「ストリートファイターII」(以下、ストII)のガイルステージを背景に「アーニーキ!」と叫ぶ怪しげな2人組。

1人は赤いバンダナにティアドロップのサングラス、赤いベストにハーフパンツと、どことなく……というか明らかに数世代前のアメリカンなファッションである。そして相方も青色と黄色のアメフトマスクに黄色のオーバーオールと、こちらも奇抜なファッションでギターを掻き鳴らしている。

控えめに言っても強烈なビジュアルで登場した彼らの名は「ザ・リーサルウェポンズ」(ポンズとも)。8月にメジャーデビューしたホットな音楽ユニットだ。そんな彼らの無観客ライブ「しんの ワンマン へのみちは まだ とおい・・・はいしん あるのみ!!」が9月11日に開催された。

「ストII」背景に溶け込み過ぎな2人は一体何者?

ザ・リーサルウェポンズはアメリカ生まれのボーカル「サイボーグジョー」と作曲・演奏・プロデュースを手掛ける「アイキッド」の2人からなる音楽ユニットだ。

彼らの楽曲はシンセサイザーとギターによる耳に残るサウンド、日本語と英語が混じり合い数々の言葉遊びが盛り込まれたユニークな歌詞、そして観客を巻き込む合いの手の数々が魅力だ。

さて、eスポーツメディアであるGAMEクロスでいきなりこんな話を始めたのにはもちろん理由がある。それは彼らの圧倒的なゲームへの造詣の深さ、そして溢れんばかりの愛だ。

彼らのゲーム愛の深さがわかる楽曲の1つに「昇龍拳が出ない」がある。ストIIのケンのステージのBGMをアレンジしたメロディーに、「ストIIあるある」を盛り込んだ歌詞、そしてストIIのステージを背景に小ネタを詰め込みまくったMV(ミュージックビデオ)は音楽ファンはもちろんゲームファンの間でも話題になった。

今回はそういった縁から「ストリートファイター開発チーム」の全面協力を得て、ストIIのステージを背景に無観客ライブを行なったのだ。

「昇龍拳が出ない」けどガチのゲーマー

ケンのステージでキメポーズの2人。ちなみにケンはシリーズ全作に登場している数少ないキャラクター

彼らのゲーム遍歴について聞いてみたところ、熱すぎるコメントが返ってきた。

サイボーグジョーは「ストII」はもちろん、ファミコンの「ロックマン」からPS2「鬼武者」シリーズなどのカプコン作品、渋いところではメガドライブの「クルードバスター」などのデータイースト作品もプレーしていたそうだ。

アイキッドのコメントも、サイボーグジョーに負けじとアツい。ゲーム遍歴はファミコンからスタートし、PC-9801(NECから発売されていたパソコン)、ゲームギア、スーファミ、セガサターン、PlayStationと、メジャーどころを抑えつつ幅広いハードに触れていたという。さらに「ただしメガドライブは1を3台、2を1台、ミニを1台で計5台購入」というほどのメガドライブファンである。

ゲームタイトルについては、コメントにさらに気持ちがこもっていた。メジャータイトルから通好みまで様々なタイトルについて語ってくれたことから、多くのゲームに触れ、底しれぬゲーム愛を持っていることが容易に想像できる。ここでは一部抜粋して紹介する。

The GG忍(ゲームギア):「忍者アクションの名作。主人公の名前がジョーだし我々の楽曲『サイボーグメカニンジャ』の原点かもしれません」

ベアナックルII(メガドライブ):「いまだに全ての隠しアイテムを覚えています」

トージャム&アール(メガドライブ):「ナイスな凸凹コンビによる、ゆるい探しゲー。ポンズに影響与えまくりです」

レンタヒーロー(メガドライブ):「こちらもゆるすぎるセガの怪作。もちろんポンズに影響与えまくりです」

川のぬし釣り2(スーパーファミコン):「川のせせらぎが爽やかな釣りゲームの名作。おこじょには手こずりました。なお、ウキ&フライ派です」

この世の果てで恋を唄う少女YU-NO(セガサターン):「去年アニメにもなった超名作。複雑に絡み合うストーリーとテーマの深さが最高」

気になって仕方がないストIIへの思い入れを聞いたところ、サイボーグジョーから「リュウを使っていマシタ。竜巻旋風脚が好きデス。でもアメリカ人は発音できないから、『チャカラピューッキャ』とか『カッカラキューキャ』とかめちゃくちゃな言葉を叫んでいましたネ。全然ベガに勝てなかったデスネ。大人になってからやっと勝てたマシタ。サガットも好きデス。タイガーショット(アメリカではタイガーキャノン)が特に」(原文ママ)とサイボーグジョーらしいコメントが。

