皆さんはセガの「電脳戦機バーチャロン」というゲームをご存じでしょうか? 「ロボットゲームは売れない」と言われた1990年代半ば、アーケードに颯爽と登場した巨大ロボット(バーチャロイド)を操作して戦う対戦アクションゲームです。

専用筐体に備えられた二つの操縦桿「ツインスティック」を使う直感的な操作と、スピーディーかつ対戦相手の動きを読みあう奥深いゲーム性が熱狂的なファンを生んだ人気シリーズで、現在も多くの「チャロナー=(バーチャロン愛好家)」に愛され続けています。

このゲームの腕前を競うタニタ主催のeスポーツ大会「電脳戦機バーチャロン マスターピース 1995~2001 TANITA CUP 2021」を1月23日と24日の2日間、オンラインで開催しました。実施種目はセガのPlayStation4用ゲームソフト「電脳戦機バーチャロン マスターピース 1995~2001」に収録されている「電脳戦機バーチャロン」(シリーズ第1作、略称:OMG)、「電脳戦機バーチャロン オラトリオ・タングラム ver.5.66」(シリーズ第2作、略称:オラタン)、「電脳戦機バーチャロン フォース」(シリーズ第3作、略称:フォース)の3タイトルです。

3種目合計で延べ434人のプレーヤーがエントリーし、2日間にわたって熱戦を繰り広げました。「バーチャロン」シリーズのプロデューサー・亙重郎さんが自ら「アクション詰将棋」と形容する本シリーズ。歴戦のエースパイロットたちによる二手、三手先を読み合う高度な駆け引き、紙一重で攻撃をかわして反撃に転じるスーパープレーの数々に、実況席からは「背中に目が付いている?」「ニュータイプか!?」といった驚嘆の声が飛び出しました。熱き戦いに沸いた2日間をリポートします。

ツインスティック×タニタの深い関係

延べ434人の選手がベスト8を目指した予選の模様

なぜタニタがeスポーツの大会を開催するのか、不思議に思われる方も多いと思います。リポートの前に、その理由を説明します。

タニタは2018年から2019年にかけて、「バーチャロン」シリーズの最新作となる「電脳戦機バーチャロン×とある魔術の禁書目録 とある魔術の電脳戦機(バーチャロン)」に対応したコントローラーの商品化を目指した「タニタ・ツインスティックプロジェクト」に取り組みました。15年ぶりに発売される新作でしたが、このゲームをアーケードと同様の感覚で楽しむために不可欠なデバイス「ツインスティック」は発売されませんでした。

それを聞いたタニタ社長の谷田千里は、自身が大の「バーチャロン」ファンということもあり、このプロジェクトを始動。プロジェクトリーダーとして白羽の矢が立ったのは、「バーチャロン」はおろかゲーム自体に対してほぼ丸腰という新事業企画推進部の久保彬子でした。

右も左も分からない状態でのスタートでしたが、亙プロデューサーのアドバイスを受けたり、ファンの声を聞いたりしながらプロジェクトを進行。クラウドファンディング(CF)で資金を募り合算で総額1億3648万2258円の支援を集めて商品化を実現しました。

2020年4月には一般販売も行っています。本プロジェクトを応援してくれた「チャロナー」の皆さんに「バーチャロン」を思いっきり楽しんでほしい、との思いから、プロジェクトの集大成として今回の大会開催を決定しました。開催に当たっては、タニタが本社を置く板橋区の後援をはじめ、区内の企業・学校を中心に多くの協賛・協力をいただきました。

予選から高度なテクニックが連発したDAY1

DAY2の実況席に座るス丸さん(左から)、396さん、アレックスさん、瓦プロデューサー、社長の谷田

DAY1となる23日は、3種目の予選が行われました。実況はス丸さん、解説は396さん(OMG、オラタン)、アレックスさん(フォース)ら著名プレーヤーが担当。素人目には何が起きているのか分からないエース同士の駆け引き、高度なテクニックを分かりやすく解説し、大会を盛り上げます。

最初に行われたOMGの予選は、同タイトルがアーケードで稼働したのが1995年ということもあり、古参のプレーヤーから、20年ぶりにプレーするというリターン組が入り交じり激戦を繰り広げました。「当時、3D空間を自由に動いて戦えるこのゲームは画期的だった」(396さん)との言葉通り、どのプレーヤーもバーチャロイドを手足のように操り、3D空間のフィールドを自在に駆け抜けます。

