目次

  1.  ゲーム酔い(3D酔い)とは?
    1.  視覚からの感覚と身体感覚のズレが原因
    2. 8.9%が「ゲーム酔い」を体験
  2. ゲーム酔いの予防策は?
    1. 徐々に慣らせば酔いづらくなる?
    2. 頭を動かす運動で平衡感覚を鍛えよう
    3. モニターのサイズは小さく、離れてプレイ
    4. 座ってプレイを
    5. ゲームの設定を変えてみよう
    6. 酔い止め薬は効果があるが……
  3. それでもゲーム酔いをしてしまったら
  4. まとめ ゲームへの没入感と酔いやすさのバランスをとろう

3Dゲームは、まるで自分がゲームの世界にいるような感覚を楽しめるのが魅力です。「Apex Legends」「モンスターハンター」といった数多くの人気タイトルに採用されています。ただ、いくら楽しくても体調を崩してしまっては台無しです。有効な予防策はあるのでしょうか。

そもそもゲーム酔いとはどういった症状を指すのでしょうか。

ゲーム酔いで体調を崩してしまったら、せっかくの楽しさも台無しです(イメージ写真)

ゲーム酔いとは、立体的な画像のゲームをプレイすることによって、吐き気や頭痛、冷や汗といった、乗り物酔いに似た症状が起きることです。ひどい場合には、吐き気だけではなく実際に嘔吐してしまう人もいます。

堤医師は「ゲーム酔い」が起きる原因について、こう説明します。

「3Dゲームではゲーム空間に意識が没入することで、視覚から得た情報によって自分が移動しているような感覚が生じます。でも、実際には身体は動いていません。この視覚情報と身体の感覚のズレ、乖離によって自律神経が乱れ、めまいが起き、酔いの症状が出ます。ただ、めまいを起きているにも関わらず、酔いを感じない人もいます。症状は個人差が大きいです」

12人に1人がゲーム酔いを体験したとの調査もあります(イメージ写真)

エスエス製薬の調査によると、「ゲーム酔い」を経験したことがある人は、33200人あまりの男女のうち、約8.2%でした。12人に1人程度の割合です。

2011年に発売されたニンテンドー3DSでも、立体的な画像を見続けることによって酔ったり、疲れたりする症状を感じる人がいました。任天堂からは「ゲーム映像の工夫だけでは疲れを完全に無くすことはできませんので、3D映像でゲームをお楽しみいただく場合、目安として30分ごとに休憩をとっていただくことをおすすめします」などとする注意喚起がありました。

画面がリアルで、意識を集中してプレイするジャンルのゲームほど「ゲーム酔い」が起こっているようです。代表的なのは、1人称視点のシューティングゲーム「FPS」です。ネット上では「Apex Legends」「フォートナイト」で酔ったとの声が後を絶ちません。RPG「ドラゴンクエスト11」のように、さほど激しい動きがない3Dゲームに酔う人もいます。

では、「ゲーム酔い」を防ぐには、あるいは症状を抑えるためには、どのような方法があるのでしょうか。

「3Dゲームを短時間から少しずつ繰り返すことで、脳がそのゲームに慣れ酔わなくなる」との指摘もありますが、堤医師は懐疑的です。

「慣れればゲーム酔いしなくなるというのは『視覚情報による移動しているかのような感覚と身体感覚のズレを受け続けることによって、自律神経の乱れが軽減される』ことを意味しますが、理論上は考えにくいです」

「一方で、そのゲームに慣れることで、キャラクターの動きが予想できるようになれば、酔いづらくなるかもしれません。車の後部座席に乗るよりも前部座席のほうが車酔いしづらいのも、車の動きが予想できるからです。ただ、あまり大きな期待はしないほうがよいでしょう」

「すでに説明したように、酔いの原因は『身体は動いていないのに視覚から得た情報によって動いているような感覚になる』からです。逆に言えば、酔いを防ぐには動いている感覚にならなければいい。3Dゲームで自分が動いているように感覚になるのは、背景画面が動くためです。だから、操作するキャラクターではなく、背景画面に意識を移せば、酔いは防げるかもしれません。ただ、そんなことをしたら、ゲームは面白くなくなってしまうでしょうね」

「ゲーム酔いする人は、目からの情報に影響されやすい人です。ですから、必要となる対策は、視覚依存度を下げることです。これには頭を動かす運動によって平衡感覚を鍛える必要があります。体操は理想ですね」

モニターのサイズはどうでしょうか。堤医師は、モニターのサイズが大きくなれば酔いやすくなると指摘します。

「酔いの原因である『身体は動いていないのに、視覚から得た情報によって動いているような感覚』の強弱は、ゲームの没入感に左右されます。従って、モニターが大きければ大きいほど、視野に入るのがゲーム画面だけとなり、没入感が増し、酔いやすくなるでしょう」

