野球に打ち込んだ小中学生時代

――ゲーム歴はいつからでしょうか。

12年ほどです。小さい頃は父親がやっていたパワプロやサッカーゲーム「ウイニングイレブン」を眺めていることが多かったと思います。父親と対戦することもありましたが、小学生の時は野球もやっていたのでそこまでゲームをする時間はありませんでした。小学生の頃はスーパーマリオやポケモンなど有名なゲームに触れ、中学生の頃はスマホのゲームやスプラトゥーンをプレーしていました。

――野球を始めたきっかけは何ですか。

父親の草野球に連れて行ってもらったことがきっかけで、小学4年の秋までは軟式野球、4年秋からはボーイズリーグで硬式野球をしていました。ボーイズリーグに入ってからの目標は全国大会優勝でした。結果としてはベスト8で終わってしまいましたが、とてもいい経験でした。守備は基本はセンターとセカンド。土日と祝日が練習や試合、平日も自宅で自主練習をしていました。

野球からは人と関わる時のマナー(挨拶や言葉遣いなど)を学びました。毎日継続する大切さも今のプロプレーヤーとしての活動につながっていると思います。

中学生になると、親の仕事の都合でタイに移住。タイ代表としてもプレーした。

――タイではどのような経験が印象に残っていますか。

日本人が立ち上げた「バンコクサンダース」という少年硬式野球クラブチームに入りました。入団してすぐ、2015年7月に中国・桂林で行われる「Little League ASIA PACIFIC&MIDDLE EAST Tournament」の選考会があり、代表に選ばれました。

1番や2番打者として出場し、ピッチャー、セカンド、ショート、センターといったセンターラインを守りました。結果はアジア予選のグループ予選で敗れてしまいましたが、チームには日本人やタイ人、アメリカ人と色んな国籍の選手が所属していて、異なった文化を持つ仲間と同じ野球をして勝利を目指すということができたのはいい思い出になりました。

新たな挑戦の場として選んだeスポーツ

今季のセ・パe交流戦で勝利を収め、インタビューに答える柳虎士郎選手

――本格的にゲームに打ち込んだのはいつからですか。

大会などに出よう、そのために上手くなろうと思ってゲームをやり始めたのは高校からです。高校では野球部には入りませんでした。中学時代を海外で過ごしていたこともあり、日本の野球についていける自信が無かったのと、体格も小さいまま成長が止まってしまったので厳しいかなという思いがあったんです。また、高校では別のことにもチャレンジしてみようという思いもありました。

高校2年だった2019年8月、「eBASEBALL全国中学高校生大会」で優勝した。

――全国大会はどんな印象が残っていますか。

試合中のことはあまり覚えていないのですが、優勝した瞬間はシンプルに嬉しかったというのが正直な気持ちです。また負けている場面から逆転しての優勝だったので逆境には強くなったのかなと思います。

――大会直後、ロッテから指名されました。指名の瞬間はどんな気分でしたか。

自分は最終の4巡目で指名を頂き、指名されないのではないかというドキドキの中だったので、プロになることができて安心したという気持ちと指名をいただけて嬉しいという気持ちの両方でした。

――家族はどのように応援してくれましたか。

うちの家族は、基本的には僕がやりたいと言ったことを尊重してくれる家族なんです。中高生大会に出たいという話をしたら、「いいんじゃないの」と応援してくれました。ちょうどeスポーツも言葉としても広まってきていたのもあったと思います。

結果を残してプロになった後も、家族は会場に応援に来てくれます。テレビゲームをあまりやらない母も、僕がやりたいということを尊重してくれています。母の兄が甲子園に出ていたり、父もその母の兄とバッテリーを組んで草野球をやっていたりして野球一家なので、僕のプレーも楽しんで見てくれていると思います。

子どもの頃は「ゲームは1日30分」

eBASEBALL 千葉ロッテ 柳虎士郎
チームメイトと試合に臨む昨季の柳虎士郎選手

――これまでゲームと学業をどう両立してきましたか。

小学生の時は、家がゲームは1日30分までという方針で、あまり長くやり過ぎると怒られていました。中学ではゲームの時間は決められていなかったんですが、2年まではずっと野球、引退後は受験勉強という感じだったのでなかなかゲームをやる時間はなかったんです。

