今回の大会は、eスポーツを普及促進するモデル施設の障がい者施設が参加する「障がい者施設等対抗オンラインeスポーツ大会~第1回えひめパラeスポーツ大会」(愛媛県主催)でした。ゲームタイトルは「ぷよぷよeスポーツ」です。

参加したのは、eスポーツを普及・促進するためのモデル施設として愛媛県が定めた10施設に在籍する障がい者のみなさんです。愛媛県は障がい者と健常者が交流を深める機会づくりとして、eスポーツを軸にした取り組みを進めています。

筆者自身も病気でありながら、ゲームを楽しむ「障がい者ゲーマー」の一人です。双極性障害は一生のお付き合いとなる精神疾患ですが、受け入れながら育児や家事、気晴らしにゲーム、と時々元気に時々休みながらエンジョイしています。「ePARA」内に以下の記事を書いていますので、参考にしてください。

講演に大会に あっという間の3時間

今回の配信では、白熱したぷよぷよeスポーツの試合あり、貴重な講演ありと、あっという間の3時間でした。オープニングには、北海道医療センターに所属し、障がい者eスポーツ選手として活躍する吉成健太朗さんがエキシビションマッチに登場。ぷよぷよで熱い戦いを見せてくれました。

配信に参加する北海道医療センター所属選手の吉成健太朗さん(右)

その後、10施設20人による施設対抗トーナメントが展開されました。実況はeスポーツキャスターの馬人さん(@UMANCHU_729)、解説はJeSU公認ライセンスプロゲーマーのliveさん。和やかな進行のもと、20人の選手による試合が繰り広げられました。

そして、試合の合間には、著書「五体不満足」で知られる乙武洋匡さんの基調講演がありました。

オンラインで講演する乙武洋匡さん

スポーツライターの乙武洋匡さんは、生まれつき四肢がなく、特製の車椅子に乗った生活を送っています。乙武さんは以下のように語りました。

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パラリンピックで自分が出場できる種目があるか見てみる。そこにはなかった。そもそも、スポーツの語源をたどると「余暇」や「遊び」の意味を含んでおり、古来では釣りやハンティングなども含まれていた。

マインドスポーツであるチェスもあるようにオリンピック種目だけが「スポーツ」ではないんじゃないか。オリンピックでは一握りのアスリートしか道はなく、パラリンピックですら不自由な点が少ない障がい者の人だけで一握り。でも、eスポーツであればデバイスを工夫すれば出られるかもしれない人が多い。

パラリンピックに出られないような人も輝けるeスポーツ。多様性に貢献してくれるeスポーツ。
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「楽しさ」や「エンタメ」も大事だと語った乙武さん。障がいがあっても輝ける世界がeスポーツによって広げられていってほしいと感じました。

障がいに合わせたデバイスの工夫は

オンラインで解説する田中栄一さん

講演のほかに、北海道医療センター・作業療法士の田中栄一さんが「障がい者がどのようにゲームをプレーするのか?」という観点で解説を行いました。

あごでジョイスティックを操作したり、身体の動かせる部位をうまく使って特製のデバイスを操作したりと、身体の特徴に合わせたデバイスを用いてコントロールする事例があると聞いて、印象的でした。また、押すのが難しくても軽い力で操作できるコントローラーや、一人一人の特徴に合わせて独自にデバイスを組み立てるなど、工夫をしてゲームをコントロールできるようにしていく方法も紹介されました。

これからeスポーツの公式大会などでも環境が整えば、障がい者もデバイスを駆使して活躍できることがあるかもしれません。ぜひとも、その門戸が広がってほしいと思いました。

「誰でも輝ける世界」が展開された

今回のぷよぷよeスポーツ大会には、体のどこかに不自由な部分があるプレーヤー同士が対決しました。でも、ふたを開けてみれば、不自由さなどを感じさせない戦いでした。

障がいの有無に関係なく輝ける世界の入り口がそこにあったように思います。注目の決勝は、通常の大会で繰り広げられてもおかしくないほどのスピードで、大連鎖も飛び出しました。

