音楽ゲームライターの市村圭です。コナミアミューズメントの音楽ゲーム「beatmania IIDX」を題材とした公式リーグ戦・BEMANI PRO LEAGUEがあまりに面白いので、その魅力の一端をお伝えしたく筆を執りました。今回はコナミアミューズメント社にBPLにまつわるあれこれを訊きながら、音楽ゲームの「1人用ゲーム」としての素性には収まらない、はるかに広く拡張されたエンターテインメントに焦点を向け、魅力の源を探ってゆきます。本稿で着目する切り口は、「音楽」「情報発信」、そして「選手の個」です。
RESIDENT DJを務めるkors kのアクト。テーマ曲「Winner's Proof ft. KANASA from bless4」で観衆の熱狂を高める
コナミアミューズメント社の運営する音楽ゲーム初のプロリーグ「BEMANI PRO LEAGUE」(BPL)が開催されている。初年度にあたるBPL 2021は、同社がBEMANI(ビーマニ)ブランドで展開する音楽ゲーム(音ゲー)のフラッグシップタイトルである「beatmania IIDX」を競技種目としたeスポーツリーグである。6月にファーストステージが開幕。現在、大詰めを迎えている。
KONAMIアミューズメントは、「BEMANI PRO LEAGUE」について、「KONAMIのeスポーツ公式大会『KONAMI Arcade Championship(KAC)』や、BEMANIアーティストライブのノウハウを基に、『esports×音楽』というコンセプトで、『esports』と、良質な『音楽LIVE』両方の側面で楽しめる全く新しいエンターテインメントを生み出そうという、チャレンジコンセプトのもと、生まれました」と説明。また、「番組オープニングとエンディングに新進気鋭のDJを招致したLIVE ACTのみならず、各選手が試合に挑むまでの時間をRESIDENT DJの“DJ kors k”が多彩な音楽でつなぎ、『esports大会』としても『音楽ライブ』としても、より楽しめる内容になっている」とも言及する。
音ゲー×音楽ライブの事例
もちろん音楽ゲームと音楽ライブの相性の良さは、他のディベロッパー・パブリッシャーからも認識されている。例として「Cytus」「Deemo」「VOEZ」といったスマホ向け音ゲーで知られる台湾のRayark社は、2012年8月にLegacy Taipei音樂展演空間で開催した「2012 Cytus LIVE Concert」を皮切りに、自社の音楽ゲームIPを掲げたライブイベントを継続的に展開。セガも「CHUNITHM」から生まれたガールズバンド・イロドリミドリをフィーチャーしたライブを2015年から催している。
新興のインディーズ作品に目を向ければ、例えば米国D-CELL GAMESによる横スクロールリズムアクション「UNBEATABLE」の楽曲制作ユニットpeak divideが、2021年6月に行われた音楽ゲームのチャリティ配信イベント「LINK UP 2」上で、自らのオルタナティヴ・ロック・ナンバーとゲーム映像の見事なコラボレーションを披露したのも記憶に新しい。
しかし、コナミアミューズメントは近代音楽ゲームの先駆者として、BPL以前から20年以上にわたり競技としての音楽ゲームの魅せ方を模索してきた。例えば同社は1999年に催した「DanceDanceRevolution」競技大会のひとつ「DDR Best Of Cool Dancers」で既に、音楽ゲーム競技とライブステージを組み込んだイベントを試みており、その蓄積と展開の巧みさには一日の長がある。
BPL出場メンバーでもあるNORI選手(SILKHAT所属)、UCCHIE選手(APINA VRAMeS所属)、WELLOW選手(SUPER NOVA Tohoku所属)を招いての全選手&全チーム解説、各選手の語るBPLの見どころ紹介は圧倒の読み応え。巻頭に付された「beatmania IIDX」の基本ルール説明も簡潔にして丁寧だ。