5月16日、バトルロイヤルTPS「フォートナイト」の招待制大会であるCrazy Raccoon Cup Fortnite Competitive(以下、CR CUP)にて優勝を果たしたGreen Leaves所属のbykn選手。彼は2018年からフォートナイトにおいてプロ活動を続けているベテランプレイヤーであり、プロゲーマーとしてだけではなくゲームを教える講師としても活動している。また2021年には一児の父となった。

選手寿命が短いと言われているeスポーツプレイヤーの中でも、フォートナイトは特に選手の年齢層が低い。そういった中で二足のわらじを履き、未だなおプロとして実績を重ね続けられるのは何故なのか。ベテランが持つしなやかな強さに迫る。

「俯瞰できること」の強み

――まずはCR CUP優勝おめでとうございます。ベテランプレイヤーが優勝を果たすのはかなり珍しいことだと思います。

ありがとうございます。今年で27歳になりましたが、フォートナイトのプロプレイヤーの中では最年長ですね。この年齢のプレイヤーが大会で優勝するのは、確かに珍しいかもしれません。

――フォートナイトの世界だと国内どころか国外でも、27歳のプロプレイヤーはいないような……。

海外にもほとんどいないと思います。

若いプレイヤーの方が瞬発力があり反応速度も早いとされてますし、特にフォートナイトではそれらの要素がプレイヤーとしての強さに大きく関わります。若いプレイヤーの方が結果を出していると思います。しかし、だからこそ自分自身の強みもあると考えています。

――bykn選手自身の強みというと?

試合進行の考え方です。立ち回りのひとつとも言えますが、若いプレイヤーよりも俯瞰的に自チームや敵チームを含めた周囲の状況を把握できる自信があります。「こういう状況だからこうやって動こう」と適切な判断を下せること。これが自分の強みです。

ベテランプレイヤーとして活躍し続けているbykn選手

――これを若いプレイヤーが同じような判断を下すのは難しいのでしょうか。

難しいというより、俯瞰的な視点を重要視する必要がないんだと思います。若くて強いプレイヤーは感覚で動く人が多く、実際それで勝ててしまう。感覚的に戦って勝利を重ねられるほどフィジカルが優秀なので、わざわざ俯瞰的な視野を持とうと意識するプレイヤーはかなり珍しいんですよ。

だからこそ自分のように、俯瞰して試合を観察し、敵チームに対して刺さる行動を指示できる役割は重要になります。

――bykn選手はフォートナイトプレイヤーとしてベテランの域に達していますが、成長の限界を感じることはりますか。

eスポーツの世界では若いプレイヤーの方が強いと言われていますし、プロたちの年齢を見ればそう思ってしまう気持ちもわかります。ただ自分自身の実感としては「逆」なんです。限界を感じるどころか、歳をとるほど結果が良くなっているので、むしろまだ可能性すら感じています。練習時間さえ確保できれば、まだまだ強くなれます。

――意外です。歳と共に衰えを感じるプレイヤーも多いと聞きますので。

集中力を継続する時間は昔よりも短くなっているとは思いますね。あと歳をとると「自由な時間」が減っていく方が多いので、肉体的な衰えよりもそういった事情の方が能力を左右するのでは、と考えています。

プロとしての経験と自身の性質が生きる講師業

――bykn選手はプロプレイヤーとして毎日活動しつつ、講師も務められていますよね。

この1年間は滋慶学園グループの学校にあるeスポーツ科やeスポーツコースで講師としてオンライン授業を行ってきました。また、今年からクラーク記念国際高等学校のeスポーツ・フォートナイト部のコーチも担当することになります。どちらの学校でもフォートナイトの専門講師を務めています。

――授業ではどういうことを教えていますか。

大まかに分けるとプレイ解説、エイム練習、実践練習の3種類です。フォートナイトは時期によってトリオ/デュオ/ソロなど色々な大会が開催されるので、生徒が出場する大会に合わせて授業内容も変えていますね。

――bykn選手は複数の学校の生徒を一手に引き受けて授業をしていると聞きました。結構珍しいことですよね。

札幌・仙台・東京(2校)・名古屋・大阪にある滋慶学園グループ計6校の生徒に向けて授業をしているんですが、この業界だと自分以外でやっている人はほとんどいないと思います。参加する生徒も多く、人によってフォートナイトに対する姿勢も違うので汎用性のある授業を行うことを意識してます。

特に実践練習はプロが実際に行う練習をしつつ、楽しみやすい形式で進めるように心がけてます。ありがたいことにフォートナイトは多人数で一緒に練習できるゲームですし生徒の皆さんも素直で協力的なので、授業でトラブルが起こったことはありません。

――bykn選手はもともと人に教えることが得意なのでしょうか。

学校で講師をする前から、若いプレイヤーたちと一緒に練習メニューを考えたり、お互いにアドバイスを言い合ったりしていましたね。振り返れば、良い経験になったと思います。自分で考えるだけじゃなく、他のプレイヤーたちと話し合って色々な練習法や改善案を生み出していくのは、コミュニケーション面でも非常に重要です。

