ゲームのプレイにおいて、画面がどのように見えるのかは重要な要素です。色覚多様性の当事者の方にとっては、一層の配慮が必要です。パズルゲームの「ぷよぷよ」では、色覚多様性に合わせたアップデートが実施され、話題になりました。

では、モニターにはどのような工夫があるのでしょうか。そこでePARAでは、カラーユニバーサル機能を搭載した「アイケアモニター」を展開しているベンキュージャパン株式会社(東京都千代田区)を訪問。色覚多様性の当事者であるゆづぱんさん(@dinamic0759)が実際にモニターを使ったプレイを体験しました。そして、同社プロダクト&マーケティング本部のプロダクトマネージャー趙節氷さんに開発の狙いなどを聞きました。

「初めてメガネをかけたとき」のような感動

ePARA代表・加藤大貴 本日はBenQブランドで液晶モニターなどを展開しているベンキュージャパンさんに来ています。まずは「アイケアモニター」を使った感想をゆづぱんさんから伺いたいと思います。まずは自己紹介をお願いします。

※今回使ったモニターMOBIUZシリーズ 24.5インチIPSパネル HDR対応144Hz ゲーミングモニター EX2510

ゆづぱん 私は1型、3型の両方の色覚多様性があります。黄色も赤も緑も、はっきりとした境目の感じられないなだらかなグラデーションのように見えています。父方の祖父と母方の祖父、そして父親が色覚多様性の当事者だったので、色覚多様性のハイブリッドとして生まれたのが私です。大人になり眼科で診てもらったら「4型」と言われました。

「青がきれいな花ね」と言われても、「キラキラした花」みたいな感じです。グラデーションのように見えるんです。「クリーム色の壁で落ち着くわね」とか言われても、いろいろ混ざっていて一色に見えません。光の色や空を見ていても深い色をしているのですが、昔から一色で例えるのはどうなんだろうと思いながら生きてきました。

モニターなども、色味を自分好みに変えられる時代が来つつあるのは最高の驚きと喜びです。ちょっと特殊な人にも目が不自由な人にも、可能性を感じられました。

加藤 今日のモニターを見ていかがでしたか?

ゆづぱん まず、色味だけではなく、目が痛くならないことがすごく衝撃的でした。この近距離でこれだけ強いハイライトのゲームをやっているのに、痛くないところがユニバーサルデザインの第一歩だと思いました。普通は、プラズマテレビを見てもすぐ目が一発でパーンとやられてしまうのです。

そしてこのカラーモードは、ディテールを細かく変えられるというところが、たくさんのゲームをプレイできる予感がしました。例えばゲームによって、使われている色は全く違います。それを調節できることがありがたいです。体調によっても、見やすさがちょっと変わります。それをコントロールできるのが感動的でした。近視の方が初めてメガネをかけて「世界が開けた」ような感じに近いです。1枚の絵を見ているような、本当に純粋に美しいと思える状態かもしれません。

本当に楽しかったです。ありがとうございました。

「生活に品質を」の企業理念が開発の原点

加藤 では、BenQさんにどういった経緯でアイケアモニターを作られたのかをぜひ聞きたいです。

趙(アイシー) ベンキュージャパン液晶モニター担当の趙と申します。社内では英語名のIcy(アイシー)と呼ばれているので、アイシーと呼んでください。

開発の原点は、BenQの企業理念にあります。「BenQ」とちょっと変わった名前ではあるのですが、それは「Bringing Enjoyment and Quality to Life」の略で、Lifeに楽しさと品質をもたらすことを意味します。技術を使って生活にフィードバックしていくことが企業の理念です。

この「Life」もまた、四つの頭文字から取った言葉です。「Living Better, Increasing Efficiency, Feeling Healthier, Enhancing Learning」、つまりライフスタイル、ビジネス、ヘルスケア、教育といった我々の生活に一番重要なところで品質の高い価値あるモノを提供したいというのが企業の原点です。

このヘルスケア(=健康)の部分ですが、モニターは長時間にわたって活用するツールとなることから、特に眼精疲労などを気にされる方が多いと思われます。私たちBenQでは、そういった方々の目の健康に配慮するためにも、目に優しいモニターを開発し続けています。

(画面のちらつきであるフリッカーが発生しない)フリッカーフリーのモニターはすでに普及していますが、実は2013年にBenQはいち早くフリッカーフリーのモニターを日本市場に導入しました。また、モニターとしては初めてのアイケア技術のTÜV Rheinland認証を取得しています。この技術の良さを皆さんが認識くださった効果もあって、今ほとんどのモニターがフリッカーフリー技術を搭載しています。そして、さらなる製品の向上のために弊社が着目したのがブルーライト軽減技術です。

