激闘の1戦目、慶應義塾大学の「プロテクトADC」が魅せる

大会はフェーズ1~3まであり、予選リーグとトーナメントで勝ち上がった2チームが決勝で激突します。決勝の舞台に立ったチームは、東京工科大学「A2Z」と慶應義塾大学「TitanZz チーム1」となりました。

東京工科大学はJCCに限らず数多くの大会優勝経験のある強豪校。プロ経験のあるMadEmperor選手やLem0n選手を始め、大学随一の実力を持つメンバーが揃っており、相手校を常に圧倒してきました。対する慶應義塾大学は、オーソドックスな構成ではなく、「プロテクトADC」構成で勝ち上がってきたチームです。1カ月の大会期間でその練度は増しており、トーナメントでは強豪の東京アニメ・声優&eスポーツ専門学校を倒しての決勝進出でした。

1戦目のバンピック、エンゲージが豊富な慶應義塾大学

決勝はBo3形式で行われました。1戦目、慶應義塾大学はこれまでと同じ「プロテクトADC」構成を見せます。ADC・yukiame0選手が使うカイ=サを、前衛を張れる4チャンピオンで守る狙いです。一方の東京工科大学は、TOP・Lem0n選手が大会を通して高いパフォーマンスを見せていたサイラスを選択。オーンやレオナの持つ強力なRスキルを奪うことで、エンゲージも担います。序盤から強いルシアン、アイテムが完成する終盤で猛威を振るうアジールなど、隙の無い構成で臨みました。

試合は東京工科大学のペースで進みました。レーンで有利を取ることで、視界・オブジェクト管理で有利を広げます。慶應義塾大学の唯一のダメージキャリー・yukiame0選手のアイテム完成前に少数戦を仕掛けることで、20分で6000ものゴールド差を付けました。

しかし、慶應義塾大学のMID・Gen G Ruler選手が値千金のプレーでチームを救います。21分、東京工科大学のバロンラッシュにチーム全員でオールイン。バロン継続か反転かを迫られた東京工科大学は、慶應義塾大学の強力なエンゲージにすぐさま対応することができませんでした。

試合が動いたバロンファイト、慶應義塾大学・Gen G Ruler選手のセトが暴れた

慶応義塾大学は始めにJUNGLEのCine選手を倒し切り、Gen G Ruler選手がセトのRスキル「ショーストッパー」を残りの4人に当てて集団戦の勝利を決定づけました。このプレーをきっかけにエースとバロンに加えて、ドラゴンも獲得。カイ=サのアイテム完成が大きく進み、完全に息を吹き返しました。

38分、オーシャンソウルを賭けて最後の集団戦が起こりました。ゴールドは東京工科大学が有利を築いていたものの、猛威を振るったのは慶應義塾大学のADC・yukiame0選手。オーンの強化アイテム「モルテン・エッジ」を持ったフルビルドのカイ=サが爆発し、トリプルキルを獲得しました。そのままネクサスを割って、慶應義塾大学が40分の激闘を制しました。序中盤の劣勢を跳ね除け、ADCを守り切っての勝利。2戦目は、王者・東京工科大学がどのようなプロテクトADC対策をしてくるかがカギとなります。

修正力も伊達じゃない、王者が慶應義塾大学を圧倒

2戦目のバンピック、カイ=サとセジュアニを取り上げた東京工科大学

2戦目、東京工科大学はバンピックから対策を見せます。1戦目で活躍したカイ=サと、前衛兼エンゲージを担うセジュアニを慶應義塾大学から取り上げました。対する慶應義塾大学は引き続きプロテクトADC構成で、ADCには自衛能力が高いザヤを選びました。東京工科大学のセジュアニやバードを起点としたタワーダイブやキャッチをいなす狙いがあります。

試合は東京工科大学の一方的な展開となりました。1戦目と同様にレーンで有利を取り、オブジェクトに繋げる動きはそのままに、集団戦で王者の意地を見せます。集団戦前の睨み合いでMID・めぐみぃん選手のゾーイによるポークで体力差を広げ、耐えかねた慶應義塾大学のエンゲージにはセジュアニとバードで受けきります。

集団戦中はMadEmperor選手とLem0n選手がダメージを出し切れる環境を整えることでスノーボールに成功。結果、25分時点で10000ゴールド差に広げ、有利を渡すことなく圧勝を収めました。1戦目で見られた集団戦でのコミュニケーションエラーや、浮いたところをキャッチされるようなミスは全く見られず、修正力の高さを見せてくれました。

