昨年末、学生の頃から通っていたホームゲーセンからポップンの筐体が撤去されることになった。

初めてその告知を見たとき、「近場でポップンが出来なくなった」ことよりも、「1X年間遊んできた筐体がなくなった」ことへの寂しさ、悲しみを強く抱き、思ったより筐体に愛着を持っていたのだと自分でも驚いた。

(とくにちょっと昔の)ポップンや音ゲーの筐体は、ゲーセンごとに調整が加えられており、同じ筐体でもゲーセンによって遊び心地などが変わる。というのも、ポップンの筐体で言えば出荷時の状態だとかなり力を入れないとボタンを押し込めない。指押しプレーヤーはしょっちゅう甘めの突き指をしていたくらいだ。そんな事情もあり、ゲーセンのスタッフさんによるメンテナンス・調整によってポップンの筐体は遊びやすくなっている。

具体的にはボタンのバネとスイッチを柔らかいパーツに替えていたり、自前のイヤホンを持ち込めば使えるようになっていたり。アナログでSUDDEN+(画面上部を隠すレーンカバーのようなもの)ができるよう、ディスプレイ上部に可動型のサンバイザーのような機構を後付けしているものも見たことがある。

それに透明のボタン内に有志お手製のイラストを埋め込むといった遊び心も忘れていない。

おれのホームゲーセンの筐体だと、おれがやり始めた頃から「指押し推奨台」としてボタンが軽めにカスタマイズされていた。今や客入りの多いゲーセンはどこも当たり前のようにやっているが、当時はゲーセン側の理解がないとなされないカスタマイズだ。

他のどんな筐体よりボタンの押し心地が一番好みだった、個性のある良い奴だったんだ。近所のゲーセンにお前がいなかったらきっとこんなに長くは続かなかったと思う。

おれはお前と一緒だったからここまで上手くなれたのに……。

さまざまな想い出を脳内で辿りながらひとしきりプレーして、インスタントおしぼりで筐体を拭いて労った。そして最後のクレジット。万感の思いでいっぱいのおれは、自然とこんな選曲をしていた。

「想い出の筐体に捧ぐ別れの3曲」を……。

おれが選んだ3曲について

1曲目:「オオミソカ(H) / さようなら こんにちは」

初出:ポップンミュージック 12 いろは

その名の通り、大晦日がモチーフになっている曲。12月31日になるとこぞってこの曲をプレーする風潮があることで有名な曲だ。

「笑顔で明るい別れの曲」として最初に思いついたのはこの曲だった。「タイトルにさようならって書いてあるからって安直な……」ってちょっと思ったが、とにかく前向きな歌詞にはいつも元気がもらえるのだ。

ポップンはかつて曲ごとに紹介文が表示されていて、この曲の「年越しっていっても明日になるだけ。明日もいい日になるといいな。」が好きだった。今でもずっと心に残っている。

2曲目:「クリアトーン(EX) / さようならは言わないけれど」

初出:家庭用ポップンミュージック10

16年の時を経て家庭用ポップンから移植された曲で、ポッパーのみぞ知る隠れた名曲だ。「タイトルにさようならってあるからって安直な……」と思ったそこのあなた、この曲は歌詞に妙ありなんだ。

要約すると「じきにやってくる寒い季節の中で決意した新しい旅立ちと、会えなくなる別れの辛さ」といった歌詞で、まさしく今の境遇にふさわしい。新規収録されたばかりで注目されていたのも理由のひとつだ。

ぜひプレーして歌詞を聞いてみてほしい。

3曲目:「エヴァーポップREMIX(EX) / 2nd ADVENTURE(AGAIN)」

初出:ポップンミュージック20 fantasia

3曲目は無意識におれがポップンで一番好きなものを選曲。fantasiaから大好きな曲のREMIXバージョンだ。

この楽曲が作られた経緯はかなり長くなってしまうので割愛するが、当時のサウンドディレクターが新天地への2nd ADVENTUREを決意した、お別れの曲なのだ。この筐体も新しいゲーセンへ2nd ADVENTUREをすることになるのだろう、その門出を祈願して3曲目とした。

曲の攻略はもちろん楽しいが、選曲そのものに目を向けてみるのも音ゲーの醍醐味といえる。なにかテーマを決めて選曲して楽しむのも面白いと思う。

*  *  *

稼働している筐体はどれも同じに見えるかもしれないが、ゲーセンで働くスタッフさんの手でカスタムされるため、遊び心地は千差万別だ(最近の筐体はタッチパネルだったりボタンも柔らかめになっていたりするので個性は付きづらくなっているが)。なにより、あなたが遊んできた思い出はその筐体にしか宿っていない。

今はこういった世の中なので苦境に立たされているゲームセンターは多く、あまり想像したくはないものの、筐体の撤去やゲーセンの撤退が頭をよぎってしまう人もいると思う。もしゲーセンに行ける状況であれば、相棒ともいえる筐体に触れて、そいつの良いところやうれしかったことを思い出してほしい。

この筐体のこういうところが好きとか、この筐体であの曲をクリアできたのが心に残っているとか、相棒にまつわるエピソードを教えてくれたらうれしいな。