格闘ゲームの祭典「EVO 2021 Online」が今年8月に開かれました。5つの格闘ゲームがメインタイトルとして採用され、中でも注目を集めたのは「GUILTY GEAR -STRIVE-(以下、GGST)」部門でした。

「EVO」は毎夏開催されていた世界最大級のeスポーツイベントの一つですが、昨年はコロナの影響などもあり開催中止となりました。今年は新型コロナウイルス感染拡大の状況を鑑みて、地域別のオンライン大会として復活。8月6日から15日にかけて開かれました。

GGSTは6月に発売された「ギルティギア」シリーズ待望の最新作で、発売直後にEVOのメインタイトルとして採用されました。EVO初のGGSTの大会ということもあり、各地域の強豪プレイヤーたちがこぞって参加しハイレベルな戦いが繰り広げられました。

ヨーロッパ地区 「スマブラ」界のスター・Leffen選手が大活躍

これまで「ギルティギア」シリーズの大会は日本とアメリカの選手が勝ち上がることが多かったのですが、今回の「EVO」は地域別。普段あまりスポットライトが当たらないヨーロッパの選手たちの活躍も見られました。

そんなヨーロッパ地区でずば抜けた実力を見せて優勝したのが、TSMに所属するスウェーデンのLeffen選手です。Leffen選手は「大乱闘スマッシュブラザーズDX」のトッププレイヤーで、「EVO 2018」では優勝に輝くなど国際的な成功を収めた経験もある大スターです。

「ドラゴンボール ファイターズ」をはじめ、近年ではスマブラ以外の格闘ゲームにも精力的に取り組んできたLeffen選手はGGSTにもいち早く参入し、リリース初期から配信などで練習を重ねていました。

Leffen選手が扱うキャラクターはチップ=ザナフ。ゲーム中で最も体力が低く、代わりに最速の機動力を持つ攻撃的なキャラクターです。スマブラで培った空間管理能力を生かしてチップを巧みに操り、素早い攻めで他のプレイヤーたちを次々と下していく様は圧巻でした。

決勝の相手となったのは「ギルティギア Xrd」時代からヨーロッパの強豪プレイヤーだったスペインのUriel Legion選手。使用するのは今作から追加された新キャラの名残雪で、機動力がない代わりにリーチと攻撃力が高い、チップとは対照的な性能のキャラクターです。

Leffen選手の操る忍者のチップ(左)Uriel Legion選手の操る侍の名残雪(右)

試合が始まるとLeffen選手は削岩脚やαブレードなどを使い、名残雪の手が届かない空中からの素早い攻めを展開します。画面端へ追い込むとコマンド投げや中段攻撃でガードを崩し壁割りコンボを叩き込む、名残雪にとっては苦しい状況が続きます。

空中から急降下する削岩脚

これに対し、Uriel Legion選手はバックジャンプや空中投げを巧みに使って徐々に対応していきます。中には起き攻めのめくりαブレードに対し覚醒必殺技で切り返すなど大胆な対策も見られ、Uriel Legion選手もギルティ勢としての威信をかけて必死に食らいつきます。

実力伯仲の試合でしたが、ウィナーズ側のLeffen選手が先に3本試合を取り、Uriel Legion選手にはリセットを許さないまま優勝となりました。

決め手となったのはしゃがみパンチ

大会優勝後、Leffen選手は「優勝した。でも俺が最強なのはみんなもう知ってたよね」とツイートし、プレイオフに向けての自信を語りました。

Sonic Fox選手が惜敗! 波乱の北米地区

続いて注目したいのが北米地区です。北米地区の出場者には「BLAZEBLUE」シリーズなどの強豪プレイヤーとして有名なLord Knight選手や、「MARVEL VS. CAPCOM 3」のトッププレイヤーであるSupernoon選手など、数々の有名プレイヤーが名を連ねます。

しかしそんな中でも特に有名なのはやはりEvil Genius所属のSonicFox選手でしょう。「Skullgirls」や「Mortal Kimbat」シリーズ、そして「ドラゴンボール ファイターズ」と数々のタイトルで世界大会の優勝経験を持つ、世界で最も成功している格闘ゲームプレイヤーのひとりです。

そんなSonicFox選手もリリース当初からGGSTをプレイしています。本大会には優秀な立ち回り性能と近距離での崩し能力を併せ持つレオ=ホワイトファングをメインキャラクターに据えて出場しており、優勝候補と目されていました。

