ゲーマーの目を守る鎧 ゲームジャンル別に推奨カラー 

──ニデックがつくるゲーミンググラス「G-SQUARE」の特徴を教えて下さい。

開発には、DetonatioN Gamingが協力。写真はG-SQUAREを着用したDNGのEvi選手 (C) 2021 Riot Games, Inc. All rights reserved.

G-SQUAREは「ゲーマーの目を守る鎧」というコンセプトのメガネで、スポンサード契約を結ぶプロeスポーツチーム「DetonatioN Gaming」と協力し、製作しました。

特徴の一つが、ゲームジャンル別にレンズの推奨カラー(4種類)があることです。これも選手の声を採り入れることで生まれました。

発売を開始した2016年4月当初、色は「ワインレッド」のみでした。メガネづくりに協力してもらっていたDetonatioN Gamingの「リーグ・オブ・レジェンド」のチームメンバーから「敵が見やすい」と言われたのが「ワインレッド」だったんです。

しかし、FPSの選手から「敵が見えにくい」と言われました。「グレー」のほうが見えやすいと。ゲームのジャンルによって「見えやすさが変わる」という視点は私たちにはありませんでした。ジャンルごとの推奨レンズカラーは、選手と協力していなければ、誕生しなかったかもしれません。

──ゲーミンググラスはPC用のブルーライトカットメガネとは違うんですか。

ブルーライトカットは、ゲーミンググラスの機能の一つでしかありません。

ゲームを快適に、集中してプレイするためには、ブルーライトカット機能だけでは不十分です。ブルーライトカットは青色をカットするため、黄色っぽく見えるデメリットがあります。すると、ゲームの世界観が壊れてしまう。それもあって、カラーレンズを使うことで、その世界観を損なわないようにしています。

またゲームは強い光を出すことがあります。その光を浴びれば、目は刺激を受けてしまいます。だから、「G-SQUARE」では眩しさを軽減する加工がほどこされています。

ヘッドセットとの相性も重要です。チームプレイが必要なゲームでは、コミュニケーションのためにヘッドセットは必須です。ヘッドセットをつけたときに、痛みや違和感を覚えにくいフレームづくりをしています。

G-SQUAREプロフェッショナルモデル フルリムタイプ。3万800円税込み(ニデック提供)

眼科で検査時に見る、あの「気球」はニデック製

──ニデックは眼科医療機器で知られていますが、ゲーミンググラスにその技術は使われているのでしょうか。

ニデックの事業には、「医療」「眼鏡機器」「コーティング」の分野があります。

みなさんがかけるメガネそのものを製作しているわけではありません。私たちが製作するのは、眼科や眼鏡店で使う機器です。眼科の検査で、青空の背景に気球が浮かんでいる絵をのぞきこんだ経験はありますでしょうか。実はあの機器はすべてニデック製です。

「G-SQUARE」の開発につながったのは、レンズメーカーや液晶モニターに独自の加工するコーティング分野です。このレンズの加工技術が、ゲーミンググラスに生かされることになりました。

眼科の検査でよくみる「気球」の機器はニデック製です(ニデック提供)

──コーティングの事業部(以下、コート事業部)が、なぜ自社ブランドの商品をつくろうと思ったのでしょうか

コート事業部はお客さんの商品に、コーティング加工するという受託ビジネスです。ですから、商品名にニデックの社名やブランド名はつきませんし、消費者がニデックの存在を知ることはまずありません。コート事業部としては「ニデックブランドを一般の消費者に広められる自社製品を作りたい」との思いがありました。

最初、コーティング技術を生かしてスマホ向けのカバーを製作しました(すでに販売中止)。スマートフォン市場に活気があったおかげで、結構売れまして、そこで消費者向けの販路が開拓できました。

「ニデック製の商品を消費者に手にとってもらえた」。この成功体験が、その後のゲーミンググラス開発につながっていきます。

──スマホカバーの次が、なぜゲーミンググラスだったんですか?

2014年ごろ、ある営業部員が「eスポーツというものがあるらしいよ」との情報をもってきたんです。そこから人づてにDetonatioN Gamingとつながり、「何か一緒にできないか?」となり、eスポーツ向けの商品をつくろうというプロジェクトが立ち上がりました。

いきなりゲーミンググラスを作ろう、となったわけではありません。さまざまな案を出して、実際にサンプルを作って、DetonatioN Gamingの選手の方々に試してもらったんです。例えばディスプレイに貼るフィルムも候補のひとつでした。その中で、DetonatioN Gamingが一番「しっくりきた」のがゲーミンググラスだったというわけです。

独自のコーティング技術によって、目の疲れを感じることなく、ゲームに集中できるといいます(ニデック提供)

ゲーミンググラスをeスポーツの定番品に

──「G-SQUARE」をどのような方に使ってほしいですか

「ゲーミンググラスと言えば、G-SQUARE」と一番に名前が挙がってくるポジションを目指しています。

ただ、マウスやヘッドセットのようなゲーミングデバイスと比べると、ゲーミンググラス自体の認知がゲーマーの間にも広がっていないようにも感じています。一般的なメガネは「必需品」ですが、ゲーミンググラスはまだ位置づけが「嗜好品」なんです。なので、ゲーミンググラスをゲームをする上での「定番品」にしたい。

そのためには、まずはゲーミンググラスの認知を広げ、その必要性を理解してもらう必要があります。ですので、様々なメーカーが参入することを歓迎します。商品が増えることで、ゲーミンググラスの市場が盛り上がると思うので。

──市場参入者が増えればライバルが増えるわけですが、G-SQUAREの強みを改めて教えて下さい

まずは、コーティング分野で培ってきたレンズの加工技術です。あと、DetonatioN Gamingさんと連携していることも強みと言えます。eスポーツチームの選手の皆さんに寄り添って商品開発をしているということですね。

──今後、ニデックはeスポーツとどのように関わっていきますか

ゲーミンググラス以外で言えば、eスポーツ大会やイベントの協賛です。たとえば、eスポーツを通じて障害者の支援、子どもたちの教育、ひきこもりの方たちのつながりの創出を目指すプロジェクト「edges」に協賛しています。

もともとニデックは医療と関わっていることから、このプロジェクトに協賛したわけですが、eスポーツが社会貢献につながるという可能性を感じています。

──ニデックがゲーミンググラスに着目し始めた時期は2014年でした。eスポーツ市場の変化、そしてこれからについて、どうとらえていますか

2014年ごろは、eスポーツは一部のコミュニティでだけ熱狂的な盛り上がりを見せているように感じました。ただ、世間的な認知度はまだまだで、社内でも「しょせんゲームでしょ?」という空気がありました。でも年々、大会が大規模となり、誰もが知る業界となり、その成長ぶりには驚くばかりです。

周辺機器など関連市場の盛り上がりも感じています。ただ、さきほども言いましたが、ゲーミンググラスは「嗜好品」という位置づけであり、市場の大きさもほかのデバイスと比べると、まだまだ。「あっ、ゲーミンググラスをつけてるね」「G-SQUAREつけてるね」という会話が普通にされるようになるよう、頑張っていきたいと思っています。

(前嶋みどり)