ブランド認知向上やネットメディア事業の創出目指す

この提携は、5月26日に丸紅が発表。Fnaticを傘下にもつSannpa Limitedと資本提携し、Fnaticの日本でのブランド認知向上やファンづくりの支援のほか、若者向けのネットメディア事業の創出を目指すことを明らかになりました。また、Fnatic公式サイトによると、今回のFnaticの資金調達は1700万ドルにのぼります。

提携の意義や今後の取り組みについて、担当する後藤さんに迫ります。

丸紅のメディア事業リーダー、後藤史憲さん

eスポーツがデジタルネイティブ世代との接点に

──提携の背景や、丸紅の狙いを教えて下さい。

私が所属する次世代事業開発本部は、成長ポテンシャルがあるにもかかわらず、丸紅が取り組めていない領域での事業開発を目指しています。特に注目しているのが、ミレニアル世代とZ世代です。デジタルネイティブであるこの世代は、購買行動や嗜好が上の世代とは違います。丸紅として、この世代にどうリーチしていくのかが課題でした。

そこで、私たちはeスポーツの魅力に気づきました。

eスポーツは、その成長性はもちろんのこと、ミレニアル世代やZ世代をファンに抱えています。eスポーツに取り組むことで、この新しい世代との接点を築きたい。将来的には、このつながりを生かして若者のニーズをしっかりとつかみ、新しいコンテンツや商品の開発につなげたいと思っています。

取材に答える丸紅の後藤さん

実はeスポーツ事業に出資するのは、Fnaticが2件目です。eスポーツや伝統スポーツファンの購買行動の分析手法を開発するアメリカのFanAI社にも出資、提携しています。これも若い世代の嗜好やニーズを理解する狙いがあります。

──なぜ日本国内のeスポーツチームではなく、イギリスのFnaticと提携したのでしょうか。

ロンドンを拠点に置くFnaticは世界で活動しています(C)Fnatic

eスポーツ市場は、欧米や中国、韓国で大きく成長し、日本はまだこれからという現状です。ビジネスモデルや視聴者数の大きさについても、欧米のほうが先を行っています。このビジネスモデルを日本に持っていきたいとの思いがありました。

また、Fnatic自身が日本のゲーム市場に魅力を感じており、高い関心を持っていることも決め手となりました。私たちがeスポーツへの投資を検討していたとき、Fnaticも日本に進出するためのパートナーを求め、また資金調達も検討していて、タイミングもよかったです。

Fnaticチームの拠点を日本に移転する計画

──Fnaticについては日本進出を検討していることが2019年にニュースで報じられ、話題となりました。現状は?

Fnaticの「レインボーシックス シージ」のチーム拠点を日本に移したり、ファンの方にも足を運んで頂けるようなゲーミングハウスを東京都心近郊に設置したりする計画があります。

しかし、その後の新型コロナ感染拡大によって思うように進んでいないのが現状です。ただ、計画自体が白紙になったわけではありません。

今後、Fnaticが日本に進出する際、丸紅が「案内役」や「橋渡し役」を担えると考えています。欧米とのゲーム文化の違いはありますし、日本企業の協業も必要となる場面が出てくると思われるので、そのときに丸紅が間に入ってサポートできると考えています。

──Fnaticのブランド認知拡大に向け、具体的な取り組みは?

Fnaticは日本ではeスポーツファンにのみ知られているブランドですが、「一般の方にも知られるようになりたい」という思いがFnaticにあります。認知を広げるため、丸紅として広告マーケティングを推進したいと思います。

メディア活動としては、日本人向けの動画チャンネルやSNS、オウンドメディアの立ち上げを検討しています。将来的には、この提携を通して培ったノウハウを生かして、ミレニアル世代やZ世代向けのメディアを丸紅独自に開発できたらとも考えています。

「Fnatic Gear」のゲーミングデバイス(C)Fnatic

──ゲーミングデバイスメーカー「Fnatic Gear」と、日本企業とのコラボ商品もありえますか?

Fnaticとしては「Fnatic Gear」のデバイスを日本のプレイヤ-に手にとってほしいとの思いがあり、国内企業とのコラボ商品についてもいろいろな可能性があると思っています。日本のコンテンツビジネスは世界にかなり影響力があり、ゲームやeスポーツとも相性がよいので。

日本人チームの結成「必要性は感じている」

──日本人がメンバーに入ったFnaticのチームができるのか、ファンは期待していると思います。いかがですか?

日本人からなるチームをつくる必要は感じています。また、日本人になじみやすいゲームタイトルだったり、国内のゲームタイトルを採り入れたりすることも検討したいと思っています。

日本はeスポーツ選手やゲームクリエイターを生み出す土壌があり、そのポテンシャルは高いと思っています。でも、国内のeスポーツ市場は途上です。ですから、日本人eスポーツ選手やクリエイターの方々をFnaticを通して世界に発信していくことも、今回の提携でやるべきことかなと感じています。

プロ野球やサッカーもそうでしたが、海外で活躍するeスポーツ選手が現れれば、人々のeスポーツへの関心も高まりますから。

日本人が所属し、日本を拠点に活動するFnaticのチーム結成への期待も高まります(C)Fnatic

──eスポーツ大会を丸紅とFnaticで開催する予定は?

具体的な話しはまだありませんが、そういったこともFnaticと話しています。もちろん、Fnatic単独でできるものではないので、国内プレイヤ-と一緒に大会をつくりあげいく形になると思います。

──今後のeスポーツ市場をどうみていますか。

世界的に言えば、ファン一人あたりが使うお金は、伝統的なスポーツと比べると、まだまだ少ないんですよね。これはファン層が若く、可処分所得が低いことも原因の一つかと思います。この方々が大人になって可処分所得が上がれば、市場ももっと大きくなると思います。

日本の市場は、欧米と比べるとスローだと思います。国内は人気タイトルが必ずしも競技性があるものではないという特有の事情もありそうです。

日本のeスポーツ業界を世界とつなげることは、私たちの役割だととらえています。eスポーツの盛り上がりや市場の成長に私たちが少しでも貢献できたらいいかなと思っています。

──ちなみに後藤さんはもともと、eスポーツのファンだったのでしょうか。

いえ、違います(笑)もともとゼルダの伝説とかやってました。担当となり、eスポーツタイトルもちょっとやるようになりました。ただ、チームメンバーには「Call of Duty」をやりこんでいる、がちゲーマーもいます。やはり元から好きだとモチベーションも違いますし、ゲームの解説もパッとできますよね。

Fnatic

2004年創設。これまで30のゲームタイトルで200回を超える優勝を誇るeスポーツチーム。現在は8つのゲームタイトルをカバーする40人のプロ選手と、東京を含む世界6拠点に100名のスタッフが所属。

丸紅

1858年創業、1949年設立。食料、ライフスタイル、化学品、エネルギー、金融など広範な分野において事業活動を展開する総合商社。世界133カ所に拠点があり、従業員数は4389人。