人生の一部を占有できる醍醐味

――ゲームプロデューサーという仕事の醍醐味を教えてください。

企画を考えるところから始まり、ゲームを作って、実際にお客様に遊んでもらって、その反響までもダイレクトに自分に還ってくるという、工程の全てに関われるところですね。開発だけでなく、マーケティングやPRにも。テレビCMを作る場合は構成やタレントのキャスティングも考えます。
文字通り全てに関わって、「このゲームは自分が作った」と言い切れるのは醍醐味だと思います。プロデューサーの仕事は、どこを担当したのかが明確で、責任もあります。成功したら称賛されるし、失敗したら厳しいご意見もたくさん届きます。でも、やりがいはすごくあると思います。

また、ゲームを通じて、誰かの人生の一部に関われるということも魅力です。世の中にはエンターテインメントに関するコンテンツがあふれていて、可処分時間の取り合いになっていますが、その人の時間を占有して、自分やチームで作ったものをやってもらえるなんて、なかなかできないことですから。

重圧ともどかしさと

ぷよぷよeスポーツ

――ロングヒット作ならではの難しさや大変さは感じていますか?

以前の作品と比較されるプレッシャーは常にあります。その緊張感の中で、長く作品を続けていくためには、限りある時間の中で「今の作品」を成功させて次につなげる必要があります。やれることを最大限やって失敗することはありますが、最初から「失敗してもいい」といった軽い気持ちではできません。

1991年に生まれた「ぷよぷよ」(初期はコンパイル社より発売)には古くからのお客様がいます。eスポーツには往年のトッププレーヤーの方もいて、とてもありがたいことですが、その期待に応えていかなければなりません。

逆に、以前は「ぷよぷよ」をプレーしていたけど、今は離れてしまったという方もいます。再びファンになってもらうために「こうしたらいいんじゃないか」と試行錯誤の毎日です。

また、お客様からのご指摘やご意見はダイレクトに届いていて、ご要望もたくさん頂いているのですが、形にできないことが多いのも実情。「本当は私も実現したい。でも、できない」という状況はとても歯がゆいですね。

「ぷよぷよ!!クエスト」

求められるコンテンツの分析力

――ゲームプロデューサーにはどんなタイプの人が向いていますか?

プロデューサーは一般的に、企画や折衝をすることが多いので話好きだといいですね。また、プロダクトのコンセプトや「売り」を考えて提案したり、相手の話や資料から「何が言いたかったか」という事を的確に捉えたりして、物事を前に進めることができる人が有利だと思います。

――どんな勉強が必要でしょうか?

子どもの頃からの広く一般的な勉強はしておいた方がいいと思います。私はゲームの学校には行っていないのですが、学生時代、「企画」に関する書籍は読み尽くしました。その時は、読んでいても理解できないところが多くて「何なんだろう」と思いながら読んでいたのですが。

今だと、ゲーム制作について学べる本やプログラミング本なども増えていて、個人でもその気になればゲーム制作できるので、うらやましいなと思っています。

なお、私が大学や大学院で学んだ法律の知識は、ゲームの企画については分からないですが、契約書を結ぶときなどには役に立っていますよ(笑)。

――仕事を始めたら、どんなキャリアパスを考えればよいのでしょうか?

いきなりプロデューサーになるのは難しいので、まずは自分が企画が向いているのか、プログラマーが向いているのか、デザイナーが向いているのかなど、自分がやってみたい専門職種を探してみるのがよいかと思います。

そして、その職種の仕事をするためにはどんな勉強をすべきなのか、本やインターネットには様々なパターンが出てくるので調べてみるとよいです。

たとえば、プログラマーでは、まずはPCでプログラミングを勉強して、ゲームを制作してみるとよいと思います。身近なところでは、高専や大学、ゲームの専門学校で学んでプログラマーになる人が多いです。

デザイナーは絵を描かないといけないこともあり、美術大学の出身者が多いです。いろいろな職種がありますが、基本的にやはりデッサン力は何をするにも重要だと思います。

企画は、私も法律を専攻していたように、どんな大学の学部の人もいて、ゲーム専門学校出身の人もたくさんいます。プログラマーやデザイナーのベテランの方が企画職に変わるというパターンもありますが、その逆はほぼいません。

また、もしも、その職種の人に会ったり相談したりする機会があれば、直接聞いてみることをおすすめします。

――ゲームプロデューサーをめざしたい人が心がけると良いことはありますか?

