このイベントは、湯けむりフォーラム「みんなで話そう!ゲームのこと~eスポーツからゲーム依存まで~」と題し、群馬県が2020年11月に開きました。県は2020年、全国初となるeスポーツの名が付く課として「eスポーツ・新コンテンツ創出課」を設け、eスポーツの良さをまちづくりやひとづくり、仕事づくりに活用する施策に取り組んでいます。フォーラムのゲストには、プロゲーマーのみぃみさん(@mimi00618)、久里浜医療センターの松﨑尊信さんら5人が登壇しました。

 ゲーマーのスキルは社会に必要

「デジタルハーツプラス」代表取締役の畑田康二郎さん(YouTube動画「【湯けむりフォーラム2020】みんなで話そう!ゲームのこと~eスポーツからゲーム依存まで~|障害政策課|群馬県」より)

フォーラムではまず、eスポーツの経済効果について説明があり、成長性のある産業であることが紹介されました。次いで、「鉄拳」シリーズの強豪プレイヤーとして知られるみぃみさんがゲームから学んだことについて、次のように語りました。

「ゲームを通し、社会に役立つコミュニケーション能力がとても高まりました。プレイヤーにはいろんな国の人がいます。年齢も10代〜40代まで幅広いのですが、そこにゲームあれば国籍や年齢に関わらず一緒に楽しめます。私はあまり語学が得意ではないのですが、いろんな言語が飛び交う中、簡単な英語と笑顔とテンションで様々な国の方々と交流することで、苦手だったコミュニケーション能力が高まったと思っています」

「社会に役立つ」という点で、ゲームやソフトウェアのテスト・デバッグを行う「デジタルハーツプラス」代表取締役の畑田康二郎さんは、ゲーマーのスキルの重要性について、次のように語りました。

「ゲームをするという才能はゲーム産業だけでなく、サイバーセキュリティの領域でも活躍できます。当社では、デバッグからサイバーセキュリティ領域にキャリアチェンジして、100人近いメンバーが活躍しています。eスポーツ的なものの考え方は、デジタル化していく世の中で重要なスキルです。当社は障害者雇用にも取り組んでいますが、みなさん粘り強く好きなゲームに取り組まれており、高い評価を得ています」

eスポーツ選手の「稼ぎ方」についても話題に。

畑田さんが、ゲーム実況やゲーム配信によって広告収入を得るなどのケースを紹介。一方で、「プロゴルファーのように試合に出て賞金で生業を立て、それに付随してスポンサー収入を得る人は、まだ一握りです」と指摘しました。

「大半の選手は平日にIT関連やデバッグなどの仕事をし、週末に大会に出るというケースです。兼業のゲーマーもたくさんいます。今後、eスポーツの裾野が広がることにより、マネタイズの可能性は広がると思います」

ゲーム依存への背景に目を向けて

久里浜医療センターの松﨑尊信医師(YouTube動画「【湯けむりフォーラム2020】みんなで話そう!ゲームのこと~eスポーツからゲーム依存まで~|障害政策課|群馬県」より)

懸念される「ゲーム依存」について、国内最先端の依存症治療を行っている久里浜医療センターの松﨑尊信医師が説明しました。

全国10~29歳を対象に、久里浜医療センターが実施した調査によると、平均3時間以上ゲームする人が男性24.6%、女性10.4%。休日では、男性52%、女性23.1%だったと言います。

「インターネットコンテンツの何に依存していますか?という質問をすると、ほとんどがオンラインゲームです。医学的に問題になるのもオンラインゲームではないかと専門家の間で議論されています。世界各国の状況を見てみますと、ゲーム障害の有病率は女性より、男性が高く、高齢者よりも若い人が多いというデータがあります。これは日本だけの問題ではなく、世界共通の問題だということで2019年に世界保健機関が診断基準を改定し、精神疾患の一つとして認定しました」

依存症からの回復のために、「自分の意思で行動を変えていくようにサポートしています」と松﨑さん。文部科学省と共催したキャンプと治療を組み合わせる試みでは、20名弱の10代の子供たちが8泊9日で、キャンプやアスレチック、屋外炊事、キャンプファイアー、トレッキングなど、リアルな体験を通じ、対人関係を育んだり達成感を持ったりしてもらっているそうです。

「キャンプに参加するボランティアの中には、ゲーム依存の当事者だった人もいます。依存から回復して大学に復学したり、就職したりした人に参加してもらうと、子どもたちも回復のイメージや目標が持てると思います」

「ゲーム依存の治療はとても時間がかかります。よく『ゲームを取り上げればいいんじゃないの』『入院させれば治るんじゃないの』と言われます。確かにゲームを取り上げれば、一時的にはやめられるかもしれませんが、結局その本人が抱える問題を解決したことにはなりません」

大切なのは、ゲームに依存せざるをえなかった背景に目を向けることだと、松﨑さんは言います。

「依存の原因は家族関係、学校でのトラブル 不登校など様々です。eスポーツの選手のように目的を持ってゲームしている人もいれば、現実の問題から離れたい、目を背けたいためにゲームをやっているというネガティブな使い方をしている人もいます。治療では一人ひとりの問題を拾いあげ、取り除いてあげることが大切です」

