目次

  1. チームの「若さ」故の課題
  2. 折返し地点で見えた希望と危機感
  3. RC飛躍の第3回、一方Rushは……
  4. 波乱を経て迎えた運命のマッチアップ
  5. 「負けられない」から強くなれる

どんなスポーツ競技であっても、強者には鎬を削るライバルがいるものだ。

絶対に負けたくない相手と本気で戦うからこそ、勝てれば泣くほど嬉しいし、負ければ吐くほど悔しい想いをする。そして、「次も勝つ」と「次は負けない」という二つの感情が産み落とされていく。

今日の限界を超えて成長するための課題は、得てしてこうした本気の競り合いの中でしか見つからない。
今回は「コール オブ デューティ ブラックオプス コールドウォー(以下、COD:BOCW)」の日本一を決めるコール オブ デューティ プロ対抗戦、そのSPRINGシーズンにおいて、勝利と敗北を通してこの「課題」を見つけ、それをクリアすることで大きな成長を見せてくれた「REJECT」(以下、RC)と「Rush Gaming」(以下、Rush)の2チームに焦点を当てて、熱い成長の物語を振り返ってみたいと思う。

REJECTのメンバー
Rush Gamingのメンバー

なお、細かいゲームルールや出場チームの詳細については公式サイトを参照してほしい。
簡単に説明するなら、5マップをそれぞれHARDPOINT(HP)、SEARCH & DESTROY(S&D)、CONTROL(CT)、HP、S&Dで戦う3本先取形式だ。勝ったマップ数がポイントとなるので、3-0で負けると0ポイントだが、3-2で負けると2ポイント獲得できる。格上のチームが相手だったとしても、得意ルールで1勝だけでもしておくと、リーグ後半の順位争いに響いてくるわけである。

全4回に渡るプロ対抗戦の第1回は2月28日に行われた。

試合数はRCが2戦、Rushが3戦。RCは敵が優勝候補のLibalent Vertex(以下、LV)とCYCLOPS athlete gaming(以下、CAG)の2チームだったとはいえ、1マップも勝利のないままポイントを獲得できずに初日を終えた。Rushも2勝できたが、CAGには0-3とまったく届かなかった。

RCは個人の撃ち合いは強いが、チームとしての連携力に関しては優勝候補たちほど綿密ではなかった。Rushも作戦はいいのだが、実行するための連携がぎこちなかった。これは、加入して約3カ月の新メンバー2人がまだチームにフィットできていないことの表れだったように思う。チームが若い故のコミュニケーション不足は、あと一歩の局面で顕著に表れる。Rushは土壇場で押し勝っていくチームとしての積極性も足りていなかった。

初戦を終え、両チームとも「連携力」という課題は見えた。あとはその穴をどう埋めるか。

3月14日、注目の第2回は意外な結果となる。

ロスター変更を経たRCは連携面が段違いに良くなっており、SCARZ、FAV gaming(以下、FAV)に3-0で完勝。さらにRushとの直接対決でも勢いは止まらず3-1で勝利を収める。試合後City of NewYork選手は「LVにボコボコにされたから、全ルールの作戦を一から見直して倍練習しました」と語り、「『負けられない試合』で勝てたことは大きい」と成長を実感したコメントを残した。完敗を経験したからこそ、RCは急速に強くなれたのである。

一方のRushは0-3、1-3とボロボロに敗北してしまった。全体的に理想の作戦に囚われてしまい柔軟性が失われてしまっていた印象だ。戦術は間違っていないのだが、高い理想を実行するだけのチーム力がまだ足りていなかった。

こうして前半戦が終了した結果、RCは3戦全勝で得点を伸ばし9ポイントで3位浮上、Rushは全敗かつ1マップしか取れず7ポイントに留まり4位陥落となった。
Rushには「このままじゃダメだ」という危機感が、RCには「LV、CAGにも勝てるかもしれない」という希望が生まれたに違いない。

