作業の合間にサクッと音ゲー

3年前くらいから絵を描きはじめて毎日ペンを握ってると、自然と「50分イラストを描いたら10分休憩」というサイクルをするようになった。

その10分休憩はもっぱら一服しながらリフレッシュのためにゲームをやるのだけど、「10分でサクッと起動してサクッと終わるライトなゲーム」って意外と少ない。Apexとか1プレイでもろもろ30分以上は遊んでしまうし、気分転換目的にしてはちょっと重い。起動のたびに未だに深呼吸してるし。

昔から好きなジャンルであるローグライクゲームは、序盤でパチャパチャする分には当てはまるのだけど、良いツモを引くと「あれ、これ数時間コースでは?」と逆に気持ちがサガってしまうこともある。RPGやオープンワールドも自分の裁量でやれるっちゃやれるけど……こういうゲームは本腰を入れてガッツリやりたい。
そのほか未知のジャンルを漁っていけばきっと目的に合うゲームは見つかるのだろうけど、なんだかちょっと億劫で……。

だんだんと未クリアのゲームの手札が少なくなってきて悩んでいるとき、ふと気づいたのだ。
「サクッと起動してサクッと終われるライトなゲームって、ズバリ音ゲーなのでは?」と。

ヌルそうなゲームに見えたが気のせいでした

ということで友人からの紹介で「‎A Dance of Fire and Ice(火と氷の踊り)」という音ゲーを買いました。なに? このふわっとしたタイトル。

起動するとこうなる。

見てよこれ! 起動した瞬間、赤と青の球体がぐるぐると回る様子を流し続けるシュールな絵面が目に飛び込んでくる。

そうそう、この唐突感。こういう簡素さがちょうどいいんだよな。企業とかエンジンとかのロゴをすっ飛ばして、起動したら即時にゲームを開始できるスピード感は助かる。

ゲーム内容は超シンプルで、「リズムに合わせてボタンを押す」だけ。音ゲーならそらそうよって思うだろうが、使うボタンは1個だけなのが潔い。

もうちょいシステムを詳しく話すと、本作の目的は二つの球体をゴールまで導くこと。これら球体はどちらかがレーン上に固定され、もう片方は固定された球体の周りを円を描くように自動で回る。

「A Dance of Fire and Ice」のトレーラー

いま動いている球体が、レーンの先のマスと重なった瞬間にボタンを押せると成功だ。動いていた球体がレーン上に固定され、それまで止まっていた球体が動き出す。それを繰り返す、つまり二つの球体が互い違いに固定・回転することでレーン上を少しずつ進むのだ。説明がごちゃついたが先に話した通り、要はリズムに合わせてボタンを押すだけのシンプルなゲームである。

……いやいやいや。シンプルすぎない……? ナメてもらっては困るが?
こちとら音ゲーに貴重な青春時代を捧げたし、常日頃から9個のボタンをしばいてんだ。レーンもボタンも1個の音ゲーなんてヌルすぎるね!

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……ワンミスで落ちるんですけど。

音ゲーの皮をかぶった死に覚えゲー

このゲーム、もちろん音ゲーではあるんだけど、それ以上に高難易度なトライアンドエラーを繰り返す「死に覚えゲー」に感触が近い。アクションゲームとか、STGとかによくあるやつだ。

本作の楽曲クリアは、フルコンボするのと同じだ。リズムに合わないままプレイを続行しても、レーンからコースアウトしっぱなしになるだろうからこうした仕様になっているのだろう。
とはいえ判定はあまり厳しくないし、レーンがかすりもしないときにボタンを押すアクションは1回だけ許される。でも、球体がレーンを通過しきったりボタンを押すタイミングが悪かったりしてコンボが途切れたら、その時点で問答無用でゲームが終了する。

音ゲーは数回ミスしてもクリアはできる仕様が珍しくないなか、クリアだけで男気あふれるオワタ式を要求してくるなんてこと、なかなかないよ。
なんてストイック……しかしちゃんと理由のあるストイックさなので好感が持てる。

曲と譜面を通しで確認する「お手本プレイ」のような機能もない。もしかしたら不親切なだけかもしれないけど、おれはこれを意図されたものと考えている。
ゲームを進めていくうちに曲の展開が予想できないしリズムの取り方もわからない難所に必ずぶち当たるのだけど、このゲームはレーンの形によってトリルや三連符など、どんなリズムを刻むのかがわかる。試行錯誤していくうちにだんだんとリズムも曲も紐解けていく。

何度も死にながらレーンが構成する譜面パターンを覚えていって、ようやくクリアできたときのカタルシスはかなりのもので、もっと味わいたくて深みにハマる中毒性も備えている。これはお手本プレイで曲とリズムがわかればすぐに解決することなのだけど、きっと無粋なことなんだろう。ストイックだ……これもそんな理由があるとしたら好感が持てるね。

音ゲー未経験者にとっては良き入門に。上級者にとっては良き練習に

「‎A Dance of Fire and Ice」はルールがシンプルがゆえに、音ゲー原初の魅力のひとつである「リズムに合わせてボタンを叩くと楽しい」を高純度かつライトに遊べる。やっぱりいくつになっても音に合わせてボタンを叩くのは楽しい、そんな気分にさせられる。

だからといって単調なゲームというわけでもなく、三連符やトリルなど、音ゲーで頻出するリズムのパターンはさまざまな図形で表現されていて画期的だし、SDVXの特殊演出のような視覚的なエフェクトが多彩だったりと飽きさせない作りになっている。

収録楽曲の譜面の調整もかなり上手で、何度もプレイすれば未経験者でもなんとかクリアできるくらいの設計になっている。音ゲー難関曲をクリアしたときのカタルシスを、早くから得られるような仕組みだ。これは音ゲー未経験者や初心者にこそ味わってほしいな。

でも、実は音ゲーやっているプレイヤーにも勧めたいポイントがあるんです。
ノーツが1種類しかない「A Dance of Fire and Ice」はその性質上、高難易度の楽曲は「手数の多さ」と「ころころと変わる変拍子」が多用される傾向にあるのだけど、他の音ゲーより断然「曲のリズムにノること」がクリアに重要になってくる。

最近毎日継続してこのゲームをやっていたら、明らかに「曲のリズムにノる意識」が以前より根付いていて、ポップンをやったらハイスコアを複数更新できた。「もしかしたら火と氷で踊り狂ったからかも……?」と感じるくらいには手応えを感じている。

このゲーム、音ゲーの基礎力である「リズム感」をより向上させる練習ゲームとしていいのかもしれない。FPSにおけるAIM練習ソフト「KovaaK 2.0」みたいな。

「‎A Dance of Fire and Ice」は、Steam/itch.io/iOS/Android版を配信している。Steam版は620円で12曲+6曲入り(全曲クリアでアンロック)。少ないと思った? 侮るなかれ、何度も挑戦することになるから1曲ごとに歯ごたえがあるし、Steam ワークショップから有志が作成した楽曲のダウンロードもできるので、額面以上の満足感が得られるはずだ。

スマホ版(Android/iOS)は12曲入りです(Android版は200円、iOS版は250円)。おれはSteam版でプレイしてるけど、タッチパネルのほうが直感的に遊べて相性が良いかも。

あと、itch.io版はWebページ上で試遊できる。どんなゲームなのか体感してから購入を検討できるぞ。

最近ご無沙汰だけど久しぶりに音ゲーやりたいな~ってときにもめちゃくちゃピッタリだと思う。おれみたいにリフレッシュがてら起動したら「あともう1回だけ……」を何度も繰り返して時間を溶かしましょう。