バリアフリーeスポーツをめざす取り組み「ePARA」。障害者を雇用する企業がeスポーツを通じて競い合う「第1回ePARA CHAMPIONSHIP」が10月に開幕しました。「ePARA実行委員会」が主催し、GAMEクロス(朝日新聞社)が後援しています。実行委が事務局を置く株式会社ePARAのチームとして、10月17日にチームFPS/TPS部門として行われた「Call of Duty: Mobile」の試合に臨んだのがジジこと星野佑介さん。生まれつき左腕に障害があります。キャプテンとしてチームを率いたジジさんの軌跡の後編です。

聴覚障害のプレーヤーを中心とした作戦を立てる

作戦会議やチーム全体での実戦練習、やれる事を全て行っての大会当日。第1ラウンドHARDPOINTは、占拠しなければいけないポイントが時間の経過とともに変化する難しいモードです。1度占拠したら相手に取り返されないように、予め全員の警戒する方向を決めて臨みました。

実際、占拠できた際はポイントを取り返されることは非常に少なく、優位に展開することができました。相手に先に占拠された際もグレネードを活用してすぐに取り返すことを意識。また、時間の経過をしっかりと気にすることで次のポイントの占拠を有利にすることを心がけました。結果、第1ラウンドHARDPOINTは3試合中2試合勝利することができました。

第2ラウンドSEARCH & DESTROYでは、聴覚に障害を持ったプレーヤーを中心とした作戦で非常に良い試合運びができました。攻撃時には、最重要である爆弾の保有を聴覚障害のプレーヤーに任せ、周りの動きやボイスチャットは気にせず自分のミッションに専念してもらい、他のメンバーは爆弾を持つ彼を援護する体制を取りました。これにより試合中の全員の動きが明確なものとなりました。防衛時には、2人1組での行動により、接敵などの報告が可能になりました。

また、私が敵全員を引きつけている間に守りを固める作戦をとり、策がうまく機能してあっさりと勝利できた場面もありました。それぞれが自分の特性に合ったミッションを持ち、作戦通りの動きをできたことが勝利につながったと思います。こちらのモードも3試合中2試合で勝利することができました。

2勝1敗の価値と課題

Round1 HARDPOINT戦闘

2点先取で試合終了だったため、第3ラウンドDOMINATIONは1度も行われませんでした。DOMINATIONは、最も時間をかけて作戦会議をしたモードだったので少し残念でした。

勝った2試合ではストレート勝ち、負けた1試合はストレート負け。大会2週間前の練習試合では1勝するのがやっとだろうと予想されていた我々はこの2週間で非常に大きく成長し、チームとしての結束力が比べ物にならないほどになりました。

しかし、我々が敗北したTeam-BASEは3戦3勝。限られた時間の中で成長できたものの、Team-BASEの洗練されたチーム力には届きませんでした。Round2で明暗を分けた場面では、数的優位なTeam-ePARAはグレネードによる共倒れで勝利を狙いましたが、Team-BASEのYujikun選手は先読みし距離を取ります。その後、全滅に追い込まれ敗戦となりました。

大会が終わってまたこのメンバーで戦うことがあれば、もっとじっくりとチームの連携力を高め、次は勝ちたいとメンバー全員で意気込みました。

お互いのフォローで生まれた連携

片手でiPad画面を操作するジジさん。左手の指も使うが、右手の指の操作が多い

今大会を振り返ると本当に多くの学びがありました。個人では部門MVPを獲得することができましたが、チームリーダーとしては、もっと早くからお互いを理解し合う場を設けたり、自分自身の考えをしっかりと整理しておくべきだったと反省するべき点は沢山あります。

一方で、味方を頼ることの大切さを学ぶことができたことが1番大きかったと感じます。チームメイトの協力や、積極性がこれほどまでに力になるとは思いませんでした。それぞれが異なる障害を持つ中、お互いにフォローし合うことでチームとしての連携力が一気に高まったと感じます。

チームメイトの中には元予備自衛官補のメンバーもおり、訓練で得た経験をふまえた視点から、作戦をメンバーに伝える際のアドバイスをたくさんいただくことができました。これらはeスポーツに限らず、私の今後の人生において絶対に役立つと思います。こんなに多くを学ぶことができて感謝の気持ちでいっぱいです。