続く3月28日の第3回。この日の主人公は間違いなくRCのCity of NewYork選手だった。

RCの対戦相手は第1回で1本も取れなかった1位LVと2位CAG。

まず王者LV相手のS&D、1-4の不利状況で、City of NewYork選手は「忍者ディフューズ」のビッグプレイを炸裂させる。相手が爆弾を設置した直後にこっそり近づいて、気づかれないうちに解除してしまう作戦だ。解除中のプレイヤーは何もできなくなるため、仲間が意図を汲んで敵を引き付けてくれなければ不可能な作戦である。

画面奥のGaliard選手が画面左のsitimentyo選手を引き付けている間にCity of NewYork選手がこっそり解除する

RCは見事な連携でこれを決め、そのまま逆転して最強LV相手にS&Dで1本取る。さらにCAG戦ではCity of NewYork選手とGaliard選手が大活躍して3-0完全勝利。City of NewYork選手の公式クリップは、あのNewYork SublinersのClayster選手が反応するほどの超絶プレイだった。

試合後、City of NewYork選手は嬉しさのあまり男泣き。見ているこちらの胸も熱くさせてくれる勝利だった。

劇的すぎる勝利に男泣きするCity of NewYork選手(画面左上)と、まだ現実に追いつけていない表情のメンバーたち

一方のRushはSCARZの猛追を振り切り3-2で勝利。続くFAV戦も3-1で勝利をあげる。

「前回のミスを改善するために積極的にコミュニケーションを取りました」というGorou選手の言葉に象徴されるように、しっかりと反省を生かして成長してきていた。ポイント的に下位の2チームとの戦いは「負けられない試合」であり、そこを勝ち切れたのも大きい。さらにその後、第1回では手も足も出なかったCAG相手にも1本取って1-3で大会を終える。

この時点でのポイントは、Rushが14、RCが13。すでに1位を目指すのは不可能であり、2位もCAGの戦績次第となるため、両チームが自力で目指せるのは3位という賞金獲得ラインが現実的だ。
こうなってくると、1試合多く残しているRCが圧倒的に有利なのは間違いない。加えて次の相手はSCARZ、FAV、Rushと順位的にRCよりも下位チームのみだ。Rush戦を経ずして3位ゴールを決めることも可能であり、全勝すればCAGの結果によっては2位争いも視野に入る。
一方のRushはまだ発展途上の印象が抜けていない。第3回の試合内容自体は悪くなかったが、爆発力が足りず競り負けている場面も多かった。理想的な作戦を相手に押し付けるだけの連携力と腕力を、あと2週間でつけるのはさすがに難しいのではないか。

誰もがRush不利を予想して4月11日、運命の第4回を迎えることとなった(ファイナルも同日開催)。

しかし、開幕早々波乱が起きる。

上がり調子だったRCが、SCARZにまさかの0-3で完敗、FAVにも1-3で敗北してしまったのだ。これは憶測でしかないのだが、RCは第2回、3回と見事な試合を見せた分、挑戦者としての気持ちが薄れていたのかもしれない。彼らはずっと追う側だった。それが追われる側になった時、メンタルに違いが出るのは何もおかしいことではない。
SCARZもFAVも負ければ最下位となって入れ替え戦に臨むことになる。試合の勝ち負けだけでなく、自らのキャリアをかけた「負けられない試合」に向けて、2週間死に物狂いで練習してきたのだろう。その執念が、RCを丸ごと呑み込んだのだ。

一方のRushは王者LVからHPで1本とる。理想陣形を重視した消極策から、行く時は全員でガッと攻める積極策への転換を成功させていた。
試合自体は1-3と王者の貫禄に屈したが、内容は悪くはなかった。本番は最後のRC戦ということもあり、LVから1本取れたことで気持ち的にも前向きになれたのではないだろうか。

そうして、9試合を終えた両チームのポイントはRushが15ポイント、RCが14ポイント。たとえ3-2の僅差でもRushが勝てば18対17、RCが勝てば17対17(試合勝利数でRCが上)となるため、直接対決で勝った方が3位となる。

