバンテージを保つKUREI選手に、NIKE.選手は粘りを見せ1点、また1点と追いすがる。

そしてついに楽曲のラスト3秒でとうとう同点に達し、最終的に1点差のまくりを見せての大逆転勝利。これまでにも対戦相手との僅差が続く勝負で心臓の強さを発揮してきた“安定の羅針盤”NIKE.選手が、ファイナルステージの全選手中唯一となる4戦全勝を遂げた瞬間であった。

中堅戦 UCCHIE選手 vs U*TAKA選手

テーマ:NOTES(楽曲の長さに対する総ノーツ数が多い譜面)
1曲目:murmur twins(yu_tokiwa.djw)
UCCHIE選手 2391 ○ - × 2386 U*TAKA選手
2曲目:Override(Nhato)
UCCHIE選手 2916 × - ○ 2930 U*TAKA選手

いずれ劣らぬ名勝負となった中堅戦の2曲。1曲目の「murmur twins」ではたびたび降り注ぐ2連打をはじめとする数々の難所で全く崩れの気配を見せず、UCCHIE選手が自選を守っての勝利。"王者”と称され、とりわけ中堅戦のテーマである高密度ノーツ譜面で絶対的な強さを発揮してきたU*TAKA選手が、BPL 2021を通してDOLCE.選手以外から初めて土をつけられた瞬間であった。U*TAKA選手もまた2曲目の自選では、本番一発勝負にしてMAX-12(自身のベストスコア-2)という圧巻のスコアで勝利、王者たる貫禄を保ってみせた。

チームメイトと喜び合うAPINA VRAMeSの選手たち

三将戦 DOLCE.選手 vs ANSA選手

DOLCE.選手 vs ANSA選手(配信より)

テーマ:SCRATCH(楽曲の長さに対するスクラッチが多い譜面)
1曲目:BLUE MIRAGE(DJ CHUCKY)
DOLCE.選手 3093 ○ - × 2978 ANSA選手
2曲目:Halfway of promise(Yu Takami feat.Shihori Nakane)
DOLCE.選手 1851 ○ - × 1830 ANSA選手

スクラッチといえばDOLCE.選手、DOLCE.選手といえばスクラッチ。DOLCE.選手は自選曲序盤の激しいスクラッチ地帯で80点ものアドバンテージを確保し、そのまま終結まで相手を全く寄せ付けない“大魔王”振りを見せつける。ANSA選手は小刻みなスクラッチが飛び交うガールズロックナンバー「Halfway of promise」で、終盤までDOLCE.選手と僅差でのチェイス。

終盤の「うまくいくときがあるからね」という歌詞が歌われるパートでは、「ラストの難所次第でワンチャンある点数差だったので、(中略)一種の自己暗示の為に」“弾き語り”でプレーする姿で観衆を魅了したANSA選手もあと一歩点数で及ばず、DOLCE.選手に軍配が上がった。

副将戦 UCCHIE選手 vs KUREI選手

UCCHIE選手 vs KUREI選手(配信より)

テーマ:SOF-LAN(BPM変化に対するノーツが難しい譜面)
1曲目:ピアノ協奏曲第1番"蠍火"(virkato)
UCCHIE選手 2736 ○ - × 2643 KUREI選手
2曲目:DAY DREAM(Mutsuhiko Izumi)
UCCHIE選手 2031 ○ - × 2011 KUREI選手

初代「beatmania」(1997)から存在する、BPMに比例するスクロールスピード変化というギミックが、eスポーツとしての「beatmania IIDX」を舞台に牙を剥く副将戦。HAL選手(SILKHAT)やCORIVE選手(SUPER NOVA Tohoku)らと同様、BPLの各シーズンを通して顕著な成長を見せたUCCHIE選手が、鉄人・KUREI選手に対して最終盤の超高密度地帯で大差を付け驚きを与えた1曲目。そして数多の課題曲中でもとりわけトリッキーな譜面に乗せてエレキギターが荒れ狂う「DAY DREAM」に、見事なギアチェン(曲中でのオプション操作)技術と高密度な譜面への対応力を双方ともに発揮し鬼気迫るバトルを演じた2曲目。ゲームの最高難易度である☆12の対決に相応しい見事な戦いを、UCCHIE選手が2タテで制した。

