目次

  1. CAG念願の初勝利も、高かった世界の壁
  2. ベスト3は全てブラジルチーム! 巻き起こったブラジル旋風
  3. ブラジルの躍進から日本に今必要なものを考える
    1. 勝利と同じくらい大事な“個性の確立”
    2. 世界と戦うには、競争力の高い国内リーグの存在が不可欠
    3. 世界で最もファンが熱いブラジル。ファンの後押しが何よりも大事
  4. 競技シーンを観戦したくなった、そんなあなたへ

「レインボーシックス シージ(以下、R6S)」のeスポーツ公式キャスターをしております、ともぞう(@tom85y)と申します。

R6Sの競技シーンにおいて最高の祭典と言える世界大会が「Six Invitational 2021(以下、S.I. 2021)」です。新型コロナウイルスの影響で一度は延期されましたが、5月11日から23日にかけて世界各地から全18チームがフランス・パリに集い、無事開催されました。今回はこのS.I. 2021を振り返りたいと思います。

日本から出場したのはCYCLOPS athlete gaming(以下、CAG)です。奮闘したものの一歩及ばず、S.I. 2021を最初に去るチームとなってしまいました。

CAGが所属したグループA最終結果

前回のコラムでも書いたように、対戦スケジュールからみてCAGにとって最も重要だったのがDay1でした。実際、Day1に行われた対DarkZero Esports、Cloud9、FURIA Esports戦のどこか1チームにでも勝てていれば、グループステージは突破できていました(結果的に、今回は「3勝」が突破のボーダーライン)。

しかし、Day1は3連敗。ただ、CAGにとって、前回2019年8月に参加した世界大会とは異なり、得るものはとても多かった敗退ではないでしょうか。

Day1は3連敗となったものの、Day2は最終的に準優勝したTeam Liquid相手に得意の領事館で勝利。Day3は惜敗となるものの、優勝候補に上がっていたTeam Empire、Team BDSをギリギリまで追い詰めます。そしてTeam oNe eSportsに勝利し、この大会で2勝目を挙げました。

S.I. 2021は前回までのトーナメント戦とは異なり、10チームでの総当り戦(グループBはコロナの影響で8チーム参加)。スタイルが異なる世界の強豪と戦えたこと、そして「ある程度通用する」と実感を得たことは、彼らにとっても大きな経験になったはずです。

グループB最終結果

激闘の2週間を戦い、見事優勝したのはブラジルのNinjas in Pyjamas(以下、NiP)。SI2020にて準優勝したチームで、1年以上の期間を経て雪辱を果たしました。

R6Sはシーズンバージョンアップにより、プレイ環境が大きく変わります。そのため、継続して成績を残し続けることは非常に難しいと言われていますが、S.I. 2021優勝に向けて高いモチベーションを保ち続けたNiPには称賛の言葉しかありません。

ただ、今大会はNiPの強さが光っただけではなく、「ブラジルチーム」の強さが際立った大会でした。

NiPとグランドファイナルで争ったのはLiquidで、こちらもブラジルチームです。そしてNiPとグランドファイナル出場を懸けて上位ブラケットで争ったMIBRもブラジルチーム。大会ベスト3をブラジルチームが独占する結果となりました。

これまで、SIをはじめとするR6Sの世界大会では、EUやNAエリアのチームがほぼ覇権を握ってきました。それだけに今回のS.I. 2021は、ブラジルが覇権を握ったことを高らかに宣言した大会となったと言えるでしょう。

プレイオフ最終結果

では、なぜS.I. 2021でここまでのブラジル旋風が巻き起こったのでしょうか。

その理由を読み解けば、APAC、いや、日本のチームが数年後に世界王者に輝くためのヒントがあるかもしれません。

これまで、世界大会においては新しい戦術やテクニックを駆使してくるEUやNAチームがリードする構図が多く見られました。

そのEU、NAに追いつくために、LATAM、APACは彼らの戦術やテクニックを取り込もうとしてきました。しかし当然EUやNAはその先を行きますし、模倣がオリジナルを超えることはできません。

では今回、ブラジルチームがEUやNAチームを尽く打ち破れた理由はなんだったのか?