あと昔から自分のプレイングを研究するのが好きで、ほぼ毎日分析・改善し続けてきました。こういった地道な経験というか、自分の性質みたいなものが講師業に合っていたんだと思います。

家庭内IGLの支えで「三刀流」の実現

我が子と一緒に外出するbykn選手

――今年の1月にお子さんが生まれ、幸せな日々をお過ごしかと思います。ただ、プロゲーマーと講師の兼業となると1日のスケジュールがかなりキツそうです。

プロゲーマーとしても講師としても在宅で活動できていますから、ある程度は子どもの面倒を見られるんですけど、想像していたよりもずっと時間が無いですね。午前は妻と一緒に子どもの面倒を見たり、買い物に行ったりできるんですが、午後からはほとんどそういった時間が取れなくなります。

日によって変わりますが、昼からは講師としての仕事が始まります。夕方ごろに終わるんですが、その後18時からフォートナイトの大会が控えているので、空き時間で家事や雑事をやりつつ、大会に向けて準備を整えます。

――フォートナイトは毎日のように何かしらの大会が開催されているので、多く出場しようとすると相当な時間を割く必要がありますよね。

そうですね。18時以降は大会だけではなく配信やスクリムなどを行うこともあるので、午前0時くらいまではPCの前から離れられなくなります。活動を終えてから寝るとなったら、早くても午前1時くらいになってしまいますね。休日・平日で多少違いますが、平均するとこういう1日が多いです。

――今の話を聞いていると、動画の研究やエイム練習などの、いわゆる「プレイ練習」に割く時間は無いように思えます。

自分や他人のプレイを動画で見て分析・研究する時間と、エイム練習や立ち回り練習に割ける時間は大分減りましたね。1日に数時間、多いと6時間以上をこういった練習に割いているプレイヤーもいますが、自分の場合は長くても1時間くらいです。

ただ逆に、「効率的に練習して学習する能力」は伸びたかもしれません。練習時間が減っても強くなっている自覚があるので。あとは毎日の活動で手いっぱいの自分を、妻がちゃんと支えてくれているのも大きいです。

――bykn選手から見た奥さんの姿を、少しだけ教えてもらえますか。

しっかりしています……しっかり者の極みです(笑)。自分の家庭は妻主導です、間違いなく。ゲームにおいて自分は俯瞰して物事を見て指示するタイプだと言いましたが、日常生活では妻が指示役です。家事の分担も日々のスケジュールも、妻の指示に全面的に従っています。妻は家庭内IGL(インゲームリーダー)みたいな感じですね。妻は現在産休中で家にいることも多く、すごく助かっています。

自分自身は結構マイペースなので、しっかりリードしてくれてありがたいです。妻主導で尻に敷かれている方がうまく回りますね。

大会専用の立ち回りが勝利を導く

――bykn選手は少ない練習時間で先日のCR CUPを優勝しました。勝因についてお聞きしたいです。

簡単に言うと、立ち回りが噛み合いました。CR CUPの出場者は全員が上手いプレイヤーです。上手い人たちと戦う場合は普段とは違う「大会専用の立ち回り」が必要になります。

最も意識すべき点は上位プレイヤー同士で起こる「潰し合い」です。

――潰し合いですか。

フォートナイトをプレイするbykn選手

大会では「優勝すること」に特別な価値があるじゃないですか。だから途中から、暫定1位のチームが狙われるようになるんです。特にCR CUPでは1位のみに賞金が出る形式ですしね。

CR CUPは全5戦の合計点で順位を争うルールでした。自分のチームは最初の3戦が終わった時点で1位だったので、当然残り2戦は他のチームから狙われるだろうと考えていました。
4戦目は上手く立ち回りきれずに多少コケてしまいましたが、5戦目で他のチームからのフォーカスをきっちりいなせたので、優勝を掴み取れたんだと思います。

こういった「潰し合い」をいかに捌けるかが、上手いプレイヤー同士の大会では重要になるんです。

――強いチームや選手って対策されますから、「対策の対策」が必要になるんですね。

今回はチームでの役割分担がハッキリしていたのも勝因の一つです。

チームメイトのLiberta Maluuuは爆発力のある特攻隊長的なプレイヤーなんですが、不発もしやすい。彼がちゃんと機能するように都度修正するのが自分の役目でした。

それに対して、もうひとりのチームメイトALBA jaemonはオールラウンダータイプで安定しています。考え方も自分と似ているので、jaemonと自分でMaluuuを支えつつ、Maluuuが爆発した時はそれに合わせるという感じです。

メンバー同士の相性が上手くハマるかどうか、これもチーム戦の醍醐味だと思います。

ソロ大会でも優勝目指して

日々の活動に取り組むbykn選手

――今後の目標は何ですか。

チーム戦で何度か大会で優勝できたので、次はソロでの大会優勝を目標にしています。

――ソロでの大会優勝、期待しています。最後に、日ごろの活動で心掛けていることがあれば教えていただけますか。

座右の銘みたいなものですが、「日進月歩」を心掛けてます。プロゲーマーとしても講師としても父としても、ずっと努力し続けて成長することが自分には必要だと思っています。