こんな運命的な展開ってあるだろうか。

まず初戦のHP、ここではRushが一体感のある動きを見せて250-175と先制する。
これまでのRushには味方を待って同時に攻める連携力や、作戦を押し付けるだけの腕力が足りなかった。しかしここに来て理想のムーブをしっかり連携してやり切ることができた。新生Sirius選手が34キル14デスと大活躍したことも、「チームへのフィット」という課題を乗り越えた証左として印象的だった。

続くS&Dでは、RCが一枚上手の完成度で6-3と勝利する。RCはこの戦いによって戦術の練り、撃ち合い、連携、すべての面でS&D国内最強クラスであることを証明してみせた。

2マップを終え、HPはRush、S&DはRCに分があることがハッキリと分かった。

つまりはCONTROLの結果が勝負を左右すると言っても過言ではないわけである。マップはCHECKMATE。防衛が圧倒的に有利なマップで、ピックしたのはRC。とはいえ正直、このマップはどっちが勝つか全然分からない。

どうなるんだと思いつつ、ふたを開けてみれば3-0でRushが完勝。
防衛ラウンドは盤石の態勢で勝利し、攻めラウンドでは実況・解説も置いていかれる「4人でもう乗っちゃおう」という判断の速さが光った。また、これまでのRushに足りていなかった積極性が随所で現れていた。

続く2回目のHPでは、負けられないRCとここで決めたいRush、気持ちと気持ちがぶつかり合う激戦が繰り広げられた。Rushが序盤からいい形でリードを作るが、RCも怒涛の追い上げを見せて混戦となる。

手に汗握る展開の中、ラストポイントはRCが先手を打つ。このポイントを守り切ればRCの勝利。しかし、最後は連携力で勝ったRushが冷静に囲み込み、リーダーGorou選手のエリア内での活躍もあって250-238で勝利。
トータル3-1で、Rushが見事SPRINGシーズン3位入賞を果たした。

勝利の瞬間、大喜びのSirius選手(画面右下)と、あくまでクールなGorou選手(画面右上)

第4回で、Rushは課題だった「連携」「腕力」「積極性」のすべてで段違いの成長を見せてくれた。敗北から学んで限界を超えることで、ここ一番の「負けられない試合」でRCにリベンジを果たすことができたのである。そしてRCは敗れこそしたが、S&Dの強さは圧巻の一言だった。この悔しさをバネにして、SUMMERシーズンには何段階も成長したチームの姿を見せてくれるに違いない。

振り返ってみると、SPRINGシーズンではRCとRushに限らず、全チームに見せ場があり、あらゆる試合で過去最高レベルの激戦が繰り広げられていたように思う。ギリギリのところで競い合えるライバルがいなかったら、彼らはここまでのレベルに達することはできなかったはずだ。

また昨今、APACの大会でも日本勢が頭角を現しつつある。日本のCoD競技シーンは、ライバルたちとの戦いを通して格段にレベルアップしてきているのだ。プロ対抗戦SPRINGシーズンを観戦する中で、近い将来、世界にも通じるチームが日本から複数現れてくるであろうことを私は確信した。

今後、SUMMERシーズンに向けて、LV以外の5チームは敗北を糧に一気に伸びてくるはずだ。それを迎え撃つ最強王者もまた、王者のプライドを胸にさらにレベルを上げていくに違いない。

灼熱の夏を制するのは一体どのチームなのか。この空白の2カ月にどれだけ成長できるかが勝利のカギとなるだろう。急成長していく日本CoD競技シーンから、ますます目が離せない。

* * *

コール オブ デューティ プロ対抗戦」SPRINGシーズンを制したのはLibalent Vertexでした。

【著者紹介】洲央

すおう 作家。第1回百合文芸小説コンテスト大賞受賞。現在はコミック百合姫でアイドル青春百合小説「いつか君と、輝く星に」を連載中。小説以外にもシナリオ、マンガ原作、動画脚本など多方面で活動している。ゲームはカジュアル勢。プレイ中に絶景を見つけては、そこに立つ自分を妄想して日々を生きている。
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