「ぷよぷよ」を使ってプログラミングを学び、eスポーツ大会で競う授業が3月、東京都多摩市の公立中学校で開かれました。プログラミング教育は学校現場で注目が集まっています。親しみやすい「ゲーム」を使い、学びに活用する試みとして実施され、生徒たちは意欲的に取り組んでいました。

教育現場で広がるプログラミング教育

生徒たちに教えるぴぽにあ選手

プログラミング教育は学習指導要領に示され、2020年度から小学校で必修化されています。中学校でも、その内容を発展させる観点で21年度から技術・家庭科の「情報の技術」で扱うことになります。プログラムによる計測や制御のほか、ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツのプログラミングが内容として盛り込まれています。さらに高校でも、22年度からの学習が予定されています。

このようにプログラミングへの関心が高まる中、ぷよぷよシリーズを展開するセガは20年6月に「ぷよぷよプログラミング」の提供を始めました。ソースコードを正確に写していくことで画面上のぷよが実際に動き、プレーすることができるようになる教材です。基礎、初級、中級、上級とレベル別のコースがあり、気軽にHTML5とJavaScriptでプログラミングを学べるツールとして利用が広がっています。

多摩市立多摩中学校では、2年生4クラスの約160人がこの「ぷよぷよプログラミング」を使って技術科の一環で授業を実施することになりました。セガがその内容をサポートし、システムエンジニアの経験を持つプロのぴぽにあ選手が講師を務めました。GAMEクロスと株式会社JTBも運営に協力しました。

講師を務めたぴぽにあ選手(左)とヨダソウマ選手

落下速度やデザインをアレンジ

ぴぽにあ選手が出向く授業にあたって、生徒たちは事前にプログラミングの基礎的な学習を実施して臨みました。3月の当日はプロのヨダソウマ選手も授業を手伝いました。

授業は午前中に1クラスずつ順番に実施しました。iPadにキーボードを接続して文字を入力しますが、キーボードに慣れない生徒も多く、「セミコロン」「ドット」などの位置を確認しながら進めました。最初は指示に従って「config.js」などのソースコードを入力し、ゲーム用のフィールドを画面に表示させるところから始めました。

「保存をして、数字が出たら成功です。わからなかったら手をあげてください」。ぴぽにあ選手が生徒たちにこまめに声をかけます。

さらに「落下速度を変える」「背景の色を変える」などの発展的な入力にチャレンジ。なかなかうまくいかない生徒もいましたが、サポートに入ったセガのスタッフも含めて丁寧に質問に応じていました。

また、事前に生徒が描いたデザインを使い、背景の画像に差し替えるという「課題」も設定。準備をして決めていたソースコードを入力すると、オリジナルのイラストが登場しました。

ソースコードと村上瑶季さんのデザインに変更した画面

プログラミングってすごいな

イラストが採用された村上瑶季さんは、自作のデザインについて「かわいさとかまるっこさ、ぷよっとした感じを出せるようにしました。1日3時間で2日ぐらいかかりました」と作業を振り返ります。授業を経験して「自分たちが遊んでいるぷよぷよというゲームのやる側から、作る側に回るのがおもしろかった」と話しました。

授業を受けた感想について、平沢梨乃さんは「ゲームの中で、どうやって動いているのかを疑問に思っていました。改めてプログラミングがすごいなって感じました」。西山夏陽君は「自分で打ったものがそのまま反映されておもしろかった。またやってみたいと思いました」と語りました。

村上瑶季さんのデザインに変更した画面

体育館が観客付きの会場に 揺れるバルーンスティック

午前中のプログラミングの授業に続き、午後はぷよぷよeスポーツ大会「多摩中チャレンジカップ」でした。大会にあたっては、事前に学校でタイムアタックによる予選を実施。スコアの上位16人によるトーナメント大会が体育館で実施されました。それ以外の生徒は応援です。開催にあたっては、新型コロナウイルスの感染予防対策を徹底しました。

