目次

  1. eスポーツ×音楽が熱い!
    1. 類のない楽曲バリエーション
    2. 音楽ライブとの複合化
    3. 音ゲー×音楽ライブの事例
  2. 「情報発信」と「選手の個性」に注目!
    1. 各選手へのスポットライト
    2. BPL公式の動きとファンコミュニティ
  3. BPLのこれから
RESIDENT DJを務めるkors kのアクト。テーマ曲「Winner's Proof ft. KANASA from bless4」で観衆の熱狂を高める

コナミアミューズメント社の運営する音楽ゲーム初のプロリーグ「BEMANI PRO LEAGUE」(BPL)が開催されている。初年度にあたるBPL 2021は、同社がBEMANI(ビーマニ)ブランドで展開する音楽ゲーム(音ゲー)のフラッグシップタイトルである「beatmania IIDX」を競技種目としたeスポーツリーグである。6月にファーストステージが開幕。現在、大詰めを迎えている。

試合自体は事前収録だが、これを編集しリアルタイムでの実況・解説を乗せた番組が、毎週土曜日の夜にYouTubeの公式チャンネルで放映されている(アーカイブ含め無料で視聴可能)。この番組は、狭義の「ゲーム」の枠を越えた音楽ゲーム競技やエンターテインメントの新たな魅力が発掘されており、率直に言ってあまりにも面白い。この面白さを単に感覚の内に留めず、明確に言語化しておくことには意味があるだろう。

eスポーツ競技というフィールドにおける音楽ゲームの独自性は、文字通り「音楽」がエンターテインメントの要石となっている点にある。eスポーツにおけるBPLならではの魅力について、コナミアミューズメントは「我々の持っている『音楽ゲーム』が、『音楽』と、『esports(ゲーム)』のつなぎを最大限に引き出していると考えており、それと同時にライブパフォーマンスの高いコンテンツであると認識しております」と説明する。

BPL 2021が題材とする「beatmania IIDX」は先行作品である「beatmania」と合わせて24年にわたる歴史を持ち、最新作「beatmania IIDX 28 BISTROVER」の収録曲は1400曲超。曲長が平均120秒と仮定して、単純計算で約50時間にも及ぶ楽曲が収められた筐体が競技の舞台となる。音楽ゲームのeスポーツ化にはセガやNEOWIZといった競合他社も本格参入の兆しを見せているが、少なくとも楽曲バリエーションの面では、コナミアミューズメントは他の追随を全く許さない。

ファーストステージ第15試合の一幕。課題曲「era(nostalmix)」(作曲:TaQ)は「beatmania IIDX 3rd style」(2000)初出

また特筆すべきはBPL 2021の競技現場や番組プログラムに、音楽ライブ(DJライブ)の要素が連続的に組み込まれていることだ。番組の始点から終端までが魅力的な音楽で次々と繋がれ、音楽ゲームを知らずとも楽しめる番組として十二分に成立している。その背景には、コナミアミューズメントがBEMANIシリーズの派生として展開してきた、様々なアーティストライブや競技大会の蓄積もまた反映されている。

KONAMIアミューズメントは、「BEMANI PRO LEAGUE」について、「KONAMIのeスポーツ公式大会『KONAMI Arcade Championship(KAC)』や、BEMANIアーティストライブのノウハウを基に、『esports×音楽』というコンセプトで、『esports』と、良質な『音楽LIVE』両方の側面で楽しめる全く新しいエンターテインメントを生み出そうという、チャレンジコンセプトのもと、生まれました」と説明。また、「番組オープニングとエンディングに新進気鋭のDJを招致したLIVE ACTのみならず、各選手が試合に挑むまでの時間をRESIDENT DJの“DJ kors k”が多彩な音楽でつなぎ、『esports大会』としても『音楽ライブ』としても、より楽しめる内容になっている」とも言及する。