個人競技であり、同じような障害を持つ選手同士が戦うパラテコンドー。チーム戦もあり、全く異なる障害を持つプレーヤーが集まるパラeスポーツ。パラeスポーツにはパラスポーツと比べて全く別の難しさがある一方で、自分たちの腕や練習の成果をぶつけ合い、壁にぶつかりながら頂点を目指すという共通の楽しさがあります。また、自身の障害以外の障害を持つ方々と接する中で、上肢障害を持つ自分の生き方についても相対的に考え、新たな学びを得ることができる点ではパラスポーツを超えた魅力を感じます。

プレーヤーとしての今後の夢

ベストな組み合わせを求めて武器庫に5時間こもり、ジジさんがカスタマイズした武器

私は今後、パラeスポーツの価値を高めていきたいです。障害の社会進出は、障害者を持つ家族なら誰もが一度は心配することかと思います。社会進出の成功例として、パラスポーツは認知が広がっています。

しかしパラスポーツは、自分に合わせた道具や補助器具などが必要なことも多くあり、最初の一歩がとても重く、踏み出しづらいです。また、パラスポーツは多くの人と面と向き合って関わり合うため、障害の種類や特性によっては練習環境に溶け込めない人もいます。

一方でパラeスポーツは、ゲームのできる端末さえあれば土俵に立つことができます。世界中にいる対戦相手といつでも練習ができ、人間関係での悩みも避けながら自分の腕を磨くことに集中できます。自分の得意なゲームタイトルができればそれが自信につながり、その腕が認められれば雇用にもつながります。最近になってパラスポーツ選手の雇用の援助が行われるようになりました。

パラeスポーツの人口を増やしたい

大会アンバサダーとして大会の配信に出演した車いすインフルエンサー中嶋涼子さん

同様にパラeスポーツでも援助・応援してくださる企業や団体があります。そのような力を借りれば、パラeスポーツは障害者の社会進出の大きな選択肢になります。しかし、パラeスポーツの人口が少なければそのような取り組みは機能しません。

私は、パラeスポーツのプレーヤーとして、パラスポーツでの経験を活かしながらパラeスポーツの人口を増やす活動を進めていきたいです。また、観戦・応援が楽しいと感じる魅力的な競技にすることで、パラeスポーツをたくさんの協賛者・理解者・ファンが集まるステージに変え、世間からの評価をリアルスポーツに匹敵するものにしていきたいです。

多くの障害で苦しむ人々が自信を持ってパラeスポーツプレーヤーを目指せる環境を作っていきたいです。コロナウイルスでオンラインでの活動の重要性がうたわれるいま、パラeスポーツの価値の拡大は、eスポーツ全体の発展に向けた大きなチャンスだと私は考えます。

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大会はpart2として、11月22日に「格闘ゲーム部門」が開かれ、「鉄拳7(Steam版)」の試合があります。3on3のチーム戦です。二つのタイトルの総合で優勝チームが決まります。

ジジ

愛知県出身。生まれつき左腕に障害があり、14歳のときにパラテコンドーに出会う。2020年に予定された東京パラリンピック出場をめざし、日本代表の強化指定選手だった経験を持つ。最近はパラeスポーツの頂点を目標にしており、日本のパラeスポーツを盛り上げ、世界で戦うことを夢に持つ。

ePARAとは

株式会社ePARAに事務局を置く「ePARA実行委員会」では、eスポーツを通じて、障害者が自分らしく、やりがいをもって社会参加する支援を行っています。支援活動の一環として、障害者eスポーツに関するニュース発信や、障害者eスポーツ大会の企画運営を行っています。
大会やイベントを通して「困難や限界を超える精神や力」を多くの人に発信し、より良い社会の実現をめざしています。「PARA」はパラリンピックと同様に平行を意味するパラレルであり、 将来的にはリーグ優勝者がトップeスポーツプレーヤーと対等に試合を行えるようになる「物語性」も含めて「ePARA」と名付けています。

バリアフリーeスポーツ ePARA