板橋ザンギエフ選手ナウマン選手はDetonatioN Gamingの格闘ゲーム部門に所属するプロゲーマーです。20年以上格闘ゲームをプレイしてきたベテランの板ザン選手と、20代の若手プロとしてシーンを牽引するナウマン選手。世代は違えど、日本のeスポーツシーンにとって重要な存在である二人が、お互いの関係や将来の展望について語り合いました。(2人が参戦するストVリーグについて語った記事はこちら

「EVO Japan」の優勝の裏にあった板ザンの金言

同じチームのナウマン選手と対談する板橋ザンギエフ選手

――ナウマン選手といえば、何より「EVO Japan 2020」の「ストリートファイターV」(ストV)部門の優勝が挙げられますが、当時はどのような心境でしたか?

ナウマン 自分は一つの大会を目標に練習することが多いのですが、当時はストVに大型アップデートが入ったばかりだったこともあり非常にモチベーションが高くて、「EVO Japan」一本に絞ってひたすら練習していました。だからこそ、優勝できた時は本当に嬉しかったですね。それまで勝てていない時期が長かっただけあって、報われた気持ちでした。

――板ザンさんはそれを見ていてどう感じましたか?

板ザン 嬉しかったですね。「ストV」はベテランプレイヤーが強いゲームなのですが「そろそろ若手に勝ってほしい」という思いが確実にコミュニティーにあったんです。そんな中ナウマンが優勝してくれたので、ヒーローのような感じでした。「ストV」部門が大会のトリだったこともあって、ナウマンのお陰で非常に思い出深い大会になりましたね。

――ナウマン選手が勝てる確率というのはどれくらいのものだったのでしょうか?

板ザン ナウマンがベスト8に残った時、優勝までに倒さなくてはならない相手がsako選手にマゴ選手と、ベテランの強豪2人だったんですよ。これは正直きつそうだな、と思って見ていたんですが、そこでナウマンがsako選手相手にとてもいい勝ち方をしていたんですよ。それを見て、もしかしたら行けるかも、と思いました。あれだけの大舞台になると、おじけづいて普段通りのプレイができない選手も多いのですが、そこをしっかり優勝まで勝ち切れたというのは本当にすごいことで、「ナウマンも一皮むけたな」と思いましたね。

ナウマン 僕の当時の課題として、格上のプレイヤーに勝てない、というのがあったんです。実力通りのプレイをして、実力通りに負けてしまっていて、なかなか大会で結果を残すことができていませんでした。そんな時に板ザンさんから「勝負所を意識して本番で勝つプレイをした方がいい」とアドバイスを頂いて、そのおかげもあって「EVO Japan 2020」で優勝できたのだと思います。

ゲームに真剣、だから世代の格差は感じない

EVO Japan 2020の優勝で知られるナウマン選手

――つい先日40歳を迎えられた板ザン選手と20代のナウマン選手ですが、ジェネレーションギャップを感じることはありますか?

ナウマン あんまり感じないと思います。プロゲーマーの方々は皆ゲームを真剣にやっていて、そこで共通の話題ができるので、ジェネレーションギャップは感じないですね。

板ザン ゲームに対する取り組み方で見ても、人それぞれ違いますからね。僕もナウマンから学ぶことは多いので、世代は関係ないと思います。

――お二人が直接対決するとなった場合はどちらが勝つのでしょうか?

ナウマン 僕は板ザンさんとの試合には全く良いイメージがないです(笑)。板ザンさんのザンギエフは小技でじわじわ体力を削るのが上手くて、気づいたら体力が無いなんてことも多いです。戦っていてすごく息苦しいんですよね。

板ザン 確かに、今のところ野試合では僕の方が勝っているんですよ。ただ、大会となるとナウマンはうまいこと調整してくるだけの実力があるので、どちらが勝つかは分からないと思います。

――プロゲーマーとして、今後どのような活動をしていきたいですか?

ナウマン プロゲーマーなのでゲームはもちろんとして、僕はゲーム外のことにもたくさん挑戦していきたいと思っています。実は今プロゲーマーの男性アイドルユニットを作ろうという企画があって、夏ごろのデビューを目指してレッスン中なんです。そういったことも含めて、新規の人に業界を知ってもらう活動をたくさんしていきたいですね。

板ザン じゃあナウマンはアイドル活動も乗り気なんだ?

