――2019年8月にeスポーツ選手向けのサプリメント「e-supple」の販売が始まりました。健康食品や美容品などで知られる愛しとーとがeスポーツに参入したきっかけは?

eスポーツ専用サプリメント「e-supple」シリーズ

ゲーマーの新入社員が「eスポーツは日本でも盛り上がるので事業化したい」との話を、僕にしてくれたのがきっかけです。

愛しとーととして、何ができるか。そう考えたとき、健康を考える会社として、ゲーマーの健康もサポートしようとなりました。ゲーマーの中には、ゲームに夢中になる一方で、食生活が乱れている人もいましたので。

――売り上げはいかがですか。

数字は公開していませんが、売り上げは顕著に伸びています。「目」「集中力」「リラックス」をサポートする3種のサプリメントがありますが、ゲーマーでない方々も購入してもらっています。リモートワークが普及し、モニター画面をずっと見て、目や脳が疲れる中で、ビジネスパーソンのニーズともマッチしました。

「ワクワクのエコシステム」をつくりたい

――サプリメントにとどまることなく、2020年7月にはプロチームのマネジメントなどeスポーツ事業を展開する会社「CS entertainment」を設立しました。事業拡大の狙いは。

愛しとーとの中村浩之社長

サプリの開発や販売を通じ、eスポーツを牽引(けんいん)する多くの若者と出会いました。

「ゲームが楽しくてしょうがない」というワクワク。そして「eスポーツで人生を切りひらいていこう」という情熱。そんなキラキラしている若者こそが、これからの日本の未来を担っていくことになると感じました。

一方で、プロ選手と言っても、eスポーツ市場はまだ未熟なところもあって、給与不払いなどのひどい扱いを経験してきた人も多いんです。

だから大人として、彼らや彼女らに「安心してワクワクできる場所」を用意し、応援したいと思いました。若者の躍動を見れば、大人もワクワクさせてもらえます。そんな「ワクワクのエコシステム」を実現するのが、子会社設立の狙いです。

CS entertainmentがまず取り組んだのが、プロチーム「芝刈り機〆」のCoDモバイル部門のマネジメントです。社名の「CS」はCoDモバイル部門の選手たちが大事にしてきたコードネームから名付けました。

――ビジネスの視点から、企業がeスポーツに参入するメリットは?

愛しとーとのロゴ

通信販売事業を展開する愛しとーとは、常に新しい広告媒体を探しています。既存メディアの影響力が低下する中で、それは至上命題です。

今は、個人が発信力を持つ時代です。その中でも、eスポーツ選手やストリーマーがどんどん発信力をつけています。その発信力は国境を越えます。しかも、彼らは視聴者やフォロワーとの双方向のコミュニケーションも得意です。広告媒体として考えたとき、その魅力はどんどん増していくでしょう。

一方で、まだまだeスポーツの重要性を理解している企業は多くはありません。だからこそ今なら先行者の利益を得られると思っています。

ファンに愛されるプロ選手を育てる

――地方都市に本社を置く企業がeスポーツの取り組む意義は?

私は福岡だからこそ、eスポーツ事業に取り組むことは企業として有利だととらえています。

まずeスポーツが盛んなアジアに近いのが大きなメリットです。行政もeスポーツの発展に力を入れています。新型コロナ感染がおさまった後、この地で国際大会が開かれれば、多くのファンがアジアから訪れてくれると思います。

――CS entertainmentは「人を育てる」ことを掲げています。今年1月には、福岡県那珂川で日本最大級のゲーミングハウスの運営が始まりました。

マネジメントするプロチーム「FOR7」の選手5人、マネジャー1人が共同生活を送りながら、日々練習しています。栄養士が監修した食事を提供し、運動不足解消のためのトレーニングジムもあります。

狙いの一つして、本当の意味でファンから愛される選手に育ってほしいとの思いがあります。本当のプロ選手になるにはゲームがうまいだけでは不十分で、子どもたちが憧れ、手本になれるような人間的な魅力が必要です。そうした選手が現れれば、eスポーツファンは増えるし、もっと多くの人に受け入れられると思います。

