独特なフォルムに目を奪われた

以前、私は「おすすめの安いゲーミングチェア コスパ追及し、実際に買ってみた」という記事で、本体価格3万円以下で買えるゲーミングチェアについて本気で調べ、購入しました。

3万円以下にしたのは、お小遣い事情から。その座り心地に満足はしているのですが、本音では高級ゲーミングチェアも気になっていました。調べるだけなら無料なので、買えないことはわかってもネットで眺めていました。

その中でも、マウスを動かす手が止まったのが「オカムラ」(本社・横浜)の「STRIKER」でした。

オカムラが開発したゲーミングチェアと、デスク、シェルフ(オカムラ提供)

まず、湾曲したヘッド部分。その独特なフォルムに目を奪われました。

ラインナップは、この独特なヘッドがあり座面の奥行きを調整できる「EX」と、機能を絞った「SD」の2種類。いずれも自由に動くアームレスト、角度や位置の調整ができるヘッドレストを備え、ハイバックな背もたれとリクライニングがあります。

一方で、ランバーサポートといった定番の付属品はありません。

そもそもオカムラは、ゲームやPCのデバイス会社ではありません。オフィスチェアのイメージが強く、ゲーミングチェアに参入しているなんて思いもよりませんでした。

気になったので、東京都千代田区のオカムラのショールームへ足を運び、STRIKER開発に携わった北川博一さん(マーケティング本部パブリック製品部長)に話を聞きました。

後発であるがゆえに差別化を意識 イスの機能追求

EXとSDタイプがあります。実売価格はEXが8万円ほど、SDが5万2千円ほど(オカムラ提供)

──STRIKERはどんな特徴がありますか。特にヘッド部分のフォルムが気になりました。

まずは、これまでのチェアづくりの技術を結集している点です。人間工学に基づき、座面の圧力分散を計測し、長時間プレイしても疲れづらいチェアになることを目指しました。

我々がゲーミングチェアに参入したのは今年1月と、後発です。ですので、普通のゲーミングチェアを作ってもゲーマーに全然響かないのではないかと思いました。だから、他社との差別化は強く意識しました。

フォルムもオリジナルにしました。湾曲したヘッド部分は「PLAY VEIL(プレイヴェール)」と言います。視覚に入る余分な情報を遮ることでゲームへの没入感が高まるようにと、この形としました。

ゲーミングチェアというとレーシングカーのシートのようなイメージもあります。しかし、ゲームをするとき、レーシングのように重力がかかるわけではないので、肩を支える左右の張り出しは必要ないと考え、腕が動きやすいカーブを描くような形にしました。

──ランバーサポートといったゲーミングチェア定番の付属品もありません。

オフィス家具メーカーの矜恃として、付属品がなくても、「ちゃんと機能するイスをつくりたい」との思いがありました。ヒアリングしても、ランバーサポートに違和感を覚えているとの声もありました。私たちとしても、ランバーサポートのように腰を「点」で支えるのでなくて、背もたれ自体にカーブをつけて「面」で支えたほうが快適にゲームができると判断しました。

──様々なゲームジャンルに対応できるのも特徴となっています。

ゲームタイトルによって姿勢が変化することに気づきました。パズルや格闘、スポーツジャンルはプレイヤ-は前のめりの姿勢になる傾向があります。FPSといったシューティングは基本姿勢で、ゆったりとプレイすることになるRPGでは後傾姿勢になる傾向があります。

ですので、いずれの姿勢にも対応できるよう、EXタイプは手前にマイナス10度傾けることができるようにしました。座面の奥行きも調整することができるようにしています。

STRIKERは、ゲームジャンルごとに求められる姿勢をとれるようにしているそうです(オカムラ提供)

コントローラーを使う時に肘はどうなるのかとか、手がどこにいってるのかとか、膝にのせてやるとこういう感じになるとか、そういった姿勢関係の部分はかなり研究しました。そもそも働いている人がどういう姿勢なのかという研究はやっていたので、「じゃあゲームしているときはどうなるの?」とこだわりました。

職人が一台ずつミシン縫い

取材に答えるオカムラの北川さん

──ゲーミングデスクも発売しています。

オフィス家具メーカーですので、 ゲーム向けのデスクとシェルフも開発しました。デスクはプレイの姿勢に合わせて高さを変えられることが特徴です。座ることに疲れたら、立ってプレイすることも可能です。やはり座ってばかりは健康によくないですからね。