オラタンの予選は、優勝候補と目されていた著名プレーヤーが敗退するなど、波乱の展開となりました。実況席で観戦していた谷田は、「人間がやるからこその面白さですね。リアルの競技と一緒で、(プレーヤーが)緊張したり、運不運があったりする」とコメント。また、ちゃっかりエントリーしていたツインスティックプロジェクトの久保は、ベテランプレーヤーに「わからん殺し」をされてしまい、「よく分からないまま終わってしまいました」と一言。

2on2のチームバトルとなるフォースはチームワークがカギです。これを発揮できたチームが決勝トーナメントへと進みました。一見鈍重に見える戦車タイプのバーチャロイド「Tetsuo」を巧みに操るチームが勝ち進んだのが印象的でした。

「DAY1」のアーカイブ

社長vsプロデューサー対決で幕を開けたDAY2

瓦プロデューサー(左)と社長の谷田の対戦

DAY2となる24日は、実況席に亙プロデューサーが登場します。「フォースを2on2にしたのは、1on1はオラタンでやりたいことをやり尽くしたから……」など、バーチャロンシリーズの開発にまつわる裏話も飛び出し、大会に花を添えます。

この日はエキシビションマッチからスタート。亙プロデューサーと谷田のオラタンによるスペシャルマッチも組まれました。

2018年に行ったセガ対タニタの企業対抗バーチャロン大会では、谷田が亙プロデューサーと対戦し、勝利を収めています。今回、亙プロデューサーは主役機「テムジン」をセレクト。対する谷田はイロモノ機体と呼ばれる「バル・バドス」で迎え撃ちます。

【エキシビション】亙プロデューサーの大技「ブルースライダー」が社長の谷田を襲う

第1セット、ファーストヒットは谷田が取ります。谷田は「バル・バドス」の特徴である無線誘導兵器ERL(イジェクタブル・リモート・ランチャー)を繰り出し、死角からの攻撃を狙います。ガンダムでいうところのファンネルのようなロマン兵器ですが、谷田が使い慣れていない機体(なぜこの機体を選んだ?)ということもあり、なかなかヒットに至りません。その後、亙プロデューサーの着実な攻撃に徐々に追い詰められていきます。

ダッシュで距離を取る谷田とそれを追う亙プロデューサー。最後は威力の高い近接攻撃がヒットし、亙プロデューサーが第1セットを制します。

第2セットは、谷田がトリッキーな動きで弾幕を展開するものの、それを巧みにかわし、反撃に転じる亙プロデューサー。さすがは開発者の貫禄です。残り時間3秒のところでテムジンの攻撃がヒットし、亙プロデューサーのストレート勝ちが決まりました。

谷田は「亙さんのセッティングを盗んで再戦したい」とコメント。これに対し前回の雪辱を果たした亙プロデューサーは、「バルは深い機体なので続けてプレーされて、またお手合わせしたい」と返し、再戦を誓いました。

実力伯仲の決勝トーナメント

【OMG決勝】怒涛の猛攻でKGT選手を追い詰めるむっちりを越えた存在選手

決勝トーナメントは3種目とも2敗するまでは優勝のチャンスがあるダブルイリミネーション方式で行われました。「一度傷を負ったものの戦いは迫力があってかっこいい」と語る亙プロデューサーの発案です。

OMG決勝

OMGの決勝戦は、むっちりを越えた存在選手の「ドルカス」対KGT選手の「テムジン」。第1セット、先手を取ったのはむっちりを越えた存在選手。KGT選手もその後の攻撃をギリギリでかわし、着実にヒットを重ねます。壁越しの攻防を経て、第1セットはKGT選手が制します。

第2セットはお互いの読み合いが続き、両者攻撃をかわし続けます。しかし、距離を取り、自身のペースに持ち込んだむっちりを越えた存在選手が、徐々にKGT選手を追い詰め、タイムアップで逃げ切ります。

そして、ファイナルとなる第3セット。第2セットを取ったことで気合が入ったのか、むっちりを越えた存在選手の猛攻がKGT選手を襲います。そのまま、終始自身のペースで試合を進め、むっちりを越えた存在選手が優勝を決めました。

亙プロデューサーは、「(敗れたものの)KGT選手の弾幕の避け方が的確で、すばらしかった」と称賛。谷田も「まさにニュータイプ」と驚きの声をあげました。もちろん、そのKGT選手を制したむっちりを越えた存在選手の技量の高さは言うまでもありません。

フォース決勝

続いて行われたフォースの決勝トーナメント。決勝戦はルーザーラウンドから勝ち上がってきた「テツオEvolution」チーム(機体はTetsuo、Tetsuo)対「サーフィング勇者様」チーム(機体はライデン512A、テムジン747A)。予選でも存在感を放った戦車タイプのTetsuoペアと二足歩行機体ペアとの戦いです。

