目次

  1. RTA in Japanで新たな記録に挑戦
  2. 保持している記録にも「誰かが挑戦してほしい」
  3. 食事、トイレ、睡眠はどうしている?

8月11日から15日にかけてオンラインで開催中の大規模RTA(リアルタイムアタック)イベント「RTA in Japan Summer 2021」。ゲームの最速クリアを目指すイベントなのですが、実はアスリート顔負けの体力が要求されるタイトルがあります。「リングフィットアドベンチャー」です。

リングフィットアドベンチャーは2019年10月に任天堂よりNintendo Switch向けに発売されたゲーム。フィットネスを目的として作られ、「リングコン」と呼ばれる輪っか状のコントローラーと、「レッグバンド」と呼ばれる太ももに巻くコントローラーの2つを使ってステージを攻略していきます。

ステージクリアのために必要な運動負荷はゲーム内で設定でき、最大の「Intensity Level 30(負荷レベル30)」ともなればアスリート顔負けの筋力や持久力が求められます。そしてこのリングフィットアドベンチャーのRTAが、RTA in Japan Summer 2021の最終日である15日の最後に披露されます。

大トリの走者となるのが、えぬわたさん(@nwata1122)です。えぬわたさんは既に「リングフィットアドベンチャー」においていくつかの世界記録を持っているプレイヤー。イベントを直前に控えたえぬわたさんに、RTA in Japan 2021への意気込みや普段のトレーニングについて聞きました。

新型コロナウイルス感染拡大の影響でジムに行けないため、自宅でトレーニングに励むえぬわたさん

――えぬわたさんは、2020年8月にIntensity Level 30のAny%(ゲーム達成率不問)、12月にIntensity Level 30の100%(完全クリア)でRTAに挑み、世界記録を樹立。そして21年5月にはワールド1のみのIntensity Level 30で世界記録(当時)も達成しました。全ワールドの通しプレイから、RTA in Japan 2021では「ワールド1のみ」の世界記録を目指すのは、どういった狙いでしょうか。

実はリングフィットアドベンチャーで「RTA in Japan」に出たいと前々から考えていました。前回(2020年冬)もリングフィットアドベンチャーのAny%で出ようとしたのですが、15時間以上にも及ぶ競技のため、採用されませんでした。

そこで、リングフィットアドベンチャーRTAで一番競技人口の多く、競技時間も30分以内で収まるワールド1の部門でなら出場できると思ったのがきっかけです。今回のRTA in Japanの募集の締め切りは5月下旬で、なんとかそれに間に合う形で、当時の世界記録である17分52秒という記録(※)を出すことができました。

※8月13日時点での世界記録。

――それまでえぬわたさんは通しで長時間プレイされる種目に挑まれ続けていたわけですが、今回短距離走的な種目に切り替えました。どのような性質の違いがあるのでしょうか。

ワールド1のみの場合、最速の攻略手順である「チャート」をいかに正確にこなせるかが勝負になります。体力だけでなく、日頃のテクニカルな反復練習も重要になってきますね。ミスも全体の5%以内程度に留めないといけません。

その点、Any%や100%のような通しプレイの場合はミスが20%ぐらいは許されますが、長時間プレイに耐えうるカラダ作りが事前に求められる点でも異なりますね。

――現在リングフィットアドベンチャーでは、このワールド1の部門が一番の盛り上がりを見せており、5月にえぬわたさんが世界記録を達成した後も3回世界記録が更新され、えぬわたさんの記録は現在4位となっています。

実はこのワールド1の記録が私が5月に世界一を取るまで、全然更新されていなかったんです。私が世界記録を更新したのを契機に、走者が増えていった形です。特にこのカテゴリでは、今年に入ってリングフィットアドベンチャーのRTAを始められた方が次々と新たなテクニックを発見したりチャートを構築したりして、今リングフィットアドベンチャーで最も記録更新がアツい種目になっていますね。

――ワールド1の部門でも事実上負荷レベル1で走る「Any Intensity(負荷レベル不問)」と、えぬわたさんが記録を保持している負荷レベル30の2つのカテゴリがあります。両者の記録を比べると、同じワールド1でも10分近い開きがあるのですが、どう違うのでしょうか。

リングコンを押し込む深さが変わるだけでなく、敵の強さも変わるのが特徴です。敵との戦闘の時に、負荷1だと同じ運動でも2回運動すれば倒せるものが、Intensity Level 30だと16回攻撃しないといけなくなるような違いがあります。また、Intensity Level 30だと敵の強さに伴ってレベル上げをしないといけない部分でも異なり、経験値稼ぎのために1.5周しないといけません。それで、Any Intensityよりも時間がかかるわけですね。

リングコンを頭上で伸縮させる動きに備えて、普段は鍛えない部分もトレーニングするそうです

――ワールド1の部門がえぬわたさんの記録を機に一気に盛り上がった一方で、Intensity Level 30のAny%や100%の記録では、世界一の座をずっと維持しています。

この2つの記録に関しては、そもそも自分のあとに走った人もいない状況なんですよね。長時間の運動が求められるので、そもそも挑戦しようと思える方がいないのかもしれません(苦笑)。もちろん、私の記録に挑戦して欲しい気持ちはあります。noteで攻略記事を書いたり、YouTubeで解説動画も投稿したりして、後続の方が走る際のコツなども明かしています。