その中でも圧倒的な力を見せつけた放課後等デイサービス「めだかミニスクール」のそうちゃん選手が優勝でした。思わず声が出てしまうほど見事なそうちゃん選手のプレーでした。2位のtkg選手、3位のヒロ選手も見事なぷよさばきでトーナメントを盛り上げていました。

ぷよぷよeスポーツ大会のトーナメント

決勝ともなると、「障がいがある人」の戦いに見えなかったのではないでしょうか。オンラインであることもあり、物理的な距離や障がいのボーダーレスな世界がこれから広がっていく可能性を感じさせる大会でした。

課題はまだあるかもしれません。ですが、徐々にその課題が解決され、デバイスも含めて設備も整えば、体に不自由があってもその不自由さを乗り越えて戦うことができると感じた3時間でした。

優勝決定の瞬間

障がいの有無はeスポーツには無関係

実際に、筆者も家族がぷよぷよを得意として趣味にしており、昔はガラケーのぷよぷよ2の通信対戦で県内ランカーだったほど。上級者の戦いを後ろから見ることは慣れています。

正直なところ、今回の戦いでも特に決勝では特にランカーの人たちが戦っていたような速度の速い積み、的確な大連鎖、相手を的確に妨害する読みなどが見られ「障がいの有無はぷよぷよeスポーツに関係ない」と感じました。

私自身、長時間のゲームプレーは難しい事情を抱えています。脳の疾患から自律神経が弱く、気温が上がると体調を崩し、体力がなく疲れやすいので長い時間の休憩や眠りが必要です。脳への高い負荷も辛い体質です。遺伝や環境の要素が多い脳の病気ですが、疲労やストレスでも悪化するので安静と病識は必須です。

そのため、療養しながらエアコンの強く効いた自室のベッドの上でゲームをプレーすることもしばしば。使いづらい手でもうまく操作ができるように20ボタンマウスとゲーミングキーボードを駆使してMMO(多人数同時参加型オンラインゲーム)を遊んでいました。自分もまた、自分にあった環境とデバイスを用いてプレーしていたのです。

彼岸花が使うキーボードとマウス

ちょっとした工夫と道具が大事

MMOのプレー中、オンラインで共に戦う仲間に脳の病気である旨や病名は明かしませんでしたが、なんらかの病気で体が辛いことは明かしていました。長時間の集中による脳への高い負荷から突然動けなくなり、高難易度レイドに一緒に挑んでいたメンバーに迷惑をかけてしまったこともあります。障がいがあると遊びづらいのは紛れもない事実です。

ですが、そこには寝込みがちでも病気でも走り回れる世界が広がっていました。「中の人」は重い病気があっても元気なアバターキャラは病気でもなんでもないので、時々動かなくなるけど元気に走り回っています。

そして障がいの不自由さも距離もなく世界のどこかにいるゲーム友達と遊び、戦っていました。日本だけでなく、世界とつながれる世界でした。

これって、eスポーツ全般と同じだと思うのです。

障がいのある人にとって多少無理や難しいことはあるかもしれない。特殊なデバイスも必要かもしれない。環境の整備も必要かもしれない。でも、道具と工夫と、「不自由な点が少ない健常な人が時々ちょっと合わせてくれる」ことでeスポーツやゲームの世界の障がい(バリア)は驚くほどなくなるのです。

健常者と障がい者が手を取り合える世界を

ぷよぷよeスポーツ大会で3位入賞したヒロ選手

私が考えるポイントは以下です。

身体の機能に問題があればその人に合ったデバイスを
体力や体調に問題があればその人に合った環境やペースで

健常な人たちと障がいのある人たちが、ボーダーレスに仲良く対等に手を取れる世界が訪れることを願います。心身の機能に問題が少ない健常な人たちが、少しだけ障がいのある人たちに合わせてくれたら、eスポーツも競技人口が増え、世界がさらに盛り上がるのではないか、と今回のイベントで感じました。

「障がいの有無と距離の問題」というの問題を乗り越え、誰でもボーダーレスに輝ける可能性が見いだせるぷよぷよeスポーツオンライン大会でした。圧倒的な実力で優勝したそうちゃん選手の連覇はなるか? 次の大会に期待ですね。

彼岸花

バリアフリーeスポーツ ePARA