今流行っているもの、ゲームや演劇、テレビ番組などでもよいと思うのですが、人手とお金をかけて作られたエンターテインメント作品に興味を持って、たくさん触れてみるのが大事です。

ただ見る、遊ぶだけでなく、そのコンテンツの何が面白いのか、コンセプトは何で、「売り」の部分はどこなのか、何を表現したかったのかなどを突き詰めて分析してみる。また、その上で「こうしたら、もっと面白くできる」「こんなアレンジができる」といった考えながら触れていただきたいです。実際、プロデューサーやディレクターには、たくさん映画やアニメ、漫画を見ている人が多いですね。

「ぷよぷよテトリス2」PS5版のパッケージ

ゲームを職業にするには

――ゲームの仕事に関わるには、どうしたらよいですか?

ゲームの仕事に関わるなら、たとえばデバッグの仕事や、もし英語が得意なら翻訳や海外の担当になるなどいろんな形があります。また、ゲーム会社、ということであれば人事や総務、経理といった会社を支える仕事もあります。開発に直接関わりたいなら開発をやるべきですが、ゲーム会社の中のお仕事はどれも楽しいので、ぜひチャレンジしてほしいと思います。

別のルートとしては、個人でゲーム開発を行いストアで発売したり、日本ゲーム大賞のU18部門で大賞を受賞した方がAO入試で大学に入って、その後ゲームを作り続けて、Nintendo Switchで製品をリリースしたりするなど、私の時代ではありえなかった方法も今はあります。ぷよぷよプログラミングを無償で提供していますし、Scratchなども入りやすいと思います。また、プロも使用するUnityやUnreal Engineなどの開発ツールも揃っているので、プログラミングを自分で勉強して作ってみるのも、楽しいと思いますよ。

――ゲームに関わる仕事の魅力について、教えてください。

ゲーム好きな人にとっては、ゲームを作って、会社でゲームを遊んだり、漫画を読んだりしていても怒られない環境は魅力だと思います。そして、世界に対して自分たちが作ったゲームを発信できます。言葉や文化の壁などもあり、業界によっては難しいことも、もともとローカライズなどを当たり前にやって全世界に届けることが基本となっていたゲーム業界ではそれが可能です。

マルチプラットフォーム展開や大規模化、全世界展開や多角展開が進むゲーム業界は人手不足で、人材募集もたくさんあります。何より好きなことを仕事にできるというメリットがあるので、ぜひたくさんの人に入って来てほしいと思っています。

――今後チャレンジしたいと思う仕事はありますか?

「ぷよぷよ」は今年30周年になりますが、できていないことがまだまだあります。たとえば今、「ぷよぷよ」をあまり触ったことのない馴染みの薄い若い世代にアプローチするために、今までと違う新しい形で提供できないかといったチャレンジを考えています。「『ぷよぷよ』こうきたか!」とみなさんが驚くようなことを、今後もやっていきたいです。

そしてeスポーツなどを通して全世界で、たとえば中国本土や南米など、「ぷよぷよ」がまだあまり知られていない地域でもたくさんの人に楽しんでほしいです。

もう一つは、「ぷよぷよ」以外のこともやりたい。というよりも、「やるべきなんじゃないか」と別の自分が問いかけてくるんです。となると、誰かに企画やプロデューサーをやってもらわないといけないので、「我こそは!」という人はぜひ声をかけてほしいですね。

ぷよぷよの魅力を語る細山田水紀さん

細山田水紀

ほそやまだ・みずき 2002年にセガ入社後、ソニックシリーズなどのアクションゲームのプランナーやディレクター、監修を経て、ぷよぷよシリーズのディレクターやプロデューサーを担当。現在は、「ぷよぷよ」全体をまとめながら、プロデュースや企画、監修も手がける。代表作は、「ぷよぷよeスポーツ」「ぷよぷよ!!クエスト「ぷよぷよテトリス」シリーズなど。
ツイッター:@hosoyamada_mizu