SonicFox選手の操るレオ=ホワイトファング

順調にプールを抜けたSonicFox選手でしたが、Top 32の試合で強豪TempestNYC選手に敗北してしまいます。その後ルーザーズを勝ち上がり、Top 8では先述のLord Knight選手を下し、さらにはTempest NYC選手相手にもリベンジを達成。ルーザーズ側としてグランドファイナルへと駒を進めます。

対するウィナーズ側では「ギルティギア Xrd」でエルフェルト使いの強豪として知られていたHotashi選手が待ち構えます。Hotashi選手の使用キャラクターは名残雪で、これまた忍耐強くレオの攻めを凌ぎ切れるかが勝負の鍵になってきます。

Hotashi選手の操る名残雪

試合が始まるとSonicFox選手はレオの強みである飛び道具や突進技による奇襲を生かして名残雪の懐に潜り込もうとしますが、Hotashi選手は名残雪のリーチの長い通常技を果敢に置いて距離を詰めさせません。ダウンにつながるしゃがみキックやダストに対する警戒心が高く、常にそれらの間合いの外から技を振って画面をコントロールしていました。

またSonicFox選手が起き上がりに無敵技を頻発するのに対し、Hotashi選手はそれらを落ち着いてガードしていたのが印象的でした。

無敵技アイゼンシュトルムはガードされると手痛い反撃を受ける

名残雪は必殺技を使うごとにブラッドゲージが溜まり、満タンになると体力に減少ペナルティを受ける特性を持っています。つまり名残雪は必殺技で強力な攻めを展開できる傍ら、ブラッドゲージを溜め過ぎないように管理する必要があるのですが、Hotashi選手はこのゲージ管理にも長けていた印象がありました。

Hotashi選手は有効な場面では積極的に必殺技を使い、画面端ではゲージを回復できるコマンド投げを上手く通すことで、溜まったゲージを下げていました。また、ゲージが溜まると必殺技の使用をグッとこらえ、ブラッドレイジにならないギリギリの状態で戦っていました。

左下のゲージに注目、ゲージが赤くなっているが、ギリギリ満タンになっていない

SonicFox選手もひとたびダウンをとってしまえば強力な起き攻めで一気にラウンドを奪いますが、全体的にはやはりHotashi選手優勢。試合は3-2でHotashi選手に軍配が上がり、SonicFox選手にリセットを許さないまま優勝の座を勝ち取りました。

優勝候補筆頭であったSonicFox選手を打ち破り、古参ギルティ勢としての面目を保ったHotashi選手。もしかすると、今後の北米ギルティシーンを牽引するような存在になっていくかもしれません。

Hotashi選手優勝時の配信アーカイブ、お母さんも登場して祝福する様子は心が和みます

日本勢が優勝逃す! 波乱のアジア地区

Burning Core所属のプロゲーマーかずのこ選手をはじめ、「ドラゴンボール ファイターズ」のトッププレイヤーとして活躍していたBNBBN選手、古参チップ使いとして有名なサミット選手なども出場し、高レベルの戦いが続いたアジア地区。

下馬評では日本勢の優勝が予想されていましたが、蓋を開けてみると日本勢はグランドファイナル出場を逃す展開になりました。

波乱のアジア地区ですが、まず注目したいのは中国のYuki選手です。これまで国際シーンではあまり知られていなかったプレイヤーですが、今大会ではサミット選手、よしもとゲーミング所属のkubo選手、さらにはかずのこ選手と数々の強豪を下し、日本勢キラーとしてその実力を世界に見せつけました。

名残雪を使うYuki選手のプレイスタイルは攻撃的で、かずのこ選手のチップ相手にも防戦一方になることなく、積極的に攻めを展開していました。立ち回りでは冠雪を頻発して相手に接近し、空中からの攻めには果敢に空対空攻撃で対応していました。またダウンを奪われてもパンチで暴れている場面が目立ち、相手に思うような攻めを展開させないようにしているのが印象的でした。

