「ゲームをすると目が悪くなるよ」。多くのゲーム好きな方は誰もが一度は親に言われたことがあるフレーズではないでしょうか。これは大前提として、「ゲームには視力が必須である」と示唆しています。

しかし、全盲であってもゲームを好きな人、ゲームをやりたい人、eスポーツとして大会出場や他者との交流を行いたい人はたくさんいます。それは一度も世界を自分の目で見たことがない、先天性全盲の人でも同様です。

今回の記事では、バリアフリーeスポーツチーム「Fortia」from ePARAから、先天性の全盲ゲーマーのいぐぴーさん(@Fortia_Iguppy)が、FPS/TPSの3タイトルを実際にプレーした気づきをリポートします。

全盲の私がFPS/TPSに感じる魅力

生まれつき全盲のゲーム好き女子、いぐぴーと申します。父親がクラシック音楽やロック、フォークなど、色々なジャンルの音楽を聴かせてくれたことがきっかけで、趣味で作詞作曲や楽器演奏をするほどの音楽好きです。特に歌うことが好きで、NHKのど自慢に出場してグランドチャンピオンを受賞した経験があります。

昔から音を頼りにゲームをすることも好きで、昨年は全盲の戦士・なおやさん(@noy_0207)と共にePARA CHAMPIONSHIPの鉄拳部門に出場し、1勝をすることができました。現在は「Fortia」from ePARAのメンバーの一人として、ブラインドeスポーツ界のミューズをめざす「全盲の女格闘家」として活動しています。

以前はマインクラフトを試しにやってみる程度だったのですが、鉄拳7やストリートファイターⅤをプレーする中で闘志が芽生え、以前から挑戦したいと思っていたFPS/TPSにも手を伸ばすことにしました。

私が今回挑戦したのは、バトルロイヤル系の人気タイトル、PUBG、荒野行動、フォートナイトの三つです。各タイトルは、全盲の私でも魅力に感じるポイントがいくつかあります。

PUBG

  • 最初から3Dサウンドでゲームが楽しめる
  • トレーニングマッチが用意されていてバトルロワイヤル初体験でもプレーしやすい
  • ロビー画面で流れる音楽が力強くてかっこいい
  • 自分がダメージを受けると声が出るので、見えていなくてもわかりやすい

荒野行動

  • キャラクターボイス付きのスタンプが豊富なのでボイスチャットが使えなくてもコミュニケーションが取りやすい
  • 日本の国民的なコンテンツとのコラボが充実している
  • 敵味方を問わず足音がわかりやすい

フォートナイト

  • 味方を復活させるのに必要な「リブートカード」や宝箱などがどこにあるのかが音だけでわかる
  • 建築要素をうまく使うことで敵の攻撃から身を守ることができる
  • ツルハシを振る音を頼りに移動すれば全盲でも安全地帯の移動がしやすい
  • スターウォーズやバットマンなど、洋画好きならわかるタイトルとのコラボが充実している
  • Android、PC、Switch、PS、Xboxでクロスプレーに対応している
  • スキンやグライダー、バックアクセサリーなどアイテムが豊富

見えていなくてもゲームは楽しい

「見えていないのにFPS/TPSやっても楽しいの?」「やられてばかりじゃないの?」。そう思う方も多いかもしれません。しかし自信をもって言います。見えていなくて楽しいです。ただし、ゲームの腕前としては決して高くはないでしょうし、見えているプレーヤーに対して不利な点は多くあります。しかし、それをふまえても楽しめています。

ゲームの世界では制限なく自由に走り回れるし、ほかの人とコミュニケーションを取りながら同様の動きもできます。そして、何か失敗したとしてもそれが実生活に支障を及ぼすことはありません。これは実生活ではなかなかできないことです。

しかも、時には空も飛べますし、銃も打てます。ふだん制限されている行動が解放されることは立派なやりがいです。先日、フォートナイトで1キル1アシストを決めてビクロイを勝ち取ったのですが、今でもその興奮を覚えています。

ビクロイを勝ち取ったいぐぴーの興奮した投稿(旧アカウントより)

全盲プレーヤーは音声情報でゲームを体験

全盲でもゲームを楽しめる理由、それは音声情報の豊かさにあります。各ゲームタイトルには、その世界観やゲーム体験を豊かにするために多種多様な音声情報が付加されています。

晴眼者の方にとっては、音声情報はあくまで補足的な情報かと思いますが、私たち全盲ゲーマーにとっては音声情報が命綱となります。音声情報が豊かなおかげで、私たちはたくさんの体験を味わうことができています。

しかし、残念ながら、必ずしも全盲のプレイヤーが「よりよくプレーする」ためには足りない音声情報は多くあります。そこで、音声情報の充実という観点からFPS/TPSの3タイトルを比較してみました。

あくまでも個人の感想よるものですが、視覚情報なしで上達が見込めるかどうかを考えてみました。その結果、現時点でいちばんブラインドeスポーツに適しているゲームタイトルは「フォートナイト」でした。理由は以下の3点です。

フォートナイトの良い所1:ピンを指した場合の挙動

1点目の大きな違いは、ピンを指した場合の挙動です。分かりやすいところで、アイテムを発見した場合で説明します。フォートナイトの場合は、アイテムを発見したり誰かに向けてアイテムが投げられたときにピロピロッっと音が出ます。その音が左右どちらから聞こえたかまでわかるようになっているので、「たぶんだいたいこの辺に何かが落ちている」と想像ができます。

