バトルロイヤルゲーム「PUBG MOBILE」を使用したプロリーグ「PUBG MOBILE JAPAN LEAGUE (PMJL)」のSEASON1が2月にスタートしました。世界大会をめざして参戦する16チームの中で、最も「若い」チームが「原宿 STREET GAMERS(HSG)」(@harajuku_sg)。全国無料放送の「BS12 トゥエルビ」を運営するワールド・ハイビジョン・チャンネル株式会社がチームオーナーを務めています。

そして、このHSGのリーダーがmmtarö(モモタロウ)選手です。リーグ参戦に向けて誕生したHSG最年長で、中心的な存在です。プレーヤーとしての背景や「男気」と評される人柄の裏側に迫りました。

紙飛行機が折れないほどの不器用ですが

mmtarö選手(左)ら原宿 STREET GAMERSの選手たち

「いろんなゲームをプレーしてきましたが、どれもそんなに上手かったとは思わないです。『プロ野球スピリッツ』はちょっと自信あったかもしれませんが……」。リーダーとしてPMJLに臨むmmtarö選手(@S8_mmtr_)もかつては、いちゲーマーとして色んなジャンルの「エンジョイ勢」でした。

ストリーマーとして活動する恭一郎さん(@kyouitirou2525)釈迦さん(@avashaka)の配信を見てPC版「PUBG」を知っていたものの、自分でプレーすることは考えませんでした。「操作が複雑なゲームは自分には無理だと思っていたんです。紙飛行機が折れないくらい不器用なので……」

そんな彼も、スマートフォンで操作できる「PUBG MOBILE」の登場で、「PUBG」の世界に飛び込みます。ただ、やはり当初は完全な「エンジョイ勢」。「始めた当時は競技シーンに出ることは全く考えていませんでした。ずっと動画を見ていたゲームを弟と従兄弟と一緒に遊べて楽しい、という感覚でした」

競技シーンに入るきっかけは、現在はキャスターとして「PUBG MOBILE」の大会で解説も務めるRintoさん(@RintoXD)の存在です。「Rintoさんが開くスクリムをYouTubeで見ていたら面白そうで、大会に出てみようと思いました。始めたばかりの時は本当に何もできなくて、『まずは1キルが目標』のレベルだったので、初めてドン勝できた時は本当に嬉しかったですね」

真剣勝負の面白さに魅了されると、地道な練習の積み重ねで実力を磨きます。タブレット端末よりも画面の小さなモバイル端末に移行すると、ジャイロ操作も習得。そして、アマチュアチーム「TEAM SEXY」でリーダーを務めるようになりました。そして、SEASON1の前哨戦として2020年に開かれた「PMJL SEASON0」では、GRAND FINALに進出したのです。

寄せられる厚い信頼

左からTatsu、りもこん、mmtarö、TABI、Shiroron、Kersの各選手

「TEAM SEXY」時代にこんなエピソードがあります。トライアウトで結果を出せずにいたTatsu選手(@pubg_Tatsu840)を「俺のオーダーが悪いからTatsuの良さが出せなかった。諦めないで続けよう」と力強く説得したのです。「以前から彼の撃ち合いの強さも人柄の良さもよく知っていました。あまり戦闘に参加しない自分の立ち回りが彼の強さを生かせていなかったんですね」

これから長い時間を共にするメンバーを決めるためのトライアウトだからこそ、短期的に結果を見て判断するのではなく、何日でもかけてお互い満足が行くまでトライアウトを行うことを大事にしたのです。

「数試合だけの実戦ではどうしても運が絡むので、色んな状況からその人を見極めたいんです。技術は後からいくらでも伸ばせるので『チームの一員としてどうか』という人柄は特に重視しています」

この「人柄を見る人柄」こそが、mmtarö選手が信頼されるリーダーである根拠と言えるでしょう。Shiroron選手(@S7_GOD)は母親から「mmtaröさんのいるチームが良い」と推されての加入となったほど。「Shiroron君とはチーム加入以前からゲームを通じて色んなコミュニケーションを取っていて、そういう所を見て頂いたのかなと思います」

ムードを重視するチーム作り

mmtarö選手(左から4人目)ら原宿 STREET GAMERSの選手たち

リーダーとして重視しているのは楽しいムード作りです。時にはメンバーの進路など、プライベートな悩み相談に乗ることもあります。「チームでは最年長で、教員免許も持っているので先生みたいに見られているところもあるかもしれないです」

実は取材中、mmtarö選手の口からは「仲の良い」というフレーズが何度も出ました。それだけでもHSGというチーム内の雰囲気の良さが伝わります。時には練習の休憩時間にメンバー全員で別のゲームをプレーすることもあるそうです。