もちろん音楽ゲームと音楽ライブの相性の良さは、他のディベロッパー・パブリッシャーからも認識されている。例として「Cytus」「Deemo」「VOEZ」といったスマホ向け音ゲーで知られる台湾のRayark社は、2012年8月にLegacy Taipei音樂展演空間で開催した「2012 Cytus LIVE Concert」を皮切りに、自社の音楽ゲームIPを掲げたライブイベントを継続的に展開。セガも「CHUNITHM」から生まれたガールズバンド・イロドリミドリをフィーチャーしたライブを2015年から催している。

新興のインディーズ作品に目を向ければ、例えば米国D-CELL GAMESによる横スクロールリズムアクション「UNBEATABLE」の楽曲制作ユニットpeak divideが、2021年6月に行われた音楽ゲームのチャリティ配信イベント「LINK UP 2」上で、自らのオルタナティヴ・ロック・ナンバーとゲーム映像の見事なコラボレーションを披露したのも記憶に新しい。

しかし、コナミアミューズメントは近代音楽ゲームの先駆者として、BPL以前から20年以上にわたり競技としての音楽ゲームの魅せ方を模索してきた。例えば同社は1999年に催した「DanceDanceRevolution」競技大会のひとつ「DDR Best Of Cool Dancers」で既に、音楽ゲーム競技とライブステージを組み込んだイベントを試みており、その蓄積と展開の巧みさには一日の長がある。

ゲームプレイもまた競技選手による楽曲の演奏であるという「beatmania IIDX」の本性と合わせて、コナミアミューズメントはBPL 2021の番組の全編にわたり、音楽に満ちて途切れることのないエンターテインメントを届けることに成功しているのだ。

BPLを深く楽しむ一助となること請け合いの舞台裏配信企画「behind the scenes」より

BPLの公式ウェブサイトやYoutubeチャンネル、Twitterアカウントでは、大会日程やルールなど一般事項に加え、各マッチの注目ポイントのリアルタイム紹介、試合直後の選手インタビュー、ハイライトシーンのリプレイ編集動画といった盛んな発信が行われる。これに加え、各オーナーチームやそのメンバーからもそれぞれ多様な情報発信が活発であることは興味深い。

例えばチーム・レジャーランドは、公式にアドバイザーとして所属し自らもスーパープレイヤーである”べあー”氏による記事を次々と配信(https://note.com/abear_iidx)。チーム所属選手の個別インタビューや各試合の戦略といった関係者ならではの解説記事の他、課題曲リストの解析など独自視点の記事をも次々と制作している。

他にも「Mr.データ」との異名を持つNORI選手(SILKHAT所属)は、BPL 2021各試合についての見どころや戦略の分析を自らのブログ(https://note.com/norimisoiidx/)で発信。持ち前の語学力を活かして英語での海外向け情報発信をも自ら担うなど、一選手の枠をはるかに超えた試みを次々と為している。筆者の推しである。

これらBPL主催側やオーナーチーム、そして各選手による公式~半公式の情報発信と並行して着目すべきは、ファンコミュニティによる試合分析やファンアートといった情報発信文化もまた活発であること。そしてそれらとリンクして、選手個人への注目が高まっていることだ。

音楽ゲームにおいては、前述のKAC大会のほか多くの非公式大会も定期的に開催されている。しかしよほどのスタープレイヤーでもなければ、個々のプレ-ヤーやその個性にフォーカスが当たる機会が限られていたことは否めない。

現に、世界初のプロ音ゲーマーとして2017~2020年にコナミアミューズメントと専属契約を結び、BPL 2021ではAPINA VRAMeS所属選手として活躍するDOLCE.は、2018年のインタビュー(ムック誌「BEMANIぴあ」収録)で以下のように話している。

「格闘ゲームなどと違い、音楽ゲームに関しては、プレーヤーやランカーに注目が集まりにくいと感じることが多い」「プロゲーマーとして、プレーヤーがよりフィーチャーされるようなプロモーションができればと思う」