「だからモニターのサイズを小さくすれば、静止している部屋の様子が視野に入ります。それによって没入感が減れば、ゲーム酔いはしにくくなります。ただ、小さいモニターであっても、そこに近づいてプレイすれば、ゲーム画面が視野の大半をしめてしまうわけで、大きなモニターと没入感は変わりません。適切な距離をとる必要があります」

「ちなみに部屋の明るさについては、明るい方が刺激が強くなる、逆に弱くなるなどの報告もあり、わかっていません。ただ真っ暗な部屋は、ゲーム画面への没入感が増してしまうため、避けたほうがいいでしょう」

プレイする際の姿勢は関係するのでしょうか。ベッドにポータブルゲーム機やスマホを持ち込み、3Dゲームをプレイする人も多いでしょうが、どうでしょうか。

「寝転がって腹部が圧迫されるような状態では、消化管の動きに影響が出るため吐き気が出やすくなってしまいます。また、さきほど説明したように、寝転がってポータブルゲーム機を顔に近づけてプレイしたら、没入感が激しくなり、酔いが激しくなる恐れがありますね」

「基本的には、座ってプレイするのが良いでしょう。立ってプレイするのも血圧低下が起こりやすくなるためおすすめできません」

「慣れない姿勢をとることも酔いをひどくする恐れがあります。極端に言えば、逆さずりになって3Dゲームをすれうば、通常とは異なる感覚に陥り、酔いやすくなってしまうことは容易に想像ができます」

ゲームの種類によっては、カメラワークの設定を変え、画面の揺れを抑えられるものがあります。

たとえば、ドラゴンクエスト11であれば、カメラが主人公を追尾する「オート移動」をオフにすることができます。モンハンライズも、画面の中央にモンスターを表示させる「ロックオン」と、自らカメラをモンスターに向ける「ターゲットカメラ」を選ぶことができます。

「確かに、酔いにくくするという点では、ゲーム画面の揺れを無くすのは効果があるでしょう。カメラの設定を変えられるのであれば、効果を試してみてもいいでしょう。ただし、その揺れそのものがゲームの魅力とも言えます。ゲームを楽しめる範囲と酔わないバランスを探って下さい」

「酔い止め薬を飲めば、快適にプレイできるのでは?」と思いましたが、堤医師は「医師として勧めません」と言います。

「確かに、ゲームをプレイし始めるまえに酔い止め薬を飲むことで、酔いの症状を抑えることは期待できるでしょう。自律神経の乱れを調整してくれるので。ただ、そこまでしてゲームをすることを推奨する医師はいないと思います」

ゲーム酔いの症状が出たら、横になって休憩をするのが大事です(イメージ写真)

いくら酔いにくくするための対策をしても、ゲーム酔いになる人はいます。初期症状が出たら、すぐに視線を画面から外したり、休憩したりしたほうがよさそうです。

「症状がひどいときは横になって、仰向けになって安静にして下さい。プラスアルファでできることは、脳への血流を冷やすことです。水で濡らしたタオルや冷却シートなどを使って、首を冷やしてあげるといいですね」

堤医師は、そう指摘します。

堤医師の話をまとめると、酔わずにゲームを楽しむためのポイントは、ゲームへの没入感と対策のバランスでした。すぐにできることは「モニターのサイズを小さくする」「適切な距離をとる」「座ってする」ことでした。酔い止め薬は効果は期待できるか、「そこまでしてゲームをするのは医師として勧めない」とのこと。また、時間はかかるかもしれませんが、「頭を動かすような運動」によって、酔いづらくなるかもしれないことがわかりました。

どのゲームを、どの程度プレイすれば酔ってしまうのかについて、一番わかっているのは自分です。酔う前に休憩しながら、休み休みゲームを楽しむ手もあるかもしれません。

とはいえ、堤医師も指摘するように、酔うか酔わないかは個人差があります。どうしても3Dのゲームをプレイするとひどく酔ってしまう場合は、2Dゲームなど酔わないゲームに楽しみを見いだした方がよさそうです。

(前嶋みどり)

堤剛医師

堤剛医師プロフィール
つつみ・たけし 耳・鼻・咽喉頭領域の疾患の高度先進医療、特に難聴とめまいについて専門的な治療を行う東京医科歯科大学耳鼻咽喉科の科長を務める。専門は、めまい平衡医学、耳科・鼻科の内視鏡手術、外耳道がん、人工内耳。耳鼻咽喉科医の仕事(教育、臨床、研究、大量の雑用)には「肉体労働と頭脳労働が絶妙のバランスでブレンドされています」。