ナウマン もちろん、やるからにはちゃんとやるつもりです。でもどうなるのかは全く想像がつきません(笑)。まずはデビュー曲を真剣に取り組みたいと思っています。

板ザン でも僕も、プロゲーマーは幅が大事だと思いますね。大会で結果を残すことはもちろんとして、ゲームのPRをしたり、スポンサーさんに還元できる仕事をしたりするのも大事だと思います。プロゲーマーの仕事ってまだまだ未開拓で、RPGでいえば言ったことのない島がたくさんあるような状況なんですよ。これから色々なことに挑戦して、プロゲーマーという仕事の幅をもっと広げていきたいですね。

ナウマン 格闘ゲーム自体、認知度は高いと思うんですが、なかなか若い人たちにプレイしてもらえていなくて。なので、僕たちが格闘ゲームの魅力をしっかり伝えていけたらなと思っています。

――板ザン選手は、若手を育成していきたいという意識はありますか?

板ザン それももちろんあります。若手が出てきてくれることはシーン全体としてもすごく良いことなので、自分たちが培ってきたものを積極的に受け継いでいきたいですね。

ナウマン 僕ら若手としても、ベテランの選手たちのプレイや、ゲームに対する取り組み肩をしっかりと見て、それを継承していかないとな、と思っています。

板ザン じゃあ、早く引退してほしいとは思わないんだ?

ナウマン 思わないですよ!僕たち若手がちゃんと実力で勝てるようになってから、やっと世代交代になると思うので、それまでは続けていてほしい。そして、引導を渡したいです。

元バーチャ勢が語る最新作

対談する板橋ザンギエフ選手とナウマン選手

かつて格闘ゲームシーンを席巻した「バーチャファイターシリーズ」の最新作「Virtua Fighter esports」が2021年6月から配信されています。

――板ザン選手は元々「バーチャファイター」のプレイヤーだったと聞きますが、今回の新作はどのように見ていますか?

板ザン 自分は今でも「バーチャファイター」(以下 バーチャ)出身という意識があるのですが、ここ10年ほど新作が出ていない状態が続いていたので、とても寂しい思いをしていました。そんな中で、今回「バーチャ」に新たな動きがあったというのはとても嬉しいですね。

折角の新作なので、盛り上がって欲しいという気持ちはあります。ただ、ゲームシステムの部分は前作から全く変わっていないということなので、その中で新たにコミュニティーを作るのは簡単ではないなと感じます。盛り上がっていた頃と同じようなコミュニティーが再びできることはないと思うので、2021年なりのバーチャコミュニティーが出来上がってくれると良いですね。

ナウマン 僕なんかは「バーチャファイター」という名前は知っていても、実際にハイレベルの対戦を見たことはないので、大会を観戦するのが楽しみです。知らない人からしたら、完全新作じゃなくても新鮮な気持ちで見られるんじゃないですかね。

板ザン 確かに、大会が開催されるのは楽しみですね。バーチャコミュニティーには、ずっと「バーチャ」一筋でプレイしているプレイも多くいるので、そういう人たちにスポットライトが当たる大会があると嬉しいなと思います。

――大会はどんなところが見どころになってくると思いますか?

板ザン 「バーチャ」って、流行っていた頃は5対5のチーム戦が主流だったんです。しかも、今考えると恐ろしいですけど、当時の大会は1本先取がほとんどで、かなりのばくちゲームだったんですよ(笑)。僕なんかも、どれだけ1先でワンチャンをつかめるか、ということばかり考えていましたからね。

もし「Virtua Fighter esports」が今の格闘ゲームのeスポーツシーンになぞらえて、個人戦の2本先取、3本先取で戦うゲームになった場合、大会でのバランスやメタは大きく変わると思います。当時とはまた違った対戦が見られると思うので、そこが見どころになると思います。

思い入れの強いゲームなので、自分のできる範囲で盛り上がりに貢献していきたいですね。