「トラウマ」だったWorlds 2018

まず、2021年のMSIがいかに熱い戦いだったかを語るために、DFMが出場した「Worlds 2018」の話をしましょう。

2015年当時、国内ではほぼ負けなしと言われ、リーグ戦で圧倒的な強さを見せていたDFMには「プレーオフ」という大きな壁がありました。LJLのレギュラーシーズンを1位で終えたとしても、その後に行われるプレーオフに勝利しなければ国際大会の切符は手に入れられません。

ですが、DFMは合計3度プレーオフで敗れ、国内最強チームでありながら国際大会の舞台に立てていなかったのです。2018年9月に行われた「LJL 2018 Summer Playoff」でUnsold Stuff Gamingを破り、3シーズンぶりに国際大会への出場を決めました。

2018年10月1日、やっとの思いで国際大会への切符をつかみ、ファンの期待を背負って乗り込んだDFM。そして、あと一歩で勝利というところまで進みながら、世界の壁を思い知らされたチームが北米地域代表のCloud9(C9)でした。

C9はDFMの選手や日本のファンにLoLの怖さを思い知らせ、「トラウマ」を植え付けたとも言えます。メジャー地域のチーム相手を追い詰めただけに、心苦しい思いをしたファンも多いでしょう。DFMの選手たちは当時敗因となった「Licoriceポジション」を今に至っても警戒していると言います。結果的に、この年のWorldsでC9はベスト4まで勝ち残りました。

LoL Esports JP「DFM vs C9|Worlds 2018 Play-In Group Day1 Game5」

Cloud9とのリベンジマッチ

そして今年5月7日。MSIの GroupC Day2 Game4で、DFM vs C9の試合がありました。「2年半ぶりのリベンジマッチ」になります。

ここで前日は緊張で満足のいくパフォーマンスができなかったAria選手が得意ピック「ゾーイ」を先出し。このピックを解説のリクルート氏は「自信のあるピックを持ってきた」と語っており、Aria選手は世界トップレベルのプレイヤーであるPerkz選手相手に五分以上の戦いを見せ、「Ariaのゾーイ」を世界中に知らしめる活躍を見せました。

Yutapon選手は「カイ=サ」の持ち味であるバックラインへの飛び込み、ほんの少しだけ前に出た選手を見逃さず一瞬で落とし切るキルラインの見極めなど、要所の集団戦で圧倒的なパフォーマンスを見せました。そのパフォーマンスの高さは英語実況や韓国実況すらもYutaponコールが連呼されるほど。キャリーとしてチームを勝利に導きます。

DFMは自分たちの構成を正しく理解し、C9相手に実力で勝ち切ったのです。この試合の後、「DFM最強」「Yutapon」が日本のトレンド入り。2021年5月7日はDFMが快挙を成し遂げ、日本のファンが歓喜し、皆大きな声を上げた一夜となりました。

DetonatioN Gaming【NAに勝利】MSI2021 Day2、Cloud9に雪辱を遂げた日

王者に肉薄 惜しくも届かない勝利の「デスグラインダー」

雪辱を果たし、LJLとしても史上初となる快挙を成し遂げた翌日。グループCが「死のグループ」の名を冠する理由である韓国地域代表の世界王者DWG KIA(DWG)との戦いが幕を開けます。

この試合、お互いのチームがジャングラー、キャリーのチャンピオンを優先してピックしています。1st Pickフェーズの最後にはC9戦で高いパフォーマンスを見せたAria選手のゾーイを先出しし、カウンターの取れるラストピックにEvi選手のアーゴットを採用しました。

DFMはそれぞれの得意ピックを出し、ゾーイのポークやレルのキャッチからゲームを作る構成、DWGは戦闘拒否能力の高いチャンピオンを中心にピックし、集団戦が得意な構成を選択した形になります。

DWG戦で、事前の研究を信じてウェーブ到着前から仕掛けるDFM

DFMは試合開始1分も経たないうちから仕掛けていきます。 レベル1のウェーブ到着前からDWGのトップレーナーKhan選手を挟み、フラッシュを奪うことに成功。ボットレーンも序盤のチャンピオン性能差を生かし、アグレッシブにダメージトレードを行っている様子は王者に対して負ける気はないという意思表示に見えました。そして、レベル1に行ったトップレーンに対する仕掛けが功を奏し、Evi選手がファーストブラッドを獲得するのです。

DWG戦の試合時間3分30秒、世界王者相手にファーストブラッドを獲得

DWGの裏をかき、常に先手を取り続けるDFM。試合時間20分時点でドラゴン3つを獲得し、相手のラッシュをとがめてバロンを奪取することに成功します。そのまま有利を広げ、試合時間37分時点で約4000ゴールドの差を作り、「勝利まであと一歩」と誰もが予感したDFMに世界王者が鋭く研いだ牙を向けました。

LoL Esports JP:「DK vs DFM|Groups Day 3 Game 3|2021 Mid-Season Invitational」

残されたボットレーンのタワーを破壊するために集合するDFM。ゾーイが最も活躍できるタワーの攻防戦が始まります。Aria選手の素晴らしいスキルショット精度でDWGのキャリーGhost選手の体力を6割減らすことに成功。Ghost選手は行動不能効果に加え、次に当たったスキルのダメージを強化する状態異常が付与されており、DFMにGhost選手をキルする絶好のチャンスが訪れます。