ブルーライトは夜間に浴びすぎると睡眠の質に大きな影響を及ぼす可能性があるので、これを効果的にカットする技術を開発しました。そしてこういった製品の展開においても満足することなく、その次には、色々と自動調光できるiPadのような、スマホに似たような機能をモニターにも導入すべきだと開発部が考え、そこでブライトネスインテリジェンスプラス(B.I.+)が実装されることとなりました。このモニターにも実際に搭載されており、環境光の照明の明るさに合わせて色の明るさと色温度まで自動調整してくれる機能があります。

さらにここ2~3年ですが、カラーユニバーサルモードというものが追加されました。大半の方は大丈夫でも、さらに多くの方々に健康に配慮した製品をお届けするのが私たちのミッションと考え、これもまた「Lifeに楽しさと品質をもたらす」という原点が開発のモットーとなっているわけです。

BenQのアイケアモニター

加藤 健康の面からユニバーサルモードを出されて、反響や声はありましたか?

アイシー 実は残念ながらデータはあまり持ち合わせていません。今回のように直接お話を聞けるチャンスが少なく、このような原理で色覚多様性の方々に効果があるはずだというところで止まっています。そのため、今回リアルな声を聞けてすごく良かったです。開発担当にフィードバックして、よりよい製品の開発に努めたいと思います。

加藤 ePARAという団体は、障害のある当事者の方がたくさん集まっています。毎週水曜日にオンラインで集まって部活を開き、大きな大会も年2回ぐらい開催しています。

全盲の方もいます。「音声で操作をするときに、このゲームはやりやすい」「スクリーンリーダーで文字が理解できるので、このゲームはわかる」といった意見も出ます。ただ、どこにフィードバックをしたらいいかがわからないこともあります。今回、ゆづぱんさんの感想をフィードバックできて、とても良い機会になったと思っています。

アイシー 今回、様々な色覚多様性に合わせるために、「赤と緑両方の量を調整して複数パターンを保存できる設定があるといいですね」というご意見もあったので、開発部に共有させていただきます。

アイケアモニターの仕組みは

加藤 では、アイケアモニターを開発する経緯や特徴などを教えてください。

アイシー 原理としては、目の構造が関係します。色を識別する細胞は主に二つあり、そのうちの錐体細胞が色を識別しますが、それが主に3種類あります。これらが赤緑青をそれぞれの波長で識別しますが、その3種類の細胞のうちのどれかが機能的に足りていない方が多く、ゆづぱんさんはその複数が足りないことが考えられます。

割合的に赤と緑が識別しにくいという医学的なデータがありまして、弊社の製品もそれら全てに対応できるかというと、それはできません。この赤と緑の波長の部分が識別できない方には、青の色を足してあげることによって色の濃さや立体感を識別しやすくする原理です。色をブレンドすることによって、その違いがわかりやすくする、それがこの機能の原理です。

加藤 このアイケアの仕組みは、全てのモニターに入っているわけではないのですね。今後はどのように対応していくのでしょうか。

アイシー:ゲーミングPCに接続するゲーミングモニターに搭載したのは今回初めてです。開発の時期もあり、遡って追加搭載することがなかなかできないので、新開発の機種で対応しつつあります。

eスポーツの取り組みは

加藤 BenQさんのeスポーツの取り組みについてもうかがいたいです。eスポーツ業界ではに早くも大きな存在となっていますが、会社としてのこだわりや選手たちに受け入れられる要素だという点を、ぜひ教えてください。

アイシー eスポーツ開発本部のある台湾は日本よりeスポーツ文化が進んでいます。十数年前の話になりますが、当時eスポーツ業界で主流であった発色は良くないが応答速度の速いブラウン管モニターが廃止される流れに伴い、開発部はeスポーツ選手の声を受けて液晶モニターでも早い応答速度が実現できるように技術開発に取り組みました。

そして現在に至るまで応答速度だけではなく、色の見え方や残像の処理など、ゲームをより快適にプレイしていただけるための技術開発に取り組んで参りました。実は液晶モニターは構造が比較的単純ですが、電圧の制御や残像を減らす技術はメーカーそれぞれ独自で開発してます。

長い年月をかけて業界でも長く開発し続けているBenQの技術ノウハウは非常に高く評価されており、スペック上では他社製品と同じに見えても使ってみたらやはりBenQのものがいいとの声を多く頂いています。ずっとゲーマーの皆さんの声を拾い続けた開発部に感謝しています。

加藤 本日はありがとうございました。

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