まず、PUBGの場合、ピンが刺されても何一つとして音がしないため、画面が見えていないと説明があるまで近くに何があるのか全く把握できません。荒野行動では「ここにマガジンがあります。」というようにボイスが流れますが、「ここ」がどこなのか、やはり見えていないとわかりません。

フォートナイトの良い所2:エリアごとに流れる環境音

フォートナイトではエリアに応じて聞こえてくる音が変わるパターンがあり、環境の変化がわかりやすいつくりになっています。町の名前と聴こえてくる音を一致させることさえできれば、自分が今どこにいるのか把握しやすくなります。また、他の二つのゲームに比べて環境音の音量が大きめに設定されているのも特徴です。

一方、PUBGと荒野行動は、プレーヤーが動かすキャラクターがいるエリアが変わっても、環境音だけでは雰囲気がわかりづらい状態です。

フォートナイトの良い所3:武器の音

同じ種類の武器でも、ゲームタイトルによって音が全然違います。開発しているメーカーが違うから当たり前じゃないかと思われるかもしれないし、逆に全くわからないという方もいらっしゃるかもしれません。例えば、アサルトライフル。意識して音を聴き比べてみると、同じ種類の武器とは思えないほど音が違うことがわかると思います。

フォートナイトでは、武器の違いや銃声が鳴っている場所の違いなどが比較的伝わりやすく表現されています。その違いを聴き分けながら自分が置かれている状況を判断し、行動を決めていきます。

まだまだ難しいブラインドeスポーツ、それでも!

ストリーマーの方々の動画視聴やコミュニティーの参加、Fortiaメンバーへのサポート依頼など、いろいろな工夫を試みている私です。いろいろな人の力を借りながら少しずつ少しずつ上達していっているはずです。しかし、それでもやはり思うようにプレーをしていくには難しい局面を感じることは多くあります。ここではフォートナイトの情報を中心にお伝えします。

プレーのサポートをTwitterでお願いするいぐぴー(旧アカウントより)

難しさ1:要素が複雑すぎると理解できない

先述の通り視覚のない私は、ルールの把握も音声情報のみで行います。そのため、ルールが複雑になればなるほど、脳内の情報処理が追いつかなくなります。たとえばフォートナイトには建築の要素がありますが、時にこれが私を悩ませます。何が起きているか音声だけでは判断できず、立ち回りが難しくなることがあります。

私はフォートナイトではふだん「バトルロイヤル」をプレーしていますが、それは「クリエーティブ」や「パーティーロイヤル」が時にこの建築要素でルールがわかりにくく、私には理解が追い付かない点があります。

一方で、建築要素がある分、その代わりにゲームパッドでの操作が単純なものになっているのだと思いますし、その点はありがたいと感じています。

難しさ2:上下の違いがわからない

フォートナイトでは、音声情報で遠近感や左右の違いは表現されており、練習を繰り返すことである程度は敵や味方の位置を把握できるようになってきました。一方で、上下の違いはうまく表現されていないように思います。土地の高低差や建築物があるフォートナイトでは、物理的な上下関係も勝敗を分ける要素になりますが、なかなかその理解に苦戦しています。そもそもエイムが難しく、なかなかダメージを与えることができない私には、もっと上下の把握ができていたらなぁと思うこともあります。

△「ダメージを与える」ミッションに少し心が折れた投稿をするいぐぴー

難しさ3:アクセシビリティー機能が相反することもある

全盲ゲーマーがプレーする場合、アクセシビリティー機能は「ON」にした方が良いと思われる方も多いのではないでしょうか。しかし時に、アクセシビリティー機能がマイナスに働いてしまう場合があります。

たとえばフォートナイトでは、アクセシビリティー機能で「サウンドエフェクトを視覚化する」という機能があります。足跡などが画面に視覚情報として残るのが特徴となる機能なのだそうですが、これを「ON」にしてしまうと、音声情報の機能が著しく低下します。先述の遠近感や左右の違いが全くわからなくなってしまうんです。私は必ず「サウンドエフェクトを視覚化する」は「OFF」の状態でプレーしています。

フォートナイトはブラインドeスポーツでも十分挑戦できる!

いかがでしたでしょうか。私なりにFPS/TPSにおけるブラインドeスポーツを行う上での実態をお伝えしてみましたが、イメージできた点はありましたでしょうか。

私は、PCでPUBG、Switch Liteでフォートナイトと荒野行動にチャレンジしてみて、現時点では完全ではないけれどフォートナイトはブラインドeスポーツで挑戦していけるゲームタイトルに一番近いと感じました。

今後、ほかのゲームタイトルにも挑戦する中で、FPS/TPSをどう楽しんでいるかも紹介できればと思っています。お楽しみにしていただけたら幸いです。

1アシストを記録し、ビクロイをとれたいぐぴーの投稿(旧アカウントより)

【著者紹介】いぐぴー

生まれつき全盲のゲーム好き女子。音楽とゲームと甘いものが大好きで、ホラーと爆音と苦いものが大嫌いな28歳。「Fortia」のメンバーとしてブラインドeスポーツの可能性に挑戦している。 好きな食べ物は納豆とチョコレート。好きな動物は犬。好きな音楽アーティストはALI PROJECT。心から興味を持った物事には全力で飛びつくタイプです。

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