群馬発のeスポーツ大会「U19eスポーツ選手権」(U19選手権)が2020年11月に開かれました。決勝は群馬県高崎市の「Gメッセ群馬」が会場となり、盛り上がりを見せました。主催は県などでつくる実行委員会です。その群馬県には2020年、全国初となるeスポーツの名が付く課として「eスポーツ・新コンテンツ創出課」が誕生しています。狙いや今後のビジョンを齊藤義之課長に聞きました。

ブランド向上を期して

群馬県eスポーツ・新コンテンツ創出課の齊藤義之課長

――なぜ「eスポーツ」と名のつく課を設けたのでしょうか。

群馬県は豊かで住みやすい地域ですが、その良さが知られていないと感じています。県としては、新しい産業の創出や県のブランド力向上に取り組む必要がありました。これからの群馬県を長い目で見て、もっと素敵な地域にしていきたいと考えました。

eスポーツは成長産業とも言われています。何らかの課題に対する「対策」ではなく、前向きな施策として、若者たちが注目し、多くの方々が楽しめるコンテンツであるeスポーツに本腰を入れて推進していく、という考えによるものです。

――県民の間では、eスポーツ自体の注目度はいかがでしょうか。

障害者向けのeスポーツ大会を開いた企業もあり、一定の知名度はありましたが、全体としてはまだまだです。だからこそ、eスポーツの良さをまちづくりやひとづくり、仕事づくりに活用したい、という狙いがあります。教育面でも役立つと思います。eスポーツの文化が定着すれば、「eスポーツカフェ」なども増えるでしょう。もっとeスポーツが県内に広がる土壌づくりをしたいと考えています。

チーム戦が生む社会性に期待

U19eスポーツ選手権の会場の様子

――eスポーツで「ひとづくり」とは、どのような観点でしょうか?

我々は、子どものころは空き地で野球をやっていた世代です。知らず知らずのうちに人間関係のあり方を学び、社会性が生まれていったと思います。

eスポーツはチームを組んでプレーするタイトルもあります。U19選手権で採用したリーグ・オブ・レジェンド(LoL)は5対5のチーム戦なので、自分の役割を考えないと勝てません。コミュニケーション能力やリーダーシップ、論理的思考を育むことにも貢献できると考えています。

――教育にはどのような効果が考えられますか?

ICT人材の育成につながります。LoLはパソコン向けゲームタイトルです。パソコンそのものに興味を持つにはとても良いきっかけですし、パソコン関連の最新情報にも関心が高まります。

また、プログラミング教育が学校で始まっています。ソースコードをただ写すだけではなく、「ゲームを作り、対戦しよう」ということも含めて取り組むことで、子どもたちの表情が変わるでしょう。

「群馬に行こう」の声も U19選手権に手応え

U19eスポーツ選手権の会場となったGメッセ群馬

――U19選手権は、2020年の高校対抗eスポーツ大会「STAGE:0」で優勝、準優勝を経験したメンバーが決勝に進むなど、ハイレベルな戦いになりました。

注目を集めることにつながったと感じています。今回はオリンピックやU19のサッカーの枠組みなども参考にして企画しましたが、出場の条件にあたって高校の枠を外しました。

「高校代表」として大会に出ることには、学校との折り合いが付かないケースもあると聞いています。eスポーツに対する理解もだんだん進んでいますが、まだハードルがあるので、自由にチームを組めることにはメリットがあると考えました。

さらに、高校の枠を取ると「最強チーム」ができるだろうと思いました。その素晴らしさを実感して頂きたいと思いました。結果として、そうなったのはとても良かったです。

――群馬県内からの参加もありました。

県内の公立高校の生徒たちがチームを組んで出場しました。メンバーの半分ぐらいは未経験だったのですが、短い時間で準備して臨んでいました。初戦負けとなり、実力差は確かにあったのですが、お互いに声を掛け合い、最後まであきらめずに取り組んでいたと思います。

先生からは、リーダー役だった生徒に対して、「あのようにリーダーシップを取れるとは。新しい側面を見ました」という声を聞きました。eスポーツが持つ可能性を感じた場面です。

――U19選手権は続けていくのでしょうか?

大会に合わせて、「群馬に行く」という声が参加者からも上がったことはうれしかったです。

若者たちの憧れの地となる第一歩を踏み出せたと思います。「甲子園に行く」「花園に行く」と同じように今回の会場となった「Gメッセに行くぞ」「群馬に行くぞ」と、eスポーツの聖地、若者の憧れの地になることを願っています。甲子園も最初から聖地だったわけではなくて、それをめざすようになったからこそ、子どもたちの憧れになったのです。

「何か」×「eスポーツ」で描く未来

――今後のeスポーツに対する施策はどんな展望を描いていますか?

私たちの取り組みは、eスポーツ自体が目的ではないのです。eスポーツによって、「何か」をしていきたいと思っています。「何か」×「eスポーツ」です。性別や身体的能力が関係ない特性を持っているので、様々な面に活用できると考えています。

――eスポーツを「素材」にするという考え方ですね。

いやいやではなく、自然と人が集まってくる空き地の野球のように、みんなが楽しんでくれるからこそ、eスポーツは無理をせずに活用できます。eスポーツを手がかり、足がかりにすると皆さんのハードルが下がると感じています。行政が何かの取り組みをしたいと考えて提案しても、なかなか思うように県民が関心を示して頂けません。そこでeスポーツを使うことでリーチできるようになると思っています。

――eスポーツを通じて人を呼び込むことも狙っていますか?

U19選手権の開催は、その直接の目的ではありません。群馬を訪れる人を増やすには、街なかや観光地で開くeスポーツイベントが考えられます。「群馬にそんな良いところがあるとは知らなかった」と、群馬に目を向けてもらうことができれば、交流人口は増えると思います。ただ、今後はU19選手権を通じてGメッセ群馬がeスポーツの「メッカ」になり、文化に根付くことで群馬に注目してもらう、というストーリーは描いています。

――国際大会の開催も視野にありますか?

U19選手権は「日本一のチーム」ができた形になりました。世界も夢にはありますが、まずは海外の皆さんと交流が持てれば、と思います。サッカーや野球にU19の日本代表があるように、eスポーツも同じような夢を持ちたいです。

(聞き手・金子元希)

U19eスポーツ選手権実行委員会提供 目的外再利用時確認 関連記事内はOK
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