「第1回えひめパラeスポーツ大会」ダイジェスト動画

なぜ障がい者×eスポーツなのか

――愛媛県が障がい者のeスポーツ活動に力を入れて取り組む理由と、具体的な取り組みを行った時期を教えてください。

西谷: 愛媛県が障がい者に重点を置いてeスポーツに力を入れている理由はeスポーツを「スポーツ」と捉え、障がい者と健常者の社会参加のツールとしての可能性を感じているからです。

元々、私たちの担当は「障がい者スポーツ」であり、共生社会の実現のために、愛媛県障がい者スポーツ大会の開催や競技団体への支援など、障がい者スポーツの裾野拡大の取り組みを実施してきました。さまざまな種類のスポーツがある中で、eスポーツもそのひとつとして考え、障がい者にeスポーツを普及する取り組みを始めてきたところです。特に、他の障がい者スポーツと異なり、障がい者と健常者が、同じ土俵で競い合えるところに、eスポーツの可能性を感じております。

森:愛媛県がeスポーツを実践に移したという意味では、2017年11月に愛媛国体の文化プログラムにおいて、「実況パワフルプロ野球」で対戦するeスポーツ大会「えひめe-baseball 大会」を開催しています。国体文化プログラムとして、eスポーツを採用したのは愛媛県が最初と言えます。(現在の複数タイトルによる「全国都道府県対抗eスポーツ選手権」は2019年の茨城国体文化プログラムから開催)

――愛媛県のeスポーツの取り組みに参加されている施設や団体について教えてください。

西谷:2021年2月時点で、11の障がい者支援施設でモデル施設としてeスポーツを交流の手段として使っていただいています。それ以外にも特別支援学校や障がい者支援施設、あとは放課後等デイサービスなどでもeスポーツの活動が進んでいます。

――各施設や団体は、どんな目標に向かって取り組んでいらっしゃいますか。

森:各施設にそれぞれの実情に合った目標を立ててもらっています。例えば、頭を使うということを目標にしてぷよぷよを導入する、リハビリでちょっと手を動かすためにプレイする、などです。そのほかにもソーシャルスキルトレーニングとして勉強もしている組織もありますし、eスポーツと仕事の両立を頑張るための訓練として活用されるケースもあります。中には国体を目指して技術力の向上を図っている施設もあります。

eスポーツで輝く姿

配信に出演するlive選手(左から)、愛媛出身の馬人さん、愛媛県地域スポーツ課の増本勝巳課長

――eスポーツの取り組みを推進するにあたり、気を付けていることはありますか。

森:施設や保護者に対して事前説明会を行い、活動に理解を頂くことに気にかけています。モデル施設でeスポーツを取り組むにあたっては、通所・入居している障がい者の方々はもちろん、その保護者からの理解と応援も必要です。いわばトップダウンでeスポーツ導入するということはなく、事前に施設長や代表者と保護者との間で、導入できるかどうかを話し合ってもらっています。

西谷:行政がeスポーツの方を推進するというところで、一番気をつけないといけないところがゲーム依存症の対策です。こちらも愛媛大学の医学部の精神科医の先生とも連携し、障がい者モデル施設の支援者を対象としたゲーム依存症対策講演会なども実施し、フォローしています。

――eスポーツによる障がい者施設支援を行う中で気づいたこと、感動したことはありますか。

森:様々なスポーツイベントがあっても、運動が苦手とか、そもそも外に出ること自体が難しい方もたくさんいらっしゃるんですよね。でも、eスポーツで輝く方もいらっしゃるというところを見て、eスポーツを用いた取り組みはどんどん推進していくべきだなと思いました。

大会の際、障がいがあり、普段は控えめな方が、勝利を得たときの性格が一変したような喜び様を見たときは、活躍の場があること輝く場があることの素晴らしさを感じました。

西谷:手があまり動かないので、リアルアーケードタイプのコントローラーでぷよぷよをしていた人が、数ヶ月後には普通のコントローラーでできるようになっていたこともありました。

――eスポーツイベントを開催するうえで配慮されることはありますか。

森:ハード面もソフト面も、「障がい者にやさしい大会」にすることです。ただ単に障がい者でも参加できるeスポーツ大会を開いただけでは、(さまざまなハードルがあるため)実際に障がい者の方の参加者はほとんどいません。大会を開催して呼ぶだけでは参加が難しいということに気づきました。

もっと深く入り込んで、特別支援学校や障がい者施設にeスポーツの良さや価値を理解してもらい、障がい者の方々に安心してもらってからでないと、大会参加に至らないということに気づいたんです。そこで「eスポーツスタートアップ支援事業」を実施しているところなんです。

大会で感じた大きな熱量

右手でマウス、左手で特殊なコントローラーを使用してプレイする吉成健太朗さん

――「第1回えひめパラeスポーツ大会」の反響はいかがですか。

森:当日、私ども2人は現場とは別のコントローラーセンターにいました。現地に行った職員より、「すごい盛り上がりだった」と聞いています。オンラインでは伝わりきらなかった面も多かったと感じており、今後は応援を一生懸命する姿やセットの一体感を整えるなどの工夫が必要だと感じました。

西谷:現場の職員より、寝たきりのプレイヤーが大会に参加されていたと聞きました。その方は、北海道医療センター・作業療法士の田中栄一さんの「どんなデバイスを使えば、どんな方が参加できるのか」というお話をふまえ、「先生、私にもこういうのを作ってほしい」という声をあげてくれたそうです。乙武洋匡氏の基調講演やエキシビションマッチに出場した脊髄性筋萎縮症(SMA)当事者の吉成健太朗氏の影響もあったのかもしれませんね。そういったこともふまえ、来年度、私共も重度障がい者向けのデバイスを開発する事業も考えています。

――ぷよぷよeスポーツの大参加者のレベルも非常に高かった印象です。

西谷:練習のときよりも上達されているなっていうのが印象的でした。ぷよの積み方を見て、各施設の利用者さんがかなり練習されてきたんだなっていうことが目に見えてわかりました。その努力の成果が大会のパフォーマンスにも表れていたと感じました。

――各施設の方々に向けてコーチングなどは提供されたのですか。

西谷:今回の取り組みでは、セガさんから直々に階段積みのしかたを講習いただいたりしています。来年度はプロの方に委託という形で、よりレベルの高い講習を提供できたら良いですね。

森:今のところ講習の回数は延べ50回以上、400人以上の人が受けています。この1年間でその効果は出てきていると思っています。

今後のビジョン

――今後は、どのような大会を開いていきますか?

