厳しかった父親と遊んだファミスタの記憶

――小籔さんは子供の頃からゲームに親しんでいたのですか?

僕の家は両親がとても厳しく、おもちゃを買ってもらったり親子で一緒に遊んだりすることはあまりなかったんです。僕にとって父親は怖い存在。ただ、祖父母がゲームを買ってくれたので子供の頃は、よくゲームで遊んでいました。

一緒に遊ぶことのなかった父だったんですが、なぜかファミスタだけは遊んでくれたんですよ。それがとても楽しくて、ファミスタをやるときだけは父との距離が縮まったような気持ちがしました。

友達に「親子でゲームをしている」と言うと、すごくうらやましがれて、それが子供心にちょっと誇らしかったのを覚えています。僕らの親世代は子供と一緒にゲームをするような人はまだあまりいなかったですからね。

真剣な表情で親子大会の配信に臨む小籔千豊さん

――フォートナイトを始めたきっかけは?

フォートナイトとの出会いは、息子が先にハマっていて、「これ面白いよ」と薦めてくれたのがきっかけです。僕はサラリーマンのお父さんみたいに、毎週土日に子供とキャッチボールをしてやれる仕事ではないので、「一緒にやるのもいいかな」という感じでやってみたんです。最初はようわからんので、息子に教えてもらいながらのプレーだったんですが、何週間かするとむちゃくちゃおもしろくなってきてね。

自分用のアカウントを作って、息子が寝てから自分一人でプレーするようになってしまいました。当時はSwitchが1台しかなかったんで、「はよ息子寝ぇへんかな」と思うようになって(笑)。気がついてみたらめちゃくちゃハマってしまったという感じですね。

子供が先生に 親が生徒に

――フォートナイトを始めて親子の関係に変化はありましたか?

たとえば釣りとかキャンプとか、親子が一緒に楽しむ趣味ってありますけど、ほとんどが親から子供に与えたものが多いと思うんですよ。僕もそうですけど、親子大会に参加してくれた人の話でも、フォートナイトは親主導ではなく、子供が先にやってて、親が後から参加したケースが多いんです。子供が先生で親が生徒。それまでも、普通に親子の会話はあったんですけど、そんなじっくり会話することはありませんでした。

それがフォートナイトをやるようになって、お互いががっつり興味があるもんができたわけですよ。「今回の新しい武器はどうやろ?」「いや、これはあんまりようないで」とか、共通の話題で会話をする機会がめちゃくちゃ増えました。

親と子供という縦の関係が横並びの関係になったような気がします。もちろん、親としてあかんときは叱りますよ。でも、親子の関係の幅が広がったことは良かったと思います。

――共通の趣味ができたことで、親子間のコミュニケーションは深まりましたか?

僕は他のゲームはやらないんで違いは分からないんですけど、フォートナイトはけっこう難しいんですよ。まず、基礎練習してクリエイティブをして、やっと本番を迎えるわけですよね。

だから、息子に宿題の必要性を説くときに「フォートナイトでも、なんもせんと戦ってもあかんやろ。まず島では建築の練習をして本番を迎えるやろ? 宿題はクリエイティブなんや。基礎練習を繰り返して、それの積み重ねがビクロイにつながる」と説明したら理解してくれました。

「親子の絆を深めるためにフォートナイトを!」「子供の教育に欠かせない」とか声高に叫ぶつもりはありませんけど、共通言語ができて、フォートナイトの具体例で説明するとより理解が深まったと思います。僕も昔はゲームに対して偏見や誤解があって、それがフォートナイトをすることで確実に減っていっているので、ゲームにも良い面があるという部分は発信していきたいですね。

息子に負けても悔しさはない

ゲームコントローラーを手にする小籔千豊さん

――他のプレーヤーとの関わりについてはいかがですか?

プレーをしていて、息子が他人を馬鹿にするようなこと言ってたら厳しく叱ります。「相手が自分より下手やからいうて、そういう言葉をかけるのは間違いや」と。顔が見えんからといって好きなことを言うたらあかん。面と向かって言えんことは言うたらあかん。そこはネットでも同じ。

今、対戦している人は、もう二度と会えん人かもしれんねんから、知らん人には優しくせなあかんと、フォートナイトを通じてネットリテラシーについて教えることができたこともええことやと思います。

フォートナイトをやってなかったら、そういうことに気が付かんまま大人になってたかもしれんしね。僕らの時代と違って、今の子供らは、もう生まれたときからネットがある状態です。今後、さらにSNSやネットが発達するかもしれん環境において、ネットの使い方やマナーを今のうちから教育しておくことは必要やないかと思っています。

――息子さんの方が上手ということですが、負けると親として悔しい思いはありますか?

