「出られる大会が少ない」ことは、プロのeスポーツ選手が往々にして直面する課題の一つです。競技人口が少ないタイトルに限らず、プレイヤーは多いのになかなか大きな大会が開かれないことだってあります。

多くのプロチームはスポンサーフィーを軸に経営されているため、活躍の場が少ないことは致命的。「露出が増えないから部門を解体する」「選手に他タイトルへの転向を勧める」なんてケースもあります。

しかし、露出の機会が減り、選手活動が存続の危機に面しても「最強」を求めることを止めなかった選手たちがいま最高の形で活躍している世界があります。それは「コール オブ デューティ(CoD)」シリーズの競技シーンです。

今年、CoDシリーズにおいて約2年半ぶりにリーグ形式の大会「コール オブ デューティ プロ対抗戦」が、シリーズ最新作の「コール オブ デューティ ブラック​オプス コールドウォー(CoD:BOCW)」を用いて豪華な2シーズン制で開催されています。6月13日からは後半のSUMMERシーズンが始まるので、今からワクワクが止まりません。

が、今回はリーグ形式の大会が “約2年半ぶり” という点について話していきます。

「プロ対抗戦」がなかった約2年半

2018年のプロ対抗戦グランドファイナル(倉田撮影)

ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が主催するCoDシリーズ初めてのプロ対抗戦は2018年、「コール オブ デューティ ワールドウォーII(CoD:WWII)」を用いて行われました。5回に分けてリーグ戦が行われ、上位3チームが東京ゲームショウ(TGS)にてグランドファイナルで王座を争う形です。

リーグは基本的には固定のメンバーで長期間争う形式なので、見ていると自ずと色んなストーリーが見えてきます。回を重ねるごとに調子を上げてくるチームがあったり、負け続けているチームが優勝候補チームから1マッチ勝ち取ったり……。長く観戦するからこそ、色んな部分に感情移入してしまいます。当時は僕もいちCoDファンとして追いかけていましたし、TGSでの観客の盛り上がりも凄まじく「めちゃめちゃ成功したな」と思っていました。

ですが……。翌年、次の作品である「コール オブ デューティ ブラックオプス 4(CoD:BO4)」ではプロ対抗戦は行われず、代わりにSIE主催のオープン大会「CWL(Call of Duty World League)日本代表決定戦」が4回と、シーズンを締めくくる「日本最強決定戦」が行われることになりました。

リーグ形式の大会からオープン大会に切り替わったため、トップの競技シーンがプロ・アマ全てのチームに開かれた一方、プロとして活動していたチームとしては勝ち上がらないと露出の機会がなくなってしまう厳しい形式。CWL日本代表決定戦に勝てば世界大会である「CWL Global Open」の出場権を得られるものの、そこでも上位に勝ち残らなければ配信に映る機会はほとんどありません。

最初に述べたように、露出が求められるプロ選手、ひいてはプロチームにとっては痛い変化です。

さらに次作の「コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア(CoD:MW)」では、SIE主催の大規模大会「Call of Duty Challengers日本代表決定戦」が開かれましたが、前年の上位チームによるプレシーズンマッチが1回と大規模オープン大会が2回開催されただけにとどまりました。

いくつかの大会を挙げましたが、少し話が長くなったのでSIE主催大会の変遷をまとめてみましょう。

  • 2018年 「CoD:WWII」 コール オブ デューティ ワールドウォーII プロ対抗戦
  • 2019年 「CoD:BO4」 CWL日本代表決定戦
  • 2020年 「CoD:MW」 Call of Duty Challengers日本代表決定戦
  • 2021年 「CoD:BOCW」 コール オブ デューティ プロ対抗戦

CoD:WWIIプロ対抗戦の決勝戦が行われたのは2018年9月22日。そして今年、プロ対抗戦のSPRINGシーズンが開幕したのは2月28日でした。つまり、およそ2年半に渡ってリーグ形式の大規模大会が開かれなかったことになります。

その間もコミュニティ大会は多く開催されていたものの、大規模大会での露出の機会は減ったうえ、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けてオンラインでの実施がメインになってしまい、オフライン大会ならではの熱気もなくなってしまったのです。この影響は我々観戦する側が考えるよりも大きく、当時のチーム関係者から「露出が確保できないCoD部門を持続するのは厳しい」との声を聞いたこともあります。大規模な大会が減ってしまうことは、露出が必要なプロチームにとってはかなり危険な変化なのです。

選手たちもなかなか活躍の機会がない中で選手活動を続けるべきか否か、選択を迫られたこともあるでしょう。実際、プロ対抗戦が無かった期間でストリーマーに転向した選手や、選手活動の休止を発表したチームもありました。