大将戦 DOLCE.選手 vs U*TAKA選手

DOLCE.選手の選曲は彼の代名詞とも言えるスクラッチ曲(配信より)

テーマ:FREE(自由に選曲可能)
1曲目:灼熱 Beach Side Bunny(DJ Mass MAD Izm*)
DOLCE.選手 3307 ○ - × 3186 U*TAKA選手
2曲目:冥(Amuro vs Killer)
DOLCE.選手 3672 × - ○ 3755 U*TAKA選手

BPL 2021の締めとなる大将戦は、beatmania IIDX競技選手の頂点といえる2人が、それぞれが得意とするテーマの課題曲から自由に選出し相互に提出(誰が称したか“名刺交換”とは粋な表現だ)。DOLCE.選手の選曲は、「beatmania IIDX」を象徴するゲーム要素であるスクラッチ操作の指示が大量に降り注ぐ「灼熱 Beach Side Bunny」。自己ベストですら3300点以上を達成している人間が数える程しか存在しないこの譜面を、DOLCE.選手はセカンドステージ第7試合に引き続き、ファイナルステージでも一発勝負で3300点超え。王者の鷹・U*TAKA選手を下してみせた。

U*TAKA選手の選曲はリリースから16年を経ても、なお「beatmania IIDX」を代表する名曲として君臨する楽曲の一つ(配信より)

一方のU*TAKA選手が提出した楽曲は「冥」。「beatmania IIDX 12 HAPPY SKY」(2005)のラスボス、最高難易度☆12の中でも最上級楽曲の一つ、高密度譜面の代表格、段位認定(腕前の認定機能)の最高峰である皆伝の最終楽曲、冥王星への片道切符をモチーフとした物語性の強いピアノドラムンベース楽曲に合わせて絶え間なく降り注ぐ2000個のノーツ……「beatmania IIDX」という音楽ゲームそのものを代表するといって過言ではないボス曲を課題曲とした最終対決は、高密度譜面において無類の強さを誇るU*TAKA選手が制して勝利。エキシビション・マッチの色合いすら漂うシンボリックな大将戦をもって、BPL 2021の全試合は幕を下ろした。

DOLCE.選手 vs U*TAKA選手(配信より)

以上の全7対戦からなるファイナルステージを通して、APINA VRAMeSが20pt、ROUND1が6ptを獲得。BEMANI PRO LEAGUE初代チャンピオンの栄冠には、“見据えるビジョンは勝利への道”APINA VRAMeS(株式会社共和コーポレーション)が輝いた。

MVPはU*TAKA選手

個人賞の表彰を受けたU*TAKA選手(左から)、MIKAMO選手、KUREI選手

セレモニーでは優勝チーム表彰に先立ち、BPL 2021のファースト~セカンドステージを通しての個人賞を表彰。トップスコア賞(一番高いスコアレートを記録)はMIKAMO選手(GAME PANIC)、カウンター賞(相手の選曲で勝利した回数が最多)はKUREI選手(ROUND1)とMIKAMO選手(GAME PANIC)。MVP(獲得ポイントが最多)はU*TAKA選手(ROUND1)が勝ち取り、各選手にはコナミアミューズメント社の西村宜隆執行役員からメダルが授与された。

トロフィーを手に記念撮影に臨むAPINA VRAMeSの選手たち

そしてチーム表彰。優勝を果たしたAPINA VRAMeSには、コナミアミューズメント社の沖田勝典・代表取締役社長からメダルが授与された。

表彰式の様子(配信より)

最後には西村宜隆執行役員から、BPL 2021の閉会宣言とともに、「beatmania IIDX」に加えて「SOUND VOLTEX」「DanceDanceRevolution」が新たに参戦し計3タイトルを対象機種とした、BPLの“ネクストシーズン”の予告が初披露された。

ネクストシーズンの予告(配信より)