3戦目、ダメージディーラーのYukiame0選手を狙う東京工科大学

1ー1で迎えた最終戦、東京工科大学の集中力が切れることはありませんでした。プロテクトADC構成を続ける慶應義塾大学に対して、序盤にBOTでの2対2で勝利。「ADCにゴールドを集める」勝ち筋をいきなり阻むことに成功しました。また、TOPレーン有利から慶應義塾大学のJUNGLEへの圧力をさらに強めます。TOP・Lem0n選手がJUNGLE・Cine選手と一緒にカウンタージャングルをすることで、JUNGLE同士でもゴールド・経験値差を広げました。

東京工科大学は攻撃の手を緩めることなく、21分にはバロンにラッシュ。慶應義塾大学は1戦目と同様に仕掛けます。しかし、冷静だったのは東京工科大学でした。

SUPPORT・ユウ君選手がバードのRスキル「運命の調律」で相手ADCの行動を妨害し、めぐみぃん選手のセトがADCを倒し切りました。ダメージディーラーがいなくなった慶應義塾大学は為す術なくエースを獲られました。その後も集団戦で敗れることなく、序盤に築いた有利をそのまま広げた東京工科大学が勝利。1戦目の敗北をものともせず、圧倒しての優勝を決めました。

試合後、東京工科大学のリーダー・MadEmperor選手は「慶應は元々知っている選手がいたから戦いやすい。優勝する自信はありました」と話しました。

バンピックについては、相手の得意チャンピオンを取り上げるだけでなく、強力なチャンピオンをあえて空けることでピックを誘導。その上でカウンターチャンピオンを当てることで、レーンの有利を確実に築いたそうです。相手の特徴を逆手に取るバンピックからは、東京工科大学の強みが決して個人技の高さだけではないとわかります。

1戦目に逆転されるきっかけとなったバロンファイトについては、「すぐ反転するべきだったが、コールできず判断を誤ってしまったことが一番のミスでした。オブジェクトを取り切るか反転するかの判断を、あらかじめチームで決めるようにしました」と振り返ります。その言葉通り2試合以降のオブジェクト周りの集団戦では負けておらず、チームとしての高い修正力もまた優勝を後押ししたと言えるでしょう。

「A2Z」への思い、サークルという存在

A2Z優勝メンバー。左からCine選手、 めぐみぃん選手、 Lem0n選手、 MadEmperor選手、 ユウ君選手、和葉コーチ

「AからZまで、全てのゲームをプレーするサークル」という名前の由来通り、LoLだけでなくオンライントレーディングカードゲーム「Shadowverse」でも大会に出場するなど、幅広く活動している東京工科大学「A2Z」。MadEmperor選手、Lem0n選手、Cine選手は4年生で、来年卒業を迎えます。4年間過ごしてきたA2Zへの思いを話してもらいました。

MadEmperor選手

「A2Zに入って一緒に遊ぶ人が増えました。結果も出て、大学の教授や親に認められるようになったのはA2Zがあったからこそだと思います。卒業後は、OBとしてLoLが強い大学でいて欲しいので後輩に教えていきたいと思います」

Lem0n選手

「A2Z創設時に名前を貸したので創設メンバーの1人ですが、当初より規模も大きくなって強くなりました。今後もLoL部門で大会に出て欲しいと思います。来年から会社に就職するんですけど、ゲームに携わって大会を主催してみたいです。学生大会の規模が小さくなると寂しいので、どんな形でも盛り上げたい」

Cine選手

「A2Zに入った当初からサークルの雰囲気が良くて、先輩にご飯に連れて行ってもらったり一緒にゲームしたりして大学に馴染めたと思います」

来年を担うめぐみぃん選手、ユウ君選手にも今後の展望を話してもらいました。

めぐみぃん選手

「まずはメンバー集めから始めていきたいです。LoL部門は僕も無くしたくないのでメンバーを集めて、できることなら来年も良い結果を残したいです」

ユウ君選手(ユウ君選手は韓国人選手)

「(徴兵制があるので)来年はどうなるかわからないんですけど、めぐみぃんに頑張って欲しいですね」

「LoL」について、東京工科大学の和葉コーチは「毎日違った楽しみを味わえるゲーム。プレーしてない人はまず触れてみて欲しい」と話します。リリースされてから10年以上経った今でも変化を続けているため、面白くないと思ったことは一度もないそうです。

Lem0n選手は「本気でやろうとと思ったきっかけは大会観戦。LJL決勝とかオフラインイベントに行って熱気に触れるとハマれると思います」と自らの経験を話します。プレーしなくても、野球観戦のようにファンとして競技のアツさに関わることでまた別の楽しみ方ができると伝えてくれました。めぐみぃん選手の「努力が報われるゲーム」という言葉からも、「LoL」はただのゲームではなく、1つの「スポーツ」であると言えるでしょう。

(澤部衛)