まず、ブラジル国内の競技シーンが成熟してきたことが挙げられます。トップリーグはもちろん、それに続く下位リーグも盛り上がりを見せており、国内で切磋琢磨することでブラジルチームの基本的な戦術の水準がEUやNAに追いついた、と捉えて間違いありません。世界で戦うために必要な基礎的な能力が格段に上がったことが、ブラジルの快進撃につながったのです。

ただ、基礎が追いついただけではブラジルチームの躍進を説明し切れません。私は、ブラジルチームがEUやNAを追い抜けた要因は、水準の高い戦術にそれぞれの“個性”を上乗せし、より強固なチーム作りをしてきたことにある、と見ています。

例えばLiquidは、これまでnesk選手のガンファイトを中心にゲームを組み立てることが多かったチームです。しかし、ブラジルリーグでは他チームもnesk選手と撃ち合ってくれますが、世界大会では撃ち合いではなく戦術でnesk選手を抑えにかかってきます。結果、LATAMではタイトルを獲得できても、世界ではタイトルが取れない。Liquidにはそんなレッテルが貼られるようになりました。

ところが、昨今のLiquidはチーム全体で戦うスタイルに大きくシフトチェンジしていました。

準優勝したTeam Liquid

特にガンファイトに頼るのではなく、ガジェット(ニトロセルやフラググレネード)によるキルが目立ちました。そんな中で、nesk選手、Paluh選手といったアタッカーがガンファイトでもしっかりと成績を残す。これまでの自分たちの個性を残しつつ、新たな個性(今回はNAチームのような、撃ち合いだけではなくガジェットなども駆使してしっかり「R6S」をプレイするスタイル)を加味することで、チームをバージョンアップさせたと言えます。

このようにブラジルの各チームは自分たちの個性(=強み)を理解しており、苦境に陥ったときには自分たちの強みに立ち返ることをとても理解しているように見えました。ただ漫然とレベルアップするのではなく、自分たちが何を磨くべきかを理解した上で、日々練習を行っているんだろうと気付かされました。

戦術の幅が広いLiquid、どんな状況でも柔軟に戦い方を変えられるNiP、チームの連携がどこよりも取れていて堅い戦いができるMIBR……ブラジルの各チームと比較すると、やはり日本のチームは個性が少ないようにみえます。上手くプレイするチームは数多くいますが、突き抜けた何かを持ったチームはやはり少ないと言えます。

プロチームにとって何よりも大事なのは勝利です。

ただ、プロだからこそ「魅せながら、勝つ」ことも求められているといえます。「魅せる=個性を見せる」ことが今後どこまでできるか。

それが世界と戦う一つの鍵だと考えます。

実際、CAGが個性を遺憾なく発揮できたDay3は、強豪相手にとても良い試合ができていました。躍進したブラジルチームとの差は、自分たちの個性を信じ切れていなかった点、Day1から個性を全面に押し出せなかった点にあるのではないかと私は分析しています。

少しの差ですが、そこが決定的な差になったようにも感じました。

また、今回は10チームでの総当り戦となったことがひとつのポイントになったと言えます。

これは、良くも悪くも様々なスタイルのチームとの対戦を強いられるレギュレーションで、それら異なるスタイルに対しての“柔軟性”が求められます。

ベスト3に入ったNiP、Liquid、MIBRを始め、グループステージを突破したFaZe Clan、Team oNe eSports、FURIA Esportsの6チームはブラジルのトップリーグに所属しています。先に書いたとおり、今シーズンのブラジルリーグは個性に飛んだチームが多く、非常に競争力の高いリーグとなっていました。