──なぜゲーミングデバイス市場に参入したのでしょうか。営業面で言えば、オカムラはBtoBに強いイメージがありますが。

eスポーツの社会認知度が高まり、市場も成長しているところに着目しました。検討を始めたのは2018年ぐらいです。

確かに我々が得意としているのは企業向けの家具です。ゲーミングチェアは個人向けの要素が強いので、その点は営業と連携をとっています。

一方で、企業がゲーミングチェアやデスクをまとめて購入してくれる可能性もあります。鉄道会社などの企業が遊休施設を活用してeスポーツ施設にするなどの動きもあります。そういったとき、イスだけでなく、デスク、シェルフなどトータルで提供できる我々の強みを発揮できると思います。

──これまでのイスづくりとは違う点は?

オカムラのオフィスチェアは、骨組みにあわせて単一素材を張る作り方が多いです。一方、STRIKERは背もたれ部分はPVCのレザー素材ですが、座面や背中が触れる部分は蒸れを防止するためファブリック(布製)を使っています。

これは職人が一つずつ、ミシンで縫っています。湾曲型のヘッド部分は立体的ですし、特に作業が難しかった部分です。

eスポーツ施設の運営企業にアピール

──ストライカーの色について教えて下さい

カラーリングについては子供っぽくなりすぎないように意識してます。アクセントカラーは赤、青、黒の3種類あります。ゲーミングチェアというと赤のイメージがありますが、予想外に、大人の雰囲気が漂う黒色が人気があります。

──STRIKERのネーミングとロゴのコンセプトは?

スポーツと結びつくネーミングとなるように意識しました。デスクとシェルフも含めてSTRIKERというシリーズにして、家具屋として「ゲーミングファニチュア」という言い方をしています。ロゴは、STRIKERの頭文字「S」からとっています。

STRIKERのロゴは、「S」をイメージしています

──ユーザー層は?

実際の実売価格が高め(EXは8万円程度)ですので、椅子にそれなりにお金をかけていただけるゲームのプレイヤーと考えています。オカムラが今までリーチできなかった層です。

ゲーマーではなくても、社会人が在宅ワーク用に購入してくれることもあると思います。

──最後に。ゲーミングチェア市場の成長性についてどうお考えでしょうか。

eスポーツ市場が成長することに着目しています。当然、個人のお客様に買っていただけるのがボリューム的に多いとは思います。一方で、eスポーツ大会を主催する地方自治体や、eスポーツ施設を運営しようとする企業が増え、STRIKERをアピールできるチャンスが増えるのではないかと期待しています。

培われた技術存分に 前傾姿勢もよい感じ

話を聞くだけでなく、実際にSTRIKERに座らせてもらいました。

位置を調整できるヘッドセットは心地よかったです。湾曲したヘッドは好みが分かれるところだと思いますが、ゲームへの集中力を高めてくれそうに感じました

STRIKERの真骨頂は、体の位置の調整にあると感じました。座面を前後に動かせることは、個人的に特にすごいと思いました。座面が前に動くと腰部分にやや隙間ができ、蒸れが解消できるとともに足元の圧迫感がなくなりました。座面クッションもほどよく山ができていて圧力が分散され、実に快適でした。

背もたれのサイズはやや大きめなので、私のようにぽっちゃり体形でも圧迫感はありませんでした。軽くて涼しい感じが持続します。レザー部分とファブリック部分のバランスが良いと感じました。

リクライニングも細かい調整が可能です。特にリクライニングの強さは、軽くすると本当にサクサクと背もたれが倒れますし戻ります。

全体の傾斜を三つの位置で固定できるところは前傾姿勢の位置がアケコンなどを机に置いていた場合にちょうど良い手首の角度になるので使いやすかったです。それに、前傾姿勢を取ることで自然に意識が前に集中します。

オフィス家具で培われた技術が、最適な体勢を維持することに費やされていてとても心地よいゲーミングチェアに仕上がっていると感じます。

私にもっとお小遣いがあれば、このSTRIKERも候補に入っていたのにな……。

(木村勇雄)