「オープン大会」への変更、実はポジティブな狙いが

2019年の日本最強決定戦。暗い会場でスマホ撮影だったため残念な画質なのが悔やまれる……(倉田撮影)

正直に言うと、プロ対抗戦がなかった約2年半で「SIEさんがCoDの競技シーンに力を入れなくなってしまった」との思いが募りに募っていました。「リーグの方が楽しい!」「選手たちにもっと活躍の場を!」と、大会運営の関係者の方々に愚痴ったこともあります(その時はリーグ運営の大変さを考えず愚痴って本当に申し訳ないと思っております)。

そんな僕の愚痴は1ミリも関係ないでしょうが、今年はプロ対抗戦が復活。「この変化にはどういう思惑があるのだろう?」と疑問に思っていたら、たまたまプロ対抗戦発足から大会運営に関わられているSIEの森田晃徳さん(※)とお話をする機会を頂けました。

※森田さんはSIEにおけるeスポーツ関連の取り組みの中心になっている「グローバルパートナーデベロップメント&リレーション eスポーツ課」の課長を務めています。詳しくは下記のインタビュー記事へ。

直球で「なんでプロ対抗戦やめちゃったんですか?」と聞くと、SIEとしては全くネガティブな決定ではなかったそうです。むしろコミュニティーの要望も採り入れながら、「日本チームを世界大会に送り出す」ための変更だったとのことでした。

「CoD:WWII」の頃も海外の大規模オープン大会に出られましたが、渡航費の工面が難しく、限られたチームしか出場できていませんでした。そこでSIEはオープン大会を「日本代表決定戦」とし、優勝チームに出場権を贈る形に変更したのです。「(日本で最も強いチームが)世界に挑戦して、そこで吸収したことを日本の競技シーンに還元してくれたら、日本のレベルアップにつながる」と、期待を込めて。

振り返ってみると、日本代表決定戦で優勝し続けたLibalent Vertex(LV)をはじめ、世界大会の地域予選を勝ち抜いたCYCLOPS athlete gaming(CAG)やRush Gaming、SCARZなどが世界大会に出場し、選手たちがメキメキと成長していった記憶があります。露出が減って選手活動を存続できるかの瀬戸際でも、選手たちが「強くなるため」の努力を怠らなかった証左と言えるでしょう。

SIEにはきちんと戦略があり、選手たちもこんなに頑張っていたのに……。「なんだリーグ形式じゃなくなったのかぁ」とただ愚痴っていた自分が恥ずかしい限りです。

今年のプロ対抗戦をとにかく見て!

SPRINGシーズンで優勝したLibalent Vertex。SUMMERでも優勝なるか……?(公式配信より)

新型コロナの影響でオープンの世界大会は地域別のオンライン形式になった今、試合を多く見たいというコミュニティの要望に応える形でプロ対抗戦が復活。2年半の間も選手がひたむきに磨いてきたスキルが炸裂しています。

世界を5度経験したLVが優勢かと思いきや、危ういように見える試合もいくつかありました。PS5コンへの移行に慣れていない……と風の噂で聞きましたが、どうやら単にLVの調子が悪いだけではなさそうです。

考えてみれば、世界を経験したCAGやRushも虎視眈々と打倒LVを狙っていますし、LVの一員だったAliceWonderland選手やLeisia選手は他のチームに移籍してLVの地位を脅かす存在になっています。

「世界に挑戦する一方で、日本チームの底上げのためにも国内でレベルの高い試合を多くこなすことも必要」との思いから復活したプロ対抗戦。今なら世界の舞台でももっと活躍できるのでは、と思わせてくれたSPRINGシーズンの激戦は、まさにSIEの思いを体現しているかのようです。

プロ対抗戦がなかった間、色々な思いを抱きながらも鍛錬を積み重ねてきた選手たちに最大級の賛辞を贈りたいし、これからもずっと応援していますとお伝えしたい。選手の皆さん、本当に素敵です。

最後に改めて、「コール オブ デューティ プロ対抗戦」のSUMMERシーズンは6月13日から。読んでくださった方、一緒に観戦しましょー!!

大会情報

◆大会名

コール オブ デューティ プロ対抗戦 SUMMERシーズン

◆スケジュール

6/13 (日) 第1回
6/27 (日) 第2回
7/11 (日) 第3回
7/25 (日) 第4回 + ファイナル

◆配信チャンネル

YouTubeチャンネル「PlayStation Japan」にて配信。

第1回は下記にて配信予定。

「コール オブ デューティ プロ対抗戦」SUMMERシーズン 第1回