西谷:今後は、県や地域をまたいだ障がい者の中の交流戦や、健常者と同じ大会に出場するようになることをめざしていきたいです。3月7日に愛媛県でオフラインの大会「第1回愛顔eスポーツ大会」を開催しました。その中でぷよぷよの団体戦を行いましたが、福島県の障がい者等対抗eスポーツ大会で、上位入賞された障がい者施設の方も参加されます。また、他県の障がい者との交流ももちろんですが、健常者との垣根のないeスポーツの交流も合わせて行っていきたいです。

森:健常者、障がい者、年齢、性別に垣根の無いところを目指していくのは第一目標であるのですが、障がい者同士のつながりも立派な交流ですので、そちらも併せて目指していきたいです。

――ぷよぷよ以外のゲームタイトルへの広がりは。

西谷:ベースは今のところぷよぷよですが、施設ごとに色々なタイトルに挑戦しており、各施設そのその考えに沿ってサポートしていければならないと考えています。既に、太鼓の達人やボンバーマン、ウイニングイレブンやパワフルプロ野球を実施している施設もありますので、今後はそれらにも可能性を広げていけたら良いですね。

――さらに広がりが期待できます。

森:愛媛県では来年度以降、地域eスポーツの普及を目指し、地域でeスポーツの拠点となる施設を探しています。例えば地域で大きな障がい者施設を拠点として交流を広げていくような活動です。県内地域の交流ももちろんですけれども、県外の交流というのも進めていければいいと思っています。まだまだ先にいっぱいやれることはあると考えています。

インタビューを終えて

オンラインでインタビューするePARA代表・加藤大貴

コロナ禍でなかなか良いニュースがしにくいところ、オンラインでこのようなイベントを開催できたのは非常に明るいニュースで、非常に社会的な意義がある活動だと思いました。今後も継続的に広げることが、その地域の発展やeスポーツの活用にもつながると思います。私どもも、そのような取り組みにぜひお手伝いをさせていただきたいです。

加藤大貴

「第1回えひめパラeスポーツ大会」アーカイブ動画

双極性障がいのママゲーマーが感じたこと

今回の大会をオンラインで観戦し、リポート記事を書いた彼岸花さん(@higanbanamikan)が、大会を通じて感じたことをまとめました。

遺伝的な体質や環境因子から発症する脳の病気「双極性障害」で精神障がい者となり、ママとなり、ベッドの上のゲーマーでもある彼岸花です。そんな私も「健常者も障がい者も、年齢も性別も垣根がなく」一緒に楽しめるeスポーツや各種ゲームの世界に夢が広がっていきます。

ゲームの世界では自分の病気やハンディキャップに配慮し、必要であれば自分に適したデバイスを用意すれば、健常な人たちとも一緒に楽しく遊ぶことが無理なくできます。自らの経験をふまえても、やはりゲームの世界は障がいでの垣根のない世界の一つでしょう。エキシビションマッチの吉成健太朗氏のプレイはそれを象徴していたと思います。

何かしらのハンディキャップがある選手が、元気な健常者の方を相手にeスポーツの舞台で奮闘していたら、きっと興奮してしまいます。障がいや病気に負けない姿はとてもかっこいいです。今回、愛媛県の障がい者施設対抗のオンラインぷよぷよ大会では、こういった可能性を開拓して下さいました。素晴らしい戦いを繰り広げていましたね。

「愛顔(えがお)あふれる故郷づくり」を目指す愛媛県は、特に障がい者の就労支援や自立・活躍を支援に積極的と感じました。

近い未来、障がいがあってもeスポーツの世界で輝く愛媛県出身のプレイヤーやeスポ―キャスターが続々と出てくるかもしれません。また、かなり高齢のeスポーツプレイヤーが誕生しても面白いかもしれませんね。「第1回えひめパラeスポーツ大会」を皮切りに、心身のどこかに不自由なところがあっても輝ける場や、大会などが増えていくことを願うばかりです。

現代のゲームは、単なる娯楽ではありません。素晴らしいクリエーターさんたちが芸術であり、歴史が積み重なっていく文化であり、熱狂できる競技であり、無限の可能性が広がる世界でもあります。シナリオが素晴らしく、映画やドラマに勝るとも劣らない感動を生んでくれるゲームもたくさんあります。

eスポーツを軽く見る風潮はまだまだ時代的にもあるかもしれません。近代の人々が生み出した垣根なく皆で楽しめる、新たな「スポーツ」であり「文化」であると私は改めて思っています。

障がいの有無に関係なく、そこでは対等に、多様性や特徴、個性を持って存在できる世界。きっと近い未来のゲームの世界は今の現実世界よりずっと「優しい世界」なんじゃないかな、と思います。

ぷよぷよから始まった愛媛の障がい者eスポーツ大会。それが日本全国に広がり、ゲームで喜び笑い合える人たちが増えるといいですね。

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