今のeスポーツの王道を描く 「東京トイボクシーズ」

2019年に「月刊コミックバンチ」(新潮社)で連載が始まった「東京トイボクシーズ」(著者:うめ)は、eスポーツを取り巻く最新のシーンをリアルに描いた一作です。

物語の舞台は少子化が進み、生徒の確保に苦戦して名門高校が新設した「eスポーツ科」。主人公は中学時代からプロゲーマーとして活動し、学校に腕を買われてスカウトされた“蓮”と、ゲーマーとしては初心者の“真代”。

eスポーツ科は、入学式で「常識で考えておかしい」「客寄せパンダ」「理解を超えている」と周りからバカにされますが、全校生徒の前で代表挨拶をした蓮は「この場にいる誰よりも稼いでいるのは自分たちだと証明してみせる」と言い放ちます。そんな蓮に感化されながら、真代はゲームにどんどんと打ち込んでいきます。

作中では現在、対戦格闘ゲーム「サムライキッチン」をプレー。どのようなコンボを決めれば、どれくらい相手にダメージを与えられて勝てるのか。主人公らは学校に派遣されたコーチに教わりながら、野球やサッカーと同じく、スポーツ競技者としてどうすれば勝てるのかを分析し、根拠を考えて、実践できるように時間をかけて訓練します。

「東京トイボクシーズ」2巻より

対戦格闘ゲームを描く作品は多くありますが、eスポーツとしての細部までこだわった作品です。ゲーム好きはもちろん、練習量と才能、何が求められるのかを緻密に描いているスポーツマンガとしても楽しめます。そして、かつてはゲームに熱中していた人や、「eスポーツ」という言葉にまだなじみがない人との「ずれ」を埋め、ゲーム世代の架け橋となるでしょう。

作者は「東京トイボックス」や「大東京トイボックス」で、制作者側からゲーム業界を描いたうめさん。「東京トイボクシーズ」は競技者の視点から楽しめますが、「東京トイボックス」や「大東京トイボックス」では、ある意味、競技を作る側としてのクリエイターにスポットが当たっており、対比しながら読み進められます。

メディアを含めた代理戦争やゲーム業界の構造も描かれ、これから周りの人にもどんどんとスポットライトが当たっていくのでしょう。eスポーツの王道マンガとしてオススメです。

黎明期を駆け抜けた元祖「ゲームセンターあらし」

eスポーツマンガの「元祖」とも言える作品があります。まだeスポーツという概念が存在しなかった1979年から1983年に「コロコロコミック」(小学館)で連載された「ゲームセンターあらし」(著者:すがやみつる)です。当時の少年たちの夢が詰まっていると言えます。

「スペースインベーダー」や「パックマン」「ゼビウス」など、当時の実際のゲームが登場し、主人公の少年・あらしがそれらのゲームを使ってライバルたちと対決する内容です(が、物語が進むにつれ、必殺技を使いミサイルを撃墜するような話に展開していきます!)。

「ゲームセンターあらし」より

当時はアーケードゲームが主流のゲーム黎明期。プレーヤーがスコアを競った時代でした。作中では、宙返りしつつマシンを操作する月面宙返り(ムーンサルト)や、摩擦熱で炎が生じるほどの速度でレバーを叩きつけるように動かす「炎のコマ」という必殺技が飛び出す、熱いバトルマンガなのです。

一見、荒唐無稽な内容にも感じますが、特殊なスーツを身につけて動けば実際にゲームの中のキャラクターも連動して動くような仕掛けや、現在のVRとも言える「立体映像ゲームマシーン」など、現代のゲームを予言しているかのようなシーンも登場します。マンガの世界だからこそ、「ゲームでこんなことができたらいいな」という思いが詰まっていて、もしかしたら今後のeスポーツの発展のヒントになるような描写もあるかもしれません。

ちなみに、「恋なんてぶっとばせ」というお話では、「ゲームがうまくても給料がもらえるわけじゃない」とうなだれる少年あらしが描かれているシーンが描かれています。

しかし、2019年に掲載された新作では、eスポーツの大会「ゲームセンターあらしカップ2019」で5000万円という賞金が出る世界が描かれます。当時「あらし」を読んでいた読者からすると、感慨深い内容でしたね。未知への期待を目一杯増幅してくれた作品です。

「ゲームセンターあらし」の「恋なんてぶっとばせ」より

リアルとバーチャルが夢の融合!「プラモ狂四郎」

1982年から「コミックボンボン」(講談社)で連載された「プラモ狂四郎」(著者:クラフト団・やまと虹一)は、「ガンプラブーム」に合わせて始まりました。実際のプラモデルをシミュレーションの仮装世界で戦わせる描写は、対戦ゲームバトルとしてのeスポーツマンガの走りとも言えそうです。

「プラモ狂四郎」でのバトルには「シミュレーションマシン」を使います。まずプラモデルをカプセル内にセットし、そのプラモデルのスケールや種類などの基本的なキット情報や改造ポイントなどをマシンに入力します。

すると、そのデータがシミュレーション空間に反映され、それぞれのプラモデルがまるで実際に戦っているように遊べるのです。シミュレーションの世界でプラモデルにダメージを受けると、実際のプラモデルも傷ついたり破壊されたりしてしまいます。

主人公・京田四郎(狂四郎)や友人らは、ゲームで勝てるように日常のひらめきなどから、プラモデルを改造して足を開けるようにしたり、部品を入れ替えたりなど、モデラーとして邁進していきます。「プラモデルが実際に動いたらいいのに」という子供の夢を描いた作品でしたが、根本はアニメのロボットを動かしたいという動機であったと考えると、今のゲームで実現しています。

アーケードゲーム「戦場の絆」は、まさに同作のシミュレーターを体現できるようなものでもありましたし、なんと狂四郎の「パーフェクトガンダム」が投入されていて胸が熱くなりました。

同作では何より、リアルとバーチャルが連携されたゲームを描いた点が他にはない魅力。今後のeスポーツにおいても、例えば現役のプロサッカーが体を動かしてそれがバーチャルに反映されて戦うなど、フィジカルとeスポーツのシミュレーションがドッキングした仕組みが生まれるかもしれない、と同作を読みながら感じます。

現実がマンガを超える?

かつての少年たちの想像が現実になってきた現代。eスポーツはこれからも様々な可能性があるのでしょう。現実がマンガの世界を超えていく時代が楽しみです。

(文:山内康裕、構成:松尾奈々絵/マンガナイト)

【著者紹介】山内 康裕

やまうち・やすひろ 1979年生。法政大学大学院イノベーションマネジメント研究科修了後、税理士を経て、マンガを介したコミュ二ケーションを生み出すユニット「マンガナイト」(@MANGANIGHT_)を結成。2020年に法人化し「これも学習マンガだ!」事業(日本財団助成)を推進。また、マンガ関連の企画会社「レインボーバード合同会社」にて、“マンガ”を軸に施設・展示・販促・商品等のコンテンツプロデュース・キュレーション・プランニング業務等を提供している。

初めて手に入れたゲームは、抱き合わせ商法で売っていた「バトルシティー」と「ハイパーオリンピック」。だが「ハイパーオリンピック」は専用コントローラーがなかったため遊ぶことができなかった。一番ハマったのは「ドラクエ3」。