皆さんこんにちは、なおや(@noy_0207)と申します。生まれつきの全盲の26歳男子です。

2020年11月22日、「第1回 ePARA CHAMPIONSHIP」の格闘ゲーム部門として「鉄拳7(Steam版)」で競う大会が開かれ、プレーヤーとして参加しました。「盲目の戦士」としてニュースやSNSで多くの声をいただきました。ライブ配信を視聴された方だけでなく、ニュースにも注目していただいた皆様、ありがとうございます。

そこで、大会への参加を通して私が感じたパラeスポーツの競技としての可能性と、コミュニケーションツールとしての可能性についてまとめました。

画面が見えないプレーヤーをどう支える?

第1回 ePARA CHAMPIONSHIP

まず、大会参加にあたって、私のチーム「Team-ePARA」でどんな態勢で臨んだのかについて説明します。

画面を見ることができない全盲プレーヤーの参戦にあたり、チーム内ではプレーヤーが見えないことを補って陰で支えるサポーターがつくことになりました。

サポーターの役割は(1)ゲーム操作のサポート(2)各使用キャラクターが使える技やコンボの確認と方法の伝授(3)対戦中に必要な情報の伝達、など多岐にわたります。プレーヤーとサポーターのコミュニケーションは全てオンラインで行いました。

ただ、私はメンバーの誰ともオフラインで会ったことがありません。事前練習から当日まで、基本的な連絡はLINEで行い、プレー中やミーティングが必要なときはDiscordのボイスチャットを使用しました。プレーヤーはDiscordのGo Live(画面共有機能)を用いてゲーム画面を共有し、サポーターは共有された画面を確認しながら、プレーヤーに指示をしていきます。

サポーターの役割(1)ゲーム操作のサポート

プレーヤーとサポーターがオンライン接続である以上、戦うときだけプレーヤーがコントローラーを握るというわけにはいきません。全盲であっても、入室を含めたゲーム操作をプレーヤーが行う必要があります。

そこで、前述の方法で画面を確認しているサポーターが、必要なボタン操作をプレーヤーに伝えます。Steam版の鉄拳7はパッドでの操作に対応しているため、指示はシンプルに「下1決定(下キーを1回押してから決定ボタンを押す)」などで進行していきました。

このやり方は定着して、ある時からはチーム内で「誘導」という用語が使われるようになりました。慣れたころには「対戦画面に誘導をお願いします」で通じました。練習期間を通して、プレーヤーとサポーターの絆は確実に深まりました。

開始画面。まずは全盲プレーヤーをここまで「誘導」することが大切

サポーターの役割(2)キャラクターの技とコンボへの助言

鉄拳7では、各キャラクターが持つ多種多様な攻撃を使って戦います。そうした攻撃にはそれぞれコマンドが用意されています。コマンドはボタンを順番に押すタイプや、同時にいくつものボタンを押すタイプなど様々です。コマンド練習機能を含め、その情報を全盲の私たちが把握することは困難でした。

そこで、有効なコマンドのリサーチをサポーターが行い、プレーヤーに伝授。そのあと、教えられたコマンドを使いこなせるまで、プラクティスモードでそろって練習をしました。

サポーターの役割(3)対戦中の助言

鉄拳7では、自分と相手の距離やサイドといった位置関係が攻撃に大きな影響を与えます。しかし、位置関係を音だけで把握するのは難しく、特定の攻撃が決まるとサイドが逆転することもあります。そこで、自分と敵のサイドが入れ替わったとき、相手との距離が離れているときはサポーターが声をかけるようにしました。しかし、最終的には対戦中の助言は見送ることになりました。その理由は後述します。

反復と実践の自主練習

なおやさんが本番で使用した重量キャラ「ギース・ハワード」

サポーターが付きましたが、チーム全員が普段は自分の仕事やプライベートと両立して参加しているため、一人で練習をする時間が大半でした。そこで、自主練習では「反復」と「実践」を大事にしました。

技やコンボをサポーターから教えられ、その場で一緒に確認したとはいえ、中にはボタンを押すタイミングが重要なものもあります。幸いにも技が決まると音で確認できるため、感覚を忘れないように一人の時間で何度も攻撃練習を行いました。

大会前には、鉄拳のプロプレーヤーであり、公式大会での優勝経験もあるS.H.O.Wさん(@ShowYama)に何度かコーチングいただきました。そこで学んだレイジアーツのタイミングや、上段下段を散らしたコンボなどの反復練習にも時間を費やしました。

eスポーツの利点は、オンラインで気軽に対人戦ができることだと思います。オンライン上でよく知らない相手と対戦ができる環境は、大会前の貴重な実戦経験となりました。いざ対戦してみると、やはり対人戦は対CPUとは一味も二味も違いました。

難しかった対戦中の連携

大会でなおやさんが相手(中央のキャラクター)から想定外の攻撃を受けた場面

自主練習は繰り返したものの、実際の対戦中のサポーターとの連携に関しては、どうしても直前までちぐはぐなケースが続きました。一度方針を決めても、本当に必要なことは何なのか、たくさん悩みました。主に苦戦した二つを紹介します。

同じキャラクターでも異なるスタイル

攻撃のパターンが豊富な鉄拳7において、同じキャラクターでもプレーヤーが違えば、何通りもの戦略やプレースタイルが存在します。例えば「連続攻撃で隙を与えない」「ガードとカウンターを中心にする」といったことなどです。