また「昇龍拳が出ない」誕生のきっかけについては、アイキッド曰く「子供の頃、あまりの昇龍拳の出なさに自虐的に歌っていたのがあの曲の原型です。英語部分や難しい言い回しは大人になってから付け足しました。当初は友達に聴かせるためだけに作ったのですが、まさかこういう展開が待っているとは思いもしませんでした。カプコンさんの懐の深さには頭がさがります。なお、今でも画面右側からは昇龍拳があまり出せません(成功確率約20%)」とのこと。

とにかく楽しすぎた、ライブレポートをお届け!

「ストII」のボーナスステージと言えばやはり車をボコボコに破壊できるこのステージ! きっちりパーフェクトを狙いたいところだ

ここからライブレポートをお届けしていきたい。

今回のライブは「ストリートファイター開発チーム」の全面バックアップで開催され、背景はすべてストIIのものになっている。

1曲目はガイルステージを背景に熱い「アーニーキ!」コールから始まる「80年代アクションスター」。サイボーグジョーの歌にあわせて視聴者はYouTubeのコメント欄で合いの手を入れる。冒頭の「アニキ」コールはもちろん、「エイドリアン」や「ミスターT」など楽曲中の要所要所でもコメントが流れていく。

ベガステージに場所を移した2曲目の「シェイキン月給日」では楽曲中にサイボーグジョーが波動拳を撃ってアイキッドの体力を大きく削るパフォーマンスを見せ、コメント欄は「なんかでたw」などのツッコミで溢れかえっていた。

視聴者と三三七拍子で盛り上がった3曲目の「東海道中膝栗毛」に続いて、4曲目はエドモンド本田のステージでの「Super Cub is No1」だ。この曲はHondaのオートバイ「スーパーカブ」の凄さをアピールする歌詞になっている。日本生まれのスーパーカブと、日本生まれのストII、それらを日本のステージで演奏する印象的なシーンだった。

スーパーの半額タイムセールを巡る争いを歌い上げる「半額タイムセール」、「サムライ、ニンジャ、ゲイシャ」というフレーズが耳に残りすぎる「クールジャパン」を披露した後はついにあの曲である。

ステージ上で「昇龍拳」を繰り出しドラム缶を壊したサイボーグジョーはマイクを掴んで歌い出す。7曲目はついに「昇龍拳が出ない」だ。しかもケンのステージでのパフォーマンスということもあり、演奏している2人も視聴者もひときわ盛り上がりを見せる。

ちょっとした漫才を挟んで8曲目の「なんでやねん」、9曲目の「プータロー」を披露し、10曲目はSNSなどでも大きくバズを起こした「きみはマザーファッカー」、11曲目はインド繋がりということなのだろうか、ダルシムステージで「マハラジャナイト」のパフォーマンスを見せた。最後はホッピーの割り方を教えてくれる「ホッピーでハッピー」を演奏し、その後何者かによってKOされてしまう(実は画面上部に彼らの体力が表示されていたのだ!)。

ゲームオーバーへのカウントダウンが刻まれる。ボコボコになった2人の絵への描き込みがすごい

そしてゲーマーなら幾度となく見たであろうストIIのコンティニューのカウントダウン(をパロディーした)画面が流れライブは終了したかに見えた……が、唐突に始まるボーナスステージ。そう、アンコールだ。

この日初公開の新曲「特攻! 成人式(ぶっこみせいじんしき)」を披露、間奏中にはボーナスステージの車を完全に壊すパフォーマンスも見せた。こうしてライブは終了、コメント欄は大盛り上がりのまま幕を閉じた。

「ストII」の背景でパフォーマンスをできたことについて2人はこう語る。

「夢みたいデス。子供のころから本当にテレビゲームの中で活躍したかったので、最高! サイボーグになって良かった! ケンのステージでワタシが昇龍拳を出せたのは、良かった! でもゲームでは出ないけどネ! あとはボーナスステージで車を素手でボコボコにしたところかな」(サイボーグジョー)

「言葉にできないぐらい感動しました。本当に夢のようでした。エドモンド本田のステージで演奏した『Super Cub is No.1』(が印象的)です。日本が誇るふたつの『HONDA』のパワフルさを表現できたと思います」(アイキッド)

彼らの楽曲とMVと今回のライブのアーカイブはYouTubeで見ることができる。ゲーム内に溢れる彼らの耳に残りすぎる楽曲と、インパクトのあるMVの数々は必見だ。