新型コロナウイルスの感染拡大を受けて発令された二度の緊急事態宣言により、多くのゲーム関連施設が苦しんでいる。大阪府吹田市にある国内最大級のeスポーツ施設「REDEE」もその例外ではない。

常設258席のアリーナなどeスポーツ向けエリアを設けているだけでなく、プログラミングを通じて子どもの論理的思考を養う教育施設としての側面もある「エデュテイメント」をコンセプトにしたREDEE。eスポーツを取り扱う施設としては異例の規模であり、ゲームファンのみならずテレビに取り上げられるなど各地で話題になった。

しかし、昨年3月1日にオープンしたそのわずか2週間後に一時的な休業を余儀なくされ、オープニングセレモニーも兼ねた「ウェルプレイドフェスティバル Osaka Edition」も中止となり、最悪の出だしとなってしまう。5月から感染対策を徹底した上で辛うじて営業を再開した中、施設としても精一杯の工夫をこらして客を呼び込んだ。

「今何ができるか」を考えた末のオンライン大会

大会の名シーンを自分なりに実況・解説できる「実況者体験エリア」

REDEEのマネージャー、古川さんはREDEEが歩んできたこの1年をこう振り返る。

「オープンして2週間で休業となったのはさすがに大変でしたが、この期間で反省するべき点はたくさん見つけられましたし、60人以上のスタッフもいる手前、『すぐ収まるはず』と5月25日の営業再開まで勇気づけたんです。営業再開からも施設のレイアウトを見直し、新しいゲームタイトルを使うためにゲーム会社さんと許諾の交渉もしました。SNSで認知を拡大する方法を考える一方、地元新聞やローカル番組の取材もあったおかげで夏休みごろには1日300人近くお客さんに来ていただきました。ただ冬頃から新型コロナウイルスが再び拡大を始め、緊急事態宣言が出るとまた苦しくなりましたね」

再び緊急事態宣言が発令されてからというもの、REDEEのあるららぽーとEXPOCITY全体で15時頃から人通りが大きく減り、REDEEへの客入りが1桁に留まる日もあった。そのうえ緊急事態宣言下における飲食店に対しては、営業自粛による損失を補填するため1日6万円の補償金が出るが、REDEEを含めた映画館やゲームセンターなどの娯楽施設には一切の補填がない。古川さんは「(緊急事態宣言は)自分たちにとってマイナスしかないのは事実」と話す。だが、このような逆境においてもREDEEには希望があった。REDEEの運営責任者である中道さんは、「政府に休業を強制されているわけでない。自分たちも感染防止を徹底しつつ、今何ができるかを考えていくしかない」と話す。

この状況でREDEEが11月から始めたのが、オンラインで開催するゲーム大会だ。緊急事態宣言下で直接REDEEに集まってもらうことは難しいが、せめてオンライン上でもお客さんに楽しんで欲しいとの思いで、ゲーマーが競い合える場所をオンライン上に新しく用意した。

オンライン配信スタジオの様子

幸い、REDEEにはプロのキャスターが実況するための放送席があり、オンライン大会の運営をこなせるベテランのスタッフも揃っている。ただ「直接REDEEに来てもらわなければ利益にはならないのではないか」という疑問に対し、古川さんはこう答えた。

「そもそもオンライン大会の企画は、バイトで働いている学生たちが率先して作ったものなんです。直接お金にならなくても、ゲームを愛する人たちのコミュニティーが存続すること自体、僕たちにとって大切なことだと考えています」

地域に、家庭に、人間に寄り添えるゲーム施設を目指して

REDEEにはプログラミング体験エリアも設置されている

「オープンして一番記憶に残っている出来事として、夏休みの頃、『ストリートファイターV』のオフライン大会を開いた時に4人の小学生のお子さんに来ていただいたことがあります。初心者だったので早々に敗退してしまったんですが、あまりに悔しかったのか泣いてしまい、それからはウチのスタッフと猛練習して、大人にも勝てるようになったんです。もともと格闘ゲーム自体、歴史が長く大人の多いゲームジャンル。その魅力を小学生に理解してもらえた上に、保護者の方々からも感謝の言葉をいただけました。REDEEにしかできないことだったと思います」(古川さん)

去年香川県ネット・ゲーム依存症対策条例が成立したように、まだまだ上の世代からは理解の得られづらいゲーム文化。REDEEの目的はエンターテインメントと教育の両面を持つことで、親世代に対してゲーム並びにeスポーツの安全性を理解してもらうことにもあるという。大人、子ども、そしてゲームファン、あらゆるコミュニティーに対してゲームを通じた「居場所」を作っていくことで相互の理解を促す。それはオンラインでも作ることができると古川さん、中道さんは前向きに考えている。

「いつかはREDEEがプロから初心者までeスポーツを楽しめる聖地として認知されたいという目標があります。そこにたどり着くまでに足場が崩れてしまうんじゃないかという恐怖がないといえば嘘になりますが、とにかく自分たちにできることを精一杯やっていこうと思います」

古川速人(ふるかわ・はやと)

2012年、同志社大学商学部卒業後、地元の銀行に入行。ホームローンの営業を担当後、2014年に株式会社セブン-イレブン・ジャパンに入社。オーナーの経営コンサルティングを行うSV業務を担当後、2020年、REDEEを運営するレッドホースコーポレーション株式会社に入社。現在はREDEE館長代理を務める。

中道裕馬(なかみち・ゆうま)

高校卒業後、 2007年に株式会社かんでんCSフォーラムに入社。 コンタクトセンターのマネジメントを経て、 マーケティング業務に従事する。REDEEの設立と共にウェルプレイド(現・ウェルプレイド・ ライゼスト株式会社)に入社。 REDEE内ゲーム系コンテンツの運用責任者を務める。