ここでEvi選手操るアーゴットがアルティメットスキル「デスグラインダー」を射出。「デスグラインダー」は命中した敵チャンピオンの体力が25%以下になった場合、アーゴットの内側に引き込んで対象のチャンピオンを無慈悲にキルする強力なスキルです。Ghost選手に「デスグラインダー」が命中し、観戦している全ての人がDFMの勝利を確信した次の瞬間でした。DWGのCanyon選手の「モルガナ」が行動不能効果を無効にするシールドを咄嗟に付与し、Ghost選手の命を救うビッグプレーを見せます。

何が起こったのか分からず混乱しているDFMは勢いのままタワーダイブを決行し、5人全員が倒されてしまいます。1分を超えるデスタイマーは残酷にもDWGがゲームを終わらせるのに十分な時間を与え、DFMは勝利まであと一歩のところで敗北しました。

将棋のタイトル戦では勝った方がより憔悴し、負けた方が飄々とインタビューを受けることが多いと言います。勝利が見えた側は最後の一手まで読み間違えないよう脳をフル回転させ、敗北を予感する側は気持ちの整理をしながら指すためです。DFMはその最後の一手が敗着となってしまったのでした。

3度目の対決 得意ピック「ゾーイ」に仕掛けられた罠

MSIグループステージ突破を賭ける大一番となった5月11日。Twitterでは試合開始前から「#DFMWIN」がトレンド入りとなり、日本のファンたちがDFMの戦いに注目します。

DFMにとっては運命のDay6で1戦目を圧勝したDFMの戦績は2勝2敗。同じく2勝2敗のC9と再び激突しました。

この試合のC9はドラフトから大きな罠を仕掛けていました。まず、Steal選手にとって最もパフォーマンスの高いウディアをBAN、これによりYutapon選手はカイ=サを取れない上、DFMが最も得意とするピックアップ系の戦術が大きく制限されることに。そして、前回の対決時にあれだけ暴れられたAria選手のゾーイを空けたのです。

Aria選手に得意なピックを渡したいDFMは少し悩んだ末に「ゾーイ」をピック。するとC9は残りの2枠「ヨネ」「サイオン」を10秒も経たないうちにピックしました。そう、C9はDFMのゾーイに対する「回答」を用意してきたのです。

C9戦のBAN&PICKで、Aria選手のゾーイに対する回答はPerkz選手の「ヨネ」

試合開始直後からC9は仕掛けます。レベル1からDFMのジャングル内に侵入し、敵陣ジャングルからのスタートを試みました。これはDFMのジャングラーSteal選手がボットレーンに介入することを拒否するための戦術です。

しかし、C9の仕掛けに対してSteal選手は予想外のルートを取り、DFMがファーストブラッドを獲得。一見するとDFMが序盤の有利を手に入れたように見えるのですが、実はこのファーストブラッドによってSteal選手は対面のジャングラーに後れを取ってしまうことになるのです。ジャングルの経験値とルート取りについての詳しい話は機会があればまた。

結果、ジャングラー同士の戦いで常に後れを取ることになったDFMはアクションを試みるもことごとく失敗してしまいます。最終的に誰にも止められないPerkz選手のヨネが爆発し、3度目の対決はC9に軍配が上がりました。

続くGame5 DWG戦は世界王者相手に力負けという形になり、2勝4敗で惜しくもグループステージ敗退となってしまいました。

【MSI 2021 DFMの戦績】

5月6日   Day1:Game2 vs Gillette Infinity ●
5月7日   Day2:Game4 vs Cloud9 ○
5月8日   Day3:Game3 vs DWG KIA ●
5月11日 Day6:Game2 vsGillette Infinity ○
5月11日 Day6:Game4 vs Cloud9 ●
5月11日 Day6:Game5 vs DWG KIA ●
合計 2勝4敗 グループステージ 3位敗退

LJLの注目ポイントは

最終的にはグループステージ敗退になりましたが、今回のMSIは日本のファンに対して多くの希望を抱かせる結果となったのは間違いありません。

ですが、LJL 2021 Summer SplitのDFMは間違いなくMSIより強くなって帰ってくるでしょう。本大会を最後にサポートのKazu選手は引退を発表、これからはコーチに注力すると宣言しました。つまりDFMは別のサポートを用意していることになります。それがGaeng選手になるのかFujimoto選手になるのか、はたまた他の選手になるのかは現時点で不明ですが、次こそはという気概で調整を行ってくるでしょう。LJL Summerは進化したDFMに要注目です。

春のシーズンではRascal Jesterの大躍進やシーズン4位だったV3 Esportsの底力など多くの見どころがありました。「LJL 2021 Summer Split」は6月19日午後1時から開幕します。初戦はDFMvsRJです。

先日、パッチが変更され、競技シーンにおいて最も重要な役割を持つジャングルに対して大きな調整が行われました。これにより、春のシーズンとは全く異なる戦術やチャンピオンを見られるでしょう。日本のプロチームはこの環境をどう理解しているのか、どんなチャンピオンの評価が高いのか、注目して見ていきましょう。

LJL 2021 Summer Split

【日程】
WEEK1~WEEK7:6月19日~7月31日
PLAYOFFS:8月8日~9月5日

【配信】
Mildom:https://www.mildom.com/10244404
Twitch:https:// www.twitch.tv/riotgamesjp

【著者紹介】明形 知式

あけがた・ちしき 友人から「宇宙人」と言われるWebライター。LoLやストラテジーゲーム全般と読書が趣味です。好きな言葉は「愛するということは、おたがいに顔を見合うことではなくて、いっしょに同じ方向を見ることだ。(人間の土地/サン・テグジュペリ)」。