――とはいえ、Any%では15時間半弱、100%では不眠不休で28時間半弱と、挑むだけでもなかなか真似できないことだと思います。

ゲームに対する熱量と、走りきる体力と筋力が求められるので、走りきるだけでも簡単なことではありません。走りきれたとしても、身体への負荷が重いことも事実です。その時に得られるものが世界記録でないと辛い、という心理面も大きいでしょうね。実際走る時に私もそう感じましたので、その壁が大きいのかなとも思っています。

――誰も挑む人がいないのであれば、ご自身でAny%や100%の記録を塗り替える考えはないのでしょうか。

前までは、走ることに向けた下準備だけでも大変なのもあり、記録が他の人に抜かされない限り記録更新はいいかな、とも思っていました。ところが今年に入ってワールド1のカテゴリに挑戦するようになるにつれて、いろいろと短縮できるテクニックが見つかりました。またAny Intensityでは自分のあとに走っている人もいるので、その方の動画を見ているうちに、少なくともAny%はまた走ろうかなと考えています。それが終わったら、100%ももう一度走るかもしれません。

――えぬわたさん自身、最初にリングフィットアドベンチャーのRTAに挑まれたのがAny%の部門です。思い入れのようなものはあるのでしょうか。

Any%は所要時間が15時間程度ですので、自分からすると週1で走れるくらい、割と気軽にできるものだと思っています。自分が記録を出したあとも何回か通しで練習しているのですが、その中で短縮できるテクニックも見つけていて、タイムも大分縮められる見通しがついているんですね。今回のRTA in Japanを通して私のことを知ってくれた方もいて、生配信を見たい方もいると思います。Any%を再走するモチベーションとして大きいですね。

――RTA走者の中には、Any IntensityとIntensity Level 30の両方に記録を残している人もいます。えぬわたさんはAny Intensityのほうにも挑む予定はないのでしょうか。

ワールド1に関しては全く考えてないです。他の一般のゲームと同様テクニックだけになってしまうので、自分の強みとなっている筋力が全く生かせないからですね。Any%や100%は体力の要素も出てくるので挑む価値はあるかなとも思いますけど、今のところIntensity Level 30で満足しています。あえて挑まないカテゴリを残すことで、リングフィットアドベンチャーのRTAをフラットに応援したい気持ちもありますね。

――昨年末に悲願だった100%の世界記録を達成して以降、今年に入ってからどのくらいリングフィットアドベンチャーをプレイしていますか?

去年の12月末に100%を走りきったことで、自分の中ではすごく達成感がありました。ゲーム自体はプレイしていましたが、今年3月まではRTAの練習をお休みしていましたね。4月以降はRTA in Japanに向けてワールド1の練習から始める、という感じでしたね。

――100%RTAに挑んだ時のことも教えてほしいのですが、具体的にどのような準備をされたのでしょうか。

まずは当日どういうものを食べればいいか、事前の練習を通して吟味していきました。固形食は運動に支障が出る可能性もあるので避けていたのですが、1日の食事が全てゼリー飲料だと最後のほうで気持ち悪くなってしまい……結局、記録に挑戦した当日はカロリーメイトのような固形食も少し取り入れましたね。

――競技中トイレにいく時間はどのように確保していましたか?

途中でミニゲームが何個かあって、1回60秒ぐらいの時間制限があります。そのうちの20秒でクリアして、残り40秒でトイレに行くようにしていました。タイムに影響が出ないようにしていますね。逆に40秒でトイレを済ませられるよう、前日の食事でも食物繊維を減らしたりしました。当日は4回ほどトイレに行ったと思いますが、基本的にトイレは我慢していましたね。

――睡眠はどうしていたのでしょうか。

前の日に多く寝るなど、寝溜めで対応していました。ただ限界もあるので、普通の8時間睡眠プラス2~3時間の仮眠を取る形で準備しました。つまり11時間睡眠ですね。さらに前日に11時間寝られるように、前々日は睡眠不足にしておいて……と準備をしましたね。

――当日、飲み物はどのぐらい消費したのでしょうか。

飲み物は水が5リットルとスポーツドリンクが1リットル、プロテインが1リットルぐらいですね。あとはエナジードリンクも2~3本飲みました。

――その結果、100%RTAでは28時間22分という、従来の世界記録を3時間半以上更新することができました。

タイムに関しては要因が複数があったと思います。まずは単純にチャートの差が一番大きいですね。また、私は全く休憩無しで、道中もスタミナを切らさずにやりきれたのも大きいかなと思います。

――そして今回、「RTA in Japan Summer 2021」でワールド1の世界記録更新に挑むわけですが、どのような準備をしていますか。

本番を意識した練習を既に30回以上はやっています。世界記録でも17分台で終わるカテゴリではあるのですが、その分短い時間で全力を出し切るのでこれはこれで大変です。当日はミスなく動くことで、世界記録の更新を狙いたいと思います。

――最後に「RTA in Japan Summer 2021」に向けた意気込みを教えて下さい。

RTA in Japanは元々チャリティイベントですので、観ている方を楽しませることが大事かなと考えています。もちろん世界記録も盛り上がる要因になるので、当日は積極的に狙っていきます。ですが、何よりは大会を通じてRTAの楽しさを伝えたいので、自分も楽しむことを心がけたいです。そしてRTA界全体がもっと盛り上がるように、皆さんを楽しませられればと考えています!

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えぬわたさんは「RTA in Japan 2021」にて、最終日15日午後6時46分からリングフィットアドベンチャーのRTAに挑戦予定です。

種目は「Beat World1 Intensity Level 30, Intended(ワールド1クリア、負荷レベル30、正しい姿勢)」です。挑戦の様子はRTA in JapanのTwitchチャンネルで配信されます。