現在は、スマートフォンで気軽にオンラインゲームをする子どもがたくさんいます。大切なのは「親子で一緒にルールを考え、使い方を決めること」だと指摘します。

「ルールというものは、子どもの学年が上がっていくと、だんだん決められなくなります。できれば小学生、中学生ぐらいの使い始めの時期に、スマートフォンやインターネットの使い方やルール、その危険性などを親と一緒に考えてほしいです。同時に大人もスマートフォンやインターネットの使い方を見直すべきです。大人が好き勝手、自由に使って、子供に『お前は使うな』と言っても子供は聞き入れません」

(注釈:ゲーム依存は、WHO(世界保健機関)による国際疾病分類に「ゲーム障害」の病名で依存症分野に加わりました。2022年から適用となります)

「プロゲーマーの啓発に期待」

プロゲーマーのみぃみさん(YouTube動画「【湯けむりフォーラム2020】みんなで話そう!ゲームのこと~eスポーツからゲーム依存まで~|障害政策課|群馬県」より)

ゲーム依存について、登壇者らによる意見交換がありました。

みぃみさんは「時間を決めて練習をする」と言います。

「メインタイトルは仕事と同じ感覚で、時間を決めてしっかりと練習します。私も趣味でやるゲームはありますが、たしかに時間を忘れる場合もあります。大人でも難しいことですので、子どもはなおさら時間決めて遊ぶほうがよいと思います」

「私がプロゲーマーとして活動することで皆さんに貢献できたらいいなと思います。もしゲーム依存で悩んでいる人がいたら、『やらなければいけないことから逃げないで』と伝えたい。ゲームをやりたい気持ちはとても理解できます。しかし、まず30分だけでも、やらなければならないことやってからゲームを楽しんでほしいと思います」

医師の松﨑さんは、みぃみさんのようなプロゲーマーによる啓発に期待します。

「ゲームばかりやっている子供も『このままじゃいけない』という相反する気持ちを持っています。ただ、その気持ちと向き合いたくないためにゲームに依存することもあります。『強制的にやめさせる』ではなく、『まず悩みを聞いてみよう』という姿勢がとても大事です。子供は親の言うことを聞かない時期が必ずあります。そのような反抗期に、どんな人の声を聞くかというと、同級生や少し目上の先輩です。みぃみさんのような憧れのプロ選手が、『何か問題があったら迷わずに相談に行ってね』といった啓発があれば、子どもたちによく伝わるのではないかと思いました」

畑田さんは「ゲームに遊ばれるのではなく、ゲームを積極的に遊ぶこと」というセルフコントロールの大切さを指摘。「ゲームを消費するのではなく、ゲームを道具として、人間の限界をどう超えるかを挑戦するのがeスポーツなのです」

畑田さんはまた、ゲームのデバッグの現場でも、かつて自宅に引きこもってゲームをやっていた人が少なからずいると言います。

「仕事の体験を通じて、心が健康になり、コミュニティーに属しているという連帯感も生まれます。デバッグは、ひとつのわかりやすい就労の入り口だと考えています。そこで社会参加をして自分が社会の役に立つんだ、という自信を持ってもらいたい。その後はプログラミングを勉強してゲームをつくる側になったり、サイバーセキュリティのさらに高度な分野に挑戦したりするなど、キャリアアップを積んでいただければと思います」

【取材後記】ソーシャルゲームは「人依存」に陥る恐れ

医学的に依存症の対象になっているのはオンラインゲームである、という松﨑さんの指摘は、とても納得できるものでした。

私はゲーム依存について取材を重ねてきました。その経験からも、最も依存しやすく離脱しにくいのがソーシャルゲームだと思っています。

ソーシャルゲームはスマートフォンでいつでもどこでも簡単にゲームを始めることができます。しかし、ゲームリテラシーが低いまま始めると、セルフコントロールができぬまま依存に陥る恐れがあります。今回は子どものゲーム依存を中心とした話題でしたが、大人の依存も見逃せません。

私は過去に約3年間、グループチャットやボイスチャットで共闘するマルチプレイゲームのグループを主宰をしていました。グループ内で上手くなれば褒められる、強くなれば頼りにされる、認められるという承認欲求が満たされ、もっと褒められたいから頑張るのです。

一方で、マルチプレイゲームに参加しないとグループ内での評価が下がるという恐怖があり、1日中ボイスチャットに入り浸り、その結果、勤務先から解雇されたり、自己破産、離婚、家庭崩壊、育児放棄、子どもへの虐待というケースも数多く見てきました。つまりソーシャルゲームはゲームそのものより、「人依存」になる傾向がとても高いのです。

松﨑さんは「依存の背景に目を向け、一人一人の問題に目を向けることが必要」と言います。解決には依存した原因を突き詰めると同時に、ゲームの何に夢中になっているのかを探ることも重要だと、私も考えています。強くなりたいのか、人に褒められたいのか、コンプリート欲を満たしたいのか。

たとえば、承認欲求が原因ならゲームグループを退会する、コンプリート欲なら1回でよいのでイベント参加や限定ガチャを引かないなど、少しの軌道修正で熱が醒めることもあります。

私は過去に摂食障害の自助グループのアドバイザーをしていた経験がありますが、依存しやすい資質を持つアディクション体質の人は、まず、他の何かに依存することで離脱の足がかりを作るケースもありました。

ゲーム依存も、子育てや仕事、勉強、部活、ゲーム以外の趣味など、他に依存するものに人為的に誘導することがゲームを一切遮断するよりも効果があるのではないかと思っています。

(このフォーラムはこちらで視聴できます)