――高校で大会を目指すようになり、取り組み方は変わりましたか。

高校でも、プロになるまではプレー時間は基本的に1日2時間くらいだと思います。そこまで長くやっても集中力が続かないので短い時間で集中してやっていました。「ゲームをやる」というよりは、「うまくなりたい」が第一にありました。

楽しむという意識ももちろんあって、うまくなることで勝つ楽しさを覚えて、またうまくなろうというループですかね。自分がやってきた野球に似ているのかなと思いますし、「eBASEBALLプロリーグ」も一つのスポーツだと思いますね。

大学入試で経験をアピール

今季のセ・パe交流戦で「確定ホームラン」を放ち、喜ぶ柳虎士郎選手

――学業とはどう両立していましたか。

正直、高校では勉強の成績はそこまで良くなかったんです。今年は高校3年生なので受験の年なのですが、プロリーグの時期が大学入学共通テストと重なる心配があったので、AO入試を使いました。AO入試の課外活動重視型では、eBASEBALLプロリーグの経験をアピールしました。

――どのようにアピールしたんでしょうか。

単純にeスポーツをやってきたことだけを押し出しても足りないと思ったので、「eスポーツをやってきたから、将来的にどんなことをしたいと考えたか」と話しました。

eスポーツのプレーヤーを続けていきたいことも大前提にあるのですが、イベントの運営側としてもeスポーツに携わりたいと話しました。マーケティングを学ぶことでeスポーツのイベントにつながっていくと思って経営学部を志望し、無事合格できました。

――プロプレーヤーだけではない、その先まで見据えているんですね。

何らかの形でeスポーツに携わりたいです。せっかく今こうしてプロとしてやらせてもらっているので、何らかの形でeスポーツを発展させていきたいと思っています。将来の面でもチームの選手からはアドバイスをもらいました。

好きなeスポーツを広める活動をしたい

――以前は将来の夢はありましたか。 

それまでは何もなかったというのが正直なところで、漠然と高校に行って大学に行って、どこかしらの企業入って……ということしか考えていなかったです。高校1年の冬にeBASEBALLに出会ってプロになったことで、将来のことをしっかり考えるようになりました。

――大学で学びたいと思えるようになったのはeスポーツに出会ったからですか。

間違いなくそうですね、eスポーツの活動を通してです。

――eスポーツの現状はどう感じていますか。

eスポーツの認知度は少しずつ高まってきていると思います。しかし、多くの方々に受け入れてもらえているかというとまだまだだと思っていて、もっと盛り上がってもいい。

eBASEBALLプロリーグに限って言うと、まだお客さんの数が少なく、見てくださる方もそんなに多いわけではない。パワプロには競技性があり、対戦は見てても面白いし、やっても面白いということを伝えていきたいと思います。ゲームは盛り上がれるんだ、というのを伝えていくことでもっと発展していくと思ってはいます。

――これからeスポーツとどう関わっていきたいと考えていますか。

プレーヤーとしてはできる限り続けたいです。長く続けていけるようにeBASEBALLプロリーグを皆さんに知ってもらいたい。そのために、まずは日本にeスポーツを定着させたいというのが一番の思いです。eスポーツが僕の人生を変えてくれたと思うので、恩返しという面でも、自分が好きなeスポーツをもっと広めていきたいという思いはあります。

――どんな取り組みをしますか。

今年からは動画も出していきたいと思います。対戦の動画なのか、競技として選手の起用法なのか、どういう動画になるかはまだわからないですけど、少しでもこの競技を知ってもらうために、自分から情報を発信していきたいと思います。

(坂東慎一郎)

柳虎士郎

やなぎ・こじろう 2002年、埼玉県生まれ。「eBASEBALL プロリーグ」千葉ロッテマリーンズ代表選手。ゲーム歴は約12年。小学校から実際の野球を始め、中学生時代は当時住んでいたタイ代表としてもプレー。高校から本格的にパワプロに打ち込み、2年生だった2019年夏の「eBASEBALL全国中学高校生大会」で優勝。同年9月の「eドラフト会議」で千葉ロッテマリーンズから指名を受けてプロデビューした。

ツイッター:https://twitter.com/pawaspt_yusa

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eBASEBALL プロリーグ公式サイト https://e-baseball.konami.net/pawa_proleague/