決め手となったのは立ちキック

快進撃をみせたYuki選手はその後ルーザーズセミファイナルでBNBBN選手に敗れ、今大会の最終成績は4位に終わります。この時点でトーナメントに残っていた日本人選手はBNBBN選手のみでしたが、このBNBBN選手もルーザーズファイナルで韓国のxyzzy選手に敗北を喫し、3位に終わります。

xyzzy選手は「ストリートファイターV」などでも活躍するプレイヤーで、GGSTでは遠距離に特化したテクニカルなキャラクター、アクセル=ロウを使用します。切り返しに乏しいため一度接近されると高度な防御テクニックを要しますが、xyzzy選手は持ち前の防御センスで数々の強豪プレイヤーたちの攻めを凌ぎ切り、ルーザーズからグランドファイナルに進出します。

そんなxyzzy選手を決勝で待っていたのは同じく韓国のDaru_I-No選手。「ギルティギア Xrd」のころから日本を拠点に活動しており、様々な大会で成績を残してきたプレイヤーです。Daru選手は空中からのトリッキーな攻めが特徴のイノを使い、ウィナーズファイナルでは一度xyzzy選手に勝利しています。

Daru選手のイノ(左)xyzzy選手のアクセル(右)

試合がはじまると、序盤はウィナーズファイナルと同じようにDaru選手有利の展開が続きます。Daru選手は低姿勢の「大木をさする手」や、空中からのホバーダッシュによりアクセルの鎖攻撃を見事にかいくぐり、その機動力を生かしてアクセルの苦手な近距離戦に持ち込んでいました。また画面端では覚醒必殺技のメガロマニアも積極的に使い、一気に体力を奪っていました。

このままDaru選手が勝ってしまうのかとも思われましたが、ここからxyzzy選手が徐々に対応をみせます。ホバーダッシュに対しては次第に立ちパンチがヒットするようになり、地上戦でもしゃがみハイスラッシュがカウンターヒットする場面が多くみられるようになりました。xyzzy選手が少しづつDaru選手の動きを捉えはじめ、第4ゲームの最終盤ではxyzzy選手の起き上がり覚醒必殺技が見事にヒットします。

xyzzy選手のリバーサル百重鎌焼がカウンターヒット

ここでスコアは3-1となってグランドファイナルはリセットとなります。

リセット後、なんとか序盤のペースに戻したいDaru選手でしたが、やはりxyzzy選手が主導権を握ったまま試合が進みます。Daru選手が少しでも動こうとすればそこにアクセルの通常技が置いてあり、また地上にいるとコマンド投げの冬蟷螂が飛んできます。

またxyzzy選手は近寄られた後の対処法も印象的で、とにかくロマンキャンセルを多用してなんとしても遠距離戦の状態を維持しようとします。時には紫ロマンキャンセルを2連続で使用することもあり、絶対にDaru選手に接近戦の機会を与えないようにしていました。徹底した防御戦略であると同時に、これは立ち回りで体力を削り取れるという自信の表れであるともいえるでしょう。

紫ロマンキャンセルで距離を取るXyzzy選手

Daru選手も必死にアクセルの通常技をかいくぐろうと模索しますが、勢いづいたxyzzy選手相手に中々攻めの機会を見出せません。そして最後には立ちキックが決め手となり、アジア地区の優勝者は卓越した防御と間合い管理能力をみせたxyzzy選手となりました。

アクセルの立ちキックがイノの着地隙に刺さる

非常にレベルの高い大会となったアジア地区ですが、決勝は韓国人選手同士の対決となり、日本人選手は惜しくも優勝を逃してしまいました。今まではギルティといえば日本勢が強いゲームでしたが、今大会では新たに中国勢や韓国勢が台頭し、日本勢を凌ぐ実力を見せつけました。今後アジアのギルティシーンでは、日中韓が三つ巴で戦う環境になっていくのかもしれません。

EVO 2022、本場ラスベガスで開催か

今年のEVOはオンライン開催という新たな試みとなりしたが、地域別だったこともあり各地で新しいプレイヤーが頭角を現し、ギルティの新時代を感じさせる大会でした。

また大会の途中では「EVO 2022」のティザートレイラーも公開されました。次回大会はアメリカはラスベガス。2022年の8月5日~7日にかけて、オフラインでの開催が予定されているようです。

EVO 2022のトレイラー

どのゲームもオンライン対戦機能が充実している昨今ですが、アーケード文化を背景に持つ格闘ゲームコミュニティーにとっては、やはりオフライン大会の盛り上がりは欠かせません。新型コロナウイルスの影響はしばらく予測ができませんが、「EVO」オフライン大会実現に向けての動きがあるのは格闘ゲームファンにとっては嬉しいニュースなのではないでしょうか。

今後の続報に注目です。