「僕にとっては全員年下なので、弟みたいな感覚でしょうか。皆で他のゲームをするのも楽しいんですが、遊び始めると終わるタイミングがなくなってしまうので最近は控えるようにしています」。決して馴れ合いにならないためにも、メンバーの言動に良くない部分があれば「締めるところは締める」というバランス感覚を持ちながら、若い選手も多いチームをまとめ上げています。

そして、この「リーダー像」は過去の経験や特定の人物を参考としたスタイルではないと言います。「普段は食事に行っても注文をずっと迷うくらい優柔不断ですが、何故かチームのこととなるとビシッと決断できるんです」。あくまで自然体でいながらにして人が集まる、この「柔らかなカリスマ性」こそが最大の特徴と言えます。

若いからこその将来性

原宿 STREET GAMERSの選手たち

年長者として若いメンバーからは信頼を集めていますが、それと同じくらいにmmtarö選手もメンバーの将来性に期待を寄せています。

「メンバー同士が本当に仲が良くて、コミュニケーションはよく取れています。スクリム中も決してふざけているわけじゃないんですけど、面白いことを言い合って楽しみながらプレーしています。ただ、競技シーンに出始めてまだ日が浅いので、試合の中での連携はまだまだこれからですね」

手応えと同時に課題も感じているリーダー。チームでは上達のために日々練習を重ねており、積極的にフィードバックも行っています。

「基本的にはスクリム後に僕やShiroron君が反省点を振り返りつつ、皆で意見を出し合っています。普段はしょうもない話ばかりしていても、そういう時にオンオフはしっかり切り替えられていて、すごく良い雰囲気だと思います」

意外な涙も見られた緊張の船出

左からアナリストのRayさん、ストリーマーのAVEŁさんと、りもこん、mmtarö、TABI、Shiroron、Kers、Tatsuの各選手

競技シーンではどんな戦いが期待されるのでしょうか。2月に開幕したPMJL SEASON1の最終戦は5月という長丁場です。これから時間をかけてチーム戦術を磨き上げ、完成度を高めて行くことが当面のテーマとなっています。

「SEASON1の初日は『結果を出さなくちゃ』という気持ちもあって、珍しく緊張してしまったんです。試合が始まる前には『ヤバい、始まっちゃう!』とプレッシャーを感じまくって泣いちゃうほどだったんですが、緊張しているのは僕だけで、皆に慰めてもらっていました」

頼もしいリーダーが重圧に苦しむ姿が周囲にも伝播するかと思いきや、意外にもメンバーはリラックスしていたそうです。徐々に落ち着きを取り戻し、2日目には普段通りのパフォーマンスができたという実感もあったそうですが、Day2までの試合は安全地帯に見放されたツキのない展開が目立ちました。

「チーム全体でこうして行こうというのは、まだアナリストのRayさんと相談しながら探っている段階です。やっぱり経験が少ないメンバーなので、いざ自分の本番となるとスクリム通りのパフォーマンスが出し切れていない部分があったのかな」。初日には想定外の涙がありましたが、メンバーのことを気遣いながら今後を見据えています。

「らしい」ドン勝から上昇気流へ

チーム全員でこれから伸びていく。この目標を達成するためにも目に見える成果としては「ドン勝」の獲得、つまりラウンド勝利をどれだけ挙げられるかがカギだと、mmtarö選手は考えています。「1回ドン勝すれば楽になるというか、勢いに乗ることができると思います」

宣言通り、取材後に行われたPMJL SEASON1のDay3では、最終盤に好位置をキープし続け、最後は相手を囲い込む形で見事に「ドン勝」を獲得。mmtarö選手の得意とする「上手く侵入していく」立ち回りによるオーダーが光りました。

この勝利を最高の糧に、若きチームが上昇気流を描けるか。今後のSEASON1を占う上で、ひとつの注目ポイントになりそうです。

伸びしろたっぷりの仲間を率いてめざす「鬼ケ島」

そんな成長過程にあるHSGが実力者揃いのPMJLで存在感を発揮していくためには、どんなプレーに注目してほしいのかをたずねました。

「薄い所を突いて侵入していくムーブが上手いと思っているので、僕のオーダーをみて欲しいですね。メンバーの中で一番実力があるのはShiroron君だと思っているので、彼の火力にも注目してください」

特徴のあるプレーヤーネームは「ゲームを始めるときにパっと浮かんだ名前」ではありますが、仲間の先頭に立って奮闘する彼のスタイルを体現していると言えるでしょう。そして、「原宿 STREET GAMERS」というチーム名についても、「ゲーマーズというチーム名も珍しいですし、漢字が入るロゴもかっこよくて気に入っています」と語ります。

「これからプロや競技シーンを目指す人に伝えたいのは、とにかく『チャレンジすること』の重要性です。自分も色んなことにチャレンジしてきたと思っています。このメンバーはリーグで一番平均年齢も若いですし経験も少ないので、言い換えれば一番伸びしろがあるんです」

頼もしい仲間たちと共に、PMJLの頂点という「鬼ヶ島」への挑戦が始まっています。