一方、eスポーツ選手はゲームに熱中してきた分、人とのコミュニケーションが苦手な傾向もあります。ゲーミングハウスで生活する「FOR7」の選手たちは地域の特産品やまももの収穫を手伝ったり、川の清掃に参加したりなどの地域交流をしています。こうした経験を通して、選手たちは社会性を身につけられるし、地域の人たちにとっても「おらがチーム」として応援したいとの気持ちになります。

やまもも収穫に参加する「FOR7」の選手。地域住民(右)と交流することを大切にしています

選手に人として成長してほしいと思うのは、彼らのセカンドキャリアも考えてのことです。20代で反射神経が衰えた場合、「ゲームがうまい」だけでは次のステップに進めませんから。

――「エンタメによるノーマライゼーションの実現」も掲げますが、どのような取り組みをしていますか。

生まれつき左腕に障害がある星野佑介さん(選手名:ジジ)のマネジメントを担っています。彼はパラテコンドーの元日本代表で、eスポーツプレイヤ-でもあります。今はゲーム配信に力を入れており、そのサポートをしています。

eスポーツやゲームは年齢や性別、障害に関係なく楽しめるものです。ジジ選手がゲーム配信することで、そうしたeスポーツの可能性を多くの人に伝えることができると期待しています。

eスポーツ特化型ビジコンで、起業を支援

――eスポーツ特化型ビジネスコンテストを2020年7月から始めました。その狙いは?

日本でeスポーツが発展するには、eスポーツ事業で利益を出せる企業がどんどん増えていく必要があります。

ただ、一般的なビジネスコンテストでeスポーツの新規事業を提案しても、審査員の多くはビジネスはわかってもeスポーツについてはわからないんですよ。ならばと、その両方に精通する人が審査員を務めるコンテストを2020年11月に始めました。これまで2回開催し、計120を超えるアイデアが集まりました。

アイデアに賞金を出すだけだったら意味はないので、その後もサポートします。第一回コンテストで優勝した事業案「バリアフリーのeスポーツカフェ」はプレオープンを果たし、第2回優勝のアイデア「eスポーツ塾」は事業化に向け準備が進められています。

eスポーツ事業のアイデアが集まるビジネスコンテスト。優勝者には、賞金50万円が贈られます

――9月17日には、ふくおかフィナンシャルグループ傘下のデジタルバンク「みんなの銀行」とパートナーシップを結ぶことが発表されました。

みんなの銀行が「芝刈り機〆」と「FOR7」を金融の側面からサポートしてくれます。チームのファンが「みんなのCheer Box」に貯金すると、貯金額の1%相当がチームに送られる仕組みです。

eスポーツ選手もストリーマーも職業としてまだ認知されておらず、銀行からお金を借りたり、カードを作ったりするとき、審査で厳しい評価がされがちです。みんなの銀行が将来的に、蓄積されたお金のデータを分析することで個々人の信用力を評価してくれるようになれば、選手たちの人生の後押しになってくれると思います。

――今後、どのようなeスポーツ事業を展開する予定ですか?

今年7月、YouTubeクリエイター「芝刈り機〆危!」と、ジョイントベンチャー「ABUUU株式会社」を設立しました。愛しとーとの企画・製造・販売のリソースを生かし、発信力のあるプロゲーマーやストリーマーとのコラボ商品の開発を進めていくのが狙いです。例えば、香水やアパレルです。マネタイズの方法が増えれば、プロゲーマーやストリーマー業界の可能性ももっと広がると考えています。

――最後に、eスポーツの可能性について改めて聞かせ下さい。

eスポーツを日本の文化、エンターテイメントとして育てていくことで、AI時代の国際競争力の原資になっていくと確信しています。ビジネス面で言えば、eスポーツやその選手を広告媒体として企業が利用していくようになるでしょう。

近い未来、仮想現実を楽しむのが当たり前になるとも思っています。家に帰ったら、仮想現実の世界に入り、世界中の人々とコミュニケーションしたり、買い物したりする。その世界の中で、eスポーツは大きなコンテンツになっていると思います。

愛(あい)しとーと

「すべての女性を綺麗に、笑顔に」を理念に、コラーゲンゼリー「うるおい宣言」をはじめ、様々な健康食品や化粧品、食品などを企画・製造・販売。従業員約200人(2021年9月時点)。