これら異なる個性のぶつかり合いは各チームにとって戦術の幅を広げる格好の舞台で、今回のS.I. 2021のレギュレーションに対してハマった形と言えます。つまり、競争力を持った国内大会の存在が世界と戦うために何より重要なのです。

現在の日本においてこの大会に該当するのが、今年始まったばかりの「Rainbow Six Japan League(RJL)」になるでしょう。このリーグがより個性的なチーム同士の競り合いになることで、世界の頂点への道は徐々に縮まっていくのではないでしょうか。

前述したように、日本国内において個性的なチームはまだまだ少ないように感じます。しかし、RJLではNORTHEPTIONのように圧倒的な個性を持ったチームも登場しており、現状打破の兆しは見られます。今後RJLがどこまで盛り上がるかが、世界への挑戦の鍵を握っていると私は考えています。

そして最後に、ファンの後押しが何よりも重要であることは間違いありません。

ブラジルは世界で最もR6Sファンが熱い地域だと言われています。実際、今回のS.I. 2021優勝の際にはキャスターが号泣していました(ブラジルキャスターはよく泣くんですけど。笑)。そんな地域が他にあるでしょうか?

よくフィジカルスポーツでは、ファンは「控え選手の一番手」と言ったりもします。それは本当に間違いない表現でしょう。ファンの皆さんは日本を代表して世界に挑戦するチームの6番目の選手なのです。

そのことは今回出場したCAGの選手たちが何よりも感じてくれたことでしょう。

ファンの皆さんの声援やコメントが、日本チームが近い将来世界王者となるその瞬間へとつながっていくのです。日本の選手やチームがブラジルチームに勝つだけではなく、ファンの盛り上がりもブラジルに勝たないといけない。私はそう考えています。

S.I. 2021は結果だけ見ると、日本だけではなくAPAC地域全体にとっても厳しい現実を突きつける形になってしまいました。一方で、グループステージ敗退はしたもののCAGが見せてくれた希望の光により、世界はそれほど遠い存在ではないことも知れた素晴らしい2週間でした。ここから、日本チームはきっと這い上がってくれるはずです。

ただ、そのためには多くの課題が存在しているのも事実です。その課題は選手やチーム関係者だけではなく、ファンも含めた日本のR6Sコミュニティ全体で解決していかなければならないものもあります。

来たるべき、その日に向けて。日々、ひとつひとつ課題をクリアしていきましょう。

これから私もキャスターとして、皆さんと益々R6Sを盛り上げていきたいと思います!

Six Invitational 2021 – Aftermovie

R6S競技シーンをチェックするには、以下の視聴・閲覧をオススメします。

◆YouTube「レインボーシックスシージ ESPORTS」
主に国内大会を中心にお届けしている日本語版公式YouTubeチャンネルです。私もキャスターとして出演しています! まずはここを見てもらえれば、「競技としてのR6S」の何たるかがが分かりやすいと思います。Six Invitationalなどの海外の大規模大会も、日本語での実況解説をお届けしています。

◆レインボーシックス公式Twitter
競技シーンの情報だけではなく、R6Sに関する全ての情報を提供してくれる公式Twitterアカウントです。R6Sをプレーしている方のフォローは必須ですね。

◆ともぞうTwitter
実は、海外の情報を総合的に取り扱っているメディアやTwitterアカウントはあまり見かけません。手前味噌ながら私のTwitterアカウントでは、不定期ではありますが国内・海外問わず、選手の移籍情報や試合結果をつぶやいていますので、一度覗いてみてください。

◆英語版YouTube「Rainbow Six Esports」
海外のトップリーグの大会を視聴できる英語版の公式YouTubeチャンネルです。実況が英語ですので、英語が聞き取れる方でないと、プレー内容などは理解しづらいかもしれません。

ぜひ、興味が湧いた方は「競技としてのR6Sの世界」を一度覗いてみてください!