甲子園の記念大会直前の退社

――かつて朝日放送でスポーツ実況アナウンサーとして活躍されていた平岩さんがeスポーツキャスターに転身されたきっかけを教えてください。

もともと大のゲーム好きで、子供の頃からFPSを中心に海外のテレビゲームに夢中でした。以来、社会人になってからもずっとゲームと親しんでいたわけですが、海外でのeスポーツの盛り上がりを垣間見ているうちに、これは必ず日本にも同じような大きな波が来ると確信しました。

でも、まだ日本にはeスポーツの実況を専門にするアナウンサーはいない。僕はその第一人者になりたいと強く思ったのです。

――アナウンサーの花形の立場からの転身に迷いはありませんでしたか?

朝日放送では高校野球やJリーグ、箱根駅伝の実況を担当していたので、その経験をeスポーツに生かす自信がありました。夏の甲子園の100回大会直前というタイミングの退社でしたが迷いはありませんでしたね。周囲は「記念すべき大会を実況しないなんて!」という反応でしたが、少しでも早くeスポーツキャスターになりたいという気持ちの方が勝っていました。

――eスポーツの魅力をより効果的に伝えるために、どのような工夫をされていますか?

新しいゲームタイトルは、必ず100時間以上プレーをして、そのゲームの特徴やおもしろさを体に覚え込ませます。そして映像を繰り返し見ながら、場面ごとの盛り上がりのポイントを確認し、カメラはどこをとらえるかといった実況プランの詳細な資料を作り上げます。

eスポーツの実況に関しては、先人がいない世界です。僕は独立と同時に、eスポーツの実況を専門とした企業を起業したのですが、そのスタッフや番組のスタッフたちみんなでeスポーツの伝え方を作り上げているところです。

――番組を拝見しましたが初心者でもとてもわかりやすい内容ですね。

現在、eスポーツの観戦者は、ほぼすべて競技者なんです。だから、リテラシーがすごく高く、知識も深い。少なくとも彼ら以上の知識をつけていないと満足のいくような実況は伝えられないので日々勉強です。また、知識だけでなく、そのゲームを知らない人にもより効果的に魅力が伝わるような見せ方の工夫も必要です。

プレーする人に魅力がある

元ABCアナウンサーの平岩康佑さん

――リアルスポーツの実況との違いはありますか?

先にお話したように観戦者がコアユーザーばかりです。たとえば野球なら甲子園で観戦する4万6000人のなかで野球をやる人は数%というデータがあります。バスケットやサッカーも、ほとんど観ているだけのライトユーザーが多い。

だからこそ、ゲームに対する深い理解や知識が必要なのですが、eスポーツもリアルスポーツも基本は「人」にあると思います。つまり、プレーする人間の魅力です。選手が頑張るから熱いシーンも生まれる。

――印象に残るエピソードは?

例えば、トレーディングカードゲーム「Shadowverse(シャドウバース)」の「シャドバ甲子園2020」 という高校生大会で、一人の選手のミスで負けたチームがありました。ステージ上のインタビューでもうつむいて言葉が出ない状態でした。

その後、舞台裏に彼が降りたとき、勝ったチームの選手たちがいたんです。そこで両者が握手をしました。胸が熱くなりました。その様子は番組でも紹介したのですが、映像ではとらえきれないこうした人間的なドラマをどんどん伝えていきたいと思っています。

縮まる世界との差

ReAL-e テレビ朝日
「人間ドラマを伝えていきたい」と語る平岩康佑さん

ーーゲームに関して、日本は「ガラパゴス化」しているという指摘もありますが、eスポーツの可能性はいかがでしょうか?

日本の大手のゲームメーカーもグローバル展開して、世界で同時に同じゲームがプレーできるようになってきました。海外選手もどんどんプレー動画を配信し、それを見る人も増えました。これはYouTubeの存在も大きいと思います。

例えば、野球で甲子園を目指している選手が、アメリカで同じような年齢の野球をやっている選手の動画を見るなんて、これまであまりなかったと思うんです。でも、ゲームでは以前からそれが当たり前。日本のゲーマーは海外の上手な選手のプレーを見て学んでいるので、eスポーツは世界との差がなくなってきていると感じています。

――eスポーツがもたらす経済効果については?

「League of Legends(リーグ・オブ・レジェンド)」の大会には、メインスポンサーとしてルイ・ヴィトンやマスターカード、メルセデス・ベンツという大手企業が出資しています。これは若い層に広告効果があると判断した結果だと思います。eスポーツを観ている人はネットリテラシーが高いので、スポンサーに対するリアクションもいいというデータもあります。

今後は日本も同じような流れになり、おそらくプロ野球を超えるような興行になると思っています。世界的にみても、eスポーツユーザーは現在17億人ですが、ネット環境が整っていない国がまだ6割もあるので、まだまだこれから爆発的な盛り上がりがあると思います。

――番組とご自身について、今後の目標と抱負をお聞かせください。

eスポーツの魅力をさらに楽しく、効果的に伝えるように努力するとともに、「自分でゲームをやるほどではないけれど、観戦は好き」というライトユーザーをもっと取り込んでいきたいですね。

祖母と暮らしていたことがあるのですが、高齢になると体も自由に動かないから人との交流も減る。そんなお年寄りこそ、オンラインゲームで仲間と話しながら手と頭を使って旅や冒険をするべきだと思います。

――お年寄りにオンラインゲームを勧めるのはどのような理由でしょうか?

リアルな草野球だとパワー全開でするとケガしたら嫌だから手加減することもありますよね。でもゲームなら思いっきりプレーできる。オンラインで人と交流もできて心身が活性化します。

番組を通じて、ゲームをしたことのない人や昔やってたけど今はやっていない人たちに、「ゲームをやってみようかな」と思わせるのが僕の役目だと思っています。もっともっとeスポーツの認知を高めてゴールデンに進出するのが目標です!

平岩康佑

ひらいわ・こうすけ 1987年、東京都生まれ。朝日放送ではプロ野球や女子プロゴルフなどの実況を担当。2017年には高校野球の実況が評価され、ANNアナウンサー賞優秀賞を受賞。2018年に退社し、株式会社ODYSSEYを設立。eスポーツアナウンサーのマネジメント事業を展開し、自らも日本最大級のeスポーツイベントRAGEやプロ野球機構パワプロebaseballなどで実況を担当している。著書に「人生の公式ルートにとらわれない生き方 ゲームが好きすぎて局アナを辞めた僕の裏技」(KADOKAWA)。
ツイッター:https://twitter.com/kouhiraiwa777

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