ファーストヒットは「サーフィング勇者様」チームが取りますが、お互いにカバーしながら砲撃をしかける「テツオEvolution」チームが着実にヒットを重ね、ライデン512Aをダウンさせます。テムジン747Aがレスキューをかけるものの、追撃の手を緩めない「テツオEvolution」チームがタイムアップで逃げ切り、第1セットを制します。

王手をかけた「テツオEvolution」チームと何とか取り返していきたい「サーフィング勇者様」チーム。第2セット、「サーフィング勇者様」チームは協力してリーダー機を狙います。フォースは、チームのライフ合計値で勝敗が決まりますが、リーダー機が撃墜されるとその時点で負けとなるルール。テムジン747Aの猛攻がリーダー機のTetsuoを襲います。

防戦一方に追い詰められ、ライフを削られていくリーダー機のTetsuo。しかし、パートナーの砲撃により、「サーフィング勇者様」チームのライフも減らされていきます。残りカウントが7秒を切っても、勝負の行方は分かりません。最後は、レスキューダッシュを活用したテクニックで「テツオEvolution」チームが逃げ切り、優勝を決めました。

【フォース決勝】最後まで勝負が見えない戦車対二足歩行の戦い

オラタン決勝

最後を飾るのはオラタンの決勝トーナメントです。決勝戦に進んだのはよしたけ選手の「テムジン」とおろしそば選手の「ライデン」。ルーザーラウンドから進んだおろしそば選手が、それまで無敗だったよしたけ選手に土を付け、両者1勝1敗の状態でファイナルラウンドに挑みます。

ステージは大きな障害物が特徴の「スペースドック」。「この二人にステージの差はあるのか?」(ス丸さん)というほど実力が拮抗する両選手。第1セット、序盤は互角の戦いが続きますが、よしたけ選手の「ダッ近」(ダッシュ近接攻撃)がヒットし、流れが変わります。

お互いの弾道を読み合う攻防が続く中、おろしそば選手の着地硬直を見逃さず、すかさずヒットを取るよしたけ選手。終始冷静な立ち回りを見せたよしたけ選手が、第1セットを制します。

続く第2セット、序盤はお互いの攻撃を巧みにかわし、両者ともになかなかヒットが取れません。今回はよしたけ選手のミスを見逃さないおろしそば選手。「前スラバズ」(前ダッシュスライディングバズーカ)に引っかかってしまったよしたけ選手に追い打ち攻撃を重ね、流れを引き寄せます。最後はおろしそば選手のしゃがみ近接センターが決め手となり、おろしそば選手が取り返します。「しゃがみレーザーが(近接センターに)化けて出ちゃった」(アレックスさん)ようですが、運を引き寄せるのもまた実力です。

そして、泣いても笑っても最後となる第3セット。序盤から、おろしそば選手の「ダッ近」に対し、神がかった操作でガードを決めるよしたけ選手。鮮やかな動きに実況席から「噓でしょ!?」と驚きの声が上がります。さらに、よしたけ選手は大技「ブルースライダー」で反撃。魅せるプレーを連発します。その後、お互いの攻撃を紙一重でかわす「決勝にふさわしい見ごたえのある展開」(アレックスさん)が続きますが、最後はよしたけ選手の攻撃がヒット、優勝を決めました。

「DAY2」のアーカイブ

ゲームは遊ぶことで完成するコミュニケーション

2日間にわたる激闘は、こうして幕を閉じました。閉会にあたり、久保が「ツインスティックプロジェクトから始まって、eスポーツの大会が開けるまでになるとは思いもよらなかったです。2022年、2023年と次につなげたいと思います。そして、次こそは1勝したいです」と話し、次回大会開催への意欲を見せました。

亙プロデューサーは「20年近く経ったゲームですが、今もプレーがアップデートされ、ハイレベルな戦いが行われているのは感慨深く、プレーヤーの皆さんには感謝しかありません」とあいさつ。そして、「ゲームは作り手のものではなく、プレーヤーが遊ぶことで完成するコミュニケーションの場だという思いを新たにしました」と語りました。

そして、谷田が「(eスポーツの)大会を盛り上げるためには新規ユーザーの獲得が重要です。玄人が集まると、どうしても専門用語が並んでしまいます。これを初心者が分かるように解説しながら、新規ユーザーを増やし、今後の開催につなげたい」と大会を締めくくりました。

(タニタ広報課・冨増俊介)