「ぷよぷよ」公式プロライセンスの保持者には、そのプレースタイルやパーソナリティーに合わせた二つ名がつけられています。

SAKI選手の二つ名は「風林火山」。些事に動じない武将が如く、泰然自若としたプレーぶりで数々の大会で好成績を残している若き猛者は、2020年9月に始まった公式大会「ぷよぷよチャンピオンシップ SEASON3」では3戦ともベスト4入りと好調を維持しています。20日に始まるファイナルでは四天王の一人として、チャンピオンをめざします。

その安定した戦いぶりを支える「ぷよ」のルーツ、そして数学の研究者としての一面にも迫りました。

オンラインとオフラインで磨いた腕

SAKI選手はこの手で勝負に挑む

「ぷよぷよを初めて触ったのは小学生のころですが、対戦を真剣に極めてみようと思ってからだとプレー歴は12年以上になりますね」

ぷよ対戦に長いキャリアを持つSAKI選手ですが、その成長過程にはオンラインとオフラインが混在します。「対戦への熱が高まったきっかけはインターネットですね。オンライン上でプレーしてみたら『案外できるな』と感じて、ちょっと本格的にやってみようかなと」

オンラインで腕を磨いた当時の名残が、今も使用している「SAKI」というプレーヤー名。当時に使用していた幾つかのアカウントから成績が良かったものを引き継いだとのことで「特に由来はないんですけど、よく女性と間違われます」と、ちょっとした悩みも明かします。

そしてオンラインでの戦いに加えてその実力が鍛えられた舞台がゲームセンターです。今でもプロで肩を並べる強豪たちとアーケード機越しにしのぎを削り、巧みな戦術を磨き上げました。

「ゲームセンターでは、今でもプロとしてライバルにあたるざいろ選手と出会って親密になったんです。彼と何度も戦ったのが間違いなく上達につながりましたね。『彼には勝ちたい』と思わせてくれる相手です」

強さの源にある研究者気質

取材に応じるSAKI選手

現役の大学院生であり、数学を研究しているという一面を持つSAKI選手。「ぷよぷよ」での安定感ある戦いぶりとの関連はあるのでしょうか。

「数学の勉強とぷよぷよ対戦に関連があると感じたことはありません。ただ、好きなことってずっと続けていられるし、気が付いたらそのことを考えているんですよね。それが自分にとっては数学であり、ぷよぷよなんです」

本人は実感こそ無いと言いますが、この「研究家気質」と呼んで差し支えないメンタリティーがSAKI選手の強さの源のひとつと考えて間違いないでしょう。

特に「ぷよぷよ」に対してはロジカルな姿勢を貫いており、中でも「言語化する」ことには強いこだわりを感じさせます。それが形となったのが、SAKI選手が自ら書き上げた「GTR」(大連鎖を組むときに必要な技術の一つ)の解説記事。基本とされるテクニックについて、数万文字に及ぶガイドを完成させました。

「書くなら日記みたいなものじゃなくて、しっかり書きたいという考えてあったんです。気付いたらかなりのボリュームになっていました」

再現をするだけならシンプルな技術について、何パターンもの例を挙げながら「どのように組み上げるのが後々に良い形になるのか」という考え方を分かりやすく解説した記事です。

理論と感性の合間でぷよを積む

大学院生でもあるSAKI選手

2019年のぷよカップ大阪大会で優勝してプロライセンスを獲得すると、その後もプロ大会で上位入賞を積み重ねているSAKI選手。今のスタイルには自信が積み重ねてきた経験とアイデアが詰まっています。

「攻撃的なスタイルが昔から続く持ち味だと思っています。ただ、攻撃だけでは上に行けないなというのを感じたことで色んな技術を身に着ける練習をしました」

かつては自らを「バチバチの暴れん坊」と表現するほどのスタイルで、相手の地形も見ずに攻撃を仕掛けていく時期もありました。ただ、そこから練習を重ねて完全なロジカルスタイルに変化したかと思いきや、実はそういう訳ではありません。

「戦い方も論理的に見える部分が多いかもしれないんですけれど、実は感覚的な部分も大事にしています。論理は『誰にでも分かる』のが良い所ですが、強い相手との対戦では完全に論理的なスタイルを貫くと逆に読まれやすくなってしまうというデメリットがあるんです」

ぷよぷよに関するロジックを突き詰めたうえでたどり着いた論理と感性のバランスこそがSAKI選手独自のスタイル。短期決戦が多い公式大会では個性を出していくことを意識しながらも、極力普段通りを心掛けているそうです。

「理想としては『相手はどうだろう、じゃあ自分はこうしよう』と、自分の名前の通り相手の『先』を読んでいく戦い方ですね。自分自身を信じて戦うことを信念にしています」

風林火山の二つ名の通り、相手をどっしりと受け止めるSAKI選手。これからも「理論」と「感性」の両輪が、その快進撃を支えるでしょう。