まったく悔しくないです。息子には、すべての能力で自分を上回ってほしいんです。友達付き合いや勉強、お金稼ぐ力、健康状態、友達の多さ、家族に対する愛情、そういった人として大事な能力が僕より上になってほしい。

今のところは、フォートナイト以外では、僕に絶対的な優位があるわけですよ。たとえばお金を稼いで、家賃を払っているし、アクシデントがあったときの判断力や行動力も圧倒的に僕が勝っています。

でも、将来、負けるときがきたら、すごくうれしいですね。僕は子供というものは、大人を作っている段階やと思うんです。つまり、これから社会に出したときに、皆さんに迷惑をかけたりせんと、ちゃんと社会に貢献できる人間を育てさせていただいている段階。ですからどっちが上とか下とかどうでもいいんです。

フォートナイトに関しては、僕はいつも息子にダメ出しされていますから(笑)。何より、僕より強いプレーヤーがすぐ近くにいることがうれしいです。練習になりますからね。

――奥様は息子さんがゲームをやることに対してどのようなご意見をお持ちなのですか?

嫁さんはゲームをやらないので、子供がゲームをすることに対して、一般的な家庭の親と同じくらい厳しかったんです。

でも、あるときeスポーツのニュースを見て「プロがある世界を、親が制限するのはどうなんやろう」とポツリと言うたんです。たとえば、サッカーとか野球なんかはほとんどの子供がプロになれへんのに、親は「サッカーやれ。野球やれ」と言いますよね。夜中までドリブルの練習や素振りをしてたら、怒るどころか「ようやってる!」と褒めますよね。他のスポーツだったら許すのに、ゲームなら許さないというのは少し違うのではないか、というようなことを嫁さんが言い出したんです。

嫁さんもフォートナイトは練習をしなければ強くならないということを僕を通して理解したので、宿題をやって他のやることもちゃんとやって時間があればゲームをしてもいいということになりました。

頭ごなしにあかんと制限かけるのではなく、親が子供の視線に立って、問題と向き合い、子供の好きなことを理解することは大事なことやと思います。

ゲームの活用が広がる時代に

インタビューに応じる小籔千豊さん

――息子さんが将来、プロゲーマーになりたいと言ったらどうしますか?

僕も含めて、子供の頃に一生懸命にやっていた野球とかピアノが大人になって全然役に立ってない人っていっぱいいると思うんです。プロになれるかどうかなんてわかりませんけど、やりたいことを目指すのはええと思います。

息子が幼稚園の頃、「YouTuberになりたい」と言うたことがあるんですよ。息子は小さい頃からパソコンを触るのが好きで、近所のパソコン教室に通ったりしてたんです。でも、僕はYouTubeなんかそんなに見てないし、そんなん言われてもYouTuberのことなんて全然わからんから、「編集できるんか?」と聞いたら「できへん」と言う。「生配信はあかんぞ、わけわからんこと言うたら、そのまま流れるんや」と言うたんです。

そしたら、しばらくしたら編集に必要なもんを調べてきたんです。「Switchにこれとこれををつなげたら、ええみたいや」と。でも、僕はそれが何なんかググっても全然わからん(笑)。そこで仕事で出会うYouTuberの方にいろいろ教えてもろたりしているうちに、いま配信をしているスタッフから「フォートナイトのYouTubeやりませんか」と声をかけられたんです。

――「フォートナイト下手くそおじさん」の誕生は、息子さんの存在も大きいのですね。

実は家でフォートナイトをするのに、小さな罪悪感みたいなもんがあったんです。「フォートナイトに4時間も費やしたけど、この時間で新喜劇の台本読んだりしたほうがええんちゃうのか」と自問自答する自分がいました。

僕はもともとYouTubeやるんやったら本業のお笑いではやりたくないと思ってたんです。フォートナイトでYouTubeやらないかというお話をいただいたとき、これを仕事にすることによって、罪悪感から逃れられるという思いと、これで娘や息子に父親として胸を張ってできるという気持ちもあって始めた部分もあります。

――今後のゲームに対する可能性はどのように感じていますか?

以前、ニュースで見たんですけど、お年寄りの方々が施設でみんなでフォートナイトをやっているシーンが流れたんですよ。おばあちゃんが楽しそうにフォートナイトしてるんですよ。ものすごく印象的でね。なんでも、脳の活性化にも役立つとかいうことでしたけど、これからはゲームが高齢者をサポートできる部分も増えてくるかと思うんです。

子供の頃からゲームに親しんでいた人が高齢者になる時代は、もうすぐそこまで来ています。ゲームのいい部分の活用が広がれば、もっといい世界になっていくんじゃないかと期待しています。