本番のeスポーツ大会さながらに、PlayStation 4のほかにゲーミングデスクとチェアを用意。画面はプロジェクターを通じて体育館のスクリーンに映し出しました。実況と解説をぴぽにあ選手とヨダソウマ選手が務めました。

ただ、できるだけ学校にある備品などを使いました。さらに生徒からも司会役を選出。キャリア学習の観点からも、生徒たちが主体になって大会運営を行いました。

盛り上がる応援席

試合は「連鎖で競い合い、ハイレベルだった」と両選手が評価したように、スピーディーな展開が相次ぎます。応援の生徒たちは用意されたバルーンスティックをたたきながら、スクリーンを注視。勝敗が決まると、それぞれの選手に大きな拍手を送っていました。

男女8人ずつが参加したトーナメントは、ベスト4以上のうち3人が女子という結果に。1位に輝いた片岡舞依さんは「優勝を狙っていました。兄が練習相手になってくれました」と喜びを語りました。授業については「普段やっているゲームの設定を自分で変えられておもしろかった」。全体を通して「とても良い経験になったので、また来年度もやりたい」と話しました。

真剣勝負に挑む生徒たち

惜しくも準優勝だった濱田一洋君は、授業について「自分が今まで簡単に操作をしていたぷよぷよがまさかあんなに作るのに難しいことをしていたとは想像せず、驚きました。今まで疑問に思っていた謎を丁寧に教えてくれて、わかりやすかったです」。今回の経験については「将来、パソコンを使ってゲームを作るような仕事に就きたいと思っているので、かなり勉強になりました」と語りました。

中学校でぷよぷよプログラミング&ぷよぷよ大会

「学校でぷよぷよは感動的」「生徒たちが引き込まれていた」

iPadを使ってプログラミングの授業に臨む

「教壇」に立ったぴぽにあ選手は「eスポーツと言ってもゲーム。学校では基本的にNGだった。eスポーツという文化として発展し、学校でできるのは感動的です。昔と比べると信じられないですね」。ヨダソウマ選手は「のみ込みが早く、あっという間に流れを理解して先に進む生徒もいました」と振り返ったうえで、「生徒によって、それぞれ得意分野があると思います。色々な生徒が、色々な場所で活躍できるのはとても良いことだと感じました」と話し、ぷよぷよが持つ力の可能性を感じていました。

学年主任の川上晃男教諭は技術科の担当で、一連の企画を中心となって進めました。プログラミングの授業については「難しい内容かなと思ったが、生徒たちが食らいついていて、ふだん質問しない生徒もわからないときは手を挙げていた。教えてもらって画面が動くとまたおもしろくなるので、引き込まれるようにやっていたのが印象的でした」と感想を話しました。

大会後、ぴぽにあ選手(右から)より表彰を受ける優勝した片岡舞依さんと準優勝の濱田一洋君

また、今回はプログラミングの基礎的な内容だけでなく、学校でぷよぷよのゲームとしての予選も実施して本番を迎えました。その流れを踏まえ、川上教諭は「自分たちが実際に学校でやっていたぷよぷよが、自分の手でプログラムとして動くところはとても興味深かったのでは、と思います。ぷよぷよがテーマだったことで統一感があり、生徒たちの中ではぷよぷよというキャラクターを中心として、色々な方向から積極的に取り組めたことが良かったです」と学びとしての成果に手応えを感じた様子でした。

千葉正法校長は「現在の中学2年生は、大学入試において教科としての『情報』が必須となる学年です。ぷよぷよという誰にでも馴染みのあるゲームを通して、プログラミングの基礎やeスポーツの楽しさを学んでくれました」と生徒たちの取り組みを評価します。そのうえで、新型コロナウイルスの影響で制約のある実情を踏まえ、「コロナ禍におけるキャリア教育としても、大変価値ある学びとなりました」と述べました。 

(金子元希)