2020年前半、モータースポーツの最高峰F1(フォーミュラ1)は、未曽有の危機に直面しました。

世界中で、急速に拡大を始めた新型コロナウイルス感染拡大の影響によって、シーズンの開幕戦だった3月のオーストラリア・グランプリ(GP)は急遽中止。世界各国で開始されたロックダウン措置や、相次ぐGPの延期によって、数カ月間、レースをまったく行えない状況に陥ったのです。

この期間中、筆者を含むF1ファンたちに「楽しみ」を届けるにはどうすべきか。運営サイドが出した答えは、公式ゲーム「F1 2019」を使用したeスポーツ大会でした。

現役選手たちが複数参加

世界最高のレース競技としてお堅いイメージも持たれがちなF1ですが、意外にもeスポーツには他のレースやフィジカルスポーツと比べても早い時期から取り組んでいます。

F1は2017年からeスポーツ大会「F1 eスポーツ・プロ・シリーズ(F1 Esports Pro Series)」を開いており、現在F1にエントリーしている10チームがそれぞれeスポーツチームを編成して参加(フェラーリは途中から参戦)。年々規模を拡大しながら、2020年まで毎年開催していました。

2020年が一味違ったのは、「バーチャルGPシリーズ(F1 Esports Virtual Grand Prix)」(以下、バーチャルGP)として、現役のF1ドライバーが一部参加する大会も行われたところ。

バーチャルGPは3~6月までの約3カ月間に計7戦が開催。最終的にはウイリアムズの現役ドライバー、ジョージ・ラッセル選手が4連勝。現実とは異なり全チームが同一性能のマシンでレースに臨んだので、大接戦となりました。

新型コロナの影響を受けて様々なイベントの延期・中止が発表されていた中、バーチャルGPの盛り上がりには筆者も大いに楽しませてもらいました。残念な点としては各選手がオンライン参加する都合上、回線エラーが多発したところ。特に初期から積極的に参加していたマクラーレンのランド・ノリス選手に回線落ちが多発したのは、見ていて辛かった……。

2021年は全3戦

そんなバーチャルGPが2021年も開催されると聞いた時は、正直驚きました。2020年の開催は猛威を振るうコロナ禍に対応するための、1度限りの緊急措置だと思っていたからです。

ドタバタで行われた印象が拭えない前回とは異なり、今回は事前に3戦のみの開催となることが告知。予選をeスポーツチームが担当することや、周回数が実際のレースの50%に設定されるなど、一部フォーマットも変更されました。

とはいえ、現役F1ドライバーの参加数は昨年より減少しました。ウイリアムズよりジョージ・ラッセル選手と、ニコラス・ラティフィ選手が参戦したのみ。今年、日本人としては7年ぶりにF1参戦する角田裕毅選手は不参加となりました。

実際のレースの先行きが不透明だった2020年とは異なり、スケジュールがある程度確定していたことで参加人数が減少したものと思われます。また、今年度から「アストンマーティン」にリブランディングする旧レーシングポイントは参加を見送りました。

バーチャルGP第1戦(オーストラリア)

前回から2台減った計18台での戦い(第2戦はメルセデスも欠場で16台)となったわけですが、レース自体は相変わらず白熱の戦い。

特に最終戦、ブラジル・サンパウロGPでは、予選の結果14番グリッドだったジョージ・ラッセル選手が波乱のスタートで、いきなり3位にジャンプアップ。そこから1位をもぎ取る劇的な展開を見せました。

バーチャルGP第2戦(イギリス)

バーチャルGP第3戦(サンパウロ)

しかしラッセル選手は第1戦のオーストラリアGPを欠場していたため、チャンピオンは、ハースのeスポーツチームに所属するエンツォ・フィッティパルディ(ハースはチームとしてもチャンピオン)に。それでも、現役ドライバーの力はゲームにおいても存分に発揮されることを、昨年に引き続き見せつけた形です。

2020年に続き大きな盛り上がりを見せたバーチャルGP。そして、本業が優先されるのは当然ではありますが、2022年も開催されるのであれば、もう少し多くの現役ドライバーにも戦いに挑んでほしいと願います。