今回のBPL 2021ではチーム戦を通して全選手が組み込まれる様々な対戦カードの中で、しばしば個人へ強烈なフォーカスが合わせられる。

例えば絶対的な強さを見せ、チームの勝利請負人としてチームメンバーや箱推しファンたちから絶大な信頼を得る選手。尖った楽曲を武器とし他の追随を許さないユニークな個性を発揮する選手。ドラフト指名の順目は深くとも明確に強みを持ち、他チームのエースとすら互角以上の戦いぶりを発揮する選手。全員に明確な個性があり、またときには選手間にも並々ならぬ縁が明らかとなり、ドープな楽しみが宝物のように埋もれている。

新鋭プレーヤーがスター選手に対するジャイアント・キリングを起こす一幕もあり、一勝負たりとも目が離せない。

PEACE選手とDINASO選手のカード。二人は「pop’n music」のトッププレイヤーとしても知られる

このような個人への注目と連動してのBPL全体の盛り上がり、そしてファンコミュニティによる情報発信の活発さについて、コナミアミューズメントは以下のようにコメントした。

「(SNS上に)熱いテキスト、素敵なファンアートも投稿されるようになり、『beatmania IIDX』の魅力をファンの皆さまの言葉で語っていただけることは、何よりも強いメッセージとして、世界中の多くの皆様の心を動かしていると感じています。今後もこのファンコミュニティを更に大きく拡大していくべく、運営としても様々な施策を展開していきたいと考えております」

実際にBPL運営は8月31日、ファンアートや分析などを投稿するための公式ハッシュタグを告知。ファンコミュニティによる活動をさらに推奨する動きを見せている。またゲーム機でのプレーを通してBPL選手を応援する「みんなで応援!BPLプロサポーターズ2021」、ゲームセンター設置のカードプリント端末「カードコネクト」を応用しての、プロ野球チップス付録カードを想起させる「BPLプロ選手カード」プリントサービスの提供といったユニークな施策を次々と打ち出している。

なお、BPL選手の音楽ゲーム競技者としての「個」を番組に込められた情報以上に味わいたい向きには、以下2つのページを推薦したい。

【BPL 2021公式ウェブサイトのチーム紹介ページ】https://p.eagate.573.jp/game/bpl/bpl2021/team/index.html

各選手の公式大会実績、選手たちが自ら語る強みや意気込みがまとめられており、選手名鑑として充実した機能を有する。

【ミカグラ氏によるBPL 2021開幕直前に公開されたファンメイドの観戦ガイド記事】
https://3qua9la-notebook.hatenablog.com/entry/2021/06/11/193115

BPL出場メンバーでもあるNORI選手(SILKHAT所属)、UCCHIE選手(APINA VRAMeS所属)、WELLOW選手(SUPER NOVA Tohoku所属)を招いての全選手&全チーム解説、各選手の語るBPLの見どころ紹介は圧倒の読み応え。巻頭に付された「beatmania IIDX」の基本ルール説明も簡潔にして丁寧だ。

BPL 2021について現時点での率直な感想を尋ねたところ、コナミアミューズメントは以下のように所感を述べた。

「非常に良いコンテンツになったなと思います。ひとえにいい試合をしてくれた選手、その選手を支えてくれたチームオーナー、また番組改善に協力してくれたユーザーの皆様のおかげで、大変感謝しております。視聴者の皆さまからの高評価、また高い熱量をもって毎回観てくださっている事をSNSなどで拝見し、大変嬉しく思っております」

BPL 2021は全6チームによるリーグ戦プログラムを9月11日に終え、9月18日からは上位3チームからなるセミファイナルステージ、10月2日には最終決戦となるファイナルステージが予定されている。BPLの「音楽ゲームのチーム戦」としての魅力、そしてファイナルステージに向けた展望なども今後、紹介していきたい。