今回、私のほかにもう一人の全盲プレーヤーが参加しましたが、二人のプレースタイルは異なりました。私は重量キャラでガードと飛び道具を駆使して戦うのですが、もう一人はひたすら接近戦をするタイプです。

プレーしていくうちに、その人のプレースタイルによって情報の必要、不必要が異なることがわかりました。さらに、見えなければ知りえないはずの情報を知ったことで、かえってプレーに悪い影響も出るという事態も生じました。つまり、自分にとっては必要のないケースを想定し、本来のプレーができないことが続きました。例えば、ガード状態のときに「動いたほうがいい」と言われると、「自分がガードできていないのでは」と心配してしまいます。

変化する戦況に追いつかないオンラインのタイムラグ

もう一つ大きな問題がオンラインで生じるタイムラグです。格闘ゲームはコンマ何秒のずれが勝敗を分けると言っても過言ではありません。

前述した通り、プレーヤーとサポーターはオンラインでつながっており、こちらが共有している画面をサポーターが確認して助言するため、どうしてもタイムラグが発生します。ラグのイメージは、相手が攻撃をしてきているときに、「ガードされているよ」と言われるようなものです。前述した情報の内容による混乱もありますが、タイムラグによって戦況と違うことを言われる混乱もありました。こればかりは、オンラインでのサポート方法を検討していくことになりそうです。

大会本番で得た経験

なおやさんのキャラクター(左)が第2ラウンド奪取直前で逆転負けをした場面

そこで、大会当日は、サポーターが対戦中に敵の位置や距離などの具体的な情報は出さないことになりました。当日のサポーターの役割は(1)ゲーム操作の誘導(2)対戦相手が使うキャラクターの伝達(3)対戦中の盛り上げ、としました。

〈大会当日のサポーターの役割〉

(1)ゲーム操作の誘導
(2)対戦相手が使うキャラクターの伝達
(3)対戦中の盛り上げ

「第1回 ePARA CHAMPIONSHIP」の鉄拳7部門はチーム戦でしたから、相手のキャラクターが分かれば、自動的にプレーヤーも分かります。このように対戦前後でたくさん力を貸してもらいました。

当日、私は2試合に出場し、両方とも1ラウンドも取ることができずに敗れました。惜しい場面もありました。たしかに、画面が見えなければ不利なところはたくさんあります。それでも、ストレートで負けたことはとても悔しかったです。しかし、負けて悔しいのは一生懸命だった証拠ではないでしょうか。自分で言うべきかどうかは分かりませんが、負けて悔しかったからこそ、自分は鉄拳7をeスポーツとしてとらえている「アスリート」であると自覚しました。次は絶対勝つ!

また、サポーターからは多くの支えがありました。紹介した誘導や技の伝授だけではなく、ときには対戦を振り返って厳しい指摘もありました。それでもともに戦えて良かったです。サポーターだけではなく、チームメートやマネージャー、コーチ、運営担当も含めてTeam-ePARAとしてたくさんの人と勝利を目指せたことは宝です。

憧れが現実になった喜び

今回の「ePARA CHAMPIONSHIP」への参戦を通して、eスポーツはたくさんの可能性に満ちあふれているものだと感じました。私のような全盲プレーヤーの誕生もそうですが、eスポーツを通じて今回の私たちのように障害者と健常者が協力することや、交流のかたちができあがることもあるでしょう。

サポーターと連携して、鉄拳7をプレーすること自体が大きなチャレンジでした。今後、私もサポーターも勉強を重ね、必要なことと不要なことについては長期的に吟味していきます。視覚障害者のマラソンは、伴走者とともにゴールを目指します。そのためにはお互いのペースを合わせることを中心に長い時間をかけて信頼関係を構築していきます。eスポーツの全盲プレーヤーとサポーターの関係もそれに近いものだと感じました。

過去に書いたePARA公式ページ内の記事「全盲の僕でもパワプロをやりたくて試したこと」でも触れていますが、私は野球が好きで野球選手になりたいと思っていたことがありました。野球以外でも、競技の舞台に立つことへの憧れがありました。

eスポーツが話題になった数年前から、ゲームを使うのであれば全盲でも視力のある人たちとガチバトルができるのではないかと考えていました。海外では全盲プレーヤーがeスポーツの大舞台で活躍しているとも聞いています。そんな中、今回このようなチャンスをいただき、憧れが現実になった喜びをかみ締めています。スタートラインに立ったら走り出すだけ。全盲プレーヤーとしての挑戦を見ていてください。

小学生がeスポーツを通じて障害者と交流をするのも楽しそうです。競技としてのパラeスポーツの発展と、コミュニケーションとしてのeスポーツの発展を目指して今後も活動をしていきます。ぜひ応援してください。

【著者紹介】なおや

本名・北村直也(きたむら・なおや) 声優、エンジニア、大の野球好き。 生まれつきの全盲で、「不可能を可能にする男」というキャッチコピーのもと、誰もなしえなかった「視覚障害を持つ声優」に挑戦している。その状況は日々SNS(@noy_0207)で発信。フォロワーからは「野球の人」という印象が持たれるほど、野球ツイートも熱い。

なおやさん